推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん

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復活の厄災編

第五十四話 脱・過去の自分②

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 ーー合わせろ勇者!

 ビリッと電気が走ったかのようにクロムの脳内で瞬時に自分では経験していない記憶が入り込む。
 それは言葉では伝わらない槍スキルの手本、技のクセ、重心などの体に染みついたシトリーの経験値だった。

「これは…わかった!」

 俺は駆け出していた足を止め、記憶の中で見るシトリーの動きと合わせるよう体を動かした。
 それは記憶の中にいる彼女と寸分狂いなく、体を捻るように片足を軸に横回転をし、その反発で勢いをつけた槍が遠心力に乗せて空中で弧を描くように切り裂いた。槍スキル…

「ルナ・クエーサー!」

 勢いよく薙ぎ払ったその槍は背後から接近する触手達を真横に綺麗に切断された。
 やはり通常の攻撃より技を使用した際の威力ははるかに違う、それに技の使用法について模索する手間もシトリーと共用している戦闘経験の記憶がそれを補ってくれる。
 今の俺は槍を使いこなす熟練者と同じ力を発揮できる。

「シトリー!あの硬い皮膚を切れるような技を頼む!」

 群がる触手の奥に倒れているパンデモニウム、その皮膚の硬さはかなりの強固で並の武器でも刃が通らない。
 俺はその硬さを攻略するため、シトリーの持つ戦闘経験を頼りに技のイメージを構想した。

 ーーお前にできるか?この技は一朝一夕で扱えるような簡単なものじゃないぞ。

 シトリーの言葉と同時にその技の詳細が頭の中に流れ込んだ。
 なるほど…シトリーがすぐ覚えられるようなものじゃないと言語する理由がわかる。先ほどのような素早く正確な薙ぎ払いに加え、魔法を纏わせることで二重の攻撃力を加える複雑なスキル・《デッドリー・フォース》か。
 だが…

「やってみないことにはわからないだろ。シトリー、槍の魔力少し借りるぞ!」

 そう言うと俺は、槍の先端に手をかざしゆっくりと撫で始めた。

 ゴゥゥゥ…

 すると、手で撫でた面から紅い炎が燃え上がり、たちまち槍の先端が炎に包まれた。

 ーーこれは…!

 槍がクロムの意思に反応している、シトリーはそれを見て驚きと疑問の二つの意味を兼ね備えた表情をした。

 ーー槍が…勇者と共鳴している…

 槍の中に組み込まれている召喚魔法や素材として使用されている魔紅石に流れる魔力を抽出する事ができるのは、持ち主であるシトリーの特権なのである。
 シトリーはあくまで槍の扱い方として記憶をクロムに共有しているだけであり、槍の所有権をクロムに譲渡したわけではない。
 だからこそ、クロムがその槍を本当の意味で使いこなせていることに驚いていた。

 ーー槍が勇者を持ち主と認めたというの?いや、その逆もあり得る…勇者が槍を従わせているのか?

 何故槍を扱えるのか問いたいところだが、クロムはスキルの構えをとった直後にパンデモニウムの亡骸に向かって飛び出した。

「うぉぉぉぉ!!」

 クロムは叫び、紅く燃える炎が軌跡をなぞるように槍先を右下から左上に持っていく。そして攻撃の間合いに入った直後、猛烈なスピードで槍を斜めに振り下ろした。

「デッドリ・フォース!」

 紅い炎が硬い鱗を焦がし、炭のように脆い状態にまでさせる。そこから現れる槍の刃先がその炭を削り落とし、深い傷穴を作り出した。

「まだまだぁぁ!!」

 斬り込んだ傷穴を狙い、今度は連続で斬り込み続ける。斬り込み続けるたびにパンデモニウムの傷穴から紅い鮮血が飛び散る、それと同時にヒズミを守るバリアであろう赤い光が徐々に強くなってくる。そして…
 カッ…!と、裂いた肉の隙間から特別強い赤い光がクロムの目に差し込んだ。

「出てきた!うおっ眩しっ!」

 肉を剥がし続けてようやくその姿を拝めることができた。光量が強いその光の物体は、周りの肉などに押しつぶされることなく、溶かされることなく、その体の異物であるかのように残り続ける。
 だが、まだ一部分だ。光が差し込んでいる大きさは数十センチほどで、人間の体を包み込むほどの大きさとなればもっと肉を剥がさないとヒズミを取り出すことはできない。
 見つけることができただけで、ようやくスタートラインに立つことができたような感覚だ。

