三ヶ月だけの恋人

perari

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仁野はゆっくりと部屋に入ると、少し息苦しさを感じ、手際よく窓を開けた。夜風が流れ込み、松田の前髪がかすかに揺れた。
松田はまだ緊張している様子で、声を小さくして訊いた。「何か用ですか?」
仁野は振り返り、彼をじっと見つめた。「学長、泳ぎを習いたいか?」
松田は正直に答えた。「水が怖いんです。」
仁野は微笑んで言った。「俺が教える。」
松田は予想外の言葉に、心臓が跳ね上がるのを感じた。部屋の明かりはつけておらず、少し暗かった。顔を上げると、窓辺に立つ仁野の姿があり、腕を組み、窓からの光が顔に当たって鋭い顎と高い鼻筋を浮かび上がらせている。
松田は一瞬言葉を失い、仁野は数歩近づき、自然な口調で訊いた。「習うか?」
松田はどもりながら答えた。「ぼ、僕、水着を持ってきてなくて…」
仁野はすぐそばで立ち止まり、落ち着いた口調で言った。「一枚水着を買えばいいだけだ。会場でも売ってる。」
松田はどうしても仁野に教わる誘惑に抗えず、思い切って頷いた。「わかりました。」
仁野は微笑み、手を伸ばして松田の前髪をかき上げ、傷跡に触れた。「薄くなったか?」
松田は仁野の匂いに包まれ、頭がぼんやりとして思考がまとまらず、「そうかもしれません」と答えるのがやっとだった。
外のネオンが絶え間なく光を投げかけ、松田の顔を時折照らした。彼の瞳は仁野に向けられ、近くにいるにもかかわらず、仁野はその視線の集中、憧れ、さらには陶酔までをもはっきりと読み取ることができた。全世界が自分だけを見ているかのような感覚に、仁野は微かな満足感を覚えた。
仁野はその整った美しい顔を見下ろし、しばらく沈黙した後、少し身をかがめた。
松田は思わず身を固くし、仁野が自分にキスをするのではと身構え、目を閉じて体が震えた。しかし、仁野は触れず、額に置いていた手をそっと引っ込め、軽く笑った。
松田は失望に包まれ、なぜか勇気が湧いてきた。薄暗い狭い部屋のせいか、自分には釣り合わないと思う気持ちを超え、初めての反抗心が芽生えた。松田は手を伸ばして仁野の首にかけ、つま先立ちになって顔を上げ、キスをしようとした。
仁野は動かず、彼が近づくのを許し、手を腰に軽く置いて支えた。松田の心臓は鼓動の限界まで早まり、息も上手くできなかった。しかし、唇が触れる寸前、仁野はわずかに身を後ろに引き、その冒険的なキスを避けた。
松田の心は一気に空になった。
彼は手を離し、数歩下がってベッドに座り込む。顔を覆い、低く囁くように謝った。「ごめんなさい…」
仁野はしばらく黙った後、そっと彼の髪を撫でた。耳元で優しく囁く。「それでも泳ぐ?」
松田は深く息を吸い、かすれた声で答えた。「はい…」
仁野は顔に触れ、柔らかく言った。「じゃあ、下で待ってる。」

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