66 / 88
66 ナビの秘密とパルトスの街への帰還 2
しおりを挟む
~《現実世界》~
「……というわけで、私、ナビは、マスターとともにここにある、というわけです。ジャジャーン♪…… ……マスター? おーい……」
俺は痴呆のように、あんぐりと口を開けて、遠い彼方を見つめていた。
すべてが腑に落ちたと同時に、すべてのことがあまりに現実離れした状況なので、頭や心の整理が追いつかない状態だった。
(ああ、そうか……つまり、なにか?…ナビは、俺にとってのナビゲーションであると同時に、俺自身が、セリーヌ様が《神様になるためのナビゲーション》だったというわけか?)
『おお、さすがはマスター、その視点は思いつきませんでした』
(……褒められても、まったく嬉しくないんだが……だが、まあ、これで納得がいったよ。なんで、村人Aであるはずの俺が、こんなスキルや能力を得られるのか不思議だったからな)
『今まで、黙っていてすみません。あまり早くご自分の秘密を知ってしまうと、歪んだ考え方や生き方になってしまうのではないかと、不安がありましたので……怒ってますか、マスター?』
(いや、怒ってないよ。今はセリーヌ様の言葉と考えていいんだな?)
『はい、今、意識はセリーヌのものです。初めてお話しますね、トーマ。これからもどうかよろしくお願いします』
(はい、よろしくお願いします。それで、これまでのところ、俺はお役に立てていますか?)
『ええ、もちろんです! ああ、トーマ、期待以上なのですよ。できれば、今すぐにでも地上に降りて、あなたを抱きしめたいくらいです!』
(あ、いや、それは……でも、それなら良かったです。これからも、出来るだけ頑張りますね)
『ええ、でも、無理はだめですよ。ゆっくり、楽しく、あなたの人生を楽しんでください。あっ、それから、わたくしのことは意識しないで、今まで通り、ナビと仲良くしてくださいね。では、いったん意識を切ります。また、いずれお話ししましょう』
俺はふうっとため息を吐いて、青空を見上げた。
『マスター、今まで通り、仲良くお願いしますね』
どうやら、今は〈魔力体〉のナビに戻ったようだ。
(ああ、また、よろしくな。……あ、ところで、ナビ、リンド王の魂はもう転生したのか?)
『ええっと、それは私の情報ストックにはありません。ちょっと、セリーヌ様に聞いてみます。少々お待ちを……』
ナビはそう言うと、いったん気配を消した。が、すぐに戻って来て、こう言った。
『……お答えします。リンド・バルセンの魂はまだ転生していません。神界の特別な場所で〈そのとき〉が来るのを待っている状態ですね』
(なるほど。次に転生するにしても、歴史に関わる重要人物になるだろうからな。生まれ出るタイミングを待っているわけか)
『ああ、いや、それが……本人は、次に生まれ変わるなら、普通の人間に生まれて、平凡でも温かく幸せな家庭を持ちたい、と希望していたようです。それだけに、きっと扱いが難しいのではないかと、セリーヌ様が……』
思わず吹き出しそうになったが、いや、笑ってはいけない。その気持ち、痛いほどよく分かる。それこそが究極の幸せだよな、リンド先輩。
俺は立ち上がって、こちらをきょとんと見つめているポピィに、にっこりと微笑みかけた。
「ポピィ、お待たせ。さあ、旅の目的も一応果たしたし、《木漏れ日亭》に帰るとするか」
俺の言葉に、ポピィは元気よく立ち上がって走り寄ってきた。
「はいです。ふふふ……」
♢♢♢
その後、俺たちはケイドス王に別れの挨拶をした。
すでに、使い魔からの報告と、印章の機能(俺は全く気づいていなかったが)を通して、状況を確認していたケイドス王は、アレッサ様の決意を知って感無量という面持ちで、俺たちに感謝の言葉を述べた。(うん、ずいぶんと苦労していたんだね)
御礼ということで、とんでもない魔道具などの宝をくれようとしたので、俺は丁重にそれをお断りし、多量の金貨だけをいただいて、帰路に就いた。(もう、一生遊んで暮らしてもいいのではないだろうか)
再び霧の中を駆け抜け、ノームの村でサンドロ老人と再会した。
まるで、死人が生き返ったのを見たように、最初は怯えていたが、俺たちが別れた後の話をすると、まるで自分の孫たちが帰ってきたみたいに喜んでくれた。
俺は、ラパスの人間の居住区で買ったいくつかの魔道具の中で、〈強火力魔石コンロ〉をお土産として彼にプレゼントした。
「こ、こんなすごい魔道具、本当にもらっていいのか?」
サンドロ老人は、使い方を学んで何度か試しに火をつけた後、目を丸くしてそう尋ねた。
「はい、どうぞ使ってください。自分用にもう一台買っているんで」
まあ、本当は自分の野営用と《木漏れ日亭》へのお土産だったんだけど、自分用のは、また買いに行けばいいからね。
サンドロ老人に、また遊びに来ることを約束して、俺たちは海岸へと向かった。
「わあ、夕日がとってもきれいです、トーマ様」
「おお、本当だな……海はやっぱり大きいな」
スノウに来てもらうまでの、十数分、俺とポピィは丘の斜面に腰を下ろして、真っ赤に染まった夕焼けの空と、どこまでも広がる水平線を静かに眺めるのだった。
「……というわけで、私、ナビは、マスターとともにここにある、というわけです。ジャジャーン♪…… ……マスター? おーい……」
俺は痴呆のように、あんぐりと口を開けて、遠い彼方を見つめていた。
すべてが腑に落ちたと同時に、すべてのことがあまりに現実離れした状況なので、頭や心の整理が追いつかない状態だった。
(ああ、そうか……つまり、なにか?…ナビは、俺にとってのナビゲーションであると同時に、俺自身が、セリーヌ様が《神様になるためのナビゲーション》だったというわけか?)
