なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗

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  ハーヴェス伯爵家に着いた。

「エレーナお姉様、ジャック様、招待していただきありがとうございます」

  私が挨拶をすると、エレーナお姉様は笑顔で迎えてくれた。

「リリアーナ様、ルイス様、お越しいただきありがとうございます」

  私達の挨拶が終わると、お兄様とジャック様も挨拶をしていた。

「クラウスとユリアス様は、まだのようですね」

  私の質問に、エレーナお姉様が答えた。

「そうなの。リーベル領の方がプラメル領より、少しだけ遠いものね」

「そうですね」

「それまで、屋敷を案内するわ」

「ありがとうございます」

  その話を聞いていたジャック様が言った。

「ユリアス達が来るまで、ルイスと剣で試合をしてくるね」

「僕も屋敷の中を……」

  お兄様が隣でぼそっと何かを言った気がしたが、私が気に留めるより速く、エレーナお姉様の元気な声が聞こえて来た。

「分かりましたわ。お兄様」

  私はエレーナお姉様に着いて行く。ハーヴェス家の図書室は、我が家のよりは狭かったが色々な本が充実していた。

「わー!  すごいですね」

「そうかしら?  プラメル家の図書室の方が広いわ」

「でも、我が家に無い本がいっぱいです。これとか、これとか!」

「ふふ。ありがとう。リリアーナ様は、本がお好きなのね」

  エレーナお姉様は、嬉しそうに笑っていた。
  屋敷の中の後は、外も案内してくれた。

  ハーヴェス家の庭園は、プラメル家とも、リーベル家とも違った印象で楽しかった。

「綺麗な庭園ですね」

  私の言葉にエレーナお姉様が嬉しそうに答えた。

「ありがとう。花は、お母様が好きで、庭師とよく相談をしているわ」

  二人で庭園を歩いて見てまわった。

「エレーナ!  クラウス様達が来たよ」

  ジャック様の声は、よく通るわね。

「クラウス様、ユリアス様、お越しいただきありがとうございます」

  クラウスとユリアス様もエレーナお姉様に挨拶をする。

「では、お茶にしましょうか!  ホットハチミツミルクをご馳走するわ」

  エレーナお姉様の言葉に私は胸を弾ませた。

「わー!  楽しみにしていたんです」

  テラスで、みんなでお茶を飲む。
  お茶ではなく、ミルクだが。

「美味しい!  美味しいです。エレーナお姉様」

「そう?  喜んで貰えて良かったわ」

  エレーナは、優しい顔で微笑んだ。

  お兄様達も、ホットハチミツミルクが気に入ったようで、喜んで飲んでいた。

  クラウス、ミルクでお髭が出来ているわ。くまさんみたいで可愛いわね。

「リリアーナ、何?」

  クラウスは私の視線に気づいたようで聞いてきた。

「ミルクのお髭、お似合いよ」

  私は、ニヤニヤしながら言った。
  クラウスは、慌てて袖で拭く。

  もう!  クラウスはそういう所が、がさつなのよね。

  私は、クラウスにハンカチを渡した。

「ありがとうリリアーナ」

  クラウスは、私にお礼を言って口を拭く。そして、拭き終わったハンカチに目線を落として、急に動きが止まった。

「クラウス、どうしたの?」

「リリアーナ、これ何の刺繍?」

「ああそれね。バラよ。バラ」

「バラ……?」

  クラウスも失礼ね!

「バラよ!  サラには……赤いトゲトゲって、言われたけれど」

  私は、後ろで控えていたサラをちらっと見た。さっと、目を逸らされた。

「赤いトゲトゲって……」

  クラウスは、手で口を覆い声を漏らさないようにして笑っていた。

「クラウス。そんな事をしたって、笑っているの分かっているのよ!」

  私は、強めの口調で言う。

「ごめん、ごめんね。リリアーナが作ったんだろ?  素敵な……バラだな」

「もう、遅いのよ!  しょうがないでしょう。刺繍の練習は、ずっとさぼっていて、私のはじめての作品なんだから」

  クラウスは、不思議そうな顔をして尋ねて来た。

「はじめての作品?」

「そうよ。この上を縫ってみましょう!  とかの、刺繍練習はやったことあるけれど、自分で考えて何かを刺繍したのは、はじめてだったのよ」

  クラウスは、にっこり笑った。

「リリアーナ、ハンカチ貸してくれてありがとう。汚しちゃったしさ、このハンカチ俺にちょうだい?」

「そこは、洗って返すね。って言う所でしょ?」

「嫌だ、返したくない。俺にくれよ」

  子どもじゃないんだから……いや、クラウスは、私と同じ十四歳。まだ、子どもだったわね。

「分かったわ、あげるわ」

  それを聞き、クラウスはとっても嬉しそうに笑った。

「ありがとう、リリアーナ!  大切にするな」

  そのやり取りを見ていた。エレーナお姉様は、クスクスとかわいく笑っていた。

  ジャック様とユリアス様は、二人で話込んでいる。

  お兄様もこっちを見て微笑んでいた。
  そして……私は思い出したのだった。隊長としての任務を。
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