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しおりを挟む「ユフェライラ様。あなたはもう負けているのです。国王陛下と王妃殿下をすぐに解放してください。さすれば減刑するように国王陛下に進言いたします。」
ユリアさんは黙ったまま睨みつけてくるユフェライラ様にもう一度、国王陛下と王妃殿下を解放するようにと促す。しかしながら、ユフェライラ様はこちらを悔し気に睨みつけてくるばかりで返事をしなかった。
「……はぁ。交渉決裂ですね。それでは、私たちが国王陛下と王妃殿下を勝手に解放いたします。よろしいですね?」
ユリアさんはユフェライラ様に念を押すように確認をする。
ユフェライラ様はやはり何も言わずにこちらを睨みつけていた。
「このままだとまだ何かをしでかす可能性があります。」
「そうね。」
ユフェライラ様は私たちを睨みつけている。このままここに放置して国王陛下と王妃殿下を探しに行ってしまったら、ユフェライラ様がなにかよからぬことをしでかす可能性がある。
ユフェライラ様はまだ負けたことを良しとはしておらず、私たちの隙を伺っているように見受けられるのだ。
「……ユフェライラ様を拘束いたします。」
私は一歩前にでる。
この淡い光が自分を守る力だと認識した途端、力の使い方がわかるようになったのだ。今までは偶然私を守る力が働いていたが、今は自分で制御できそうな気がした。
私は光を手元に集めて凝縮させてから切断することのできないチェーンのイメージを脳内で作り上げる。その通りに光が長い一本のチェーンを形作る。
「ユフェライラ様。失礼いたします。」
造り上げた光輝くチェーンをユフェライラ様の身体に巻き付けていく。ユフェライラ様はチェーンが触れた箇所が痛むのか眉間に皺を寄せ苦悶の表情を浮かべる。
「国王陛下と王妃殿下の無事が確認できてユフェライラ様が改心なさるというのであれば、このチェーンから解放いたします。しばらくの間窮屈かと思いますがどうかご容赦ください。」
「もう、力を使いこなせるのね。さすがだわ。マリアちゃん。」
「これが私を守る力だと理解したら急に力の使い方がわかるようになったのです。さあ、シルキー殿下手をお見せください。」
今の私なら力の使い方がわかる。力を制御することができる。
そして、私の力は私に訴えかけている。シルキー殿下の傷を癒やすように、と。
「……っ。私にかまうな。」
シルキー殿下は手を出すことに躊躇う。なぜシルキー殿下が躊躇うのかわからなくて私は首を傾げる。
「シルキー殿下は自分の見せ場が無く、マリアちゃんに守られたことにショックを受けているだけです。気にせず治療していただけますか?」
「なっ……。」
ユリアさんの言葉が図星だったのか、シルキー殿下は目を大きく見開いて口をわなわなとさせながらユリアさんを凝視する。シルキー殿下はとてもわかりやすい正確のようである。
「それでは治療いたしますね。」
なおも手を引っ込めようとするシルキー殿下の手を取る。
若干の抵抗をしたものの、シルキー殿下は私に手を預けた。まるで警戒心の強い猫のようである。
「シルキー殿下はやっぱりブチ様だったのですね。警戒心の強い猫のようでお可愛らしいですわ。」
「ぷっ。」
「なっ!?」
心の声が思わず口から飛び出してしまったようで、ユリアさんの噴き出す声と、シルキー殿下の間抜けな声が聞こえてきた。
私は力をシルキー殿下に触れている手に集中させる。それからシルキー殿下の傷の周辺に光をまとわりつかせた。
「くっ。」
光がシルキー殿下の腕にまとわりつくと、シルキー殿下がくぐもった声を上げた。
痛いのだろうかと心配になってシルキー殿下に声をかける。
「痛いですか?」
「いや、熱いだけだ。」
シルキー殿下は視線を逸らしたままポツリと告げた。
しばらくして、シルキー殿下の傷が癒えた。シルキー殿下は不思議そうに傷があった場所を確認する。
「本当に傷が治るものなんだな。」
「すごい力だわ。マリアちゃん。」
「いいえ。シルキー殿下がくださったこの力がすごいだけです。それよりも、早く国王陛下と王妃殿下を探しに行きましょう。」
「……っ。」
シルキー殿下は私の言葉にまた頬を赤く染めた。
本当にシルキー殿下は猫のようにお可愛らしい。
☆☆☆☆☆
「シルキー殿下、お城には私が捕らわれていた地下牢とは別の地下牢があるのですか?先ほど、ユフェライラ様が国王陛下と王妃殿下は地下に捕えているとおっしゃっていましたが。」
王宮の中を闇雲に探し回るのでは時間ばかりがかかってしまう。ここはやはり王族であるシルキー殿下に聞くのがいいだろう。と、言っても今まで猫の姿で暮らしていたそうなので、どこまで王宮の中を知っているのかはわからないが。
「……王族を幽閉するための牢があると聞いたことがある。ユリア、知らないか?」
やはりシルキー殿下は王宮内のことにはあまり詳しくはないようだ。
「私も王妃殿下から伺ったことがあります。確か、王宮内に入り口が隠されているとか。私も正確な場所までは把握しておりません。」
「そうか。他に誰か知っている人物は……。」
「正直なところ、国王陛下と王妃殿下の居た場所には複数の衛兵がいたはずなのです。通常国王陛下と王妃殿下を守るために近衛兵が数人ついているはずです。それはご存知ですか?」
ユリアさんがシルキー殿下に尋ねる。
シルキー殿下はゆっくりと頷いた。
「ああ。知っている。つまり、近衛兵までもがユフェライラの手先になっている可能性があると?」
「はい。無暗に聞いて回るのはあまりよろしくないかもしれません。」
シルキー殿下とユリアさんは王宮内にまだユフェライラの手の者がいると疑っているようだ。確かにそれは一理ある。国王陛下と王妃殿下がどこかに捕らわれたというのに、誰も騒ぎ立てないことがその証拠である。もしかすると、国王陛下と王妃殿下の側に使えていた人たちは皆ユフェライラ様の力に惑わされていたのかもしれない。
「では、やはり怪しい場所をしらみつぶしに探すしかないか。」
シルキー殿下がため息交じりに言うと、それを遮るようにユリアさんが私に声をかけた。
「マリアちゃん。王妃殿下の居場所がわからないかしら?マリアちゃんと王妃殿下の力は共鳴するはずなの。そう王妃殿下から聞いているわ。」
「……やってみます。」
私はそう言って王妃殿下を探すように力を周囲に分散させていった。
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