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復活の厄災編
第五十四話 脱・過去の自分④
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「あぁっ…!ぐっ!」
クロムの喉から、苦痛を押さえるような掠れた悲鳴が漏れた。
今できるのはそれだけだった、腕に伝わる激痛を唇を噛み締めて紛らわすことしかできない。
(さっきのは何だ…何が起きた?ただ槍を投げただけでこんな…!)
無意識に、死にたくないと抗う感情が力を暴走させたのだろう。その影響からか自分の思っている以上の力が槍に加わり、投げた反動で腕がもぎ取られるかのような痛みが体中に走った。
(痛い…!腕の骨が砕けたみたいに…いや、マジで砕けてるかもしれない…!)
俺は苦痛に悶える体を必死に起こそうとするが、支える腕を失い、両脚の負傷の影響で動くことができない。
だがそれでも、唯一動く頭で僅かながらの辺りを見渡して、今の現状を確認する。
「触手の奴らは…全部消し飛ばしたのか…思い切ったせいで力加減をミスったのが…功を成したってか…!」
俺は激痛で顔を歪ませながら苦笑した、多少の代償はあったものの、これで転移魔法を詠唱できる時間を作ることができた。
「今の内に…転移魔法で逃げ…っ!ぐっ!」
なんとかまだ動く左腕で上体を起こし、体を引きずらせながらヒズミの近くに寄る。体を引きずる度に右腕が悲鳴を上げるほどに強烈な痛みを発するが、半ば強引な気持ちで前を向こうとする。
「馬鹿っ!弱音なんてここを離れた後に何度でも吐きやがれ!こんな痛み…ちょっとぐらい我慢しろや俺!」
そう自分に喝を入れながらようやくヒズミの近くにまで寄ると、一度体を倒して左手を前に伸ばす。そして…
「戻れ…!」
そう口にすると、左手の中からずっしりとした重みのあるシトリーの槍が現れ、力強く掴む。
ーー勇者!
槍を手に掴んだことで互いの精神がリンクし合い、瞬間シトリーの焦った様子の叫びが聞こえてきた。
それだけで何を伝えようとしているのかよくわかる、なぜなら俺も同じことを考えているからだ。一刻も早く転移魔法を起動してここから離れろ、と。
「ああわかってる…わかってるから少し待っ…!うぐっ!」
槍を地面に突き刺し、うつ伏せになりながら転移の呪文を唱える。体を動かさなくとも呪文は唱えられるため、時折腕に走る激痛を何とか無視して頭の中で転移先のイメージを思い浮かべる。
それを見てシトリーは心配そうに槍の中から眺めていた。
ーーやっぱり…私レベルの速さで《アクセルスピア》を使った時と同様…。強力な力を扱うことに慣れてない体であの攻撃…脚に続いて腕まで…このままじゃ…
嫌な想像が頭を巡る、そうはならないことを考えようとするが、目の前で芋虫のようにもがきながら魔法を唱えようとする勇者の姿を見て、それが起こってしまうと確信めいてしまう。
「転移先のイメージは出来てる…!あの時みんなを飛ばした時と同じように景色がクリアに広がっている…あとは槍の中にある魔力を媒介に魔法陣を作れれば…!」
同じやり方、転移魔法の手順は完璧に。
同じやり方、《デッドリー・フォース》を使用した時のように槍の中にある魔力を取り出し、それを媒介にして魔法を放つ操作。
クロムは今まで経験したことを混ぜ込み、転移魔法を作ろうとした。魔力と魔法操作、呪文に必要な素材は揃っている。その槍から魔法陣が出てくるとそう確信していた。
だが見えたのは、虚しく何も起こらないという現実だった。
「何…で…?」
驚愕の目で突き刺した槍を見る。こんなことは初めてだった、あの業火に包まれたゴブリンのアジトの中でも、ここでの巨竜の追撃から逃れる中という危機的状況下であっても失敗は起きなかった。
それが引き金となってか、クロムの心に焦りが湧き出てきた。
「頼む…出ろ…!出てくれ…!なんでこんな時に出ないんだ!」
懸命に、虚しく変わらない現状を変えてくれと願う浅ましいクロムの姿に見兼ねたシトリーは助言する。
ーー焦りが出てる、もっと集中しろ勇者!
「わかってる!俺だって必死にやってんだ!」
必死、それは普段よりも頑張ろうと働く自己暗示の言葉。それがクロムの口から出たことで懸念していた嫌な想像が表に出てしまった。
必死にやる…それではダメだ、転移魔法の難しさはその転移先を指示する明確なイメージ図とそれを架け橋のように繋ぐための構想。
必死、疲労、苦痛、焦り、使命、そして死への恐怖、そんな極度の緊張状態に身を置けば構想する思考の中に雑念が混じる。いわゆる集中できていない状態となる。
そうなってしまえば、いくら魔力があろうと、転移魔法の手順が完璧であろうと、出ろと言われて出るような感情に任せた詠唱では絶対に出ない。無情にも思えるが…それが魔法なのだ。
ガラガァァァ!!
背後で土壁が勢いよく崩壊する音が聞こえた時、クロムはふと体をよじって後ろを確認する。
「…っ!」
クロムは思わず絶句した、すぐ目の前には人間さえも簡単に飲み込んでしまうほどの大口が開かれた巨竜がいた。あれだけ距離があったはずなのに、もう二歩、三歩手を伸ばせばこちらに届くまでの距離まで近づいている。
ーーまずい…来る!
逃げられないと、半ばそう覚悟するシトリー。
ゆっくりと、そして確実に死の足音は近づく。それに合わせるようクロムにのしかかる焦りは募っていき、その度に詠唱の弊害となる雑念が増え続ける悪循環に囚われていく。
「くっそぉぉぉぉぉ!!」
死ねない、こんなところで終わりたくないとする強い負の感情をさらけ出すように叫ぶクロム。こんなことをしても意味がないというのはもう理解している、だがそれでも人は奇跡を願ってしまう生き物、助かりたいと、未来の自分がまだ生きていると信じようとすると願わずにはいられなかった。
……と、奇跡を願ったその時だった。
バキバキッ!バキバキ!
巨竜の目の前に突然、分厚い氷の壁が行く手を遮るように聳え立った。その高さは周りの土壁と同様、巨竜の体を隠すほどの大きさを誇っていた。
「………なっ……えっ……?」
クロムは突然のことで、目の前で氷の壁が生成していくところを呆然と眺めていた。
接近してくる巨竜の姿が氷に隠れたことで、恐れていた気持ちがなくなっていき、頭の中で状況を整理できるほどに落ち着きを取り戻した。
(氷…誰かが唱えた魔法か、これほどの大規模な氷を生成できる魔法使いといったら相当の実力者…誰だ、シリアスか?)
俺の中で魔導隊の隊長であるシリアスの顔が思い浮かぶ、シトリーとの戦闘で巨大な氷壁を作り上げた記憶があり、それと今の状況が酷知していた。
彼女が助けに来てくれた、この状況でそう考えるのは妥当だろう。
「大丈夫かね、勇者クロム。」
そう…クロムに向けて呼びかけたその声に違和感を持った。
まずシリアスは俺をクロムとは呼ばない、ずっと勇者で突き通していた。そして何よりその声は女性ではない、年老いた年配の男性を表すような少し掠れた声質をしていた。
俺の名前を知っている、年配の男性、あの氷壁を素早く作り出せる人物といえば…あの人しかいない。
「……えっ……?」
俺は驚きの顔を変えずに恐る恐る後方から前方に顔を向け直した。さっきまで人影すらなかったはずの場所にいつの間にか立っている、修道服を模した真っ白な正装に身を包んだ老エルフ…霊長の里の長・フォルティアが。
「フォルティア…さん…。なんで…。」
驚きと呆然で何故ここにいるのかと、掠れた声が漏れた。
「意識があるようでよかった、どうやらすんでのところで間に合ったようだ。」
フォルティアは、クロムが無事な事を確認するとホッとしたように安堵した表情を見せる。
そしてこちらに歩み寄って来るのと同時に、自身の杖を軽く地面に叩いた。それは魔法を詠唱する合図であり、気づくとクロムの体全体を埋めるような大きな魔法陣が地面に展開された。
「高等治癒《グレートヒール》。」
魔法陣から溢れた緑色の淡い光がクロムの体を包み込む。それはまるで暖かい太陽が照らす空の下で眠るような気持ちよさで、激痛が走っていた腕や脚など、どこかに忘れてしまうような不思議な感覚があった。
「ふぅ…痛みが消えて…何とか楽になった…。」
右腕にまだ少し違和感はあるが、今まで感覚がなかった両脚が動けるようになったのに気づいて、俺はヨロヨロと不安定ながらも立ち上がる。
「大丈夫か?手を貸そう。」
フォルティアが俺に手を差し出す、それを右手を上げて遠慮するような気持ちを表しながら改めて言う。
「いや、一人で立てます…それよりもどうしてあなたがここに?」
「君の仲間達が助けてほしいと私に頭を下げて頼み込んできたのでな、まぁ私としても頭を下げなくても助けるつもりだったのだが。」
「みんなが……。」
その知らせに、言葉にできないほどの溢れた感情が湧いて出てくるのをクロムは感じた。
みんなが無事に里に辿り着いていたこともあるが、何より里長に頭を下げてでも俺を助けようとしてくれる気持ちに目頭が熱くなった。
「すまない…迷惑かけた…。」
その言葉を聞いたフォルティアは、少し困ったかのような笑みを見せて俯くクロムの頭を軽く撫でた。
「それはこちらの台詞だ、里に訪れた客人でもある君達が里の危機を救うために懸命動いてくれたのだ。ならばこちらも誠意を見せなければだろう。」
フォルティアの感謝と謝罪の意を示した軟らかい笑みが俺の涙腺を刺激する。そして、彼がまばたきした直後、その笑みは消えて敵と対峙するかのような真剣さに切り替わった。
その理由はすぐわかった。
バキギギ!!ドガガガァァァ!!
道を遮る巨大な氷壁が巨竜の大きな手と体で崩していくのが見えた。そして、壁を完全に破壊した直後、再び俺達に近づこうと歩み出す。確実にゆっくりと。
「あの竜…とことん俺達の命を狙うつもりか?」
いい加減なしつこさに、感動で震えた涙が一瞬で枯れた。
本当に何故と俺の中でその疑問に何度も考えさせられる。目の前にいる魔物は死んでいるのだ、もしゾンビのような魔物だとしたらちゃんと鑑定スキルでその体質の内容を表記する。
◆◆
dead タイラントカオスドレイク
◆◆
改めて鑑定スキルで再確認しても、以前として何も変わらない死の表記。
死しても尚、塵とならずにただ目的のためにと歩み続ける。それを側から見ればどう目に映るのだろうか…当然。
「この巨獣は一体何だ?こんな巨大な竜が死霊の谷に生息していたとでもいうのか。」
ここにいるはずのない竜族という化物を見て、フォルティアは不思議そうな感情を示しながら緊張した目で巨竜を睨みつけた。
「俺も、こいつが一体何なのか見当もつかないです。パンデモニウムを倒したその後に地中から飛び出して、その口から触手を出すような行動を…」
俺は自分が口にした言葉に何か違和感を覚えて、話を途中で止めた。
(なんだ…言ってて気づいたけど、おかしくないか?)
最初は巨大な竜が出現したことと、鑑定スキルで見たところ死んでいたという驚きが大半で、見えていた奇妙な点に関して気にも留めなかった。
思えばこいつは、竜特有の唸り声を発したり、口から息吹を吐きかけることもしない。そのかわりにその大口や体の模様である斑点からパンデモニウムの幼体とされる薄紫色の触手が出てくる。
それに歩き方がかなり妙だ、巨大な手を伸ばし、地面を掻いて体を前に引っ張るだけの行動なのに…地面に手を置くことに迷っているような感じに見えた。
まるでゲームの処理速度が遅く、ラグが生じた時によく表れるような不審な挙動とよく似た動きだ。
(死んでいる巨竜…だがゾンビ状態ではない…意思を持った行動に対して動きが不自然に止まる…そして、さっきからこいつは触手を吐き出すようなことしかしてない…。)
俺は気になったものを一つずつ取り上げていき、パズルのように穴だらけのピースを埋めて答えを導いた。
その結果、ある違和感に辿り着いた。竜と触手状の魔物、異種族同士で何故対立しないのか…と。
(パンデモニウムが…他の魔物と共存…?対立しないところを見ると、レズリィとセーレのような主従関係で互いに………ッ!)
その刹那、俺は電気が走ったかのように靄がかかった脳内が一気に覚醒した。
何故こんな簡単な答えに気づかなかったのか、よく見れば触手を「アレ」に例えると、巨竜の奇妙な違和感に納得がいく。
「そうなると…まずいか…」
俺はとんでもない思い違いをしていた、フォルティアにどう説明すればいい…本当の脅威はこの巨竜ではなく、その大口から湧いて出てくる触手だと。
一から説明すると長くなる、だが要点だけを絞るだけなら僅かな時間でも何とかなるはず、と考えた俺はフォルティアに向かってお願いを口にした。
「フォルティアさん!さっきの氷壁、もう一度出せますか?」
「出せるが、一体何を?」
「わかったんです、あの巨竜の正体が。それを説明するためと、奴から少しでも距離を離すための時間が欲しいんです。」
フォルティアはクロムの言葉を聞き、「そうか」と答えると、杖を上に掲げ…
「特殊詠唱・氷遮蔽壁《フローズンウォール》!」
呪文を詠唱したと同時に、杖先から展開された魔法陣から強烈な冷気が吹き荒れ、次にフォルティアはそのまま杖を薙ぐ。
すると、先ほどまで何も無かった場所から氷塊が現れ、もの凄い速さで塊が縦に伸び始めて壁として形成される。その途中、巨竜がこちらに伸ばした右腕が形成中の氷壁に巻き込まれ、枷をはめたかのように動きを固定した。
俺は、巨竜はその氷壁から腕を抜こうと必死になるところを見る、なるほど見事な使い方とタイミングだ、恐れ入る。
「その四つん這いの体勢では力が入らないだろう、しばらくもがき続けるんだ。」
そう巨竜に宣言し、背を向けるとその先にいるヒズミを肩で担いで運ぶクロムに応じた。
「聞こうクロム君、君は何を導き出した?」
肩に乗せたヒズミの重みに少し苦労しながらフォルティアの問いにクロムは答える。
「この巨竜はもうすでに死んでいます、鑑定スキルで奴の状態を見たので間違いありません。」
フォルティアはクロムが発した言葉に疑問を持ち、振り向いて巨竜の方を見た。
「死んでいるだと…だが魔物の特性上、死すれば魔石諸共身体が塵となって消えるのではないか?」
「それを食い止めているのがパンデモニウムの幼体である触手なんです。フォルティアさんも見たと思います、あの巨大な口の奥から触手が伸びているところを。」
フォルティアはこちらに迫る巨竜を見た時にそれを確認した、開けた大きな口の奥、舌と見間違うがそれは喉奥を塞ぎながら何本も伸びていたものを。
「奴らは…あの巨竜に寄生しているんです。自分の都合のいい住処として、巨竜の体を維持…いや、利用している。」
寄生生物…その種類は数多く存在する。その基本的な行動は、主に宿主の体に寄生し、その栄養を吸い取ることで自身の体を成長、および繁殖行為を行う。
代表的な寄生生物を挙げるなら、カマキリに寄生するハリガネムシがいい例だろう。その生物は宿主の体内に寄生すると腹の中で成長し、成虫に達すると宿主の脳にまで寄生範囲を広げる。脳を寄生された宿主は寄生生物の意のままに操られ、適した場所に移動すると体外へと排出される。
それはまるで、あの触手と巨竜の関係に似ているのではないか?だとするなら本当の敵はあの巨竜ではない、中で操っている触手なのだ。
「寄生か…なるほど、どおりであの竜から本気で襲おうという気が感じなかった訳だ。本物の竜ならもっと荒々しく攻撃してくるはずだからな。」
フォルティアは俺が予想した答えに納得の意を答えたが…だからこそ、気になることが一つあった。
「だからこそ分からん、死した竜を寄生しているというが、その原動力は一体なんだ?私達を追うために氷壁を破壊し、今も捕まった腕を引き抜こうともがいている、寄生生物に執念深い意思があるように思えんが。」
スライムのような単細胞が襲いに来るという簡単な話ではない、個ではなく全員が同じ意思を宿さないかぎり巨竜というスケールの大きいマリオネット(操り人形)を動かすことはできない。
それをクロムは確信たらしめる自信でその疑問に答える。
「帝国は、パンデモニウムの復活に魔物や自身の仲間を生贄にした、魔物の中にある魔力を吸収して力を回復させるために。だから魔力に敏感だとわかったんです、腹を空かせた状態ほど目の前のご馳走を逃がさんと必死になりますから。」
「魔力に反応して追ってくるか…私達を狙うならその可能性は十分にある…。」
「実際、巨竜から離れた場所まで逃げましたが、魔法を使ったことでその場所にいるとわかって近づいて来ました。それも二回も、偶然とは思えません。」
フォルティアはクロムに目をやる、肩にヒズミを背負って真っ直ぐ歩く先を向きながら悠々と話している。
彼は内心驚いている、わずかな情報でここまで正解に近い回答を導き出すひらめく頭脳に。
(この者…寄生生物だと予想する他に巨獣の行動までも把握していたというのか?厄災魔獣という情報がかなり乏しい魔物相手に対しこのような推理力…。)
私が来るまで、たった一人で負傷者を守りつつ、目の前の敵をどう倒すべきか、逃げるべきか頭を捻らせていたことであろう。
そのような極限状態でありながらも導き出した確信に近い予想の数々、知識と推理に限らず、その状況下でそれらを考えられる精神力が人並み外れている。
(これが君の強みか…単純な強さにも匹敵する状況判断とひらめき力。)
里での会議でもあったその思考力、誰にも思い付かない考え方にその時は驚いたが、今この間近で見たその確信的な思いつきの披露にフォルティアは断言できた。クロムの強みを。
そんなクロムは、二つの謎を推理して解明するだけでは止まらない。
「実はそれで…俺は奴の足止めを選んだんです。」
フォルティアは奴の足止めという言葉を聞いてようやく気付いた。転移魔法を使ってここから離れるという選択もあった、だがクロムが選んだのは足止めを用した時間稼ぎ。
謎を解明する時間など里に帰ってからでもできる、巨竜から逃げるためならば転移を使えば一瞬で済む話。
そう、ここに残る理由などないのだ。
「それは何故?」
その意図をクロムに問うと、少し迷いを見せているような険しい顔で話始めた。
「最初は俺もフォルティアさんがいれば転移魔法で逃げれると思っていました。負傷者もいる、俺自身も戦える力は残されてない、逃げるのが当然の判断だと思います。」
クロムの話を聞くに、それは頭の中で理解していた。いや、人としてそのような状況下になったら逃げるという選択を取るのが当たり前だろう。
そのわかりきった内容から続き、クロムは逆の意味を答える。
「ですが、できませんでした…この巨竜の謎を突き止めていく内に逃げることができなくなる理由を見つけてしまったからです。」
クロムの喉から、苦痛を押さえるような掠れた悲鳴が漏れた。
今できるのはそれだけだった、腕に伝わる激痛を唇を噛み締めて紛らわすことしかできない。
(さっきのは何だ…何が起きた?ただ槍を投げただけでこんな…!)
無意識に、死にたくないと抗う感情が力を暴走させたのだろう。その影響からか自分の思っている以上の力が槍に加わり、投げた反動で腕がもぎ取られるかのような痛みが体中に走った。
(痛い…!腕の骨が砕けたみたいに…いや、マジで砕けてるかもしれない…!)
俺は苦痛に悶える体を必死に起こそうとするが、支える腕を失い、両脚の負傷の影響で動くことができない。
だがそれでも、唯一動く頭で僅かながらの辺りを見渡して、今の現状を確認する。
「触手の奴らは…全部消し飛ばしたのか…思い切ったせいで力加減をミスったのが…功を成したってか…!」
俺は激痛で顔を歪ませながら苦笑した、多少の代償はあったものの、これで転移魔法を詠唱できる時間を作ることができた。
「今の内に…転移魔法で逃げ…っ!ぐっ!」
なんとかまだ動く左腕で上体を起こし、体を引きずらせながらヒズミの近くに寄る。体を引きずる度に右腕が悲鳴を上げるほどに強烈な痛みを発するが、半ば強引な気持ちで前を向こうとする。
「馬鹿っ!弱音なんてここを離れた後に何度でも吐きやがれ!こんな痛み…ちょっとぐらい我慢しろや俺!」
そう自分に喝を入れながらようやくヒズミの近くにまで寄ると、一度体を倒して左手を前に伸ばす。そして…
「戻れ…!」
そう口にすると、左手の中からずっしりとした重みのあるシトリーの槍が現れ、力強く掴む。
ーー勇者!
槍を手に掴んだことで互いの精神がリンクし合い、瞬間シトリーの焦った様子の叫びが聞こえてきた。
それだけで何を伝えようとしているのかよくわかる、なぜなら俺も同じことを考えているからだ。一刻も早く転移魔法を起動してここから離れろ、と。
「ああわかってる…わかってるから少し待っ…!うぐっ!」
槍を地面に突き刺し、うつ伏せになりながら転移の呪文を唱える。体を動かさなくとも呪文は唱えられるため、時折腕に走る激痛を何とか無視して頭の中で転移先のイメージを思い浮かべる。
それを見てシトリーは心配そうに槍の中から眺めていた。
ーーやっぱり…私レベルの速さで《アクセルスピア》を使った時と同様…。強力な力を扱うことに慣れてない体であの攻撃…脚に続いて腕まで…このままじゃ…
嫌な想像が頭を巡る、そうはならないことを考えようとするが、目の前で芋虫のようにもがきながら魔法を唱えようとする勇者の姿を見て、それが起こってしまうと確信めいてしまう。
「転移先のイメージは出来てる…!あの時みんなを飛ばした時と同じように景色がクリアに広がっている…あとは槍の中にある魔力を媒介に魔法陣を作れれば…!」
同じやり方、転移魔法の手順は完璧に。
同じやり方、《デッドリー・フォース》を使用した時のように槍の中にある魔力を取り出し、それを媒介にして魔法を放つ操作。
クロムは今まで経験したことを混ぜ込み、転移魔法を作ろうとした。魔力と魔法操作、呪文に必要な素材は揃っている。その槍から魔法陣が出てくるとそう確信していた。
だが見えたのは、虚しく何も起こらないという現実だった。
「何…で…?」
驚愕の目で突き刺した槍を見る。こんなことは初めてだった、あの業火に包まれたゴブリンのアジトの中でも、ここでの巨竜の追撃から逃れる中という危機的状況下であっても失敗は起きなかった。
それが引き金となってか、クロムの心に焦りが湧き出てきた。
「頼む…出ろ…!出てくれ…!なんでこんな時に出ないんだ!」
懸命に、虚しく変わらない現状を変えてくれと願う浅ましいクロムの姿に見兼ねたシトリーは助言する。
ーー焦りが出てる、もっと集中しろ勇者!
「わかってる!俺だって必死にやってんだ!」
必死、それは普段よりも頑張ろうと働く自己暗示の言葉。それがクロムの口から出たことで懸念していた嫌な想像が表に出てしまった。
必死にやる…それではダメだ、転移魔法の難しさはその転移先を指示する明確なイメージ図とそれを架け橋のように繋ぐための構想。
必死、疲労、苦痛、焦り、使命、そして死への恐怖、そんな極度の緊張状態に身を置けば構想する思考の中に雑念が混じる。いわゆる集中できていない状態となる。
そうなってしまえば、いくら魔力があろうと、転移魔法の手順が完璧であろうと、出ろと言われて出るような感情に任せた詠唱では絶対に出ない。無情にも思えるが…それが魔法なのだ。
ガラガァァァ!!
