なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗

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  私はクラウスを見送ったその足で、エルーシアの部屋に向かった。

  ノックをしてから入室すると、エルーシアが椅子に座って天井を見ていた。

  私はエルーシアに近寄った。
  それでも、エルーシアは私を視界に入れようとはしなかった。

「エルーシア。ごめんなさい」

  私はエルーシアに向かって深く頭を下げた。そこで、はじめてエルーシアが私の方を向いた。

「何で……お姉様が謝るの……?」

「私、気が付いていたの。エルーシアがルシアン様との事で苦しんでいた事に。なのに私は、あなたに優しい言葉を掛けなかった。それから、お兄様をエルーシアに近づかせないように動いた。だからあなたの心は、ここまで追い込まれた。私があなたを死に追い込んだものよ。本当にごめんなさい」

  私の言葉を聞いたエルーシアは、少しだけ驚いた顔をした。

「なんで、なんで、お姉様が謝るのよ。私、今までたくさんひどい事をした。借りたものを返さなかった。最初は、本当に欲しかった……けど……お姉様の物が欲しいから、ずっと続けていた訳じゃない。お姉様が落ち込んでいると、お母様が私だけを見てくれたから。その事に私は気が付いたから。それから、ひどい言葉もたくさん言った。幸せそうなお姉様がうらやましかったし、悔しかったから。あと、ルシアン様の事も。謝らなければならないのは、私なの」

  エルーシアはとても悲しいそうな顔をして話を続けた。

「お姉様……今までごめんなさい。意地悪をして、ひどい事をして、ひどい言葉をぶつけてごめんなさい」

  そこまで言うとエルーシアは、泣き出した。
  私は、エルーシアを抱きしめて一緒に泣いた。
  二人の涙が枯れた頃に私は、エルーシアに話し掛けた。

「エルーシア……どんなに辛い事があっても、自ら命を絶ってはいけないわ」

「私、ルシアン様の前で死んでやろうと思ったの。そうしたら、私の事を一生忘れられないでしょ?」

「あんなやつの為に、命を棄ててはいけないわ。エルーシアは、まだ十四歳なのよ。これからいくらでも幸せになれるの。何度だってやり直せるのよ」

  エルーシアはまた悲しそうな顔をしてから、しっかりと私の目を見て話し掛けてきた。

「ごめんなさい。もう、死ぬのはやめるわ。ありがとうお姉様。今まで本当にごめんなさい」

「私達家族は、これからやり直すのよ。お兄様もお母様もそれから、私もエルーシアの味方よ」

  エルーシアは、不思議そうな顔をして聞いてきた。

「お父様は?」

「お父様はたぶん無理ね。変わるとしたら、お母様の愛情かしらね。私は無理だと思っているから、必要最低限関わりたくないの」

  エルーシアは私の言っている意味が、さっぱり分からないと言った顔をしていた。

「エルーシア……あなたを救えなくて本当にごめんなさい」

「私が死にたくなった原因は、お姉様ではないわ。ルシアン様よ」

「ありがとう。エルーシア」

  エルーシアの瞳に、光が戻ってきた。

「それに、お姉様は私の事を助けてくれたわ。短剣が首に刺さる前に止めてくれたでしょ?」

「エルーシア……覚えていないの?」

「何を?」

  エルーシアは、不思議そうな顔をして聞いて来た。

「何でもないわ。エルーシアが助かって、本当に良かったわ」

「ありがとう。お姉様」

  私とエルーシアの間で少しずつだが、心のしこりが取れて来た。
  エルーシアと昔のように戻れるには、時間が掛かると思う。
  けれど、私は彼女との関係を、昔のように戻れるように頑張って行きたいと思う。

  それから、エルーシアが今まで何故、私の物を奪ってきたのか、理由を聞いて分かった。この家の人間は、みんな愛に飢えていたのだ。
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