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王都では ー元第一王子側近候補ハリスー
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コンコン
ノックをすると
「入れ」と声がした。
入ると執務机に向かって仕事をしている人物が顔を上げた。
「ハリスか、久しぶりだね。」
そういうとアウリス王子は応接机に移動しソファーに座った。
勧められてハリスも座ると執事がお茶を入れてくれた。
「こうして話すのはいつぶりだったかな。」
アウリス王子が言うので
「そうですね。アウリス様がジョージイ嬢と親密になった頃からですからほぼ一年振りですか?」
「そんなになるんだ」
ちくりと嫌味を言ったつもりだがあっさりと流される。
けれども(ああ、いつものアウリスに戻っている。)と彼のマイペースっぷりにホッとした。
「王家の聞き取りもほぼ終わり、処分も進んでおりますので報告に参りました。」
「そんなかしこまった話し方でなくていいよ。こんな離宮誰もいない。もうハリスも側近候補でもなければ私ももうすぐ王子でもなくなるんだから」
「なら遠慮なく。すっかり落ち着いていて安心したよ。アウリス」
アウリスと俺は幼馴染だ。
侯爵家の次男、年も同じこともあり、側近候補として学園でも行動を共にしていた。
ジョージイ嬢が現れるまでは。
ジョージイ嬢との人目も気にせぬ逢瀬に何度も苦言を呈したところ遠ざけられ、俺は生徒会をやめてしまった。
そこから一年、というわけだ。
「こんな誰も来ない離宮で仕事だけは振られるのだから落ち着きもするよ。」
とため息をつくとお茶を一口飲んだ。
俺も一口お茶を飲むと本題を続けることにした。
「そこで件の話だが。王家の判断としては処分すべきは三人となった。アウリスと、ジョージイ嬢、スモーレイ侯爵令息ラビンだ。」
アウリスが黙って聞いているのでかいつまんでそのまま話す。
アウリスは王の意思である婚約の破棄。安易な王族命令の発令。貴族に混乱を招いたとして、立太子はなし。一年後第二王子のロイドが卒業し立太子と同時にアウリスは城を出ること。
ジョージイ嬢も同じく王の意思である婚約に横槍をいれ、貴族に混乱を招いたとして男爵家は取り潰し。ジョージイ嬢は修道院へ。
スモーレイ侯爵家は息子を管理できていなかったとして侯爵位を王家に返上。伯爵位となり、ラビンは廃嫡の上、男性修道院へ。
ここまで話し終えると、アウリスは口を開いた。
「ラビンは熱心に私とジョージイとの仲を応援してくれていたが、スモーレイ家はノータッチだったんだね。」
「そう。王家も第二王子派の計画の可能性も考えていたのだが、結局は思惑があって動いていたのはラビンだけだった。
ラビンの計画はつたないものだったのに、たまたまそれぞれの思惑が合致して、たまたまうまく行った、というのが顛末だよ。
まあ一番割を食ったのはリズ嬢かな。いきなり北の辺境伯に嫁ぐことになったのだから。」
そこまで一息で話すと、俺はお茶を飲んだ。
ふと顔を上げるとアウリスは穏やかな顔をしていた。
リズ嬢の話は気まずいかと思ったがそうでもないようだ。
そこで俺はずっと思っていた疑問を聞いてみることにした。
「どうして断罪劇なんてやったんだ?」
「やりたかったからだよ」
「定番とはいえ、なんで北の辺境伯だったんだ?北の修道院も定番だろう?修道院なら形だけ入れば寄付金積めばいつでも出られる。リズ嬢の父上も修道院にしていてくれていればって嘆いていたぞ。」
それを聞くとアウリスはフと笑い「お裾分けかな」といった。
「幸せのお裾分け。恋する喜びを分けてあげようと思ったんだ。」
ちょっと的を得ない。
そんな俺の顔を見てアウリスは話し始めた。
「四年前。ジュンブリザート前辺境伯が急逝されたのは知ってるだろう。その報告と爵位の承認のために王宮に来ていたんだよ。今の辺境伯、当時のジュンブリザード辺境伯令息が。」
「ああ‥」そんなに遡るのか?