「見つけたのはいいが…こっから救出ってなるとまた長いな…」

 背後から触手の蠢く音が聞こえ、クロムは面倒そうに不満を溢す。
 シトリーの槍と強力なスキルがあるとはいえ、救出の労力と合わせると俺一人では限度がある。
 バリアの効果時間は?俺の体力は?そんな事を考えている暇はない、欲しいのは手っ取り早くヒズミを救出する方法だ。
 そう悩んでいるだろうと予想して、シトリーはクロムに一言告げる。

 ーー十分だ勇者、バリアの表面が見えればあとは解除して中から救い出せる。

 その言葉が聞こえたことで、俺の中でヒズミを今すぐ救出することができるのが確実となった。

「だったら話が早い、どうやったらこのバリアを解除できる?」

 ーーバリアを張るよう能力を仕込んだ魔石とこの槍を製作した原材料は一緒、触れて共鳴した時に解除の意思を流せば消える。さっきの炎を出した時と同じ原理だ。

「わかった!それならいける!」

 俺は槍の先端を眩しく光るバリアに向けて突き刺した。ギリッ…というガラスにヒビを入れたような音を発して、バリアに槍が触れたことを確認すると俺の口から「解除」の言葉を告げた。
 その意思が届いたのか、眩しく光るバリアは光を失い、槍から伝わっていた壁に触れる感覚が無くなった。
 バリアが解かれたその内部を見ると、球状の防壁を保ち続けていたために周りの肉が押し広げられ、ヒズミの周りには少しばかりの空洞が出来ていた。

「思ったとおり、バリアの効果でヒズミの周りの肉壁が押し広げられているなら、解除した後にもその変形した肉壁の形は残り続ける。わざわざこれ以上肉を剥がさなくても、空洞がある場所を大きく裂けば…!」

 俺は空洞ができている場所に向かって大きく槍を振り下ろす。分厚い肉壁も空洞ができたことで薄くなり、刃先を肉に食い込ませるとサァーっと容易く肉壁が裂かれた。
 そして、その裂いた肉壁の中に俺は恐れず手を突っ込み、手の中に収まるほどの太い腕らしきものを掴むと勢いよく引っ張り上げた。

 ーー……勇者…お前にどんな感謝述べたらいいか…

 槍の中からシトリーは見据える、クロムが手に持つボロボロの体でありながらずっと当たり前のように見てきた彼の姿を。

 ーーこの目で…ようやく見ることができたんだな…

 何度この目で仲間の死を見てきたか、手を伸ばしても仲間達の下には届かない経験を何度繰り返したか、自分は誰も守れない…そんな運命に何度叩き潰され、何度心を折られたか。
 だがこの日…ようやく…自分の力で助けるとはほど遠い成りになってしまったが、見届けることができた。

 ーー大事な仲間を…救うことができた瞬間を…!

 震える声を絞り出し、哀しく、そして喜びを表した言葉がクロムの脳裏に響く。クロム自身からではシトリーの様子が見えないが、きっと過去の後悔を払拭できたのだろう。と、そんな感じがした。
 だから俺は言う…

「よかったなシトリー…今は自分の望みが叶ったことに喜んで涙流しとけ。」

 優しくシトリーに語りかけ項垂れたヒズミをそっと地面に座らせる。その最中、背後から自身の背丈ほどある触手が勢いよく迫ってきた。
 気配、地面を引きずる音、それらがクロムの感覚を刺激し、気づいたその時には迫る触手を振り向き様に横に薙ぎ払った。経験を元に繰り出した《ルナ・クエーサー》だ。
 そして、振り返った時に目の当たりにする群がる巨大な触手達、さっき切られたことで苦痛で暴れる奴もそこにいた。
 俺は得意気に両手で槍を回し、槍先が触手の方へ向けられた瞬間槍を構え、体勢を低く沈ませる。
 まるで全てを狩る勢いでいるかのように…

「後のことは心配するな、俺に任せておけ…!」

 シトリーに話の続きを伝えると、俺は沈み込んだ体勢から一気に飛び出し、地面ギリギリを滑空するように突き進んだ。
 それと同時に触手達も一斉に体を伸ばして俺に向かって突撃を仕掛ける。互いの突撃によって彼らの間隔は一瞬で狭まり、僅かコンマ数秒で激突するだろう。
 《デッドリー・フォース》の炎の発現には時間がかかる、《ルナ・クエーサー》は軸回転よる遠心力がなければ効果が発揮しない。記憶を読み取って繰り出したスキル達が今は使えない。
 だが、俺にはそれ以外にも脳裏に焼きついているスキルがある。
 ニーナとの戦闘、そしてシトリーが今までに経験した戦闘の記憶、どれをとっても槍スキルの基礎だけは必ず俺の記憶の中にあった。

