悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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本編

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「・・・通常より早く孵化してしまった場合は、精霊の制御ができなくなるんだ。」

「制御が・・・出来なくなる!?」

つまり、シルヴィアさんの邪竜は誰も制御ができない。

ということは、シルヴィアさんの説得に成功できたとしても邪竜は野放しのままなのだ。

そうか、だからか。

だから乙女ゲームの中の私は邪竜に真っ先に喰われてしまったのか。

きっと前世の乙女ゲームの中でも邪竜の卵が孵化するのが早すぎたのだ。

邪竜の卵が孵化するのが早すぎたから、ヒロインであるアクアさんの聖竜の卵はまだ孵化していなかったので世界の人口が1/3になるなんてことになってしまったのか。

可笑しいと思ったのだ。

邪竜と聖竜がほぼ同時期に孵化していれば、世界の人口が1/3になることはないだろうと思っていたのだ。

ゲームの中での世界だからより悲壮感をあおるために世界の人口が1/3になったのかと無理やり納得したものだが、どうやらそうではなくて聖竜が邪竜が孵化してから聖竜が孵化するまでにタイムラグがあったのだ。

そのタイムラグによって世界の人口が1/3になった。

その可能性が遥かに高い。

ならば、こちらも邪竜が孵化する前に聖竜を孵化させてしまえばいいのだ。

制御はできないかもしれないが、【聖】竜なのだ。

【聖】という名がつく竜が悪い竜とは思えない。

きっと状況を説明すればこちら側について私たちを守ってくれる可能性が高い。

一か八かだけれども・・・。

「・・・通常より早く孵化をさせる方法をご存知ですか?」

「はあ!?いったい何をする気だっ!!」

覚悟を決めてメリードット先生を見つめる。

「聖竜を・・・孵化させます。」

きっぱりとそう告げる。

だって、それしか方法がないから。

皆を助けるためには邪竜が孵化する前に聖竜を孵化させること。

それしかない。

そうしないと、世界の人口が1/3になってしまう。

私の大好きな猫たちも邪竜に喰われてしまうかもしれない。

そんなのは嫌だ。

「聖竜・・・。確かに聖竜ならば邪竜を止めることはできるだろう。しかしっ!聖竜と確定している卵などない!」

そう、まだアクアさんの精霊の卵は聖竜の卵だとは確定していない。

だた虹色に輝く卵からは聖竜が生まれてきたという伝説があるのだ。

そのためアクアさんの持つ精霊の卵から聖竜が孵化する可能性が高いと思われる。

あくまでも推測だが。

それに、アクアさんは乙女ゲームのヒロインだし。

私が前世プレイした乙女ゲームではヒロインであるアクアさんが育てた卵から聖竜が孵ったのだし。

確率はとっても高いと思う。

ここで死んでしまうのであればやってみる価値はあるだろう。

「私の卵は聖竜の可能性があります。試してみませんか?」

アクアさんがそう言って不敵に微笑んだ。

 

 

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