62 / 70
本編
61
しおりを挟む
アクアさんの方を見るとアクアさんは顔を真っ青にしていたが、首を横に振っていた。
アクアさんはどうやらランティス様とは関係ないようだ。
最初からアクアさんはランティス様のことを気に入らなかったようだしね。
それにしても、ランティス様の言う精霊の王とはいったいなんなんだろうか。
ふいに真横に気配を感じてそちらを見れば、アクアさんの卵から孵った精霊王がいた。
精霊王はジッとランティス様を見つめている。
その瞳は深淵を見ているようにも思えた。
「精霊王は一人だけなのじゃ。妾だけじゃ。」
精霊王は静かにそう告げたが、その言葉は重く辺りに響き渡った。
それはもちろん、ランティス様の耳にも聞こえていたわけであり、ランティス様の表情がはじめて揺らいだ。
「おまえは精霊王ではない。私の精霊こそが精霊王なのだ。なにを言っている?」
「ふむ。では、その精霊と妾を会わせるのじゃ。」
精霊王は静かにそう告げた。
ただ、精霊王からは若干の怒りの感情を感じた。
やはり精霊王を名乗られて嫌な気分なのだろう。
「いいだろう。私の精霊王の前に皆ひれ伏すがいい。」
そう言ったランティス様の目の前にひょろひょろの精霊が姿を現した。
精霊は姿を現すなり、その場に力なく座り込んだ。
どういうことだろうか。
「もっと堂々とするがいい。おまえは精霊王なのだから。」
ランティス様はそう言って精霊王だという精霊を立たせようとする。
ランティス様の力で精霊は立ち上がったが、顔は始終うつむいていた。
本当にランティス様の精霊は精霊王なのだろうか。
ずいぶんと自信がないように思える。
「・・・わ、わたしは・・・精霊・・・王などでは・・・ありません 。なぜ・・・何度言っても聞き入れてくださらないのでしょうか。」
その精霊は小さな声でそう呟いた。
が、ランティス様は自分に不都合な呟きは耳に入らないのか得意気な笑みでこちらを見ていた。
「私の精霊こそ精霊王なのだ。そこにいる市松人形が精霊王だなんて見え透いた嘘はやめることだ。」
市松人形とはアクアさんの卵から孵った精霊王のことだろう。
真っ白な肌とストレートの黒髪が市松人形にそっくりだった。着物も着ているしね。
「ふむ。その精霊を解放させてもらうぞ。なにやらひどく弱りきっておるからの。」
そう言って、精霊王はランティス様の精霊に向かってなにやら光を投げつけた。
「なっ!精霊の王を攻撃するとはっ!!」
ランティス様は驚いて叫んでこちらを睨み付けた。
「その精霊は精霊王ではあらぬ。ただの光の精霊じゃ。しかも下級精霊じゃの。その光の下級精霊が妾の名を名乗るのは相当な負荷だったはずじゃ。消えかけておったぞ?」
精霊王が投げた光が収まるとそこには精霊の姿は無くなっていた。
かわりに、精霊王の隣に精霊の姿があった。
その姿は先程の精霊とは思えないほどに輝きを放っていた。
アクアさんはどうやらランティス様とは関係ないようだ。
最初からアクアさんはランティス様のことを気に入らなかったようだしね。
それにしても、ランティス様の言う精霊の王とはいったいなんなんだろうか。
ふいに真横に気配を感じてそちらを見れば、アクアさんの卵から孵った精霊王がいた。
精霊王はジッとランティス様を見つめている。
その瞳は深淵を見ているようにも思えた。
「精霊王は一人だけなのじゃ。妾だけじゃ。」
精霊王は静かにそう告げたが、その言葉は重く辺りに響き渡った。
それはもちろん、ランティス様の耳にも聞こえていたわけであり、ランティス様の表情がはじめて揺らいだ。
「おまえは精霊王ではない。私の精霊こそが精霊王なのだ。なにを言っている?」
「ふむ。では、その精霊と妾を会わせるのじゃ。」
精霊王は静かにそう告げた。
ただ、精霊王からは若干の怒りの感情を感じた。
やはり精霊王を名乗られて嫌な気分なのだろう。
「いいだろう。私の精霊王の前に皆ひれ伏すがいい。」
そう言ったランティス様の目の前にひょろひょろの精霊が姿を現した。
精霊は姿を現すなり、その場に力なく座り込んだ。
どういうことだろうか。
「もっと堂々とするがいい。おまえは精霊王なのだから。」
ランティス様はそう言って精霊王だという精霊を立たせようとする。
ランティス様の力で精霊は立ち上がったが、顔は始終うつむいていた。
本当にランティス様の精霊は精霊王なのだろうか。
ずいぶんと自信がないように思える。
「・・・わ、わたしは・・・精霊・・・王などでは・・・ありません 。なぜ・・・何度言っても聞き入れてくださらないのでしょうか。」
その精霊は小さな声でそう呟いた。
が、ランティス様は自分に不都合な呟きは耳に入らないのか得意気な笑みでこちらを見ていた。
「私の精霊こそ精霊王なのだ。そこにいる市松人形が精霊王だなんて見え透いた嘘はやめることだ。」
市松人形とはアクアさんの卵から孵った精霊王のことだろう。
真っ白な肌とストレートの黒髪が市松人形にそっくりだった。着物も着ているしね。
「ふむ。その精霊を解放させてもらうぞ。なにやらひどく弱りきっておるからの。」
そう言って、精霊王はランティス様の精霊に向かってなにやら光を投げつけた。
「なっ!精霊の王を攻撃するとはっ!!」
ランティス様は驚いて叫んでこちらを睨み付けた。
「その精霊は精霊王ではあらぬ。ただの光の精霊じゃ。しかも下級精霊じゃの。その光の下級精霊が妾の名を名乗るのは相当な負荷だったはずじゃ。消えかけておったぞ?」
精霊王が投げた光が収まるとそこには精霊の姿は無くなっていた。
かわりに、精霊王の隣に精霊の姿があった。
その姿は先程の精霊とは思えないほどに輝きを放っていた。
20
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢だから知っているヒロインが幸せになれる条件【8/26完結】
音無砂月
ファンタジー
※ストーリーを全て書き上げた上で予約公開にしています。その為、タイトルには【完結】と入れさせていただいています。
1日1話更新します。
事故で死んで気が付いたら乙女ゲームの悪役令嬢リスティルに転生していた。
バッドエンドは何としてでも回避したいリスティルだけど、攻略対象者であるレオンはなぜかシスコンになっているし、ヒロインのメロディは自分の強運さを過信して傲慢になっているし。
なんだか、みんなゲームとキャラが違い過ぎ。こんなので本当にバッドエンドを回避できるのかしら。
【完結】婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
Mimi
ファンタジー
私エヴァンジェリンには、幼い頃に決められた婚約者がいる。
男女間の愛はなかったけれど、幼馴染みとしての情はあったのに。
卒業パーティーの2日前。
私を呼び出した婚約者の隣には
彼の『真実の愛のお相手』がいて、
私は彼からパートナーにはならない、と宣言された。
彼は私にサプライズをあげる、なんて言うけれど、それはきっと私を悪役令嬢にした婚約破棄ね。
わかりました!
いつまでも夢を見たい貴方に、昨今流行りのざまぁを
かまして見せましょう!
そして……その結果。
何故、私が事故物件に認定されてしまうの!
※本人の恋愛的心情があまり無いので、恋愛ではなくファンタジーカテにしております。
チートな能力などは出現しません。
他サイトにて公開中
どうぞよろしくお願い致します!
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)
浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。
運命のまま彼女は命を落とす。
だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる