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復活の厄災編
第五十六話 大団円が始まる前に①
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「……と、お前の傷を治すためにレズリィ様は魔力が焼き切れるほどに…」
「いやあの…ちょっと待って。」
熱弁するように今までの状況を語るセーレの話を、俺は一言待てを告げる。すると彼女は不満気な目で睨み返してくる。
「何よ、お前のせいでレズリィ様は危ない状況だったっていうのに、聞く耳も立たないってわけ?」
「聞く耳を立たないというか…ほぼ全部っていいほどレズリィのことしか話してないじゃん!里がパニックになったのも、アルノア達の容態についてもけっこう大事な内容だろ!それらをさらっと簡単にまとめるな!」
セーレにそうツッコミを入れると、声を張るために力を入れた腹に痛みが走り、俺は腹を抱えてうずくまる。
「痛たた…腹筋が割れる…!」
痛みの表現がオーバーなクロムを目にしてため息をつくセーレ。そして、クロムが言った指摘を自分なりに論破するよう端的に言った。
「詳しく話す必要ある?里の騒動なんて外を見れば結果は分かるし、二人の容態とか知らないわよ、私今この宿に隠れて過ごしてるからそっちの状況とか知らないし。」
「いや最後…!それ大事なことだろ、お前の立場どうなっているのか話してくれよ!」
「エルフの長が私とお前達の関係を認めた、だけど里の住人達はそれを絶対納得なんてしない。だから安心させるために、神巫の巫女が私を殺したっていう嘘を里にいる奴らに流した。」
セーレは窓際に立ち、外で働く住人達の光景を呆れた表情で眺めて語る。
「巫女の威光ってやつかしらね、彼女の話を聞いて疑いもなくみんな信じきってる。助かったわ、典型的な平和ボケをしてる住人達で。寝て起きたら何事もなく過ごしているのだから。」
巫女の威光…セーレの発言は間違ってはいない例えだ。
事実、アマツに助けを求めるという選択肢が頭に入ってるせいで、人々は自身の身をどう守るか考える思考を持たなくなってしまったために、アマツは人々が困難な状況に陥っても助けることをしなくなった。
アマツが気にかけていた光景が今、俺の目の前で広がっている。彼女がそう考え込んでいるのかと思っていたが、これはかなりの重症だ。
そう思うと、自分の口からするりと本音が溢れた。
「ああいう人達は一度痛い目に見ないとわからないかもな、自分が一体何に守られているのか、魔物の脅威がどんなものなのか知らないでいるのは少しマズイ気がする。」
「ははっ!一度試してみたいものだわ、悪魔族が巫女の姿に化けて出たらどんな反応をするのか。きっと悪い方向に誘導されていると気づかず自滅していくのが目に浮かぶわ。」
何故だろうか、セーレがそれを言うと洒落にならない不安感が込み上げてくるのは。
ああわかった、こいつの顔だ。冗談とは思えない台詞を悪びれる様子もなく発する、そのニンマリと笑う表情がそれを物語っていたんだ。
絶対にやるんじゃないぞ、と念を押すクロムに、意外な助け舟が横から入る。
「ずいぶんと物騒な話をしてるじゃない。私に化ける悪魔がいるなんて、ぜひそんな命知らずな悪魔と会ってみたいものだわ。」
開いている部屋の扉から堂々とその姿を見せる白装飾の着物姿の巫女、アマツ。そしてその後ろから心配そうな顔をして現れるレズリィとコハクがいた。
そんな元気な三人に挨拶を交わそうと、俺は手を上げて応えた。
「アマツ!二人共…あだっ!!」
部屋に入って来て早々、アマツは俺のもとに歩み寄り、笑みを浮かべた俺の頬を叩いた。いきなりの行動に、後ろにいる二人は目を丸くした。
「ちょっ!アマツさん…!」
