見習い料理人はテキトー料理で今日も人々を魅了する

葉柚

文字の大きさ
18 / 57

18

しおりを挟む
ヒビの入った卵をボールに開けるために、ヒビの入っている部分に指をかけ、そのまま力任せにコカトリスの卵を割る。

どろりとした白身と黄身がボールの中に広がる。


「あんた・・・。なに、その指。っていうか、腕。っていうか、その馬鹿力。」


「え?ヒビが入ってしまえば割るのは結構簡単だよ?」


なんだか、コカトリスの卵にヒビが入ったときよりも驚いているような気がする。

対してトリスは満足気な笑みを浮かべてオレを見ていた。


「うむうむ。さすがは妾の婿じゃ。よい力をしておるのぉ。」


いや。婿じゃないし。

オレまだ誰とも結婚する気もないし。


「あり得ない・・・。あり得なすぎるわ・・・。ちょっと、あんた来なさい!」


シラネ様はそう言うとオレの腕をむぎゅっと掴み、立ち上がった。


「え?どこに?」


オレはシラネ様の意図が読めずに目を白黒させた。


「ギルドよ!あんたのステータスを鑑定してもらうわよ!」


「え?ギルド?でも、この卵を料理しちゃわないと鮮度が悪くなって美味しい料理が作れなくなっちゃうからちょっと今日は・・・。」


もう卵割っちゃったし。せっかく美味しい料理を作れる素材が台無しになってしまうのはもったいない。

ジッと卵を見つめるオレ。


「はぁ・・・。わかったわよ。じゃあ、絶対明日行くわよ!いいわね!」


「まあ、明日ならいっか。でも、ギルドに行ってもオレは冒険者にはならないからね。オレは王宮料理人になるんだから。」


シラネ様は今日ギルドに行くことに関しては折れてくれたようだ。ただ、ギルドに行くことだけは決定事項らしい。明日、ギルドに行くと言われてしまった。

明日は特に用事はないし・・・。

オレ、仕事してるわけじゃないしなぁ。

料理人見習いって言っても見習いだから師匠の横に張り付いて雑用をしているだけしかできないし。

まあ、雑用してればその分お駄賃がもらえるんだけどね。だから、暇なら師匠のところに入り浸っているんだけど、毎日行かなきゃいけないってもんでもないし。絶対行かなきゃならないってものでもない。


だから、オレはギルドに行くことに関しては折れることにした。別にギルドに行ったからって王宮料理人になれないわけではないし。

冒険者にならなければ、だけど。

そこはシラネ様に釘を刺したから大丈夫だろう。


「わかったわよ。冒険者登録まではしなくてもいいわよ。でも、私はリューニャのステータスが知りたいのよ。コカトリスの卵を平気で割っておいてただの料理人見習いだってことはまずあり得ないわ。そこを知りたいのよ。」


「なら、行くよ。トリスはどうする?」


「妾はリューニャの側にいるのじゃ。ギルドというところは人が多いと聞くしのぉ。リューニャが他の雌に目をつけられたら大変じゃ。」


「そんな物好きいないと思うけど・・・。」


ギルドにはトリスも一緒に来るという。トリスが来ることにはちょっと不安だけど、ここに置いておいたら何をしでかすかわからないし。

万が一、オレがいない時にこの家に誰かきたら、と思うとゾッとする。

もしかしたらその誰かをトリスが攻撃するかもしれないからだ。通常の冒険者じゃトリスには敵わないからなぁ。


「オーケー。じゃあ、明日ね。約束よ。で?その卵で何を作るのかしら?食べるの手伝ってあげてもいいわよ。リューニャは料理人見習いっていうけど、素材は最高級だからとっても美味しいもの。」


シラネ様はそう言ってにっこりと微笑んだ。

夕飯をオレの家で食べていくことが決定した瞬間だった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...