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しおりを挟む私は、猫の置物の頭の部分をそっと優しく何度も撫でる。
なんども撫でていると、ほんのりと猫の置物が熱を帯びてきたのを感じた。
「……暖かい。」
すると猫の置物が台座ごと、横にスライドして、台座が元々置かれていた場所に地下へと続く階段が現れた。
「……階段が現れたわね。」
「これが地下への階段。この下に国王陛下と王妃殿下がいらっしゃるのか。」
ユリアさんとシルキー殿下がマジマジと階段を見つめる。
それにしてもこの仕掛けは誰が考えたものなのだろうか。猫の置物を何度も撫でるのが階段を出現させるトリガーだなんて思いもしなかった。
じゃあ、なんで何度も撫でたのかと言われると何故だかわからないけれど、そうしなければいけないと思ったからだ。
「行きましょう。」
「私が先頭を行く。」
シルキー殿下が先頭を行く。
この先にいるのが国王陛下と王妃殿下だけとは限らないからだ。もしかしたら、ユフェライラ様の手の者が待ち構えているかもしれない。現に城の中を守っている衛兵の姿は少ないと感じたし。
意外と地下へと降りる階段は明かりが各所に灯されており、とても明るかった。
いつ誰が明かりを灯したのかはわからないが、お陰でなんなく階段を降りることができた。
どれくらい地下へ続く階段を降りただろうか。
結構な時間歩いたような気がする。
階段は途中で別れることなく一本道だった。だから迷うことはない。ただ、距離がとても長いのだ。
「結構下まで降りるんですね。」
「そうだな。2階分は下りただろうか。」
「そうね。深いわね。」
コツコツと足音を立てながらいつまで降りれば良いのかわからない階段を一段一段降りていく。
先頭を行くシルキー殿下は前を確認しながら進む。
「階段がなくなった。」
シルキー殿下が不意にそう言った。
ついに一番下まで降りたらしい。
そこから先の道についても枝分かれすることなく一本道だった。
「……静かに。誰かいるみたいだ。」
先頭を歩いていたシルキー殿下が物音を耳に拾ったようで歩みを止めた。
その場でしばらく先の様子を伺う。
「………………。」
「………………。」
確かに誰かが話しているような声が聞こえる。だが、声が小さすぎて何を言っているのかまではわからなかった。
シルキー殿下は足音を立てないように少しずつ前に進んで行く。
私たちも出来るだけ足音を立てないようにシルキー殿下についていく。
やがて、声は大きくなり喋っている内容を判別できるようになった。
「ユフェライラにはしてやられたな。」
「そうね。まさか、乗り込んでくるとは思わなかったわ。」
「王妃だったら逃げ出せたのではないか?」
「逃げ出せたわ。でも、シルキーもユリアもマリアちゃんも王宮にはいたみたいだし、彼らに任せることにしたの。」
「そうか。」
「シルキーに王位を継がせるためには、実績が必要になるもの。国を乗っ取ろうとした妾妃を倒して捕らわれていた国王と王妃を救った英雄。そう話題になれば、今まで姿を見せなかったことで民から良く思われていなかったシルキーも表舞台に立ちやすくなると思うの。」
「そうだな。しかし、ここがわかるのだろうか。」
声は男性と女性のものだった。
話している内容からするに国王陛下と王妃殿下の可能性が高い。
でも、女性の方の声はよくどこかで聞いたことがあるような声だ。しかも、私のことをマリアちゃんと親し気に呼んでいる。
王妃殿下には今まで「マリアちゃん」なんて親しみを込めて呼ばれたことはない。それに「マリア」という名前は保護猫施設でのみ使用していた偽名だ。
それを何故王妃殿下が知っているのだろうか。
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