背後で土壁が勢いよく崩壊する音が聞こえた時、クロムはふと体をよじって後ろを確認する。
「…っ!」
クロムは思わず絶句した、すぐ目の前には人間さえも簡単に飲み込んでしまうほどの大口が開かれた巨竜がいた。あれだけ距離があったはずなのに、もう二歩、三歩手を伸ばせばこちらに届くまでの距離まで近づいている。
ーーまずい…来る!
逃げられないと、半ばそう覚悟するシトリー。
ゆっくりと、そして確実に死の足音は近づく。それに合わせるようクロムにのしかかる焦りは募っていき、その度に詠唱の弊害となる雑念が増え続ける悪循環に囚われていく。
「くっそぉぉぉぉぉ!!」
死ねない、こんなところで終わりたくないとする強い負の感情をさらけ出すように叫ぶクロム。こんなことをしても意味がないというのはもう理解している、だがそれでも人は奇跡を願ってしまう生き物、助かりたいと、未来の自分がまだ生きていると信じようとすると願わずにはいられなかった。
……と、奇跡を願ったその時だった。
バキバキッ!バキバキ!
巨竜の目の前に突然、分厚い氷の壁が行く手を遮るように聳え立った。その高さは周りの土壁と同様、巨竜の体を隠すほどの大きさを誇っていた。
「………なっ……えっ……?」
クロムは突然のことで、目の前で氷の壁が生成していくところを呆然と眺めていた。
接近してくる巨竜の姿が氷に隠れたことで、恐れていた気持ちがなくなっていき、頭の中で状況を整理できるほどに落ち着きを取り戻した。
(氷…誰かが唱えた魔法か、これほどの大規模な氷を生成できる魔法使いといったら相当の実力者…誰だ、シリアスか?)
俺の中で魔導隊の隊長であるシリアスの顔が思い浮かぶ、シトリーとの戦闘で巨大な氷壁を作り上げた記憶があり、それと今の状況が酷知していた。
彼女が助けに来てくれた、この状況でそう考えるのは妥当だろう。
「大丈夫かね、勇者クロム。」
そう…クロムに向けて呼びかけたその声に違和感を持った。
まずシリアスは俺をクロムとは呼ばない、ずっと勇者で突き通していた。そして何よりその声は女性ではない、年老いた年配の男性を表すような少し掠れた声質をしていた。
俺の名前を知っている、年配の男性、あの氷壁を素早く作り出せる人物といえば…あの人しかいない。
「……えっ……?」
俺は驚きの顔を変えずに恐る恐る後方から前方に顔を向け直した。さっきまで人影すらなかったはずの場所にいつの間にか立っている、修道服を模した真っ白な正装に身を包んだ老エルフ…霊長の里の長・フォルティアが。
「フォルティア…さん…。なんで…。」
驚きと呆然で何故ここにいるのかと、掠れた声が漏れた。
「意識があるようでよかった、どうやらすんでのところで間に合ったようだ。」
フォルティアは、クロムが無事な事を確認するとホッとしたように安堵した表情を見せる。
そしてこちらに歩み寄って来るのと同時に、自身の杖を軽く地面に叩いた。それは魔法を詠唱する合図であり、気づくとクロムの体全体を埋めるような大きな魔法陣が地面に展開された。
「高等治癒《グレートヒール》。」
魔法陣から溢れた緑色の淡い光がクロムの体を包み込む。それはまるで暖かい太陽が照らす空の下で眠るような気持ちよさで、激痛が走っていた腕や脚など、どこかに忘れてしまうような不思議な感覚があった。
「ふぅ…痛みが消えて…何とか楽になった…。」
右腕にまだ少し違和感はあるが、今まで感覚がなかった両脚が動けるようになったのに気づいて、俺はヨロヨロと不安定ながらも立ち上がる。
「大丈夫か?手を貸そう。」
フォルティアが俺に手を差し出す、それを右手を上げて遠慮するような気持ちを表しながら改めて言う。
「いや、一人で立てます…それよりもどうしてあなたがここに?」
「君の仲間達が助けてほしいと私に頭を下げて頼み込んできたのでな、まぁ私としても頭を下げなくても助けるつもりだったのだが。」
「みんなが……。」
その知らせに、言葉にできないほどの溢れた感情が湧いて出てくるのをクロムは感じた。
みんなが無事に里に辿り着いていたこともあるが、何より里長に頭を下げてでも俺を助けようとしてくれる気持ちに目頭が熱くなった。
「すまない…迷惑かけた…。」
その言葉を聞いたフォルティアは、少し困ったかのような笑みを見せて俯くクロムの頭を軽く撫でた。
「それはこちらの台詞だ、里に訪れた客人でもある君達が里の危機を救うために懸命動いてくれたのだ。ならばこちらも誠意を見せなければだろう。」
フォルティアの感謝と謝罪の意を示した軟らかい笑みが俺の涙腺を刺激する。そして、彼がまばたきした直後、その笑みは消えて敵と対峙するかのような真剣さに切り替わった。
その理由はすぐわかった。
バキギギ!!ドガガガァァァ!!