「片足に全部の力を乗せるイメージ…槍と体は一心同体、体すべてが長く鋭い刃となれ…!」

 勢いよく滑空する体にもう一段階加速力を乗せるため、力強く片足を地面に踏み込んだ。
 ミシミシと筋肉が軋むような音を感じながら、バネが弾むように縮んだ筋肉を一気に放出する。

 ドガァァ!
 地面が捲り上がるような蹴りと同時に、紅い閃光がまっすぐ触手の体を貫いた。
 触手の胴体は綺麗に風穴が開けられ、クロムの目には一瞬にして世界が変わったような驚きの光景が広がった。これが素早く突撃する槍スキルの全ての技に繋がる基礎技…

「アクセルスピア!」

 長い滞空時間を終え勢いよく着地すると、それを見計らったように触手が斜め後ろから突撃する。
 だが…一瞬。

 ズバッシュ!
 クロムは振り返ることなく、着地した際の衝撃を力に変え、後方に向かって紅い閃光を帯びながら突撃する。
 触手の体を貫いたことを感じ取る暇も与えず、次に標的となる個体に目掛けて…

 ズバッ!
 穿つ。

 ザシュ!
 穿つ。

 グジャァ!
 穿つ。

 壁を蹴り、地を蹴り、立体的に動きながら触手の胴体に目掛けて直線状に突撃する《アクセルスピア》の連撃技。

「……五連!」

 最後の触手を穿つ際に方向を少し変え、ヒズミがいる場所に目掛けて四連撃目を放つ。
 そしてすぐさまヒズミを掴み上げると着地した際にかがんだ体勢から一気に飛び出し五連撃目を放つ。
 その先は道の彼方、触手や巨竜さえも見つけられない場所まで飛び出して行った。

 ◆◆◆

 俺は退避する際に使用した《アクセルスピア》の勢いのまま谷の駆け抜け、パンデモニウムの気配が感じなくなる所まで走り抜ける。

「はぁ…はぁ…ここまで来れば…うぐっ!」

 突然、ガクッと足に力が入らなくなり崩れるように倒れた。その際に掴んでいたヒズミの体を離してしまい、転げ落ちる彼を不安視しながら見ていた。

「やべっ!ヒズミすまん、足がもつれてお前を……えっ?」

 ヒズミのもとに駆け抜け寄ろうとすぐに起き上がろうとするが、自分の足がまるで棒になったかのように動かない。

「ぐっ…!足に…力が入らない。」

 ふるふると震えながら四つん這いになっている俺に、シトリーは淡々と俺の状態を語る。

 ーー筋繊維が裂けてるみたいね、槍の扱いに慣れていない奴が急に私レベルの速さで技を連発すれば壊れるのは当然だわ。

「やっぱお前ら悪魔ってバケモンだろ…あのレベルの技で戦って体が壊れないとか…いや、単に俺のレベル不足か…。」

 俺は動かない足を不便に感じながら、技を連発しても何ともないと語る彼女に苦笑した。

「強くならないとな…共有したとはいえ、自分の技でやられてらんねぇ…。」

 そう答えながらも、動かなくなった足を足枷にしながら体を引きずり、横倒れしているヒズミの近くに辿り着く。

「ヒズミ…大丈夫か?しっかりし…」

 俺は引きずる体を支えた手をヒズミの腕に触れた。その時、俺の手に冷んやりとした感覚が伝わり、嫌な予想が脳内を走った。

 (何だこの冷たさ…人の体温じゃない…まさか…!)

 俺は彼の手首を強く掴み、手の中に伝わる僅かな脈の鼓動を集中して確認した。
 そんなことあるわけがないと自然に浮かんでくる予想を振り払うが、手の中から何も伝わらない鼓動と、体の芯から冷え切っているような感覚に嫌でも結果が見えてしまう。

「死…死んでる。」

 いつから…いや、体のあの冷え方からしてついさっきじゃない。多分、俺達がパンデモニウムを討伐しようと動き出す前だろう。
 間に合わなかった…そう考え後悔することもあれば、最初から駄目だった…と諦めつく気持ちが入り混じる。
 だが俺の気持ちなんかよりもシトリーだ、ヒズミを助けることにすべてをかけていた彼女になんて伝えたらいい?
 いや…俺が死んでると呟いた時点で彼女もそれにきっと気づいている、希望になる嘘を話したところで何も変わらないし沈黙はより死を肯定してしまう。
 正直に、早いうちに、彼女に伝えなければならないと考え、恐る恐る口にする。

「シトリー…バリアがあったところでヒズミはもう手遅れだったみたいだ。残念だけど…お前の願った通りにはならなかったみたい…」

 ーーわざわざ言葉にしなくていい、助け出した時に気づいていた。

 聞こえた言葉に俺は唖然とし、彼女に対して一つ疑問が浮かび上がる。

「…じゃあ…なんで…あの時助けたことに感謝を述べた?本当のことを知っててなんで感激の涙を流してた?」

 ーー私が喜びを見せたのは、お前がヒズミを五体満足で助け出してくれたからだ。たとえ心臓が止まっていたとしても、人間で…さらにはその体が綺麗な状態のままであれば生き返らせられる。

「生き返らせる…だって!?」

 それを聞いて俺は驚いて目を見開く、それは人智を超えた人間の蘇生という内容ということではなく…

(今ここに蘇生アイテムや魔法もないのにどうやって生き返らせるっていうんだ?)

 蘇生するための手段であった。そんな、驚愕の意味が的はずれだとシトリーは知らずに話し続ける。

 ーー私はずっと昔から失ってばかりだった、家族も、私についてきてくれた仲間も…もう嫌というほど死に顔を見てきた。

 悪魔が下についてから、失うことに恐れを感じていた。魔物は生き返らせるという概念がないから、心臓ともいえる魔石が砕かれれば塵となって消えてしまう。
 人間と違って、魔物相手では感情を移入する前に体が砕けて消えてしまう。そんな儚い結末をこの目で見たくないからが理由だが…あっけなくすぐ消えてしまう仲間を目にすることに慣れて、悲しい感情も湧き出ない狂人になってしまうのが一番の恐怖だった。

 ーー慣れというのが一番怖いのさ、いなくなるのが当たり前のように感じてしまったら、いつか…ヒズミが死んだ時でもそんな風に感じてしまう。

 シトリーは辛く険しい表情をしながら顔を横に振り、そうなる未来の自分を否定して話し続けた。

 ーーだから…!それで終わりになんてしたくない!大事な奴なら尚更…死んでも助けたいっていう気持ちは絶対に忘れさせたくない!

 そう誓うように告げる彼女にクロムが問いかける。

「前から聞きたかったんだが、お前とヒズミってどういう仲なんだ?他と接し方がまるで違うみたいに感じるんだが。」

 クロムの問いにシトリーは一言、それで十分すぎるほどの解答をした。

 ーー相棒…家族と同じくらいに大事な奴だ。記憶の中にはいつも隣に彼がいた、彼が支えてくれたから私は私であり続けられたんだ。

「そうか…」

 クロムは槍を使って上体を起こし、少し上からヒズミを見つめる。
 彼とはこの世界では面識がない、さらに言えばゲームの中で彼を知っているだけで特別な思入れもない。
 だが何故だが…シトリーの言葉を聞いて彼の存在がとても大事なものなのだと心に思うようになる。
 わかってしまうからだ…一緒に旅するレズリィ、アルノア、コハク、まぁおまけのセーレ、その誰かが倒れて死んでいると言われたら、俺も同じ気持ちを抱くだろう。

「死んでも助ける…自分の決意でもあって、絶対にやり遂げるっていう行動力を言うのか…。」

 俺の中で何かがハジけたような気がした。ゲームの中では死んでも助かるような感覚で冒険していた、だけどこの世界はゲーム内と同じキャラであっても生死の概念がある。
 共に話し合い、戦い、一緒に過ごす中でゲームでは味わえない人との絆を得る。
 絆を紡いだ仲間が死んでしまったら、「助かるからいいや」みたいな感覚でいられるだろうか?
 いや…俺もシトリーと同じことをするだろう、たとえ剣を交えた敵同士であったとしても、助かる確率があるのならそれに賭ける。そうまでして助けたいと心が叫んでいるんだ。

