少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei

文字の大きさ
65 / 88

65 ナビの秘密とパルトスの街への帰還 1

しおりを挟む
「本当に行ってしまうのか?」
 東の端の海岸まで〈走行魔道具〉で送ってくれたミランダ署長が、名残惜し気にそう言った。

「はい。でも、また必ず立ち寄らせていただきますよ。魔法や魔道具について学びたいですから」
 俺としては、ゆっくりこの国に滞在して、魔族の持つ魔法や魔道具の知識を学びたいと思っていた。だが、現在、守り神のアレッサが神域に帰ってしまったことで、魔族の国は大きな混乱の中にあった。この混乱が落ち着くまでは、しばらく時間がかかるだろう。

 まあ、欲しいと思ったいくつかの魔道具は買ってストレージにしまっているけどね。

「ぜひ、また遊びに来てくれたまえ。その頃には、たぶん今より少しマシな国になっていると思うよ。ねえ、署長?」
 ランベルトさんが、俺と握手をしながらそう言った。

「ああ、それは私が責任をもってやり遂げるつもりだ。魔族は自ら滅びの道を選ぶほど、愚かではないと信じている」
 ミランダ署長は、強い決意のこもった目で頷いた。

「では、皆さんお元気で。ドラン先生によろしくお伝えください」
「お世話になりましたです」
 俺とポピィは頭を下げてそう言うと、手を振りながら崖の方へ歩いていった。そして、崖の端でもう一度振り返って小さく頭を下げた後、俺たちは崖の下へ降りていった。


♢♢♢

 俺たちは、来た時と同じように、ストレージから一本マストの小船を出すと波打ち際まで押していき、ボートが波に乗ったところで船に飛び乗る。後は魔法でマストに風を送るだけだ。

 辺りは夜のような薄暗さで、波も穏やかだったが、来たとき現れたリッチの姿はなかった。たぶん、俺がズボンのポケットに入れている印章の魔力を感じて、どこかに隠れているのだろう。
 そりゃあ、自分たちの支配神の気配を感じたらビビるだろうね。

 それからほどなく対岸に着いた俺たちは、死の谷を通って再びケイドスの島の花園に帰ってきた。

 俺とポピィは、丘の上のセリーヌの墓のそばに腰を下ろして、軽く昼食をとった。その途中で、ポピィにこう告げた。
「ポピィ、俺はこれを食べ終わったら少し瞑想に入る。だから、少し離れた所で見張りをしてほしいんだ。座りながらでかまわない、危険なことはまず無いだろうからな。頼めるか?」

 ポピィは怪訝な表情ながらも頷いた。
「は、はい、分かったです」


 ポピィが俺から少し離れた場所で見張りを始めたのを確認してから、俺は座りなおして目をつぶった。
(さて、ナビさん、話してもらおうか)

『……そうですね。ここに来た時から覚悟はしていましたから……』
 ナビはあきらめたようにそう言った。

(てかさあ……今考えると、お前、最初から、俺をこの場所へ導いてきたんじゃないのか?)

『そ、そんなことはありませんよ』
 俺の耳に、ナビがへたな口笛を吹いている音が聞こえたような気がした。

(まあ、いいや。それで、セリーヌさんとお前はどういう関係なんだ?)

『さて、どこから話したらいいのか……そうですね、まずセリーヌですが、彼女は天に召された後、この世界の創造神ケイノス様の御使(みつか)いである上級天使になりました。主に、ケイノス様の代わりに神託を告げたり、転生する魂を転生先の母体に届けたりするのが仕事でした。
 そんなある日、ケイノス様が彼女にこう言いました……』


~《ある日の神界にて》~

「このところ、我が担当する星域が広くなってきてな、いささか手が回らなくなってきたのだ。そこでセリーヌ、そなたを神に昇格させ、いくつかの星を代わりに担当してもらおうと思うが、どうじゃな?」

「は、はい、わたくしには過分なお役目とは思いますが、神命であれば、謹んで拝命いたします」

「うむ、もちろん戸惑いもあろう、今すぐとは言わぬ。そこで、神の仕事がどのようなものか、学ぶために、そなたに一つ仕事を頼みたい……」

 主神ケイノスはそう言うと、左手を前に出して手のひらを上に向けた。次の瞬間、その手のひらの上に、青白く、か細い光を放つ魂が現れた。
 セリーヌの目から見ても、その魂はやせ細り、今にも消えそうなほど頼りなく見えた。

「……この魂は、我の知り合いの神から託されたものだ。〈地球〉という名の、魔素の少ない星で死んだ若い男だそうだ。かの神が言うには、この魂の元の持ち主は、魔素の多い、とある星で、目立たぬながら多くの人々を救い、英雄に劣らぬ働きをしたものの、報われぬまま死んでしまった男らしい。そして、この者は、次に転生するときは〝魔法などない世界〟で生きたいと願ったそうだ。
 そして、その願いはかなえられ、彼は〈地球という魔法のない星〉に転生した。ところが、ここでもまた、彼は自分が属する組織のために、命を削って働き、ついには若くして過労のために死んでしまった……」

 主神ケイノスは、そこで小さくため息を吐いてから、セリーヌを見つめた。そして、こう言葉を続けた。
「……この魂を、我が担当する比較的平和な、《フォルカナ》という星に転生させようと思う。そこで、そなたに、この魂を見守りながら、《その星を繫栄に導く関わり方》を学んでもらおうと思う。されば、これをそなたに授けよう……」

 主神はそう言うと、今度は右手をセリーヌに差し出した。その手のひらには、青白く光る小さな四角い透明な板のようなものがあった。

「……これは、〈アカシックレコード〉の情報の一部を記憶させた魔力体だ。自ら学び進化する疑似生命体(ホムンクルス)と同じ機能を持っておる。これに、そなたの魂の一部を組み込み、さらに、こちらの魂と同化させる。そうすれば、この魂が転生した人物の目を通して、フォルカナの世界を見ることができ、さらには、その人物に適宜助言を与えることで、世界へのより良い関わり方や影響を学ぶことができよう。どうかな?」

「はい、分かりました。ただ、それだけ魂に他のものが付着するのですから、その転生者には何か影響はないのでしょうか?」

「それは心配ない。むしろ、メリットの方が多いぞ。例えば、魔力量は常人よりはるかに多いだろうし、スキルの獲得や魔力調節の能力の向上においても有利に働くだろう。ただし……その者が、どのような人生を望むかによってデメリットも生まれてくるやもしれぬ。なぜなら、その者が望めば、〈救国の英雄〉にも〈厄災の魔王〉にもなれる能力を持つわけだからな。
 それゆえ、そなたの導きが重要になるのだ。もし、危険な未来が見えたら、そなたの魂を引き離して、元に戻すがよい。そうすれば、魔力体も同時にその者から離れ、能力も失われるはずだ」

「分かりました。心して導いてまいりましょう」

「うむ、では、頼んだぞ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 読んでくださって、ありがとうございます。
 少しでも面白いと思われたら、📣の応援よろしくお願いいたします。
 皆様の応援が、作者の書き続ける力となります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...