「あんた達もやる権利くらいはあるでしょう、あれだけパーティーのみんなに迷惑かけて叱るだけで許すつもり?」
アマツの背後にいる二人は知らないと思うが、彼女はこちらに向けて殺気のこもった目で睨みつけている。セーレとは違う状況に対し、俺は恐る恐る聞き出す。
「えっ…待って、嘘でしょ…。来る人みんな俺を叩かないといけないくらい怒ってる?」
状況がまるで読み込めていない俺に対して、アマツはさらに沸々と怒りを込み上げる。
「あの子達の事情なんて知らないわよ、だけど私は怒っているわ。私が嫌いな事が何なのか前に言ったわよね、余計な仕事を増やされるのが一番嫌って…!」
構わず二撃目を見舞おうとするアマツに向かって両手を激しく振りながら俺は必死に弁解した。
「うああ!悪かったって!俺だってみんなを困らせるつもりじゃなかったんだ、あの時は妨害を受けてみんなと帰ることが出来なかった。すぐに帰ろうと思ったんだが…」
瞬間…脳裏に思い浮かぶ、シトリーとの記憶を共有した異色の共闘。話すには一言では言い表せないほどの情報量を今の彼女に告げる勇気もなく…少し俯きながら答える。
「こっちも…色々あってな。」
「っ……。」
その一言に、どれだけ酷な経験をしてきたのか察したアマツは振り上げた手を下ろし、「そう…」と言葉を残して怒りを鎮めた。
ピリピリとした怒りのムードが無くなりアマツがその場から離れると、コハクが我慢出来ずに俺の体の上に飛び込んできた。
「うおっ!」
その時の衝撃で体がビリっと痛み出す、反射的に痛いと口にしかけたが、俺の横脇腹で顔を埋めるコハクを見て我慢した。
「…良かったです…クロムさんが元気になって、またこうして声が聞けて。」
「コハク…」
自身の名前をその声で告げられたことを耳にすると、くしゃっと顔を歪め、さらに強く抱きしめる。
さすがにその触れ合いは体に重く響き、痛いと苦笑を浮かべながら宥めていると、レズリィが遠慮がちに声をかけてきた。
「私もコハクさんと同じ気持ちです、クロムさんが元気になったことにホッとしています。」
「レズリィ…すまな…」
「ですが…同時に私は怒っています。」
「えっ…レズリィさん?」
ホッと肩を撫で下ろし優しく笑顔を見せたかと思いきや、まばたきの合間にしかめた表情に切り替えた。
「クロムさんは死にかけた状態でこちらに戻ってきたんです。私達とはぐれた際にそちらで何があったのかわかりませんが、また無茶をしたんですよね?」
返す言葉もない、無茶をするなと口酸っぱく言われてきたことをまた破ったのだ。しかも今回は死にかけときたものだ、いい加減レズリィの堪忍袋の方も限界だろう。
だが結局のところ、言い訳もできず、無茶をしなければ死にかけにはならなかったので、素直に謝るほかなかった。
「あっ…ああ…すまん…。」
「すまんでは済みません!毎度毎度のこと満身創痍な姿を見せられたら心配で仕方ありませんよ!」
あまり聞かないレズリィの叫びに俺は体を縮こませて、その怒りを芯に受けた。もう殴られることすら覚悟していた、それほどまでに恐くて、今度は彼女の気持ちにちゃんと応えようと反省する意志があった。
そして…
ギュッ…
「っ!?」
「今度は…今度は本当に…ダメかと思いました…。」
すすり泣く声を耳に感じ、レズリィが俺の首にしがみついてきた。まさかの行動に俺は驚愕のあまり体の痛みも忘れて眼を白黒させた。
「……レズリィ…また、心配かけて悪かった…。」
レズリィの辛さは痛いほど感じていた、セーレが彼女について熱弁していなければその大変さは伝わらなかっただろう。
俺はそんな苦労をかけたレズリィに向かって謝ることしかできなかった。そして、その苦労を労うようにレズリィの背中をさすりながらより強く抱き寄せた。
「……!」
彼女は一瞬体を硬直させるが、すぐにそれを受け入れるように力を抜いて深く身を寄せた。そして震える吐息を漏らしつつ俺の耳元で囁いた。
