悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚

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本編

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シルヴィアさんは確か邪竜に喰われたはずだ。

真っ暗だったのでその姿を見ることはなかったけれども、シルヴィアさんの悲鳴と肉が潰れるような音がそれを示唆していた。

でも、犠牲者が一人も出ていないというのはどういうことだろうか。

まさか、シルヴィアさんが邪竜を孵化させてしまったから、シルヴィアさんの存在自体が抹消されてしまったのだろうか。

まあ、その方がシルヴィアさんのご実家のためにはなると思う。

そうでなければシルヴィアさんの実家であるディバーズ伯爵家は取り壊されてしまうだろう。

いや、取り壊されるだけならまだ良いが国外追放もあり得るかもしれない。

「あの・・・シルヴィアさんは?」

私は邪竜を産み出してしまったシルヴィアさんのことが気になりメリードット先生に確認する。

メリードット先生は少しだけばつが悪そうに答えた。

「まあ・・・あれだ。始祖竜が治療してくれてだな・・・。その・・・。」

どうやらプーちゃんが気をきかせてシルヴィアさんも治癒していたようです。

でも、彼女としてはあの場で邪竜に喰われて死んだ方がよかったのかもしれないと少しだけ思ったりもした。

だって、邪竜を産み出した存在である彼女は各方面から責められることは確実だ。

死ぬより辛い現実が待っているのだ。

「あ、もしかして・・・。」

「ん?どうしたのアクアさん?」

アクアさんが不意になにか思い出したように呟いた。

それが気になったので思わず聞き返す。

「内臓が損傷してるから精霊王が治癒させることができないと言っていたじゃない?」

「え、あ、うん。そうだね。」

「でもね、トリードット先生にしてもジェリードット先生にして胸を邪竜が発した霧みたいなもので突かれてただけじゃない?」

「あー、そうだね。怪我らしき怪我は見当たらかなったよね。」

あの時、動転はしていたがトリードット先生からもジェリードット先生からも血はあまり流れていなかった。

「もしかして、内臓が損傷しているから治癒できないと精霊王が言っていたのは、ジェリードット先生ではなくシルヴィアだったんじゃないかしら?」

「あっ!確かにっ!!」

「だから、精霊王はプーちゃんに治癒させてもいいのかと再三念を押してきたのかもしれないわ。」

「なるほど・・・。」

確かにそれだと辻褄が合う。

トリードット先生もジェリードット先生も瀕死の状態だったとは言っていたけど明確に二人の内臓が損傷しているとは誰も言っていなかったような気がする。

「ふむ。ようやく気付いたのかの?だから妾が言ったではないか。治癒してしまって良いのかと。明確に治癒対象を指定してあげないとプーちゃんのことだからその場にいた瀕死の状態の人間は全て治癒させてしまっただろうのぉ。」

私たちの会話をどこかで聞いていたかのように精霊王が姿を現した。

 

 

 

 

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