そんな俺を笑いながら、まあ聞けとアウリスは話を続ける。
「報告のあと令息は城の兵士と庭で手合わせをしていたらしい。そしてたまたまリズがそれを見かけたんだそうだ。」
と一口お茶を飲むと続けた。
「詳しく教えてくれたよ。辺境伯がとても強かったこと。城の兵士が次々と挑んでいくが、楽しそうに辺境伯は全て捌いていたと。城の侍女達が仕事を放り出して近くまで寄って見学していたこと。リズの護衛が近すぎて危ないと注意しにいくと辺境伯も侍女たちに気付き笑いながら離れるように促したこと。そうすると侍女らはすっかり顔を赤らめてキャアキャア言いながら逃げていったこと。」
「それをリズ嬢が?」
俺もリズ呼びを許してもらっているくらいには仲が良い。
リズはとにかく平等だ。とにかく皆一緒。好き嫌いもない。本当に皆一緒。逆にいえば特に興味のある人間も居ない。だから誰かを特別取り立てることもない。だからリズ嬢が1人を掘り下げて話すのは少し珍しい。
「辺境伯は大笑いをしているわけではなく、口角を上げて笑っているだけなのに太陽が笑っているように見えたと言ったんだ。」
おっと。
「その時は私もそんな事があったんだねって特に気にしてなかったし、それ以降辺境伯の話題がリズの口に上ることは一度もなかった。でもジョージイに出会ってから、おやっと思ったんだ。」
「そこでお裾分け‥ね」
「まあリズは自分のことには呆れるほど鈍感だからね。あ、そうそう。手紙でも書こうかと思っているんだ。謹慎中だが謝罪を込めて。リズになら許されるだろう?」
「許可をとっておくよ‥‥」
隠しきれず呆れた声になった俺をみて楽しそうにアウリスは笑った。
ノックをすると
「入れ」と声がした。
入ると執務机に向かって仕事をしている人物が顔を上げた。
「ハリスか、久しぶりだね。」
そういうとアウリス王子は応接机に移動しソファーに座った。
勧められてハリスも座ると執事がお茶を入れてくれた。
「こうして話すのはいつぶりだったかな。」
アウリス王子が言うので
「そうですね。アウリス様がジョージイ嬢と親密になった頃からですからほぼ一年振りですか?」
「そんなになるんだ」
ちくりと嫌味を言ったつもりだがあっさりと流される。
けれども(ああ、いつものアウリスに戻っている。)と彼のマイペースっぷりにホッとした。
「王家の聞き取りもほぼ終わり、処分も進んでおりますので報告に参りました。」
「そんなかしこまった話し方でなくていいよ。こんな離宮誰もいない。もうハリスも側近候補でもなければ私ももうすぐ王子でもなくなるんだから」
「なら遠慮なく。すっかり落ち着いていて安心したよ。アウリス」
アウリスと俺は幼馴染だ。
侯爵家の次男、年も同じこともあり、側近候補として学園でも行動を共にしていた。
ジョージイ嬢が現れるまでは。
ジョージイ嬢との人目も気にせぬ逢瀬に何度も苦言を呈したところ遠ざけられ、俺は生徒会をやめてしまった。
そこから一年、というわけだ。
「こんな誰も来ない離宮で仕事だけは振られるのだから落ち着きもするよ。」
とため息をつくとお茶を一口飲んだ。
俺も一口お茶を飲むと本題を続けることにした。
「そこで件の話だが。王家の判断としては処分すべきは三人となった。アウリスと、ジョージイ嬢、スモーレイ侯爵令息ラビンだ。」
アウリスが黙って聞いているのでかいつまんでそのまま話す。
アウリスは王の意思である婚約の破棄。安易な王族命令の発令。貴族に混乱を招いたとして、立太子はなし。一年後第二王子のロイドが卒業し立太子と同時にアウリスは城を出ること。
