悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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「ああ、そう泣きそうな顔をしないでおくれ。綺麗なお顔が台無しだよ、シルヴィア嬢。泣いているシルヴィア嬢も可愛いが、私は可愛く笑っている女性が好きなんだ。どうかわかっておくれ。私はエメロード嬢と婚約しているのだから、シルヴィア嬢とは婚約することができないんだよ。この国では一夫一妻制なんだ。」

って、ランティス様。

その発言は、取りようによっては私という婚約者の存在が邪魔のように取ることができますが・・・。

本当はシルヴィアさんと婚約したいけれど、すでに私と婚約しているからシルヴィアさんとは婚約できないということですか。

そういう意味にとることが可能です。

特に、その前のシルヴィアさんに向けた言葉がその可能性を大きくしているような気がします。

私でもそう捉えてしまうのだから、きっとランティス様をお好きなシルヴィア様はそう思っているような気がします。

ちらりとシルヴィア様の表情を伺えば、頬を赤くして潤んだ目でランティス様を見つめています。

やはり。

今のシルヴィア様の中での私の立ち位置は、ランティス様とシルヴィア様の中を邪魔する存在ということになっているような気がします。

障害がある恋ほど燃えるといいますしね。

「ランティス様。私は・・・。」

「シルヴィア嬢。今はまだ入学式の途中だ。あとでゆっくりと話をしよう。」

シルヴィアさんがランティス様に何かを告げようとするが、それをあっさりとランティス様が遮った。

ランティス様ってばシルヴィアさんをどうしたいんだろうか。

ランティス様ったらシルヴィアさんを突き放したり持ち上げたり忙しいな。

いまいちランティス様の考えていることがよくわからない。

ただ、これ以上続けると醜聞にもなりえるので、入学式をさっさと終わらせることも大事だろう。

後は、入学生が一人ずつ卵を与えられるだけで入学式は終わりだしね。

「それでは入学制の皆さん。一列に並んで壇上へと一人ずつ上がって来てください。これから皆さんには、精霊の卵を一つずつお渡しいたします。精霊の卵を大事に育て上げてください。」

ランティス様がそう言うと、一人ずつ入学生が壇上に上がり始めた。

私の順番はなぜか一番最後だ。

なにやら魔力の少ない順に呼ばれているらしい。

それは卵を育てるにあたり公平性を期すためとのこと。

実は卵にも意思があって自分を育てるのに相応しい相手を選ぶようだ。

ちなみに、どでかい四角い箱の中に精霊の卵がいっぱい入っている。

そこに入学生は手を突っ込んで自分が育てる精霊の卵を一個だけ取り出すのだ。

箱は透明になってはいないので、どんな卵が当たるかは卵を取り出してみないとわからないつくりとなっている。

だいたいはピンク色の卵だったり水色の卵だったり、緑色の卵だったりする。

ピンク色の卵は火の精霊が、水色の卵は水の精霊が、緑色の卵は木の精霊が産まれてくるという。

その他にも卵の色は存在するが、メジャーなのが今あげた三つのようだ。

さて、私は何色の卵かな。

邪竜じゃなきゃなんでもいいや。

 

 

 

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