『おお、さすがはマスター、その視点は思いつきませんでした』
(……褒められても、まったく嬉しくないんだが……だが、まあ、これで納得がいったよ。なんで、村人Aであるはずの俺が、こんなスキルや能力を得られるのか不思議だったからな)
『今まで、黙っていてすみません。あまり早くご自分の秘密を知ってしまうと、歪んだ考え方や生き方になってしまうのではないかと、不安がありましたので……怒ってますか、マスター?』
(いや、怒ってないよ。今はセリーヌ様の言葉と考えていいんだな?)
『はい、今、意識はセリーヌのものです。初めてお話しますね、トーマ。これからもどうかよろしくお願いします』
(はい、よろしくお願いします。それで、これまでのところ、俺はお役に立てていますか?)
『ええ、もちろんです! ああ、トーマ、期待以上なのですよ。できれば、今すぐにでも地上に降りて、あなたを抱きしめたいくらいです!』
(あ、いや、それは……でも、それなら良かったです。これからも、出来るだけ頑張りますね)
『ええ、でも、無理はだめですよ。ゆっくり、楽しく、あなたの人生を楽しんでください。あっ、それから、わたくしのことは意識しないで、今まで通り、ナビと仲良くしてくださいね。では、いったん意識を切ります。また、いずれお話ししましょう』
俺はふうっとため息を吐いて、青空を見上げた。
『マスター、今まで通り、仲良くお願いしますね』
どうやら、今は〈魔力体〉のナビに戻ったようだ。
(ああ、また、よろしくな。……あ、ところで、ナビ、リンド王の魂はもう転生したのか?)
『ええっと、それは私の情報ストックにはありません。ちょっと、セリーヌ様に聞いてみます。少々お待ちを……』
ナビはそう言うと、いったん気配を消した。が、すぐに戻って来て、こう言った。
『……お答えします。リンド・バルセンの魂はまだ転生していません。神界の特別な場所で〈そのとき〉が来るのを待っている状態ですね』
(なるほど。次に転生するにしても、歴史に関わる重要人物になるだろうからな。生まれ出るタイミングを待っているわけか)
『ああ、いや、それが……本人は、次に生まれ変わるなら、普通の人間に生まれて、平凡でも温かく幸せな家庭を持ちたい、と希望していたようです。それだけに、きっと扱いが難しいのではないかと、セリーヌ様が……』
思わず吹き出しそうになったが、いや、笑ってはいけない。その気持ち、痛いほどよく分かる。それこそが究極の幸せだよな、リンド先輩。
俺は立ち上がって、こちらをきょとんと見つめているポピィに、にっこりと微笑みかけた。
「ポピィ、お待たせ。さあ、旅の目的も一応果たしたし、《木漏れ日亭》に帰るとするか」
俺の言葉に、ポピィは元気よく立ち上がって走り寄ってきた。
「はいです。ふふふ……」
♢♢♢
その後、俺たちはケイドス王に別れの挨拶をした。
すでに、使い魔からの報告と、印章の機能(俺は全く気づいていなかったが)を通して、状況を確認していたケイドス王は、アレッサ様の決意を知って感無量という面持ちで、俺たちに感謝の言葉を述べた。(うん、ずいぶんと苦労していたんだね)
御礼ということで、とんでもない魔道具などの宝をくれようとしたので、俺は丁重にそれをお断りし、多量の金貨だけをいただいて、帰路に就いた。(もう、一生遊んで暮らしてもいいのではないだろうか)
再び霧の中を駆け抜け、ノームの村でサンドロ老人と再会した。
まるで、死人が生き返ったのを見たように、最初は怯えていたが、俺たちが別れた後の話をすると、まるで自分の孫たちが帰ってきたみたいに喜んでくれた。
俺は、ラパスの人間の居住区で買ったいくつかの魔道具の中で、〈強火力魔石コンロ〉をお土産として彼にプレゼントした。
「こ、こんなすごい魔道具、本当にもらっていいのか?」
サンドロ老人は、使い方を学んで何度か試しに火をつけた後、目を丸くしてそう尋ねた。
「はい、どうぞ使ってください。自分用にもう一台買っているんで」
まあ、本当は自分の野営用と《木漏れ日亭》へのお土産だったんだけど、自分用のは、また買いに行けばいいからね。
サンドロ老人に、また遊びに来ることを約束して、俺たちは海岸へと向かった。
「わあ、夕日がとってもきれいです、トーマ様」
「おお、本当だな……海はやっぱり大きいな」
スノウに来てもらうまでの、十数分、俺とポピィは丘の斜面に腰を下ろして、真っ赤に染まった夕焼けの空と、どこまでも広がる水平線を静かに眺めるのだった。
30
あなたにおすすめの小説
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる