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しおりを挟む「あら、エレノア様。ようこそいらっしゃいましたわ。こちらにいらっしゃって。」
「ソフィーナ様。本日はお招きくださりありがとうございます。」
ジュドー様がオールフォーワン侯爵家にいらした翌日に、私とおなじ皇太子妃候補のひとりであるソフィーナ・ランゲスト侯爵令嬢からお茶会の招待状が届いた。
正直ソフィーナ様とは交流がなかったため、突然のお茶会への招待状に驚いた。
だが、正当な理由もなくお断りするのも失礼にあたるため、お茶会への招待に応じて、こうしてランゲスト侯爵家に一人やってきた。
案内されたのはソフィーナ様が花を育てているという温室だ。
色とりどりの鮮やかな花々が咲き乱れる先に、ティースペースが用意されていた。
ソフィーナ様は椅子から立ち上がると私を席に案内した。
私はソフィーナ様に招待していただいたお礼を告げて、椅子に座った。
「今日は、アニス様にもお声がけしておりますの。もうすぐいらっしゃると思いますわ。」
アニス様というのは、オールラウンド侯爵家の令嬢であり、同じく皇太子妃候補の一人である。
私はアニス様とも交流がないので人となりはよくわからない。
「本日は皇太子妃候補同士ゆっくりと交流を深めたいと思ったから声をかけさせてもらったわ。来てくださってありがとうございます。エレノア様。」
ソフィーナ様はそう言って柔らかな笑みを浮かべた。
ソフィーナ様は雪のように白い肌に、色素の薄い金髪が特徴的だ。まるで、雪の精のように溶けてしまいそうな儚げな雰囲気を持っている。
「すまない。待たせたかい?」
私が到着してから10分ほど経った頃に、スラっとした高身長のエキゾチックな女性がやってきた。
どうやら、この女性がアニス様のようだ。
「お初にお目にかかります。エレノア・オールフォーワンと申します。」
「ああ。私はアニス・オールラウンドだ。以後よろしく。」
アニス様は鋭い視線と共に簡単な自己紹介をするとすぐに席についた。
「アニス様とはお久しぶりですわね。先日はお茶会に呼んでくださりありがとうございました。」
「お茶会のおりにソフィーナ様からいただいた異国の茶葉は実に芳醇な味わいで両親もとても気に入っていたよ。改めてお礼を言う。ありがとう。」
「まあ、いいのですわ。とても美味しいお茶だったからぜひアニス様にも味わっていただきたくて贈らせていただいたものです。お気に召してくださったようでありがとうございます。
「ソフィーナ様が選ぶ品々はいつもはずれがない。異国の品を選ぶのは大変だろうに。」
「そんなことありませんわ。異国の品を取り寄せるのは、私の趣味の一つですもの。私が好ましく思った物を気に入ってくださるのが私にとってはなによりも嬉しいものです。」
「そう言ってくれるとありがたい。今度隣国のアップルペーに旅行に行くことになったんだ。ソフィーナ様が気に入りそうな品をお土産として買ってくると約束しよう。」
「まあ。ありがとうございます。アップルペーはリンゴの産地でしたわよね。私はアップルペーには行ったことがなくて。外国に頻繁に視察に行かれるアニス様のことがとても羨ましいわ。」
「視察なんてとんでもない。私はただ遊びに行っているだけだよ。ソフィーナ様こそ、外国に行ったことがないと言っているが、私よりも各国のことを良く知っている。その知識量と知識欲には完敗だよ。」
「ふふふ。異国の商人と情報交換をしているのよ。商人はあちこちを旅しているからいろいろな話を聞くことができて楽しいわ。アニス様こそ、いろんな国に行かれていて語学も堪能なのでしょう?外国に行った際にはその国の言葉で話されていると伺っているわ。」
「おや。ソフィーナ様には隠し事ができませんね。それもソフィーナ様御用達の商人からの情報ですか?」
「ええ。そうよ。どの商人もアニス様のことをほめていらっしゃったわ。」
3人で始まったお茶会は気づけばアニス様とソフィーナ様の仲の良さを私にアピールしているような場になってしまっていた。
アニス様とソフィーナ様は以前から交流があるようで、二人はとても仲が良いようだ。
そして二人とも外国に対する知識が豊富ということがみてとれた。
私は小さい頃から家での皇太子妃としての教育ばかりで、二人のような知識は持っていない。どれも教科書で読んだ知識しか私は持ち合わせていなかったことに気が付いた。
外国語も3か国語はマスターした。
けれど、それは国内の教師が教えてくれたもので、マスターしたと言っても実際にマスターした国の人と直接会話をしたこともない。
各国の特産品を教科書でならったが、実際に見たことも食べたこともない私は中途半端な人間に思えた。
「あら、私ったらアニス様とばかり喋っていてごめんなさいね。エレノア様はご趣味とかありますの?」
ソフィーナ様は私が黙って二人の話に耳を傾けていたことに気づいたようで、気づかわし気にそう問いかけてきた。隣にいるアニス様はソフィーナ様との会話が途切れたからか、私のことをするどい目つきで睨んでいるように思えた。
「いえ、私は普段勉強しかしてこなかったので。趣味と言えば勉強になるのかもしれませんわ。」
ソフィーナ様に言われて、そういえば私の趣味はなんだったのだろうと改めて考えた。
考えたけれども、私には趣味と言えるものがみつからなかった。
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