道を遮る巨大な氷壁が巨竜の大きな手と体で崩していくのが見えた。そして、壁を完全に破壊した直後、再び俺達に近づこうと歩み出す。確実にゆっくりと。
「あの竜…とことん俺達の命を狙うつもりか?」
いい加減なしつこさに、感動で震えた涙が一瞬で枯れた。
本当に何故と俺の中でその疑問に何度も考えさせられる。目の前にいる魔物は死んでいるのだ、もしゾンビのような魔物だとしたらちゃんと鑑定スキルでその体質の内容を表記する。
◆◆
dead タイラントカオスドレイク
◆◆
改めて鑑定スキルで再確認しても、以前として何も変わらない死の表記。
死しても尚、塵とならずにただ目的のためにと歩み続ける。それを側から見ればどう目に映るのだろうか…当然。
「この巨獣は一体何だ?こんな巨大な竜が死霊の谷に生息していたとでもいうのか。」
ここにいるはずのない竜族という化物を見て、フォルティアは不思議そうな感情を示しながら緊張した目で巨竜を睨みつけた。
「俺も、こいつが一体何なのか見当もつかないです。パンデモニウムを倒したその後に地中から飛び出して、その口から触手を出すような行動を…」
俺は自分が口にした言葉に何か違和感を覚えて、話を途中で止めた。
(なんだ…言ってて気づいたけど、おかしくないか?)
最初は巨大な竜が出現したことと、鑑定スキルで見たところ死んでいたという驚きが大半で、見えていた奇妙な点に関して気にも留めなかった。
思えばこいつは、竜特有の唸り声を発したり、口から息吹を吐きかけることもしない。そのかわりにその大口や体の模様である斑点からパンデモニウムの幼体とされる薄紫色の触手が出てくる。
それに歩き方がかなり妙だ、巨大な手を伸ばし、地面を掻いて体を前に引っ張るだけの行動なのに…地面に手を置くことに迷っているような感じに見えた。
まるでゲームの処理速度が遅く、ラグが生じた時によく表れるような不審な挙動とよく似た動きだ。
(死んでいる巨竜…だがゾンビ状態ではない…意思を持った行動に対して動きが不自然に止まる…そして、さっきからこいつは触手を吐き出すようなことしかしてない…。)
俺は気になったものを一つずつ取り上げていき、パズルのように穴だらけのピースを埋めて答えを導いた。
その結果、ある違和感に辿り着いた。竜と触手状の魔物、異種族同士で何故対立しないのか…と。
(パンデモニウムが…他の魔物と共存…?対立しないところを見ると、レズリィとセーレのような主従関係で互いに………ッ!)
その刹那、俺は電気が走ったかのように靄がかかった脳内が一気に覚醒した。
何故こんな簡単な答えに気づかなかったのか、よく見れば触手を「アレ」に例えると、巨竜の奇妙な違和感に納得がいく。
「そうなると…まずいか…」
俺はとんでもない思い違いをしていた、フォルティアにどう説明すればいい…本当の脅威はこの巨竜ではなく、その大口から湧いて出てくる触手だと。
一から説明すると長くなる、だが要点だけを絞るだけなら僅かな時間でも何とかなるはず、と考えた俺はフォルティアに向かってお願いを口にした。
「フォルティアさん!さっきの氷壁、もう一度出せますか?」
「出せるが、一体何を?」
「わかったんです、あの巨竜の正体が。それを説明するためと、奴から少しでも距離を離すための時間が欲しいんです。」
フォルティアはクロムの言葉を聞き、「そうか」と答えると、杖を上に掲げ…
「特殊詠唱・氷遮蔽壁《フローズンウォール》!」
呪文を詠唱したと同時に、杖先から展開された魔法陣から強烈な冷気が吹き荒れ、次にフォルティアはそのまま杖を薙ぐ。
すると、先ほどまで何も無かった場所から氷塊が現れ、もの凄い速さで塊が縦に伸び始めて壁として形成される。その途中、巨竜がこちらに伸ばした右腕が形成中の氷壁に巻き込まれ、枷をはめたかのように動きを固定した。
俺は、巨竜はその氷壁から腕を抜こうと必死になるところを見る、なるほど見事な使い方とタイミングだ、恐れ入る。
「その四つん這いの体勢では力が入らないだろう、しばらくもがき続けるんだ。」
そう巨竜に宣言し、背を向けるとその先にいるヒズミを肩で担いで運ぶクロムに応じた。
「聞こうクロム君、君は何を導き出した?」
肩に乗せたヒズミの重みに少し苦労しながらフォルティアの問いにクロムは答える。
「この巨竜はもうすでに死んでいます、鑑定スキルで奴の状態を見たので間違いありません。」
フォルティアはクロムが発した言葉に疑問を持ち、振り向いて巨竜の方を見た。
「死んでいるだと…だが魔物の特性上、死すれば魔石諸共身体が塵となって消えるのではないか?」
