断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚

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「アマリア……あんたがいるから、シルキーが私のものにはならない。あんたさえいなければ、シルキーは私のものになるのよっ!あんたさえ、いなければ……。アマリアさえいなければ……。」

「なにを……言っているの?」

 アンナライラ様はほの暗い瞳を私に向ける。

 そして狂ったように「あんたさえ、いなければ……。」と何度も何度も低い声で呟く。

 そのあまりの異常さに私は一歩後ろに下がった。

 今のアンナライラ様は正気ではない。なにをしでかすのかわからないような気がした。

「この世界のヒロインは私よ。私なのよ。アマリアは悪役令嬢。アマリアは誰からも見捨てられる存在でなければいけないわ。私はヒロインよ。みんなが私のことを愛してくれるの。私はみんなに愛されるの。そうでなければいけないのよ。」

 アンナライラ様はブツブツと何かを呟いている。なにを言っているかは私には聞き取れなかった。それほど小さな声でアンナライラ様はつぶやき続けているのだ。

「……アンナライラ、様?」

「あんたさえっ!!あんたさえいなければっ!!」

 突如としてアンナライラ様の身体から真っ黒な魔力の矢が私に向かって放たれる。

 避けなければっ!と思った瞬間。目の前を白い小さな影が遮った。

「シルキー様っ!!」

 このままだと、私をかばうように飛び出してきたシルキー様の身体に真っ黒な魔力の矢が突き刺さってしまう。

 そんなのは、だめっ!!

 猫様が傷つく姿なんて私は見たくないっ!!

「ダメッッッッッ!!!!!!」

 私はこれまでにないほど大声を上げた。

 次の瞬間、

 パリーンッ

 という音が響き渡った。

 それとともに私の視界が真っ白になっていく。

 私は何が起こったのかわからず目を白黒させる。

「マリアちゃん。無事っ!!?もうっ!ガードマンたちは何しているのかしらっ!!」

 どうやらなかなか到着しないガードマンたちに痺れを切らしてユリアさんが助けに来てくれたようだ。

「ブチ様は……?」

 私は一人っきりになってしまったであろうブチ様のことを思い浮かべる。先ほどまでブチ様は意識を失っていたのだ。ブチ様だけにするのはとても危ない。

「大丈夫よ。ブチは目を覚ましたわ。それで、これはいったいどういう状況なのかしら?」

「よかったぁ……。」

 ブチ様が目を覚ましたと聞いて私はホッと息を吐いた。

「ちょっと!!ここから出しなさいよっ!!」

 アンナライラ様のいらだったような声が聞こえてくる。

「……閉じ込める?ユリアさんが閉じ込めたんですか??」

 突然目の前が真っ白になって何がなんだかわからなかった私はユリアさんがシルキーと私を助けたンだと思って問いかける。

 でも、ユリアさんは首を横に振った。

「……いいえ。私ではないわ。私がここに来た瞬間に白い壁がアンナライラ嬢を取り囲んだのよ。」

「じゃあ、シルキー様が……?」

 私はシルキー様の存在を確かめる。シルキー様はアンナライラ様が閉じ込められている白い壁の前で優雅に毛繕いをしていた。

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