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本編
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「エメロードよ。我は永い永い時を生きてきたのだ。そのなかで自分の子を憎んでいた親もいたし、自分の子に関心がない親もいたのだ。だから、シルヴィアの親がシルヴィアに興味がないというのもあながち間違いでもないであろう。」
「そんなっ・・・。」
プーちゃんの言葉に私は衝撃をうけた。
親が子供を愛さないだなんてそんなことがあるのだろうか。
ましてや子供に興味を示さないだなんて。
とても信じられない。
「人間というのはとても不思議な生き物なのだ。育った環境にもよるのかもしれないが・・・。」
プーちゃんの言葉に「ああ・・・。」とため息がでた。
そう言えば私が前世で暮らしていた日本という国でも、育児放棄が話題になっていたっけ。
自分の子供を殺してしまう親もいたっけ。
信じたくなくて目を背けてきたけれど、たしかにそういう事実はあった。
「シルヴィアさん・・・。」
私は知らない。
親に愛されない子供の気持ちなんて。
でも、想像することはできる。
今の父さんと母さんが私をさけずんだ目で見て、私を罵っている姿を想像する。
それはとても胸が張り裂けるように痛みを感じた。
これが産まれた時からずっと続き、常にそのなかに身をおかなければならないというのは、とても苦痛だろう。
私はそっとシルヴィアさんに近づく。
そうして、シルヴィアさんの前で膝をつき、シルヴィアさんの頭を抱き締めた。
「ごめんなさい。謝って許されることではないけれども。私はあなたを傷つけてしまった。」
私がシルヴィアさんに触れたとき、シルヴィアさんは一度ビクリッと震えた。
でも、それ以上はなにも言わなかった。
「それに、あなたを不老不死にしてしまった。ごめんなさい。」
「うぅ・・・。」
「ねえ、シルヴィアさん。それでもあなたは人に愛される権利があるわ。きっとあなたを愛してくれる人がいる。」
綺麗事かもしれないけれども、誰にも愛されないだなんてそんなのは悲しすぎる。
「あなたを愛するその存在に、私が、立候補してもいいかな?」
シルヴィアさんをこのまま放置することはできない。
そう思って声をかけていた。
「・・・私は、あなたを傷つけたわ。」
小さなシルヴィアさんの声が聞こえる。
「知ってる。でも、私はシルヴィアさんを嫌いになれない。」
「・・・私、誰かに愛されたかった。・・・みんなに愛されるエメロードが憎かった・・・。」
「・・・うん。」
「みんな・・・みんな誰かに愛されていて・・・私だけ、誰にも愛されていなくて・・・。だから・・・こんな世界なくなってしまえばいいって・・・。」
「うん・・・。」
悲観しても仕方がないことだろう。
シルヴィアさんは、少しずつ邪竜を産み出してしまった過程を話してくれた。
「そんなっ・・・。」
プーちゃんの言葉に私は衝撃をうけた。
親が子供を愛さないだなんてそんなことがあるのだろうか。
ましてや子供に興味を示さないだなんて。
とても信じられない。
「人間というのはとても不思議な生き物なのだ。育った環境にもよるのかもしれないが・・・。」
プーちゃんの言葉に「ああ・・・。」とため息がでた。
そう言えば私が前世で暮らしていた日本という国でも、育児放棄が話題になっていたっけ。
自分の子供を殺してしまう親もいたっけ。
信じたくなくて目を背けてきたけれど、たしかにそういう事実はあった。
「シルヴィアさん・・・。」
私は知らない。
親に愛されない子供の気持ちなんて。
でも、想像することはできる。
今の父さんと母さんが私をさけずんだ目で見て、私を罵っている姿を想像する。
それはとても胸が張り裂けるように痛みを感じた。
これが産まれた時からずっと続き、常にそのなかに身をおかなければならないというのは、とても苦痛だろう。
私はそっとシルヴィアさんに近づく。
そうして、シルヴィアさんの前で膝をつき、シルヴィアさんの頭を抱き締めた。
「ごめんなさい。謝って許されることではないけれども。私はあなたを傷つけてしまった。」
私がシルヴィアさんに触れたとき、シルヴィアさんは一度ビクリッと震えた。
でも、それ以上はなにも言わなかった。
「それに、あなたを不老不死にしてしまった。ごめんなさい。」
「うぅ・・・。」
「ねえ、シルヴィアさん。それでもあなたは人に愛される権利があるわ。きっとあなたを愛してくれる人がいる。」
綺麗事かもしれないけれども、誰にも愛されないだなんてそんなのは悲しすぎる。
「あなたを愛するその存在に、私が、立候補してもいいかな?」
シルヴィアさんをこのまま放置することはできない。
そう思って声をかけていた。
「・・・私は、あなたを傷つけたわ。」
小さなシルヴィアさんの声が聞こえる。
「知ってる。でも、私はシルヴィアさんを嫌いになれない。」
「・・・私、誰かに愛されたかった。・・・みんなに愛されるエメロードが憎かった・・・。」
「・・・うん。」
「みんな・・・みんな誰かに愛されていて・・・私だけ、誰にも愛されていなくて・・・。だから・・・こんな世界なくなってしまえばいいって・・・。」
「うん・・・。」
悲観しても仕方がないことだろう。
シルヴィアさんは、少しずつ邪竜を産み出してしまった過程を話してくれた。
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