両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚

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「おはようございます。お父様。お母様。」

「ああ。おはよう。エミリア。」

「エミリア。おはよう。」

 翌日の朝、食堂に向かうとすでにお父様もお母様も席についており神妙な顔をしていた。
 エミリアはまだ来ていない。
 エミリアは良く寝坊をすることがあるので、特に気にせず席に着く。

「それにしても、困ったことになったわね……。」

「ああ。そうだな……。」

 お父様もお母様も大きなため息をついた。
 あまりそのような姿を見せないお父様とお母様だけに、なにかあったのだろうかと私は首を傾げた。
 まさか、昨日のオフィーリアが関係しているのだろうか。
 ジュドー殿下の婚約者候補の私が羨ましいとオフィーリアが言っていたことが。あの後、お父様とお母様におねだりしに行ったみたいだけれども。
 もしかして、お父様とお母様は私ではなくオフィーリアをジュドー殿下の婚約者候補にするために私をどう説得するか悩んでいるのだろうか。
 
「なにかあったのですか?お父様。お母様。先ほどから浮かない顔をしているようですが……。」

 私の前でも浮かない表情をして取り繕っておらず、さらに私に聞こえるように「困った……。」と言っているので、きっと私に聞いてほしいのではないかと思って二人に問いかけた。
 私に聞かれたくないときは二人は私がいないところで話をするのが常なのだ。
 
「エミリア。困ったことになったのよ。」

「ああ……さすがにこの要求には私たちは応えることができない。エミリアからも諦めるように言ってくれないだろうか。」

 やはり二人とも私に聞いて欲しかったようだ。
 
「それで、なにがあったのでしょうか。」

 きっと、オフィーリアのことだな、と大体の予想はつく。
 
「オフィーリアがジュドー殿下の婚約者になりたいと言い出したのよ。」

「昨日、ジュドー殿下が来ていただろう。どうやらオフィーリアはジュドー殿下のことを気にいってしまったようなのだ。」

「……そうでしたか。それはつまり、私とオフィーリアの立場を入れ替えたいと……そういうことでしょうか?」

 オフィーリアに甘いお父様とお母様のことだ。
 きっと、オフィーリアが望むならと、ジュドー殿下の婚約者候補を私からオフィーリアに変更する予定なのだろう。
 だが、私の予想はお父様とお母様に即座に否定された。

「いや。そうではない。」

「オフィーリアには皇太子妃はつとまらないわ。あなたと違ってオフィーリアは甘やかして育ててしまったもの。あの子に皇太子妃なんて重役が務まるはずがないわ。」

「ああ。オフィーリアには荷が重すぎる。」

 お父様もお母様も以外にもオフィーリアが皇太子妃候補になるのは反対のようだ。
 確かに甘やかされて育ったオフィーリアには、皇太子妃にかかる重圧に耐えることはできないだろう。それに、お世辞にもオフィーリアは勉学については優秀とは言えなかった。
 これも甘やかされて育った影響なのか、本来の素質なのか勉学はおろそかにしている感がある。
 
「……そうですわね。オフィーリアには伯爵家あたりに嫁いでもらった方があっているでしょう。」

「ええ。私も同じ意見よ。エレノア。オフィーリアには苦労せずに過ごしてほしいのよ。だから、皇太子妃なんてもってのほかよ。」

「ああ。そうだな。オフィーリアには貴族でなくとも、裕福な家に嫁いでもらっても良いと思っている。あの子には余計な心労はかけたくないしな。」

「ええ。あの子が耐えられるとは思わないもの。」

 お父様とお母様の言葉を聞いていると、なぜか私の心にグサッと刺さるものがある。本人たちはそう思ってはいないのかもしれないけれど。
 お父様とお母様の話しぶりからすると、私にはいくら心労をかけても良いと、皇太子妃の重圧に耐えろと言っているように思えてしまう。
 オフィーリアはお父様とお母様からとても愛されていて、私は政治の駒でしかないのだと思い知らされたような気がした。
 
 

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