2 / 29
第二話 クラスメイト
しおりを挟む
「楽しいよ。人形のサムと話し合うと考えがまとまる」
そう言って、ルーカスの様子を見てみる。ルーカスは実に渋い表情をしていた。その文句ありそうな顔はなんだ。
「その魔法人形サムは腹話術のような仕組みで動いているのだろう。つまり、アルロの一人芝居に過ぎないわけだ。なのにアルロとサムが議論している。それに一体何の意味があるのだろう。結局どちらもアルロの意見なのだから、脳内で会話をすればいい。その方が口も疲れずに済む」
ルーカスの言うことも分かる。でも、僕は誰かと声を出して話し合いたいんだ。例え人形相手でも話し相手になって欲しい。これは孤独をかき消すための自己満足行為なんだ。なんて、他人にそんなこと言えないな。
「ノートに文章を書いて、自分の考えをまとめるようなものだよ。案外楽しいぞ。ルーカスもやってみたらどうだ」
軽い口調で言い返してみる。すると、ルーカスは表情を少しだけ和らげた。
「悪くない理由だな。しかし、せっかく魔法学園にいるのだから他人と話したらどうだ。家でもアルロとサムは話し合えるだろう」
ルーカスに痛いことを言われた。確かにそうなんだけど、それが出来たら苦労しない。僕に友達がいない事実を突きつけて、ルーカスは楽しいのか。性格悪いな。
「僕はハーフエルフだから、人間の生徒へたくさん話しかけたら怖がらせてしまうだろう。これは配慮だよ。ルーカスにも分かるだろう」
声を少し潜めて伝えてみる。こんなこと言いたくないのにな。なんだかすっごく疲れた。今日家へ帰ったらすぐ寝てしまおう。ふて寝というやつだ。
「僕は気にしないが」
ルーカスは何でもないように言った。あれ。思った反応と違う。もっと意地悪なことを言ってくるかと思った。
「そうか。じゃあもっと話そう。でも、何を語ればいいんだ。魔法の話でもすればいいのか。僕は幻覚魔法や変身魔法が好きだ。ルーカスは魔術式が飛び抜けて上手いというウワサを聞いたが、本当か。もし良かったら今度教えてくれ。ああ、すまない。ついテンションが上がって話しすぎてしまった」
変にはしゃいでしまったことを謝る。ハーフエルフの僕なんかがこんな風に話すべきじゃない。もっと遠慮しないと怒られてしまう。
「確かに少しうるさかったが、別に構わない。なぜなら、この教室にはもっとうるさい生徒が多いからだ。アルロが多少頑張ったところで、騒音が少し増えるくらいだ」
ルーカスは静かに言って、そして黙った。皮肉屋なのかな。ちょっと取っ付きにくい。やっぱりルーカスは僕とあまり話したくないんじゃないか。
「うん」
とりあえず返事だけして僕も黙った。騒がしい教室の中で、ルーカスと僕の席の辺りだけが妙に静かになった。気まずい。
「また話してくれると嬉しい」
ルーカスが小さな声で呟いた。聞き間違えかと思ったけれど、ルーカスの青い瞳は確かに僕を見ていた。
僕はルーカスに嫌われていたと思っていたけれど、意外とそうでもなさそうだった。ルーカスはよく分からない奴だ。でも、求めてくれること自体は嬉しい。僕は単純だから、それだけで好きになってしまいそうだ。もちろん友情的な意味でだけど。
「ああ。またいっぱい話そう」
笑顔で言ってみる。すると、ルーカスもほんの少しだけ笑みを浮かべたように見えた。今日は嬉しい日だな。
「ごほん」
誰かがわざとらしい咳払いをした。それは周囲の生徒が意図的に行ったことで。きっと注意喚起だった。
ハーフエルフのアルロなんかが、人間であるルーカスに近づくな。周囲はきっとそう思っている。それが被害妄想でないこともよく分かる。だって、他の生徒達の視線がとっても冷たい。もはや睨んできている。
失敗だった。僕はルーカスに関わるべきじゃなかった。そもそもルーカスは見た目が良くて、成績優秀者でもあることから、他人から尊敬を集めているタイプだ。つまり、ルーカスのファンは意外と多い。
「ハーフエルフを観察出来る機会は少ない。僕が魔法学園を卒業すれば、こんな機会はなかなか訪れないだろう。僕は貴重な機会を逃したくない。だから、僕はアルロと話して調べたいんだ。邪魔する者には容赦しない」
なのに、ルーカスが唐突に宣戦布告し出した。なんで周りにケンカを売り出すんだ。このルーカスって人は面白すぎだろう。ルーカスの発言を聞いた人はみんなびっくりしているじゃないか。この空気どうするんだよ。
休憩時間終了のチャイムが鳴り響くと、ルーカスは何事もなかったように教科書を準備し始めた。肝が座りすぎていて怖いな。ルーカスはちょっとやばい人かもしれない。
そう言って、ルーカスの様子を見てみる。ルーカスは実に渋い表情をしていた。その文句ありそうな顔はなんだ。
「その魔法人形サムは腹話術のような仕組みで動いているのだろう。つまり、アルロの一人芝居に過ぎないわけだ。なのにアルロとサムが議論している。それに一体何の意味があるのだろう。結局どちらもアルロの意見なのだから、脳内で会話をすればいい。その方が口も疲れずに済む」
ルーカスの言うことも分かる。でも、僕は誰かと声を出して話し合いたいんだ。例え人形相手でも話し相手になって欲しい。これは孤独をかき消すための自己満足行為なんだ。なんて、他人にそんなこと言えないな。
「ノートに文章を書いて、自分の考えをまとめるようなものだよ。案外楽しいぞ。ルーカスもやってみたらどうだ」
軽い口調で言い返してみる。すると、ルーカスは表情を少しだけ和らげた。
「悪くない理由だな。しかし、せっかく魔法学園にいるのだから他人と話したらどうだ。家でもアルロとサムは話し合えるだろう」
ルーカスに痛いことを言われた。確かにそうなんだけど、それが出来たら苦労しない。僕に友達がいない事実を突きつけて、ルーカスは楽しいのか。性格悪いな。
「僕はハーフエルフだから、人間の生徒へたくさん話しかけたら怖がらせてしまうだろう。これは配慮だよ。ルーカスにも分かるだろう」
声を少し潜めて伝えてみる。こんなこと言いたくないのにな。なんだかすっごく疲れた。今日家へ帰ったらすぐ寝てしまおう。ふて寝というやつだ。
「僕は気にしないが」
ルーカスは何でもないように言った。あれ。思った反応と違う。もっと意地悪なことを言ってくるかと思った。
「そうか。じゃあもっと話そう。でも、何を語ればいいんだ。魔法の話でもすればいいのか。僕は幻覚魔法や変身魔法が好きだ。ルーカスは魔術式が飛び抜けて上手いというウワサを聞いたが、本当か。もし良かったら今度教えてくれ。ああ、すまない。ついテンションが上がって話しすぎてしまった」
変にはしゃいでしまったことを謝る。ハーフエルフの僕なんかがこんな風に話すべきじゃない。もっと遠慮しないと怒られてしまう。
「確かに少しうるさかったが、別に構わない。なぜなら、この教室にはもっとうるさい生徒が多いからだ。アルロが多少頑張ったところで、騒音が少し増えるくらいだ」
ルーカスは静かに言って、そして黙った。皮肉屋なのかな。ちょっと取っ付きにくい。やっぱりルーカスは僕とあまり話したくないんじゃないか。
「うん」
とりあえず返事だけして僕も黙った。騒がしい教室の中で、ルーカスと僕の席の辺りだけが妙に静かになった。気まずい。
「また話してくれると嬉しい」
ルーカスが小さな声で呟いた。聞き間違えかと思ったけれど、ルーカスの青い瞳は確かに僕を見ていた。
僕はルーカスに嫌われていたと思っていたけれど、意外とそうでもなさそうだった。ルーカスはよく分からない奴だ。でも、求めてくれること自体は嬉しい。僕は単純だから、それだけで好きになってしまいそうだ。もちろん友情的な意味でだけど。
「ああ。またいっぱい話そう」
笑顔で言ってみる。すると、ルーカスもほんの少しだけ笑みを浮かべたように見えた。今日は嬉しい日だな。
「ごほん」
誰かがわざとらしい咳払いをした。それは周囲の生徒が意図的に行ったことで。きっと注意喚起だった。
ハーフエルフのアルロなんかが、人間であるルーカスに近づくな。周囲はきっとそう思っている。それが被害妄想でないこともよく分かる。だって、他の生徒達の視線がとっても冷たい。もはや睨んできている。
失敗だった。僕はルーカスに関わるべきじゃなかった。そもそもルーカスは見た目が良くて、成績優秀者でもあることから、他人から尊敬を集めているタイプだ。つまり、ルーカスのファンは意外と多い。
「ハーフエルフを観察出来る機会は少ない。僕が魔法学園を卒業すれば、こんな機会はなかなか訪れないだろう。僕は貴重な機会を逃したくない。だから、僕はアルロと話して調べたいんだ。邪魔する者には容赦しない」
なのに、ルーカスが唐突に宣戦布告し出した。なんで周りにケンカを売り出すんだ。このルーカスって人は面白すぎだろう。ルーカスの発言を聞いた人はみんなびっくりしているじゃないか。この空気どうするんだよ。
休憩時間終了のチャイムが鳴り響くと、ルーカスは何事もなかったように教科書を準備し始めた。肝が座りすぎていて怖いな。ルーカスはちょっとやばい人かもしれない。
13
あなたにおすすめの小説
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
【完結済】氷の貴公子の前世は平社員〜不器用な恋の行方〜
キノア9g
BL
氷の貴公子と称えられるユリウスには、人に言えない秘めた想いがある――それは幼馴染であり、忠実な近衛騎士ゼノンへの片想い。そしてその誇り高さゆえに、自分からその気持ちを打ち明けることもできない。
そんなある日、落馬をきっかけに前世の記憶を思い出したユリウスは、ゼノンへの気持ちに改めて戸惑い、自分が男に恋していた事実に動揺する。プライドから思いを隠し、ゼノンに嫌われていると思い込むユリウスは、あえて冷たい態度を取ってしまう。一方ゼノンも、急に避けられる理由がわからず戸惑いを募らせていく。
近づきたいのに近づけない。
すれ違いと誤解ばかりが積み重なり、視線だけが行き場を失っていく。
秘めた感情と誇りに縛られたまま、ユリウスはこのもどかしい距離にどんな答えを見つけるのか――。
プロローグ+全8話+エピローグ
【完結済】どんな姿でも、あなたを愛している。
キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。
声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。
「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」
ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。
失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。
全8話
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
婚約破棄された公爵令嬢アンジェはスキルひきこもりで、ざまあする!BLミッションをクリアするまで出られない空間で王子と側近のBL生活が始まる!
山田 バルス
BL
婚約破棄とスキル「ひきこもり」―二人だけの世界・BLバージョン!?
春の陽光の中、ベル=ナドッテ魔術学院の卒業式は華やかに幕を開けた。だが祝福の拍手を突き破るように、第二王子アーノルド=トロンハイムの声が講堂に響く。
「アンジェ=オスロベルゲン公爵令嬢。お前との婚約を破棄する!」
ざわめく生徒たち。銀髪の令嬢アンジェが静かに問い返す。
「理由を、うかがっても?」
「お前のスキルが“ひきこもり”だからだ! 怠け者の能力など王妃にはふさわしくない!」
隣で男爵令嬢アルタが嬉しげに王子の腕に絡みつき、挑発するように笑った。
「ひきこもりなんて、みっともないスキルですわね」
その一言に、アンジェの瞳が凛と光る。
「“ひきこもり”は、かつて帝国を滅ぼした力。あなたが望むなら……体験していただきましょう」
彼女が手を掲げた瞬間、白光が弾け――王子と宰相家の青年モルデ=リレハンメルの姿が消えた。
◇ ◇ ◇
目を開けた二人の前に広がっていたのは、真っ白な円形の部屋。ベッドが一つ、机が二つ。壁のモニターには、奇妙な文字が浮かんでいた。
『スキル《ひきこもり》へようこそ。二人だけの世界――BLバージョン♡』
「……は?」「……え?」
凍りつく二人。ドアはどこにも通じず、完全な密室。やがてモニターが再び光る。
『第一ミッション:以下のセリフを言ってキスをしてください。
アーノルド「モルデ、お前を愛している」
モルデ「ボクもお慕いしています」』
「き、キス!?」「アンジェ、正気か!?」
空腹を感じ始めた二人に、さらに追い打ち。
『成功すれば豪華ディナーをプレゼント♡』
ステーキとワインの映像に喉を鳴らし、ついに王子が観念する。
「……モルデ、お前を……愛している」
「……ボクも、アーノルド王子をお慕いしています」
顔を寄せた瞬間――ピコンッ!
『ミッション達成♡ おめでとうございます!』
テーブルに豪華な料理が現れるが、二人は真っ赤になったまま沈黙。
「……なんか負けた気がする」「……同感です」
モニターの隅では、紅茶を片手に微笑むアンジェの姿が。
『スキル《ひきこもり》――強制的に二人きりの世界を生成。解除条件は全ミッション制覇♡』
王子は頭を抱えて叫ぶ。
「アンジェぇぇぇぇぇっ!!」
天井スピーカーから甘い声が響いた。
『次のミッション、準備中です♡』
こうして、トロンハイム王国史上もっとも恥ずかしい“ひきこもり事件”が幕を開けた――。
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる