2 / 17
01
しおりを挟む
坂本は仰向けに俺のベッドに寝転がっていた。上半身はバスケのユニフォーム姿で、邪魔だったのか、裾をめくって口でくわえている。
背中には俺の枕と布団。額から垂れたバスケ後の汗が、ユニフォームにポタポタ落ちていた。
俺はトイレのドアの隙間にしゃがみ込んだまま、完全に固まっていた。
1時間前、腹痛で冷や汗をかきながら授業を抜け出し、寮に戻ってトイレに駆け込んだばかりだった。ようやく落ち着いたところで、外から物音がして——。
立ち上がる足もガクガクで、ドアを少しだけ開けて覗くと、坂本がバスケットボールを抱えたまま俺のベッドの真ん中に立って、あたりをキョロキョロ見回していた。
あいつ、一見クール系で無口だけど、190cm超えの長身、引き締まった腹筋、アスリート並みの体つき……芸術学部どころか体育学部でもトップレベルのルックスだ。
思わず声をかけようとした瞬間、坂本は俺のベッドに身をかがめて、何かを探し始めた。
は?なに勝手に俺のベッドを漁ってんだよ、こいつ絶対俺に何か仕掛けるつもりだな。
内心でニヤッと笑い、俺はトイレのドアの陰からスマホを取り出した。現行犯逮捕してやる、坂本の変態行為をこの目で、そしてこのカメラで暴いてやる!
撮影モードを起動すると、坂本は布団をめくり、シーツの下に手を突っ込んでゴソゴソ。次に枕をどかすと——
出てきたのは、俺が今夜使おうと思って洗っておいた下着だった。
え……え?こいつ、なにして……っ。
そして坂本は、それを手に取って、上下左右からじっくり眺めて——
最後には、くんくん……と、まさかのニオイチェック⁉
思考停止。完全に脳がバグった。
こ、こんなヤツだったのか坂本……!外見だけは真面目そうに見せかけて、中身は超ド変態だったなんて……っ!
彼の手は大きくて、指には長年バスケをやってできた薄いマメ、そして関節部分がほんのりピンク色。
そういえば、前に俺はこう言ったな。「男のくせにピンク色とか、女子かよ」って。
……いま、その“女子かよ”なヤツが、俺のベッドで、顔を赤らめながら息を荒げて、汗で光る腹筋を見せてて——
その下が……ッ!
ムリムリムリムリ!! そんなサイズ、絶対人間じゃない!!
俺はもう、呼吸すら忘れてた。ドアの向こうからのぞいている体勢のまま、足の感覚もなくなってきている。スマホは手に持ったまま微動だにできない。
坂本は昔から背が高かったけど、大学に入ってからは完全に「上から目線」の高さになった。
あいつは運動バカ、俺は美大生。
あの腹筋と俺のぽよ腹を比べて、深いため息をひとつ。
……勝てるわけない。
そして、30分以上が過ぎた。
坂本はようやくフィニッシュしたようで、胸だけが上下している以外は完全停止。いわゆる「賢者モード」ってやつだ。
俺もようやく足を少しだけ緩めて、小声で「しんど……」とつぶやいた。
けど、気を抜いたのも束の間——
坂本が起き上がり、ユニフォームを脱ぎ、微笑んだ。そして……まっすぐトイレに向かって歩いてきた。
は???
俺は慌ててトイレの奥に移動、身を縮めて物陰に隠れる。
バレたら死ぬ、いや、命は助かっても“局部崩壊”の可能性すらある。
足音がどんどん近づいてくる。
心臓がバクバク跳ねて、ケツの穴もキュッと引き締まる。
「……神様、仏様、イエス様、ゼウス様、アマテラス様、観音様、誰でもいい、今だけ助けて……!一生菜食主義になるから……一週間だけでも許して……」
そんな祈りも虚しく、トイレの前で足音が止まる。
ギィ……。古びたドアノブに手がかかり、ゆっくりと回された。
背中には俺の枕と布団。額から垂れたバスケ後の汗が、ユニフォームにポタポタ落ちていた。
俺はトイレのドアの隙間にしゃがみ込んだまま、完全に固まっていた。
1時間前、腹痛で冷や汗をかきながら授業を抜け出し、寮に戻ってトイレに駆け込んだばかりだった。ようやく落ち着いたところで、外から物音がして——。
立ち上がる足もガクガクで、ドアを少しだけ開けて覗くと、坂本がバスケットボールを抱えたまま俺のベッドの真ん中に立って、あたりをキョロキョロ見回していた。
あいつ、一見クール系で無口だけど、190cm超えの長身、引き締まった腹筋、アスリート並みの体つき……芸術学部どころか体育学部でもトップレベルのルックスだ。
思わず声をかけようとした瞬間、坂本は俺のベッドに身をかがめて、何かを探し始めた。
は?なに勝手に俺のベッドを漁ってんだよ、こいつ絶対俺に何か仕掛けるつもりだな。
内心でニヤッと笑い、俺はトイレのドアの陰からスマホを取り出した。現行犯逮捕してやる、坂本の変態行為をこの目で、そしてこのカメラで暴いてやる!
撮影モードを起動すると、坂本は布団をめくり、シーツの下に手を突っ込んでゴソゴソ。次に枕をどかすと——
出てきたのは、俺が今夜使おうと思って洗っておいた下着だった。
え……え?こいつ、なにして……っ。
そして坂本は、それを手に取って、上下左右からじっくり眺めて——
最後には、くんくん……と、まさかのニオイチェック⁉
思考停止。完全に脳がバグった。
こ、こんなヤツだったのか坂本……!外見だけは真面目そうに見せかけて、中身は超ド変態だったなんて……っ!
彼の手は大きくて、指には長年バスケをやってできた薄いマメ、そして関節部分がほんのりピンク色。
そういえば、前に俺はこう言ったな。「男のくせにピンク色とか、女子かよ」って。
……いま、その“女子かよ”なヤツが、俺のベッドで、顔を赤らめながら息を荒げて、汗で光る腹筋を見せてて——
その下が……ッ!
ムリムリムリムリ!! そんなサイズ、絶対人間じゃない!!
俺はもう、呼吸すら忘れてた。ドアの向こうからのぞいている体勢のまま、足の感覚もなくなってきている。スマホは手に持ったまま微動だにできない。
坂本は昔から背が高かったけど、大学に入ってからは完全に「上から目線」の高さになった。
あいつは運動バカ、俺は美大生。
あの腹筋と俺のぽよ腹を比べて、深いため息をひとつ。
……勝てるわけない。
そして、30分以上が過ぎた。
坂本はようやくフィニッシュしたようで、胸だけが上下している以外は完全停止。いわゆる「賢者モード」ってやつだ。
俺もようやく足を少しだけ緩めて、小声で「しんど……」とつぶやいた。
けど、気を抜いたのも束の間——
坂本が起き上がり、ユニフォームを脱ぎ、微笑んだ。そして……まっすぐトイレに向かって歩いてきた。
は???
俺は慌ててトイレの奥に移動、身を縮めて物陰に隠れる。
バレたら死ぬ、いや、命は助かっても“局部崩壊”の可能性すらある。
足音がどんどん近づいてくる。
心臓がバクバク跳ねて、ケツの穴もキュッと引き締まる。
「……神様、仏様、イエス様、ゼウス様、アマテラス様、観音様、誰でもいい、今だけ助けて……!一生菜食主義になるから……一週間だけでも許して……」
そんな祈りも虚しく、トイレの前で足音が止まる。
ギィ……。古びたドアノブに手がかかり、ゆっくりと回された。
140
あなたにおすすめの小説
愛おしい、君との週末配信☆。.:*・゜
立坂雪花
BL
羽月優心(はづきゆうしん)が
ビーズで妹のヘアゴムを作っていた時
いつの間にかクラスメイトたちの
配信する動画に映りこんでいて
「誰このエンジェル?」と周りで
話題になっていた。
そして優心は
一方的に嫌っている
永瀬翔(ながせかける)を
含むグループとなぜか一緒に
動画配信をすることに。
✩.*˚
「だって、ほんの一瞬映っただけなのに優心様のことが話題になったんだぜ」
「そうそう、それに今年中に『チャンネル登録一万いかないと解散します』ってこないだ勢いで言っちゃったし……だからお願いします!」
そんな事情は僕には関係ないし、知らない。なんて思っていたのに――。
見た目エンジェル
強気受け
羽月優心(はづきゆうしん)
高校二年生。見た目ふわふわエンジェルでとても可愛らしい。だけど口が悪い。溺愛している妹たちに対しては信じられないほどに優しい。手芸大好き。大好きな妹たちの推しが永瀬なので、嫉妬して永瀬のことを嫌いだと思っていた。だけどやがて――。
×
イケメンスパダリ地方アイドル
溺愛攻め
永瀬翔(ながせかける)
優心のクラスメイト。地方在住しながらモデルや俳優、動画配信もしている完璧イケメン。優心に想いをひっそり寄せている。優心と一緒にいる時間が好き。前向きな言動多いけれど実は内気な一面も。
恋をして、ありがとうが溢れてくるお話です🌸
***
お読みくださりありがとうございます
可愛い両片思いのお話です✨
表紙イラストは
ミカスケさまのフリーイラストを
お借りいたしました
✨更新追ってくださりありがとうございました
クリスマス完結間に合いました🎅🎄
未完成な僕たちの鼓動の色
水飴さらさ
BL
由人は、気が弱い恥ずかしがり屋の162cmの高校3年生。
今日も大人しく控えめに生きていく。
同じクラスになった学校でも人気者の久場くんはそんな由人に毎日「おはよう」と、挨拶をしてくれる。
嬉しいのに恥ずかしくて、挨拶も返せない由人に久場くんはいつも優しい。
由人にとって久場くんは遠く憧れの存在。
体育の時間、足を痛めた由人がほっとけない久場くん。
保健室で2人きりになり……
だいぶんじれじれが続きます。
キスや、体に触れる描写が含まれる甘いエピソードには※をつけてます。
素敵な作品が数多くある中、由人と久場くんのお話を読んで頂いてありがとうございます。
少しでも皆さんを癒すことができれば幸いです。
2025.0808
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
小石の恋
キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。
助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。
なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。
果たして律紀は逃げ切ることができるのか。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる