悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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本編

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『トリードット先生っ!トリードット先生っ!至急、職員棟へいらしてくださいっ!!』

緊迫した声が治癒室に響き渡った。

声からして、どうやらジェリードット先生のようだ。

とても焦っていることが声に表れている。

ジェリードット先生は、シルヴィアさんを探しに行ったはずだが何があったのだろうか。

もしかして、もう邪竜が生まれてしまっていたとか・・・?

「何があったのじゃ!!」

トリードット先生も緊迫した声で叫んだ。

だが、その後ジェリードット先生からの返答はなかった。

「くそっ!なにがあったというのじゃ!」

トリードット先生は慌てたように叫ぶと、治癒室からスッと消えた。

どうやら転移したようである。

残されたアクアさんと私は互いに顔を見合わせた。

そして、どちらともなく小さく頷く。

私たちはスカートの裾を翻しながら、一緒に職員棟に向かってかけだした。

「ジェリードット先生になにがあったのかしら?」

「わからないわ。無事だといいのだけれども。私も転移の魔法を使えたら一瞬で職員棟まで行けたのに。」

悔しそうに唇を噛み締めてアクアさんが言う。

私も同じ気持ちだ。

転移の魔法が使えれば一瞬で職員棟までつけるのに。

今は裾の長い高等魔術学院の制服を着ているため、走るのが辛い。

気を抜くとスカートの裾を踏みそうになるのだ。

「・・・エメロードちゃん。私がお姫様抱っこしてってあげようか?エメロードちゃんってば走り方が危なっかしいわ。」

何回もスカートの裾を踏みそこなっているのを見られていたらしい。

アクアさんが、そう提案してきた。

でも、アクアさんは非力な女性だ。しかも乙女ゲームのヒロインでもある。

そんな彼女にお姫様だっとかさせられないっ!

「だ、大丈夫ですわっ。ぜえ・・・はぁ・・・。」

しかし、アクアさんは全速力で走っていても息すら乱れないだなんて、なんて基礎体力が高いのだろう。

世のお嬢様というのは、ここまで体力があるのだろうか。

それともアクアさんが、異常なのだろうか。

「息もあがっているし、走る速度も落ちてきてるわね。ほら、お姫様抱っこしましょう。」

私の今の状態を確認して、にっこりとアクアさんが告げた。

「えっ!?・・・はぁはぁ。でも・・・アクアさんの負担になって・・・ぜぇ・・・はぁ。」

「うふふ。強がっちゃって。手も足もフラフラじゃないの。エメロードちゃんお姫様抱っこしましょうね。」

アクアさんは、そう言うと私の返答を待たずに私の身体をひょいっと抱き上げた。

おかしい。

私、アクアさんよりも体重が重いはずなのに、どうしてこんなに軽々しく持ち上げられるのだろうか。

私はアクアさんにお姫様抱っこをされて職員棟へ向かうのだった。

ちなみに、アクアさんは私を抱き上げた後からさらに走るスピードをあげた。

どうやら、今まで私にあわせて走る速度を加減していたようだ。

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