なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗

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「お兄様ったら、遅いわねー」

「宿屋は歩いて行ける距離ですが、少し離れていますからね」

  私の独り言にサラが答えてくれた。そしてそのまま話を続けた。

「お嬢様。そろそろ、寝られてはいかがでしょう」

「嫌よ!  お兄様の結果を聞くまでは絶対に寝ないわ」

  そう言うと私は、廊下の音がよく聞こえるように、自室の扉の前に座り込んだ。

「お嬢様……椅子をお持ち致しますので、せめてそちらにお掛け下さい」

  サラは飽きれながらも、椅子を用意してくれた。私は扉とにらめっこをしてずっと待つ。

  足音が聞こえて来たので、慌てて扉を開けた。

「お兄様、おかえりなさい」

  そう言った私にお兄様は驚いていたが、すぐに笑顔になって答えてくれた。

「ただいま、リリアーナ」

「お兄様、今から少しお話をしたいの。私にお話をしてくれるでしょ?」

  私の質問にお兄様は、優しく微笑んでから返事をして入室をした。

「お兄様、どちらに行かれていたのですか」

「宿屋にエレーナ嬢に会いに行っていたよ」

「かわいい受付のミーナちゃんがいる宿屋は、壁が厚いらしいですから、お話をするには最適ですね」

  お兄様は少し驚いた顔をしていたが、そのまま話を続ける。

「そうだね。リリアーナは、僕が何を話に行ったのか分かったんだね」

「ええ、もちろんよ。それで、どうだったの?」

  私はお兄様の返事を待った。期待を込めて。

「付き合うことになったよ。お互いの両親には、後日報告に行くよ」

「まあ!  そうなの!  私、すごく嬉しいわ。ふふ。エレーナお姉様が好きだった人はお兄様だったのね。エレーナお姉様がいつか、エレーナお義姉様になるのね」

「そうなれるように。二人で頑張るよ」

  そう言ったお兄様は、少し照れていた。

  私は、お兄様の幸せを自分のことのように喜んだ。

  そして……

  私は、怪しい笑みを浮かべてお兄様に話し掛ける。

「お兄様、知っています?  私、少し前に大変勉強になる言葉を覚えましたのよ」

  お兄様は私の笑みに気づかずに、問いかけた。

「どんな言葉?」

「『たとえ、婚約者でも夜に異性の部屋を訪ねては、いけません』ですって」

  私は、不適に笑って言った。
  お兄様は、少し青い顔をする。

「申し訳ありませんでした。以後、気を付けます」

「ふふふ。お互いに気を付けましょうね。では、おやすみなさい。お幸せに」

「ああ。おやすみ、リリアーナ」

  お兄様は入って来た時よりも、静かに私の部屋を退出した。


  愛しあう二人の仲を引き裂いた罪は重いのよ!

  ハーヴェス領の宿屋で起こった時の事を、お兄様に言い返す事が出来た私は、やっと満足をしたのだった。
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