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しおりを挟む「騒がしいわねぇ。なにを騒いでいるのかしら?ユースフェルト。」
ゆったりとした動作で豪華なドレスを纏いやってきたのは、騒ぎを聞きつけたユースフェルトの母親であり妾妃のユフェライラだった。
ユフェライラはピンク色の長い髪に豪華な金細工の飾りをつけてにこやかに笑っている。
目が笑っていないのはとても不気味だ。
「は、母上……。」
ユースフェルトは突然のユフェライラの登場に身体を固くした。
「あら?そちらのご令嬢は?ユースフェルト、紹介してくださるかしら?」
ユースフェルトの隣にいるアンナライラに目を止めたユフェライラは大きく目を瞠ると、すぐにその表情を消しユースフェルトに問いかけた。
「アンナライラ・ナンクルナーイ男爵令嬢です。母上。」
ユースフェルトの背中を冷や汗が滑り落ちる。
「お母様。お会いしたかったですわ。」
焦るユースフェルトとは反対に、アンナライラはにっこりと笑みをみせてユフェライラに挨拶をした。
「そう。あなたがアンナライラ嬢なのね。は・じ・め・ま・し・て、ナンクルナーイ男爵令嬢。」
ユフェライラはことさら「はじめまして」を強調してアンナライラに挨拶をする。
「は、母上……。あの……。私はっ……。」
「言いましたよね?ユースフェルト。あなたの婚約者はアマリア侯爵令嬢以外あり得ないと。それがあなたが王太子になる条件だと申しましたでしょう?」
ユフェライラはにっこりと笑いながらユースフェルトに釘を刺す。
ユースフェルトがアンナライラと婚約をすることはユフェライラが許さなかった。アンナライラとの婚約破棄を誰よりも怒ったのはユフェライラだった。
現在、この国で一番地位が高くユースフェルトと年が近いのはアマリアだ。侯爵家の後ろ盾を手にいれ王太子となるためにも、ユースフェルトの婚約者にはアマリアが適しているとユフェライラは思っていた。
他の令嬢では役不足。ましてや、男爵令嬢などもってのほかだとユフェライラは思っていた。
「で、ですが……母上。アマリアはアンナライラを呪うような悪女です。そのような者が私の婚約者として相応しいとはとても……。それに、兄上は引きこもっていて表舞台に顔を出さないじゃないですか。アマリアが私の婚約者でなくとも、私が王太子となるのは決まっている。」
「ユースフェルト、王太子となり国王になりたいのであれば私に従いなさい。」
ユフェライラは笑みを絶やさず、しかしながら強い命令口調でユースフェリアにアンナライラとは手を切り、アマリアと婚約をするようにと告げる。
「ですがっ……。私はっ……。」
嫌だと反論するユースフェルトにユフェライラは眉を潜める。
「ナンクルナーイ男爵令嬢。申し訳ありませんが、お引き取り下さいませ。そして、今後二度とユースフェルトに近寄らぬよう。衛兵たちよ、ナンクルナーイ男爵令嬢はお帰りです。門の外まで案内なさい。」
ユフェライラはこれ以上ユースフェルトに構っていてもらちが明かないと、アンナライラに視線を向ける。そして、にっこり笑って出て行けと告げた。
衛兵たちも、ユフェライラの命令に逆らう理由もないためアンナライラを門の外まで連行する。
「えっ!?ちょっとお母様っ!なんで私が出て行かなければならないのっ!」
アンナライラはユフェライラの言葉に驚きを隠せず目を見開いた。
ユースフェルトの母親であるユフェライラもアンナライラのことを認めてくれると思っていたのだ。
「私はあなたの母親ではなくてよ。」
アンナライラの叫びにユフェライラは冷たく言い放った。その視線は氷よりも冷たいものだった。
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