「やろうシトリー、ヒズミを生き返らせよう。ここから飛んで里に行けば生き返らせるアイテムが…」

 俺は額に手を当てここから転移する準備した、ゲーム内でも道具屋に行けば必ずある蘇生アイテム《命動(めいどう)の輝石(きせき)》を手に入れれば蘇生できる。
 だがシトリーの解答は意外なもので…

 ーー用意ならしてある。勇者、この槍をヒズミの心臓に突き刺してくれ。

 用意とは何だ?何故槍をヒズミに突き刺す?俺は戸惑いながらその言葉の意味についてシトリーに問う。

「…?何をする気だ?」

 ーー蘇生魔法だ、呪文の詠唱は私の言う通りに言えばいい、魔力の代用ならこの槍でなんとかなる。

「使えるのか?神官でもないお前が、蘇生魔法・蘇生《レイズ》を。」

 俺はサラッと口にしたシトリーの言葉に少し驚いた。ゲームではシトリーが蘇生魔法を使えるなんて描写はもちろん無い、というかボスが仲間に蘇生魔法を使っている描写があったら面倒くさい敵として印象が残るが。
 というか何故その魔法が使える?悪魔にも白魔法を扱う概念があるのか?と、そう思っているとシトリーが言う。

 ーー驚かないんだな、蘇生魔法なんていう禁忌魔法を使うことに。

「えっ?」

 俺は思わず意味が分からずに声をあげた。
 禁忌魔法?今彼女はそう言ったのか?言葉からしてあまり良くない魔法に聞こえるが…なにせゲームではうちのレズリィがそれを使用できる、仲間を蘇生するのにそんなヤバそうな魔法を使用していたのかと内心混乱する。
 だがまずはシトリーの疑問に答えるべきだ、蘇生魔法が日常に存在していると思っていた俺の情報知らずで面倒なことが起きそうになっている。

「しっ、知っていたからな、でも失敗してるって報告がいつもだから驚くような新鮮さもないだけだ。」

 俺は咄嗟に考えたそれらしい話でその場を収めようとした。こんなファンタジーな世界だ、ゲームや漫画で手に入れた知識が少なからず通用するはず。と望みをかけるとシトリーは言う。

 ーーお前達人間は甘い、人を一人生き返らせるのにどれだけ膨大な力が必要なのかわかっていない。そこらの魔物を数百倒したところじゃ対価にもならない。

(話し合ってた!なんかの漫画にあった設定なのに通じた!)

 俺はシトリーの話をそっちに、この状況を切り抜けた漫画の設定に感謝した。
 そう、俺が歓喜の念に包まれてると知らず、シトリーは淡々と蘇生魔法について語り続ける。

 ーー魔紅石の力は本来、こうあるべきだったんだ。さぁ、やってくれ。細かいことは私がやる、お前は刺すだけで構わない。

「わっ、わかった…。心臓に刺せばいいんだな?」

 人の話を聞いていればよかったと後悔する。急に始めると言い出して気持ちが作れていないが、持ち前の勢いで槍を強く握りしめ…

「やるぞ…心臓に向けて……ふんっ!」

 悪魔を斬っていることから慣れていると思ったが、やはり人間同士の情けであろう、人を刺すという不快感に目を逸らす。
 心臓は動いていなくとも、ヒズミの体から真っ赤な血が槍からどんどん噴き出でくる。まるで自分が殺しているような感覚で気持ち悪くなる。

「で…次はどうすればいいんだシトリー!?さすがにけっこうキツイんだが…!」

 ーー私が言う言葉を復唱して!

 シトリーは淡々と、そしてはっきりと俺に言葉を伝える。

 ーー冥界より呼び覚ます、未練混じりの魂よ。

「冥界より呼び覚ます…未練混じりの魂よ…!」

 ポワッとヒズミの体が赤く光り出す、その外見の変化に驚く暇も与えず、俺はシトリーの発する言葉に集中する。

 ーー肉体に再生を、死を反発せよ、表の世界にいざ帰らん。

「肉体に再生を…死を反発せよ…表の世界にいざ帰らん…!」

 詠唱中に不思議な光景を目にした、ヒズミの体から流れる血が勢いよく噴き出し、その血が地面の上で不可解な動きをしながら文字や記号を綴っていく。
 そして最後には、ヒズミの周りに真っ赤な文字で描かれた魔法陣が出来上がる。
 それが作り上げられたのと同時に詠唱の言葉は終わり、二人は発動する呪文の内容を口にして叫ぶ。

「「蘇生魔法・蘇生《レイズ》!」」
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