ジョージイ嬢も同じく王の意思である婚約に横槍をいれ、貴族に混乱を招いたとして男爵家は取り潰し。ジョージイ嬢は修道院へ。
スモーレイ侯爵家は息子を管理できていなかったとして侯爵位を王家に返上。伯爵位となり、ラビンは廃嫡の上、男性修道院へ。
ここまで話し終えると、アウリスは口を開いた。
「ラビンは熱心に私とジョージイとの仲を応援してくれていたが、スモーレイ家はノータッチだったんだね。」
「そう。王家も第二王子派の計画の可能性も考えていたのだが、結局は思惑があって動いていたのはラビンだけだった。
ラビンの計画はつたないものだったのに、たまたまそれぞれの思惑が合致して、たまたまうまく行った、というのが顛末だよ。
まあ一番割を食ったのはリズ嬢かな。いきなり北の辺境伯に嫁ぐことになったのだから。」
そこまで一息で話すと、俺はお茶を飲んだ。
ふと顔を上げるとアウリスは穏やかな顔をしていた。
リズ嬢の話は気まずいかと思ったがそうでもないようだ。
そこで俺はずっと思っていた疑問を聞いてみることにした。
「どうして断罪劇なんてやったんだ?」
「やりたかったからだよ」
「定番とはいえ、なんで北の辺境伯だったんだ?北の修道院も定番だろう?修道院なら形だけ入れば寄付金積めばいつでも出られる。リズ嬢の父上も修道院にしていてくれていればって嘆いていたぞ。」
それを聞くとアウリスはフと笑い「お裾分けかな」といった。
「幸せのお裾分け。恋する喜びを分けてあげようと思ったんだ。」
ちょっと的を得ない。
そんな俺の顔を見てアウリスは話し始めた。
「四年前。ジュンブリザート前辺境伯が急逝されたのは知ってるだろう。その報告と爵位の承認のために王宮に来ていたんだよ。今の辺境伯、当時のジュンブリザード辺境伯令息が。」
「ああ‥」そんなに遡るのか?
そんな俺を笑いながら、まあ聞けとアウリスは話を続ける。
「報告のあと令息は城の兵士と庭で手合わせをしていたらしい。そしてたまたまリズがそれを見かけたんだそうだ。」
と一口お茶を飲むと続けた。
「詳しく教えてくれたよ。辺境伯がとても強かったこと。城の兵士が次々と挑んでいくが、楽しそうに辺境伯は全て捌いていたと。城の侍女達が仕事を放り出して近くまで寄って見学していたこと。リズの護衛が近すぎて危ないと注意しにいくと辺境伯も侍女たちに気付き笑いながら離れるように促したこと。そうすると侍女らはすっかり顔を赤らめてキャアキャア言いながら逃げていったこと。」
「それをリズ嬢が?」
俺もリズ呼びを許してもらっているくらいには仲が良い。
リズはとにかく平等だ。とにかく皆一緒。好き嫌いもない。本当に皆一緒。逆にいえば特に興味のある人間も居ない。だから誰かを特別取り立てることもない。だからリズ嬢が1人を掘り下げて話すのは少し珍しい。
「辺境伯は大笑いをしているわけではなく、口角を上げて笑っているだけなのに太陽が笑っているように見えたと言ったんだ。」
おっと。
「その時は私もそんな事があったんだねって特に気にしてなかったし、それ以降辺境伯の話題がリズの口に上ることは一度もなかった。でもジョージイに出会ってから、おやっと思ったんだ。」
「そこでお裾分け‥ね」
「まあリズは自分のことには呆れるほど鈍感だからね。あ、そうそう。手紙でも書こうかと思っているんだ。謹慎中だが謝罪を込めて。リズになら許されるだろう?」
「許可をとっておくよ‥‥」
隠しきれず呆れた声になった俺をみて楽しそうにアウリスは笑った。
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