19 / 28
19
しおりを挟むオフィーリアと一緒の観劇は今までにない高揚を私にもたらせた。
自分が自分でない世界に旅立ったように新鮮な気持ちになれた。
そして、私は考える。
今のまま、お父様とお母様が言う通りに勉強だけして、皇太子妃になってもいいものなのか、と。
私は本当にそれでいいのかと自問自答をする。
「エレノアっ!あなた、今日、皇太子妃教育を放り出して遊びに行ったそうね!あなたは一体なにを考えているの!?皇太子妃選定までもう間もないと言うのに!!ここで、他の候補者たちと差をつけないとダメではないの!!」
自分の今後について一人自室で考え込んでいるとノックもなしにお母様が部屋に怒鳴り込んできた。
金切声で口早に捲し立てるお母様の言葉に私は身をすくめた。
「いくら、可愛いオフィーリアがあなたを誘ったとしても、あなたはちゃんとに断らないといけないわ!オフィーリアとの観劇だったら私がいくらでも時間を作って行くというのに。なにもエレノアを誘わなくても……。エレノアもエレノアも。なぜ、断らないの!あなたには次期皇太子妃になる自覚がないのかしら!?」
「……お母様。お言葉ですが、先日のお茶会ではソフィーナ様もアリス様も皇太子妃教育だけではなく、様々な趣味をお持ちでした。その趣味を皇太子妃としてどう活かしていけるかを模索しておりました。本当に皇太子妃教育だけが正しいのでしょうか?」
お母様に逆らったことなどない。いつもお母様の言う通りに、お父様に敷かれたレールをただ突き進んでいた。
お母様に反抗するのも勇気がいったが、ここでまたお母様の言いなりになってしまったら、私はもう変われない気がした。
震えながらもお母様に問いかければお母様は一瞬面食らった顔をした。
だが、すぐに気を取り直したのか、目を吊り上げる。
「あなたは私の言うとおりにすればいいの!余計なことなど考える必要はないわ!!」
「いいえ。お母様。ソフィーナ様もアリス様も活き活きとしておりました。私もそうなりたいのです。自らの道を自分で選択したいのです。」
パシッ!!
そこまで言うとお母様からの平手打ちが飛んできた。
私はお母様の力に負けて、その場にバランスを崩して倒れてしまった。
「なぜ、あなたはそんなに我が儘を言うのですかっ!!いいですか、あなたが皇太子妃になることはあなたが産まれた時から決まっているのです!!あなたがなにを望んだとしてもあなたが皇太子妃になることは決定事項なのよ!!」
「……皇太子妃にならなければならないことはわかっております。ですが!皇太子妃教育だけでなく、外に出て直接世間を見ることも大事なのではないでしょうか!」
「それで?観劇に行きたいとあなたはオフィーリアに我が儘を言ったのね?そういうことね?」
「外の世界を見てみたかったのです!」
ここで、オフィーリアに強引に観劇に連れ出されたとは言えない。もし、言ったところでお母様は私の言葉など信じないのだから。
どうせ言ったところで私がオフィーリアを誘ったと言うのに違いないのだから。
「外の世界など見なくても結構!あなたは皇太子妃になることだけを考えていれば良いのです!!」
「勉強だけしていれば正しい皇太子妃になれるとは思いません!」
だんだんとヒートアップしていく私とお母様の喧嘩。そこに、お父様がやってきた。
「エレノア!おまえはまた我が儘を言っているのか!!」
お父様も怒り心頭のようで私に近づくなり胸倉をつかんでくる。あまりの迫力に私はぎゅっと目を瞑った。
「お父さまっ!お母さまっ!!エレノアお姉さまに何をしているのですかっ!?」
そこに、騒ぎを聞きつけたオフィーリアもやってきた。
お父様とお母様はオフィーリアの声を確認すると、一瞬だけオフィーリアの方に視線を向けた。けれど、その視線はすぐに私に戻される。
「エレノアが我が儘ばかり言って私たちを困らせるのが悪い!!皇太子妃教育にどれだけ金がかかっていると思っているんだっ!!」
「私は外出用のドレスを一着しか持っていませんっ!!」
確かに教育にはお金をかけてもらっているのだろう。
でも、オフィーリアのように潤沢に与えられるお小遣いも、外出用のドレスも私には与えられていない。
「それがなんだっ!おまえは外にでないから外出用のドレスなんぞ一着もあれば十分だろう!!我が儘を言うなっ!!」
「お茶会に毎回同じドレスで行くのは相手に失礼だと聞きました。それに、同じドレスばかり着ているのは侯爵家が資金繰りに困っていると噂される要因となります。せめて何着か外出用のドレスを……。」
「ええいっ!!うるさい!!おまえは、皇太子妃になるんだから皇太子妃になったら税金で贅沢をすれば良いではないかっ!!」
私が何を言ってもお父様とお母様には伝わらないようです。
そして最後には、
「もういい!おまえがそんなに我が儘ばかりを言うのならばこの家から出ていけっ!!おまえは侯爵家の人間ではないわっ!!」
と、お父様に啖呵を切られました。
1,055
あなたにおすすめの小説
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。
婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった
神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》
「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。
全3話完結
余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。
特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。
ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。
毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。
診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。
もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。
一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは…
※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いいたします。
他サイトでも同時投稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる