悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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本編

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アクアさんは、ランティス様に男の人が好きではないと言い切った。

そうして、私の腕をつかむと、

「行きましょう。」

「えっ?えっ?」

私の腕を引いてアクアさんはランティス様の前を通りすぎる。

私は思わずアクアさんとランティス様に交互に見やる。

心情的には驚きすぎてどうしていいかわからない状態だ。

まさか、アクアさんがこうもキッパリとランティス様を避けるとは思わなかった。

それは私たちを遠巻きに見ていた高等魔術学院の生徒たちも同じようで、みんな口と目をあんぐりと開けてアクアさんのことを見つめていた。

良くも悪くも入学早々私たちは悪目立ちをしたことは言うまでもない。

この一件で私たちの名前は学院中に知れわたることとなった。

「アクアさん。あのお方はランティス様といって、パインフィールド侯爵家のご子息です。無下にしていいお方ではありませんよ。」

「あら。でも、エメロードちゃんは嫌がっているように見えたわ。私、ああいう人って苦手なのよ。」

「ええっとぉ。それは、ランティス様は私の婚約者なので、それなのにも関わらずアクアさんに粉をかけようとしたのがなんというか・・・私のプライドが・・・。」

ランティス様を嫌がっていたわけではなくて、婚約者が他の女性・・・この場合はアクアさんを口説いていたのが気にくわなかったんです。

と、アクアさんに素直に告げる。

なんだか、このアクアさんは乙女ゲームのヒロインとは違ってさっぱりとした性格をしているように見える。

なので、私も包み隠さず自分の思ったことを伝えた方がいいと思ったのだ。

「あら。エメロードちゃんの婚約者だったの!?知らなかったわ。ごめんなさいね。でも、それなら最悪ね。自分の婚約者の目の前で私を口説こうとするなんて。結婚したら浮気をされるだけよ。」

「え、ええ。」

アクアさんはランティス様が私の婚約者だと知って、激おこ状態になった。

アクアさんの中で、ランティス様の株が急降下したようである。

貴族の結婚というものは、家同士の繋がりを強めるためのもので、当人の意思がどうであろうと関係ない。

そのため、貴族社会では浮気や愛人を囲うことは日常茶飯事なのだ。

まあ、うちの両親はすっごく仲がいいけど。

多くの貴族家庭では家庭内が冷えきっていることも多いと聞く。

だから、浮気は覚悟の上だったりする。

気分はよくはないけれども。

「ですが、ランティス様はひじょうにモテるお方です。そのお方が私のような伯爵家の娘と婚約を結んだのです。浮気は仕方のないことですわ。」

そう言って私は少しだけ寂しそうに微笑んだ。
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