「それを食い止めているのがパンデモニウムの幼体である触手なんです。フォルティアさんも見たと思います、あの巨大な口の奥から触手が伸びているところを。」
フォルティアはこちらに迫る巨竜を見た時にそれを確認した、開けた大きな口の奥、舌と見間違うがそれは喉奥を塞ぎながら何本も伸びていたものを。
「奴らは…あの巨竜に寄生しているんです。自分の都合のいい住処として、巨竜の体を維持…いや、利用している。」
寄生生物…その種類は数多く存在する。その基本的な行動は、主に宿主の体に寄生し、その栄養を吸い取ることで自身の体を成長、および繁殖行為を行う。
代表的な寄生生物を挙げるなら、カマキリに寄生するハリガネムシがいい例だろう。その生物は宿主の体内に寄生すると腹の中で成長し、成虫に達すると宿主の脳にまで寄生範囲を広げる。脳を寄生された宿主は寄生生物の意のままに操られ、適した場所に移動すると体外へと排出される。
それはまるで、あの触手と巨竜の関係に似ているのではないか?だとするなら本当の敵はあの巨竜ではない、中で操っている触手なのだ。
「寄生か…なるほど、どおりであの竜から本気で襲おうという気が感じなかった訳だ。本物の竜ならもっと荒々しく攻撃してくるはずだからな。」
フォルティアは俺が予想した答えに納得の意を答えたが…だからこそ、気になることが一つあった。
「だからこそ分からん、死した竜を寄生しているというが、その原動力は一体なんだ?私達を追うために氷壁を破壊し、今も捕まった腕を引き抜こうともがいている、寄生生物に執念深い意思があるように思えんが。」
スライムのような単細胞が襲いに来るという簡単な話ではない、個ではなく全員が同じ意思を宿さないかぎり巨竜というスケールの大きいマリオネット(操り人形)を動かすことはできない。
それをクロムは確信たらしめる自信でその疑問に答える。
「帝国は、パンデモニウムの復活に魔物や自身の仲間を生贄にした、魔物の中にある魔力を吸収して力を回復させるために。だから魔力に敏感だとわかったんです、腹を空かせた状態ほど目の前のご馳走を逃がさんと必死になりますから。」
「魔力に反応して追ってくるか…私達を狙うならその可能性は十分にある…。」
「実際、巨竜から離れた場所まで逃げましたが、魔法を使ったことでその場所にいるとわかって近づいて来ました。それも二回も、偶然とは思えません。」
フォルティアはクロムに目をやる、肩にヒズミを背負って真っ直ぐ歩く先を向きながら悠々と話している。
彼は内心驚いている、わずかな情報でここまで正解に近い回答を導き出すひらめく頭脳に。
(この者…寄生生物だと予想する他に巨獣の行動までも把握していたというのか?厄災魔獣という情報がかなり乏しい魔物相手に対しこのような推理力…。)
私が来るまで、たった一人で負傷者を守りつつ、目の前の敵をどう倒すべきか、逃げるべきか頭を捻らせていたことであろう。
そのような極限状態でありながらも導き出した確信に近い予想の数々、知識と推理に限らず、その状況下でそれらを考えられる精神力が人並み外れている。
(これが君の強みか…単純な強さにも匹敵する状況判断とひらめき力。)
里での会議でもあったその思考力、誰にも思い付かない考え方にその時は驚いたが、今この間近で見たその確信的な思いつきの披露にフォルティアは断言できた。クロムの強みを。
そんなクロムは、二つの謎を推理して解明するだけでは止まらない。
「実はそれで…俺は奴の足止めを選んだんです。」
フォルティアは奴の足止めという言葉を聞いてようやく気付いた。転移魔法を使ってここから離れるという選択もあった、だがクロムが選んだのは足止めを用した時間稼ぎ。
謎を解明する時間など里に帰ってからでもできる、巨竜から逃げるためならば転移を使えば一瞬で済む話。
そう、ここに残る理由などないのだ。
「それは何故?」
その意図をクロムに問うと、少し迷いを見せているような険しい顔で話始めた。
「最初は俺もフォルティアさんがいれば転移魔法で逃げれると思っていました。負傷者もいる、俺自身も戦える力は残されてない、逃げるのが当然の判断だと思います。」
クロムの話を聞くに、それは頭の中で理解していた。いや、人としてそのような状況下になったら逃げるという選択を取るのが当たり前だろう。
そのわかりきった内容から続き、クロムは逆の意味を答える。
「ですが、できませんでした…この巨竜の謎を突き止めていく内に逃げることができなくなる理由を見つけてしまったからです。」
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