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難易度の高い自宅
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世田谷ダンジョン7層。
ここは『リザードマン・スカウト』や『ポイズン・スライム』が潜む、視界の悪い湿地エリアだ。
だが、そこには不釣り合いな「怒号」と「統率された足音」が響き渡っていた。
「ボスの歩く道に泥を跳ね飛ばしたな、このトカゲ野郎がッ!」
「囲め囲め! 一匹も逃がすんじゃねえぞ!」
11人のチンピラたちが、リザードマンの群れを完全に包囲している。
かつて1層でひよりが一人で震えていた頃が嘘のように、今の「ひより組」は盤石だ。
「……みんな、あんまりいじめちゃダメだよ。……【かつあげ】」
ひよりがスッと手をかざすと、包囲された魔物たちから魔素(経験値)と、貴重な『リザードの銀鱗』が次々と吸い上げられていく。
高い運の数値は伊達ではない。
通常なら数時間の粘りが必要なレア素材が、ひよりが歩く先々で「献上」されるように集まってくる。
「……よし、今日はこれくらいにしようか。みんな、お疲れ様。影に戻って休んでね」
「「「「お疲れ様でした、ボス!!!!」」」」
11人の屈強な男たちが、ひよりの前で一斉に頭を下げる。
その光景は、掲示板で囁かれている「ボス」そのものだった。
ひよりは、影の中にファミリーを収容し、スーツの乱れを確認すると、地上へと続く階段を登った。
ダンジョンを出て、受付を通る。
「三上くん、お疲れ様。……今日も、6層あたりがすごく静かだったって報告が入ってるよ」
「あはは、そうですか? 7階にいたのでわかりませんでした」
ひよりは鈴のような声で微笑み、足早に後にした。
彼にとって、ダンジョン攻略は「強くなるための修行」だが、家路につけば普通の大学生に戻る。
(お腹すいたな……。今日は母さん、何作ってくれてるかな)
世田谷にある三上家。
手入れの行き届いたその玄関を開けた瞬間、ひよりは違和感を覚えた。
いつもなら母・華世(かよ)の鼻歌が聞こえてくるはずだが、今日は複数の華やかな笑い声が聞こえてくる。
「ただいまー……」
リビングの扉を開けた瞬間
「あ、ひより! お帰りなさい! 今ね、凛ちゃんと一緒にあなたの小さい頃のアルバムを見てたのよ!」 「……え?」
そこには、エプロン姿でニコニコしている母・華世と、そして――。
「世田谷の剣姫」として恐れられ、Lv.50台を誇るトップ探索者、赤城凛が、顔を真っ赤にしながらひよりの幼稚園時代の写真(お遊戯会でうさぎさんをやっている姿)を凝視していた。
「ひ、ひよりさん……お帰りなさい……っ。この、うさぎさんの耳……すごく……尊いです……!」
「な、ななな、何してるんですか凛さん!? 母さんも! それ見せちゃダメなやつ!」
敏捷特化のひよりの速度をもってしても、母の手元にあるアルバムを奪うことはできなかった。
なぜなら、母・華世が「これも可愛いわよ、凛さん。これ、泥遊びして泣いちゃった時の」と、次から次へと爆弾を投下するからだ。
「母さん! 凛さんは忙しい人なんだから、そんなのに付き合わせちゃ……」
「いいえ! 全然忙しくありません! むしろ、この『ひよりさん(幼少期)』の情報は、私の今後の探索……いえ、人生において不可欠なものです!」
凛の瞳は、ダンジョンでボスを睨む時よりも鋭く、そして熱く燃えていた。
「凛ちゃんにね、この前頂いたポーションのお礼に、お肉を買ってきたのよ。だから連絡して今夜は凛さんも一緒に食べましょうって」
「あの……お母様……華世さん。本当に良かったのでしょうか、ひよりさんも、ご家族もお疲れなのに……」
「あらぁ、凛ちゃんならお母さんって呼ばれたいわぁ」
「母さん!凜さんが困ってる!!」
凛は、おか…おか…と言いながら真っ赤になって固まっている。
(……ダンジョンより、家の方が緊張する……)
ひよりは、スーツのネクタイを緩めながら、ソファの端で小さくなった。
6層を恐怖で支配する「ボス」としての顔はどこへやら、ここではただの、母と可愛い年下の女性に振り回される可愛い息子でしかなかった。
「……あ、ひよりさん。そのスーツ、すごく似合ってます。……でも、うさぎさんも捨てがたいです」
「凛さん、もうその話はやめてください……!」
赤面するひよりを見て、凛は心の中で「煽り虫きゅん、最高……!」と悶絶し、華世は「仲良しねぇ」とポーションを部屋に振りまく。
