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しおりを挟む「い、いや……、それがまだユージンは来ていないんだ。」
ギルドマスターは歯切れが悪そうにそう告げると、ポリポリと薄くなってきた頭を掻いた。それから辺りを見回して、
「誰か、ユージンを知らないか?」
と、問いかけたが皆首を横に振るだけだった。
「逃げた。ってことでいいかしら?」
その様子を見ていたシラネ様が、鼻で笑う。
「逃げた?でも、コカトリスの卵を割るだけですよ?ユージンさんはこのギルドで一番の腕を持っているのでしょう?コカトリスの卵くらい簡単に割れると思いますし、さすがに逃げたってことはないんじゃないですか?」
コカトリスの卵を割る勝負で逃げるなんてことは普通あり得ないだろう。しかも、このギルドで一番の腕を持っているユージンさんだ。そんな人が魔物と戦うわけでもなく、ただ卵を割るだけの勝負で逃げ出すはずがないだろう。
ギルドで大々的にユージンさんと料理人見習いであるオレがコカトリスの卵を割るという勝負をおこなうと宣伝したのだ。それなのに、逃げたとなるとユージンさんの信用はがた落ちだ。……いや、そもそも素行が悪いらしいから信用はそれほどないのだろうか。
「……逃げた、のかもしれんな。まあ、この勝負に逃げたとしても特にペナルティを化すようなことは宣言しなかったわけだし。逃げたというのもあり得る話だ。」
ギルドマスターはそう言って周囲を見渡して皆の反応を確認した。ギルドに集まっているオレとユージンさんの勝負を見に来たと思われる人たちの顔を見ると、皆一様に頷いていた。
「やっぱりね。でも、約束を守らなかったってことはギルドでの信用もがた落ちじゃない?」
「ああ。そうだな。」
「依頼料も激減よね?」
「ああ。そうだな。」
シラネ様は勝ち誇ったように微笑んだ。そして、ギルドマスターが肯定する返事を返すと、嬉しそうに飛び上がった。
「そうよね!うふふ。」
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