伯爵令息アルロの魔法学園生活

あさざきゆずき

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第十話 リスク

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 放課後、野次馬の集まる教室で、ロドニーは楽しそうに語り出した。

「魔法決闘。それは魔法使い達が戦うことー。魔法学園では仲のいい生徒同士じゃないと基本的に行われない。なぜなら、一歩間違うと危険な事故につながるから。つまり、ボクとアルロ君が魔法決闘を行えば、命を預け合うくらい二人は仲良しってことになるっ」

 ロドニーはそう言って、指先に光魔法を宿した。キラキラとした輝きは、お祭りのような雰囲気を生み出す。でも、ロドニーの発言自体が極めて物騒だ。

「ロドニーが僕との友好関係を第三者に示すため、魔法決闘というイベントを行いたい。そういう考えだよな」

 動揺を隠しつつ聞いてみる。

「そう。ボクはアルロ君と仲良くなりたいの。そうすれば、ボクがアルロ君の家に放火した、なんていう疑いも晴れるでしょ。とっても名案だと思うんだー。これはアルロ君にもいいことなんだよ。ボクがアルロ君の後ろ盾になってあげられる」

 ロドニーがそう言いながら、指を打ち鳴らす。すると周囲に花びらが舞い上がった。恐らく植物魔法だろう。

「確かにいい案だ。不可能だという点を除けばな」

 ルーカスが静かに言った。怒りのにじみ出た低い声だ。

「なんでー。言いがかりで邪魔してくるの良くないと思うな。黙っておいてよー。どうせルーカス君はアルロ君の恋人でもない、ただの他人でしょ。ああでも、ルーカス君はアルロ君とルームメイトになったんだっけ。寮で同室になっただけなのに、こんな過保護面してくる奴って面倒くさいよ。アルロ君がルーカス君を嫌っちゃうー」

 ロドニーがそう言いながらニヤニヤしている。面倒なことになってきたな。

「ルーカスが不可能だと言う理由は、僕に魔法決闘の練習経験がないからで合っているか」

 とりあえずルーカスに向かって聞いてみた。

「そうだ。家によっては、家庭教師が魔法決闘訓練を行っている。しかし、アルロは間違いなく受けていないだろう。アルロの魔法自体は悪くないが戦闘向きではないし、日頃から隙だらけで危なっかしい。そんなアルロが魔法決闘なんかやってみろ、命を落とす可能性は高い」

 確かにルーカスの言う通りだと思う。魔法決闘はとってもハイリスクだから、一般的に考えたら引き受けるべきではない。

 けれど、僕の場合は本当にそれでいいのだろうか。

「分かっている。でも、僕はハーフエルフだから敵が多い。どのみち身を守る戦闘力を身につける必要がある。それに、魔法決闘で実力を示すことが出来れば、僕を攻撃しようと考える第三者が減るかもしれない」
 
 考えを伝えてみる。どうせならロドニーとの魔法決闘を利用した方がいいと、僕は思っている。

「アルロ。危険だぞ。それでもいいのか」

 ルーカスが念押しで聞いてくる。

「うん。どうせ危ない人生だから、リスクを取らないといけないこともある」

 ためらいながらも言ってみた。本当は怖いけれど、ロドニーとの魔法決闘は確実に利益があるから。

「アハハッ。いいね。ボクはアルロ君のこと好きかもー。アルロ君には練習期間が必要そうだから、魔法決闘日は一ヶ月後にしようかっ」

 ロドニーが笑いながら言って、そのまま踊り出した。変なダンスだったけれど、その動きはとても鋭くて、恐らく戦い慣れた人間の動きだった。
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