三上家の夜は、地下階層の戦いよりも、ある意味で「攻略難易度」の高い時間が流れていくのだった。
ここは『リザードマン・スカウト』や『ポイズン・スライム』が潜む、視界の悪い湿地エリアだ。
だが、そこには不釣り合いな「怒号」と「統率された足音」が響き渡っていた。
「ボスの歩く道に泥を跳ね飛ばしたな、このトカゲ野郎がッ!」
「囲め囲め! 一匹も逃がすんじゃねえぞ!」
11人のチンピラたちが、リザードマンの群れを完全に包囲している。
かつて1層でひよりが一人で震えていた頃が嘘のように、今の「ひより組」は盤石だ。
「……みんな、あんまりいじめちゃダメだよ。……【かつあげ】」
ひよりがスッと手をかざすと、包囲された魔物たちから魔素(経験値)と、貴重な『リザードの銀鱗』が次々と吸い上げられていく。
高い運の数値は伊達ではない。
通常なら数時間の粘りが必要なレア素材が、ひよりが歩く先々で「献上」されるように集まってくる。
「……よし、今日はこれくらいにしようか。みんな、お疲れ様。影に戻って休んでね」
「「「「お疲れ様でした、ボス!!!!」」」」
11人の屈強な男たちが、ひよりの前で一斉に頭を下げる。
その光景は、掲示板で囁かれている「ボス」そのものだった。
ひよりは、影の中にファミリーを収容し、スーツの乱れを確認すると、地上へと続く階段を登った。
ダンジョンを出て、受付を通る。
「三上くん、お疲れ様。……今日も、6層あたりがすごく静かだったって報告が入ってるよ」
「あはは、そうですか? 7階にいたのでわかりませんでした」
ひよりは鈴のような声で微笑み、足早に後にした。
彼にとって、ダンジョン攻略は「強くなるための修行」だが、家路につけば普通の大学生に戻る。
(お腹すいたな……。今日は母さん、何作ってくれてるかな)
世田谷にある三上家。
手入れの行き届いたその玄関を開けた瞬間、ひよりは違和感を覚えた。
いつもなら母・華世(かよ)の鼻歌が聞こえてくるはずだが、今日は複数の華やかな笑い声が聞こえてくる。
「ただいまー……」
リビングの扉を開けた瞬間
「あ、ひより! お帰りなさい! 今ね、凛ちゃんと一緒にあなたの小さい頃のアルバムを見てたのよ!」 「……え?」
そこには、エプロン姿でニコニコしている母・華世と、そして――。
「世田谷の剣姫」として恐れられ、Lv.50台を誇るトップ探索者、赤城凛が、顔を真っ赤にしながらひよりの幼稚園時代の写真(お遊戯会でうさぎさんをやっている姿)を凝視していた。
「ひ、ひよりさん……お帰りなさい……っ。この、うさぎさんの耳……すごく……尊いです……!」
「な、ななな、何してるんですか凛さん!? 母さんも! それ見せちゃダメなやつ!」
敏捷特化のひよりの速度をもってしても、母の手元にあるアルバムを奪うことはできなかった。
なぜなら、母・華世が「これも可愛いわよ、凛さん。これ、泥遊びして泣いちゃった時の」と、次から次へと爆弾を投下するからだ。
「母さん! 凛さんは忙しい人なんだから、そんなのに付き合わせちゃ……」
「いいえ! 全然忙しくありません! むしろ、この『ひよりさん(幼少期)』の情報は、私の今後の探索……いえ、人生において不可欠なものです!」
凛の瞳は、ダンジョンでボスを睨む時よりも鋭く、そして熱く燃えていた。
「凛ちゃんにね、この前頂いたポーションのお礼に、お肉を買ってきたのよ。だから連絡して今夜は凛さんも一緒に食べましょうって」
「あの……お母様……華世さん。本当に良かったのでしょうか、ひよりさんも、ご家族もお疲れなのに……」
「あらぁ、凛ちゃんならお母さんって呼ばれたいわぁ」
「母さん!凜さんが困ってる!!」
凛は、おか…おか…と言いながら真っ赤になって固まっている。
(……ダンジョンより、家の方が緊張する……)
ひよりは、スーツのネクタイを緩めながら、ソファの端で小さくなった。
6層を恐怖で支配する「ボス」としての顔はどこへやら、ここではただの、母と可愛い年下の女性に振り回される可愛い息子でしかなかった。
「……あ、ひよりさん。そのスーツ、すごく似合ってます。……でも、うさぎさんも捨てがたいです」
「凛さん、もうその話はやめてください……!」
赤面するひよりを見て、凛は心の中で「煽り虫きゅん、最高……!」と悶絶し、華世は「仲良しねぇ」とポーションを部屋に振りまく。
三上家の夜は、地下階層の戦いよりも、ある意味で「攻略難易度」の高い時間が流れていくのだった。
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