なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗

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「リリアーナは、紅茶でいいか?」

「はい。紅茶でお願いします」

「紅茶を二つと、ケーキをいくつか見繕ってくれ」

  クラウスは、店員に注文してくれた。

「かしこまりました。クラウスお坊っちゃま。すぐにご用意致しますね」

  そう言うと店員は、室内から退出した。

「お坊っちゃま?」

  私の質問にクラウスが答えてくれた。

「ああ。トーマスじいさんは、小さい頃からの知り合いなんだ。ここの商会は、いくつか事業を手掛けていて、父上がひいきにしていてね。カフェの事業を始めてからは、母上がよく使っているんだ。友人と来ることもあるみたいだけど……毎回公爵領で会う訳にいかないし、一人では寂しいからって、俺やユリアスを連れて行くんだ。トーマスじいさんとは、ここのお店が出来た時からだから、七年ほど前からの知り合いだ」 

「七年。では、小さい頃のクラウス様も知っているのね」

「ああ、そうだね」

  クラウスは、そっぽを向いて返事をした。

「失礼致します。お待たせ致しました」

  トーマスじいさんは、丁寧に紅茶とケーキを並べてから退出した。

「わー!  ケーキがキラキラしているわ」

  私は、かわいらしいケーキ達に見とれて言った。

「ここのケーキは、女性に人気らしいな。母上もかわいいって言いながら食べていたよ。リリアーナ、好きなの選んでいいよ」

「いいの?  じゃあ、イチゴをたくさん使ったやつがいい」

  私が言うとクラウスは、イチゴケーキを取り分けてくれた。

  イチゴケーキは、甘くて美味しかった。
  クラウスが食べているフルーツタルトも美味しそうだ。
  私は、幸せな気分でケーキを食べた。

「リリアーナは、美味しそうに食べるな」

「ケーキが美味しからよ」

「気に入ってもらえて良かったよ」

「連れて来てくれてありがとう。クラウス」

  私の言葉にクラウスは、笑顔を見せた。

  ケーキの後の紅茶を楽しむ。
  すると、クラウスが急に真面目な顔をして話掛けてきた。

「リリアーナ……言いたくなかったら、無理して言わなくていいからな。あのさ、会ってなかった七日間でなんかあったか?  午前中は、悲しい顔をすることが、たまにあったから……」

「あの……あのね、クラウス」

  私は、頭の中で言葉を整理して伝えていく。

「うん」

「数日前にね。我が家の庭で、会ってしまったのよ。本当は、会いたくなかったんだけど……自分の家の中だし、致し方なかったと言うか……」

  クラウスは私が続きを話すまで、待ってくれた。

「庭園近くでね。エルーシアとルシアン様が仲良くされていて、私は関わりたくなかったから来た道を戻ろうと思って、二人がいない方向に歩いたんだけど……」

「けれどね。エルーシアが私に気づいて、話し掛けてきて……気づかない振りをするなんてひどいって。それから、お兄様と仲良くしたり、クラウス様の家にお兄様だけ誘って、エルーシアを誘わないのは、意地悪だって言われたの」

  クラウスの顔が、歪む。

「それから、ルシアン様に実の妹に意地悪する女と結婚しなくて良かったと……結婚する前に婚約が解消出来て良かったって、言われたわ」

「……」

  私が視線を上げると、クラウスから黒いオーラが出ていた。
  怖かったので、あわてて視線を下に戻す。

  こんな女……クラウスも嫌よね。
  元婚約者に結婚する前に婚約を解消出来て良かったなんて言われたんだもの。

「リリアーナ、ごめん。その時近くにいれなくて、守ってあげられなくて。それから話してくれてありがとう。伯爵家の中だと、俺は無力だから……だから、ルイス様にも相談をしよう」

  クラウスの言葉に私は、必死で止めた。

「やめて!  お兄様には、言わないで!  これ以上迷惑掛けられないわ」

「迷惑だなんて、ルイス様は思わないと思うよ」

「お願い……お願いよ。クラウス。私が嫌なの。お兄様を巻き込みたくないの。お願い」

「分かった。とにかく、ルシアンが来ている日は、出来るだけ部屋の中にいて。事前に来る日が分かったら、その日は公爵領に遊びにおいで」

  クラウスは優しい声で言った。  クラウスの優しさに私は、泣きそうになる。

「クラウスに、クラウスに話せて気持ちが楽になったわ。ありがとう」

「俺はいつでもリリアーナの味方だ。なんでも、話してくれてかまわない」

「ありがとう。クラウス!」

  クラウスも笑顔になり、軽く頭を撫でてくれた。

  カフェを出てリーベル公爵家に着いた。
  帰り際、伯爵家の馬車に乗る時にクラウスはさらっと言った。

「そういえばさ。言うタイミングを逃していつ言おうかと思っていたんだけどね。ピンク色のワンピース似合っているね。リリアーナかわいいよ」

  私は、顔を赤くしてそっぽ向いて言った。

「そういうことは、会ってすぐに言うものよ。まあ、ほめてくれてありがとう。では、失礼するわ」

  クラウスは、クスクス笑いながら見送ってくれた。
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