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本編
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しおりを挟む今聞こえてきた声は聖竜・・・だろうか。
聖竜というイメージから低い男の人のような声を想像したが、聞こえてきた声は甲高い少女のような声だった。
光がおさまるのを待ってから光の中心にいるであろう精霊に視線を移す。
「むぅ・・・。辛気臭い空気だのぉ。」
光の中から現れた精霊は眉間に皺を寄せて右手を高く上げた。
すると、奥から漂ってきていた邪竜のものと思われる邪気が少しだけ和らいだような気がした。
「・・・市松人形?」
現れた精霊は黒髪で前髪ぱっつんだった。
しかも着物を着ているので、どこからどうみても市松人形のように見える。
どうにも聖竜というイメージからは遠いように思える。
「市松人形とはなんじゃ?」
きょとんとした表情を浮かべる精霊。
その姿からは他の下級精霊とは一線を画しているような雰囲気を感じられた。
「あ、いえ、なんでもありません。あの・・・。」
「何でもないなら話しかけるでない。全く人間というものは・・・。しかし、空気が暗いのぉ。なんじゃこれは?」
「邪竜が生まれようとしているのです。」
アクアさんが精霊に向かって邪竜が生まれてくるということを説明する。
その瞬間、精霊の顔が曇る。
「よりによって邪竜とはのぉ。妾にとっても脅威じゃのぉ。さっさと逃げるのじゃ。」
「えっ・・・。邪竜を倒してはくれないのですか?」
てっきり聖竜が生まれれば邪竜を倒してくれるものと思っていた。
邪竜も元をたどれば精霊だから同族殺しにはなってしまうが、それでも邪竜が生きていれば他の精霊たちも危険な目にあう。だから、聖竜の助けを得られると思っていたのだが・・・。
「なぜ、妾が倒さねばならぬのじゃ。」
そう言って精霊は眉を吊り上げた。
やっぱり孵化するまでの期間が短かったようで聖竜を従わせることはできないようだ。
それでも、聖竜に頑張ってもらわなければこの世界は破滅してしまう。
「聖竜様。どうか、邪竜から世界を救ってください。」
アクアさんはそう言って、聖竜の前にひざまずいた。
しかし、聖竜と思われる精霊からは意外な返答が返ってきた。
「妾は聖竜ではないぞ。ゆえに邪竜には敵わぬのじゃ。」
「「「えっ?」」」
どうやらアクアさんが持っていた精霊の卵から生まれたのは聖竜じゃなかったようです。
あまりの自体にメリードット先生もアクアさんも私も驚きの声を漏らしてしまった。
イメージしていた聖竜とは若干・・・いやかなり違っていたが、聖竜だと思い込んでしまっていたのだ。
この事態を好転させるためには聖竜の力が必要だから、そう思っていた。
「妾は聖竜などではない。精霊王なのじゃ。」
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