悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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本編

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私の急な発言に父はびっくりして目を丸くした。

「ど、どうしたんだい?昨日まで高等魔術学院へ入学するのを楽しみにしていたではないか?なにがあったんだい?」

父は心配するように私の肩をつかんで、私の顔を覗きこんだ。

「私、高等魔術学院で精霊の卵を貰うのですが、邪竜が産まれてきてしまうのです。そうなれば、お父様もお母様も、この家に尽くしてくださっている使用人のみんなも、路頭に迷ってしまいます。それならば、わたしが卵を受け取らないように、高等魔術学院に行かなければいいと判断したのです。」

「ちょっと待ってエメロード。どうして、邪竜が産まれてくるとわかるんだい?それに、だいたいは火の精霊や水の精霊など生活を助けてくれる精霊が産まれてくるだけだよ。邪竜だなんて、そんな存在が産まれたという記録は残っていないよ。」

確かにお父様の言うとおりだ。

今まで邪竜どころか普通の竜ですら産まれてきたことはないのだ。

精霊と言っても産まれてくるのは生活に役立つのがやっとな下級精霊のみ。

戦闘力を持つような上級精霊などまず産まれてはこない。

仮に産まれてきたとしても、100年に一度あるかないかの出来事だ。

ましてや、邪竜が産まれたという記録などはまったく残っていない。

だから、父が言うように考えすぎだというのも一理ある。

だが、ここが乙女ゲームの世界ならば私は邪竜の卵を育ててしまうのだ。

そして、世界が混乱することになる。

「だって、邪竜が産まれてしまうんですもの。私、未来を知っているの。」

どうか、邪竜が産まれてこないように、私を高等魔術学院に入学させないようにと父に懇願する。

しかし、私に甘い父だがこの件に関しては首を縦に振ることはなかった。

「エメロード。大丈夫だから。そんなに心配するようなことではないよ。それに卵は育てた者の感性を吸収して育つのだよ。エメロードはとっても優しい良い子だ。エメロードが邪竜を育てたところで、その邪竜はとても良い子になるだろう。もしかしたら同じ竜でも聖竜かもしれないよ。」

「でも!!」

「エメロード。エメロードが人の道を踏み外そうとしているとわかったら、私たちが止めてあげるから安心して暮らしなさい。エメロードがエメロードである限り邪竜など産まれてこないのだから。」

父の言葉にそれ以上反論することはできなかった。

こうして父を説得することは失敗に終わったのだった。

まあ、邪竜が産まれてくるなど誰にも信じられない話だと思うから仕方がないとは思うけれども。

父がダメなら母はどうだろうか。

私は次に母にお願いすることにした。
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