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本編
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しおりを挟むトリードット先生によって、アクアさんが治癒室に運びこまれてきた。
アクアさんは意識がないのか、トリードット先生の腕の中でぐったりとしている。
「アクアさんっ!!」
「まあ!早くそこのベッドに寝かせてあげてちょうだいな。」
私はアクアさんにかけより顔を覗き込んだ。
アクアさんの目は固く瞑られている。
ジェリードット先生も緊迫した声で治癒室にあるベッドにアクアさんを寝かせるようにと指示する。
トリードット先生は、年齢に似合わず素早い動きでアクアさんをベッドに横たえた。
「今から彼女を診察します。」
そう言うと真剣な目をして、アクアさんを見つめた。
だが、それに対してトリードット先生は待ったをかけた。
「待ってくれ。その前にやることがあるのじゃ。」
何故だろう。
アクアさんが意識のない状態だというのに、それ以上に重要なことがあるのだろうか。
焦る気持ちを抑えてトリードット先生を見る。
だが、ジェリードット先生はトリードット先生が言いたいことに気づいたのか「ハッ」とした表情をした。
「そうね。そうだったわね。私としたことがすっかり忘れていましたわ。最近はなかったから安心していたのに・・・。」
そう言ってジェリードット先生は綺麗に整えられた眉をひそめた。
「あの・・・。なにが・・・?」
私だけ置いてけぼりな気がする。
そう思って、先生方に尋ねた。
「精霊の卵じゃよ。」
トリードット先生が重々しい声で答えた。
「精霊の卵・・・?この卵が危険なの?」
私は胸にしまってある精霊の卵を服の上からギュッと掴んだ。
精霊の卵は直径5センチほどの丸い小さな卵だ。
生命の息遣いが感じられほんのりと熱を帯びているのが特徴だ。
まさか、精霊の卵が悪さをするだなんて思えない。
しかも、アクアさんの意識を奪うほどの悪さをするなど到底思えない。
「卵自体に危険性はないのぉ。ただ育てる者によって危険にもなる。」
「まさかっ!アクアさんの育てた卵が危険ってことですかっ!!?そんなっ!アクアさんはとっても優しい人です。そんなアクアさんが育てている卵が危険なはずはありませんっ!」
私はそう言って、トリードット先生に詰め寄った。
「まあまあ。心配する気持ちも痛いほどわかるがの。だが、アクア嬢が悪いのではない。アクアさんの卵に誰かが危害を加えようとしたのじゃ。卵は無意識に自分を守ろうとするでの。近くにあった魔力を自分を守る盾として使ったのじゃ。」
「アクアさんの精霊の卵が危険にさらされた・・・?」
トリードット先生は静かに教えてくれた。
精霊の卵は危険に陥ると周囲の魔力を取り込む性質があるのだとか。
でも、精霊の卵は貴重な卵なのだ。
その卵に危害を加えるなど通常は考えられないことなのだ。
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