悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

文字の大きさ
22 / 70
本編

21

しおりを挟む
 

高等魔術学院の日々は何事もなく過ぎていった。

まあ、黒い卵が縁起が悪いということで、友達もアクアさん以外できなかったんだけどね。

シルヴィアさんとは通常通りである。

塩辛いシルヴィアさんの嫌味を聞かないふりをしてやり過ごしている。

でも、だんだんと腹に据えかねてきてはいるけれども。

でも、私にはアクアさんがいるから大丈夫。

うん。大丈夫。

トリードット先生曰く、卵は無事に育っているとのこと。

まあ、トリードット先生は卵を見ているだけではどんな精霊が孵るのかわからないから今のところはいつも通り心穏やかに過ごしなさいと言われている。

心の安定が卵の安定にも繋がるとか。

卵はだいたい2~3ヶ月で孵ると言われている。

それまでの間に学院性たちは、心の安定を守るために道徳の授業と基礎的な魔術の心得を学ぶ。

魔術を本格的に学ぶのはパートナーとなる精霊が卵から孵ってからになるのだ。

「あら、黒い卵をお持ちの方はまだ頑張っているんですのね。そろそろ卵を放り出してご実家に帰った方がいいのではなくて?その黒い卵があるから、このクラスのみんなの顔色が悪いのだとわかっているのかしら?」

シルヴィアさんの嫌味もいつものことだ。

アクアさんが私の側にいない時を見計らって嫌がらせという名の忠告にやってくる。

実力行使に出ないからまだいいけれども、これが物理的に嫌がらせを受けたりするとお父様とお母様のところにも通達が行ってしまう。お父様とお母様には私は魔術学院で毎日楽しく頑張っていると伝えているのに。

いつものことと、シルヴィアさんの言葉を聞かなかったふりをしてやり過ごす。

でも、今日はいつもと違った。

「ふんっ。いつもすました顔でつまらないわ。あのアクアって子も何をしても澄ましているんだもの。つまらないったらないわ。」

「!?アクアさんに何をしたのですかっ!!?」

いつもはアクアさんについて何も言わないシルヴィアさんがアクアさんについて語ったのだ。

それも、シルヴィアさんがアクアさんに何かをしているような言い方だ。

嫌な予感がする。

アクアさんに何が起こっているのだろうか。

私、ずっと知らなかった。

アクアさんがシルヴィアさんになにかをされているだなんて。

気づかなかった。

「あら。いつも一緒にいるのに気づいてなかったの。鈍感なのね。真っ黒な卵を持っているあなたと仲がいいのがいけないのよ。それに、ランティス様のお心も独り占めしているようだし。見の程知らずなのよ。」

「アクアさんに何をしたのですかっ!?」

もったいぶった言い方のシルヴィアさんに思わず平常心を忘れて声を荒げてしまう。

「ふふっ。やっと本性を出したわね。とっても怖いお顔ですこと。とても貴族の令嬢とは思えない歪んだお顔ですわね。貴族の令嬢たるもの、常に優雅に美しくを心掛けるものでしてよ。そんなこともできない貴女はランティス様に相応しくはありませんわ。」

「そんなこと関係ないわ!早くアクアさんのことを教えてっ!!」

シルヴィアさんの言葉に平常心を失った私は、淑女らしからぬ大声で叫んでいた。

 

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だから知っているヒロインが幸せになれる条件【8/26完結】

音無砂月
ファンタジー
※ストーリーを全て書き上げた上で予約公開にしています。その為、タイトルには【完結】と入れさせていただいています。 1日1話更新します。 事故で死んで気が付いたら乙女ゲームの悪役令嬢リスティルに転生していた。 バッドエンドは何としてでも回避したいリスティルだけど、攻略対象者であるレオンはなぜかシスコンになっているし、ヒロインのメロディは自分の強運さを過信して傲慢になっているし。 なんだか、みんなゲームとキャラが違い過ぎ。こんなので本当にバッドエンドを回避できるのかしら。

【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました

Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。 男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。 卒業パーティーの2日前。 私を呼び出した婚約者の隣には 彼の『真実の愛のお相手』がいて、 私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。 彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。 わかりました! いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを かまして見せましょう! そして……その結果。 何故、私が事故物件に認定されてしまうの! ※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。 チートな能力などは出現しません。 他サイトにて公開中 どうぞよろしくお願い致します!

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です

宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。 若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。 若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。 王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。 そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。 これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。 国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。 男爵令嬢の教育はいかに! 中世ヨーロッパ風のお話です。

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

婚約破棄は誰が為の

瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。 宣言した王太子は気付いていなかった。 この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを…… 10話程度の予定。1話約千文字です 10/9日HOTランキング5位 10/10HOTランキング1位になりました! ありがとうございます!!

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...