悪役令嬢は二度婚約を破棄される

くきの助

文字の大きさ
23 / 50

王都では ー元第一王子側近候補ハリスー

しおりを挟む
コンコン

ノックをすると
「入れ」と声がした。

入ると執務机に向かって仕事をしている人物が顔を上げた。
「ハリスか、久しぶりだね。」
そういうとアウリス王子は応接机に移動しソファーに座った。
勧められてハリスも座ると執事がお茶を入れてくれた。
「こうして話すのはいつぶりだったかな。」
アウリス王子が言うので
「そうですね。アウリス様がジョージイ嬢と親密になった頃からですからほぼ一年振りですか?」
「そんなになるんだ」
ちくりと嫌味を言ったつもりだがあっさりと流される。
けれども(ああ、いつものアウリスに戻っている。)と彼のマイペースっぷりにホッとした。

「王家の聞き取りもほぼ終わり、処分も進んでおりますので報告に参りました。」
「そんなかしこまった話し方でなくていいよ。こんな離宮誰もいない。もうハリスも側近候補でもなければ私ももうすぐ王子でもなくなるんだから」
「なら遠慮なく。すっかり落ち着いていて安心したよ。アウリス」
アウリスと俺は幼馴染だ。
侯爵家の次男、年も同じこともあり、側近候補として学園でも行動を共にしていた。

ジョージイ嬢が現れるまでは。

ジョージイ嬢との人目も気にせぬ逢瀬に何度も苦言を呈したところ遠ざけられ、俺は生徒会をやめてしまった。
そこから一年、というわけだ。

「こんな誰も来ない離宮で仕事だけは振られるのだから落ち着きもするよ。」
とため息をつくとお茶を一口飲んだ。
俺も一口お茶を飲むと本題を続けることにした。
「そこで件の話だが。王家の判断としては処分すべきは三人となった。アウリスと、ジョージイ嬢、スモーレイ侯爵令息ラビンだ。」
アウリスが黙って聞いているのでかいつまんでそのまま話す。
アウリスは王の意思である婚約の破棄。安易な王族命令の発令。貴族に混乱を招いたとして、立太子はなし。一年後第二王子のロイドが卒業し立太子と同時にアウリスは城を出ること。
ジョージイ嬢も同じく王の意思である婚約に横槍をいれ、貴族に混乱を招いたとして男爵家は取り潰し。ジョージイ嬢は修道院へ。
スモーレイ侯爵家は息子を管理できていなかったとして侯爵位を王家に返上。伯爵位となり、ラビンは廃嫡の上、男性修道院へ。

ここまで話し終えると、アウリスは口を開いた。
「ラビンは熱心に私とジョージイとの仲を応援してくれていたが、スモーレイ家はノータッチだったんだね。」
「そう。王家も第二王子派の計画の可能性も考えていたのだが、結局は思惑があって動いていたのはラビンだけだった。
ラビンの計画はつたないものだったのに、たまたまそれぞれの思惑が合致して、たまたまうまく行った、というのが顛末だよ。
まあ一番割を食ったのはリズ嬢かな。いきなり北の辺境伯に嫁ぐことになったのだから。」
そこまで一息で話すと、俺はお茶を飲んだ。

ふと顔を上げるとアウリスは穏やかな顔をしていた。
リズ嬢の話は気まずいかと思ったがそうでもないようだ。
そこで俺はずっと思っていた疑問を聞いてみることにした。
「どうして断罪劇なんてやったんだ?」
「やりたかったからだよ」
「定番とはいえ、なんで北の辺境伯だったんだ?北の修道院も定番だろう?修道院なら形だけ入れば寄付金積めばいつでも出られる。リズ嬢の父上も修道院にしていてくれていればって嘆いていたぞ。」
それを聞くとアウリスはフと笑い「お裾分けかな」といった。
「幸せのお裾分け。恋する喜びを分けてあげようと思ったんだ。」
ちょっと的を得ない。
そんな俺の顔を見てアウリスは話し始めた。
「四年前。ジュンブリザート前辺境伯が急逝されたのは知ってるだろう。その報告と爵位の承認のために王宮に来ていたんだよ。今の辺境伯、当時のジュンブリザード辺境伯令息が。」
「ああ‥」そんなに遡るのか?
そんな俺を笑いながら、まあ聞けとアウリスは話を続ける。
「報告のあと令息は城の兵士と庭で手合わせをしていたらしい。そしてたまたまリズがそれを見かけたんだそうだ。」
と一口お茶を飲むと続けた。
「詳しく教えてくれたよ。辺境伯がとても強かったこと。城の兵士が次々と挑んでいくが、楽しそうに辺境伯は全て捌いていたと。城の侍女達が仕事を放り出して近くまで寄って見学していたこと。リズの護衛が近すぎて危ないと注意しにいくと辺境伯も侍女たちに気付き笑いながら離れるように促したこと。そうすると侍女らはすっかり顔を赤らめてキャアキャア言いながら逃げていったこと。」
「それをリズ嬢が?」
俺もリズ呼びを許してもらっているくらいには仲が良い。
リズはとにかく平等だ。とにかく皆一緒。好き嫌いもない。本当に皆一緒。逆にいえば特に興味のある人間も居ない。だから誰かを特別取り立てることもない。だからリズ嬢が1人を掘り下げて話すのは少し珍しい。
「辺境伯は大笑いをしているわけではなく、口角を上げて笑っているだけなのに太陽が笑っているように見えたと言ったんだ。」
おっと。
「その時は私もそんな事があったんだねって特に気にしてなかったし、それ以降辺境伯の話題がリズの口に上ることは一度もなかった。でもジョージイに出会ってから、おやっと思ったんだ。」
「そこでお裾分け‥ね」
「まあリズは自分のことには呆れるほど鈍感だからね。あ、そうそう。手紙でも書こうかと思っているんだ。謹慎中だが謝罪を込めて。リズになら許されるだろう?」
「許可をとっておくよ‥‥」
隠しきれず呆れた声になった俺をみて楽しそうにアウリスは笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】君を迎えに行く

とっくり
恋愛
 顔だけは完璧、中身はちょっぴり残念な侯爵子息カインと、 ふんわり掴みどころのない伯爵令嬢サナ。  幼い頃に婚約したふたりは、静かに関係を深めていくはずだった。 けれど、すれ違いと策略により、婚約は解消されてしまう。 その別れが、恋に鈍いカインを少しずつ変えていく。 やがて彼は気づく。 あの笑顔の奥に、サナが隠していた“本当の想い”に――。 これは、不器用なふたりが、 遠回りの先で見つけた“本当の気持ち”を迎えに行く物語

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな
恋愛
 子爵令嬢のミリム・アデラインは、ある日婚約者の侯爵令息のランドル・デルモンドから婚約破棄をされた。  この婚約の意味も理解せずに、地味で陰気で身分も低いミリムを馬鹿にする婚約者にうんざりしていたミリムは、大喜びで婚約破棄を受け入れる。

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? ********* 以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。 内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。

処理中です...