伯爵令息アルロの魔法学園生活

第二十六話 種明かし

　暗号文を解読すると、そこには様々なことが書いてあった。

『エルフ第一主義団体は、純粋なエルフの権利を主張している。そのため、エルフ第一主義団体はエルフ以外の種族をとても嫌っていて、人間も絶滅させようとしている。ケネスの家族を殺したのもエルフ第一主義団体であり、ケネスはエルフ第一主義団体の憎んでいる』

　とにかくエルフ第一主義団体って相当やばいんだな。

『エルフ第一主義団体は、ハーフエルフのことも憎んでいて、エルフの血を穢す半端者として認識している。そのため、以前よりエルフ第一主義団体はアルロのことを観察し、悪評を振り撒いていた』

　暗号文には自分のことについても書かれていた。まさか裏でそんなことになっていたなんて思いもしなかった。

『ハーフエルフであるアルロが孤独である内は、エルフ第一主義団体もまだ大人しかった。しかし、アルロがルーカスやロドニーと関わりを持ち始めた頃から、エルフ第一主義団体の動きは活発になった。ハーフエルフが人間と仲良くなることを許せなかったのか、エルフ第一主義団体はアルロの暗殺をほのめかすようになった。アルロの家を放火した犯人も、エルフ第一主義団体である可能性が極めて高い』

　暗号文に怖すぎることも書いてある。僕が人間と仲良くしたから、エルフ第一主義団体が怒ったって意味不明なんだが。どういうことだよ。

『エルフ第一主義団体のエルフ達が何人も、魔法学園内へ侵入するようになった。そのため、ケネスはエルフ第一主義団体を懲らしめようと計画した。ケネスはロドニーを巻き込んで計画を練り、魔法決闘というイベントを開催することにした。つまり、魔法決闘を通してアルロとより一層関わりを持ち、エルフ第一主義団体を激怒させて誘き寄せることとした』

　暗号文を読んでいて思ったんだが、これってケネスが僕をエサにして、エルフ第一主義団体を釣ってぶっ叩こうとしているという意味だよな。

『危険だから止めろと僕は言ったのだが、ケネスは止まらなかった。このままケネスは地下水路へ行って、エルフ第一主義団体と戦うつもりらしい。ケネスがバカな真似をして命を落とすのは見ていられないので、僕は救いに行こうと思う』

　この暗号文の『僕』って誰だろう。多分ルーカスじゃないよな。ジュードのことだろうか。

『しかし、エルフ第一主義団体が狙っているのはアルロだ。このままではアルロが殺される可能性は非常に高い。ケネスがロドニーを派遣して、アルロの護衛につくよう命令した。しかし、ロドニーではエルフ第一主義団体に負ける可能性もある。そのため、僕はアルロを睡眠魔法薬で眠らせて、僕の部屋へ監禁することとした。僕が結界魔法を張って部屋を守ってある。ただし、結界魔法ごと部屋が潰されるなど、不測の事態が起こる可能性も否めない。何かあったらアルロは結界を破って逃げてくれ。この暗号文の紙を燃やせば、結界魔法が解けるように設定してある。では幸運を祈る』

　やっぱりこの暗号文を書いたのはジュードで間違いなさそうだ。

　困ったな。正直行って僕も地下水路へ向かいたいけれど、エルフ第一主義団体が狙っているのは僕らしい。僕が地下水路へ行けば、地下水路以外にいるエルフ第一主義団体が僕に着いてきてしまう。つまり、地下水路に敵を集結させるハメになるだろう。

　じゃあ、僕はここで大人しく守られているしかないのか。なんだか悔しいな。僕も何かしたいのに。

「ボクもう無理かもー。楽しく戦えないよーっ。死んじゃいそうっ。本当にヤバいっ」

　ふと、ロドニーの悲鳴が聞こえてきた。窓の外からだ。