「……声が聞けて…よかった…。」
その呟き声を聞いて、本当に自分はパーティー全員に迷惑をかけたんだと強く思った。
戻れないのは仕方なかった、優先すべきことを間違えた、そういうレベルの話ではない。一歩間違えればもう二度会えない状況を作ってしまった。
叱られていた方がまだよかったかもしれない、コハクの再会に流す涙とその喜びに溢れる抱擁、レズリィの苦労さが滲み溢れた泣き叫びたくなるような辛い気持ち、大切に思われているからこそ伝わるその心配が俺の胸に痛く、重く、のしかかった。
「今度は…なるべく…いや、もう心配かけることがないように頑張るよ。」
二人にそう約束を締結すると、黙って二人は頭を上下に頷いた。
隣で見ていたアマツもその言葉を聞いて、安心とまったくと言った呆れ模様からため息を溢す。
セーレも小さく頷いて反応を見せていた。
「そうね…次からそうしてもらえるとレズリィ様も悲しませずに済むわ。迷惑かけることがどれだけみんなを不安にさせるかこれでわかったようね。」
そうまとめるように言うと、セーレはその金属質な手を俺の頭の上に乗せた。
「えっ…?」
あのセーレが、嫌がらせや暴言を浴びせてきたセーレが、まるでこちらの苦労を労うようなしぐさをしてくるので妙な意味で驚いた。
そしてセーレは、もう片方の手はレズリィの肩にちょんちょんと指で叩いて呼びかける様子を見せる。
首にかけていた腕が緩み、何事かとレズリィがセーレに顔を向けた瞬間、俺の頭を乗せていた手がするりと顔に滑りこみガッと鷲掴んだ。
して…一気に力を入れて俺とレズリィとの距離を突き放した。
「ぐべっ!」
俺の顔面を鷲掴みにしたまま枕の上に叩きつけると、血走った目でこちらを睨みつけ狂乱するように吠え出した。
「だけどその不安な気持ちを慰める時に便乗してレズリィ様を抱くんじゃないわよ!見ててイライラすんのよ!お前がその汚い手でレズリィ様の体を触り続けているのが!」
「おまっ!ぐるじぃ…!手ェどげろ…!」
「ああどけますよ!お前を傷つけたらレズリィ様に嫌われちゃいますからね!ちゃんと痛めつけないようこれくらいで許してやるわよ!レズリィ様に感謝するのね、この変態勇者!」
「グソッ!なんで俺に対してェぞうなんだよォ!!」
呆然とする一同をよそに、子供も嫉妬心から生まれたような喧嘩をし続ける二人。
そして、呆れて見るのに疲れた様子でいるアマツがレズリィに問いかける。
「あんた…悪事は引き起こさないって約束、普通に破られているけど。」
「すみませんアマツさん…いつもの事なのでノーカウントでお願いします…。」
自分の首が飛ぶという恐れよりも、いつものことだとその喧嘩の光景をアマツに説明する方に恥ずかしさを感じたレズリィだった。
「いやあの…ちょっと待って。」
熱弁するように今までの状況を語るセーレの話を、俺は一言待てを告げる。すると彼女は不満気な目で睨み返してくる。
「何よ、お前のせいでレズリィ様は危ない状況だったっていうのに、聞く耳も立たないってわけ?」
「聞く耳を立たないというか…ほぼ全部っていいほどレズリィのことしか話してないじゃん!里がパニックになったのも、アルノア達の容態についてもけっこう大事な内容だろ!それらをさらっと簡単にまとめるな!」
セーレにそうツッコミを入れると、声を張るために力を入れた腹に痛みが走り、俺は腹を抱えてうずくまる。
「痛たた…腹筋が割れる…!」
痛みの表現がオーバーなクロムを目にしてため息をつくセーレ。そして、クロムが言った指摘を自分なりに論破するよう端的に言った。
「詳しく話す必要ある?里の騒動なんて外を見れば結果は分かるし、二人の容態とか知らないわよ、私今この宿に隠れて過ごしてるからそっちの状況とか知らないし。」
「いや最後…!それ大事なことだろ、お前の立場どうなっているのか話してくれよ!」
「エルフの長が私とお前達の関係を認めた、だけど里の住人達はそれを絶対納得なんてしない。だから安心させるために、神巫の巫女が私を殺したっていう嘘を里にいる奴らに流した。」
セーレは窓際に立ち、外で働く住人達の光景を呆れた表情で眺めて語る。
「巫女の威光ってやつかしらね、彼女の話を聞いて疑いもなくみんな信じきってる。助かったわ、典型的な平和ボケをしてる住人達で。寝て起きたら何事もなく過ごしているのだから。」
巫女の威光…セーレの発言は間違ってはいない例えだ。
事実、アマツに助けを求めるという選択肢が頭に入ってるせいで、人々は自身の身をどう守るか考える思考を持たなくなってしまったために、アマツは人々が困難な状況に陥っても助けることをしなくなった。
アマツが気にかけていた光景が今、俺の目の前で広がっている。彼女がそう考え込んでいるのかと思っていたが、これはかなりの重症だ。
そう思うと、自分の口からするりと本音が溢れた。
「ああいう人達は一度痛い目に見ないとわからないかもな、自分が一体何に守られているのか、魔物の脅威がどんなものなのか知らないでいるのは少しマズイ気がする。」
「ははっ!一度試してみたいものだわ、悪魔族が巫女の姿に化けて出たらどんな反応をするのか。きっと悪い方向に誘導されていると気づかず自滅していくのが目に浮かぶわ。」
何故だろうか、セーレがそれを言うと洒落にならない不安感が込み上げてくるのは。
ああわかった、こいつの顔だ。冗談とは思えない台詞を悪びれる様子もなく発する、そのニンマリと笑う表情がそれを物語っていたんだ。
絶対にやるんじゃないぞ、と念を押すクロムに、意外な助け舟が横から入る。
「ずいぶんと物騒な話をしてるじゃない。私に化ける悪魔がいるなんて、ぜひそんな命知らずな悪魔と会ってみたいものだわ。」
開いている部屋の扉から堂々とその姿を見せる白装飾の着物姿の巫女、アマツ。そしてその後ろから心配そうな顔をして現れるレズリィとコハクがいた。
そんな元気な三人に挨拶を交わそうと、俺は手を上げて応えた。
「アマツ!二人共…あだっ!!」
部屋に入って来て早々、アマツは俺のもとに歩み寄り、笑みを浮かべた俺の頬を叩いた。いきなりの行動に、後ろにいる二人は目を丸くした。
「ちょっ!アマツさん…!」
「あんた達もやる権利くらいはあるでしょう、あれだけパーティーのみんなに迷惑かけて叱るだけで許すつもり?」
アマツの背後にいる二人は知らないと思うが、彼女はこちらに向けて殺気のこもった目で睨みつけている。セーレとは違う状況に対し、俺は恐る恐る聞き出す。
「えっ…待って、嘘でしょ…。来る人みんな俺を叩かないといけないくらい怒ってる?」
状況がまるで読み込めていない俺に対して、アマツはさらに沸々と怒りを込み上げる。
「あの子達の事情なんて知らないわよ、だけど私は怒っているわ。私が嫌いな事が何なのか前に言ったわよね、余計な仕事を増やされるのが一番嫌って…!」
構わず二撃目を見舞おうとするアマツに向かって両手を激しく振りながら俺は必死に弁解した。
「うああ!悪かったって!俺だってみんなを困らせるつもりじゃなかったんだ、あの時は妨害を受けてみんなと帰ることが出来なかった。すぐに帰ろうと思ったんだが…」
瞬間…脳裏に思い浮かぶ、シトリーとの記憶を共有した異色の共闘。話すには一言では言い表せないほどの情報量を今の彼女に告げる勇気もなく…少し俯きながら答える。
「こっちも…色々あってな。」
「っ……。」
その一言に、どれだけ酷な経験をしてきたのか察したアマツは振り上げた手を下ろし、「そう…」と言葉を残して怒りを鎮めた。
ピリピリとした怒りのムードが無くなりアマツがその場から離れると、コハクが我慢出来ずに俺の体の上に飛び込んできた。
「うおっ!」
その時の衝撃で体がビリっと痛み出す、反射的に痛いと口にしかけたが、俺の横脇腹で顔を埋めるコハクを見て我慢した。
「…良かったです…クロムさんが元気になって、またこうして声が聞けて。」
「コハク…」
自身の名前をその声で告げられたことを耳にすると、くしゃっと顔を歪め、さらに強く抱きしめる。
さすがにその触れ合いは体に重く響き、痛いと苦笑を浮かべながら宥めていると、レズリィが遠慮がちに声をかけてきた。
「私もコハクさんと同じ気持ちです、クロムさんが元気になったことにホッとしています。」
「レズリィ…すまな…」
「ですが…同時に私は怒っています。」
「えっ…レズリィさん?」
ホッと肩を撫で下ろし優しく笑顔を見せたかと思いきや、まばたきの合間にしかめた表情に切り替えた。
「クロムさんは死にかけた状態でこちらに戻ってきたんです。私達とはぐれた際にそちらで何があったのかわかりませんが、また無茶をしたんですよね?」
返す言葉もない、無茶をするなと口酸っぱく言われてきたことをまた破ったのだ。しかも今回は死にかけときたものだ、いい加減レズリィの堪忍袋の方も限界だろう。
だが結局のところ、言い訳もできず、無茶をしなければ死にかけにはならなかったので、素直に謝るほかなかった。
「あっ…ああ…すまん…。」
「すまんでは済みません!毎度毎度のこと満身創痍な姿を見せられたら心配で仕方ありませんよ!」
あまり聞かないレズリィの叫びに俺は体を縮こませて、その怒りを芯に受けた。もう殴られることすら覚悟していた、それほどまでに恐くて、今度は彼女の気持ちにちゃんと応えようと反省する意志があった。
そして…
ギュッ…
「っ!?」
「今度は…今度は本当に…ダメかと思いました…。」
すすり泣く声を耳に感じ、レズリィが俺の首にしがみついてきた。まさかの行動に俺は驚愕のあまり体の痛みも忘れて眼を白黒させた。
「……レズリィ…また、心配かけて悪かった…。」
レズリィの辛さは痛いほど感じていた、セーレが彼女について熱弁していなければその大変さは伝わらなかっただろう。
俺はそんな苦労をかけたレズリィに向かって謝ることしかできなかった。そして、その苦労を労うようにレズリィの背中をさすりながらより強く抱き寄せた。
「……!」
彼女は一瞬体を硬直させるが、すぐにそれを受け入れるように力を抜いて深く身を寄せた。そして震える吐息を漏らしつつ俺の耳元で囁いた。
「……声が聞けて…よかった…。」
その呟き声を聞いて、本当に自分はパーティー全員に迷惑をかけたんだと強く思った。
戻れないのは仕方なかった、優先すべきことを間違えた、そういうレベルの話ではない。一歩間違えればもう二度会えない状況を作ってしまった。
叱られていた方がまだよかったかもしれない、コハクの再会に流す涙とその喜びに溢れる抱擁、レズリィの苦労さが滲み溢れた泣き叫びたくなるような辛い気持ち、大切に思われているからこそ伝わるその心配が俺の胸に痛く、重く、のしかかった。
「今度は…なるべく…いや、もう心配かけることがないように頑張るよ。」
二人にそう約束を締結すると、黙って二人は頭を上下に頷いた。
隣で見ていたアマツもその言葉を聞いて、安心とまったくと言った呆れ模様からため息を溢す。
セーレも小さく頷いて反応を見せていた。
「そうね…次からそうしてもらえるとレズリィ様も悲しませずに済むわ。迷惑かけることがどれだけみんなを不安にさせるかこれでわかったようね。」
そうまとめるように言うと、セーレはその金属質な手を俺の頭の上に乗せた。
「えっ…?」
あのセーレが、嫌がらせや暴言を浴びせてきたセーレが、まるでこちらの苦労を労うようなしぐさをしてくるので妙な意味で驚いた。
そしてセーレは、もう片方の手はレズリィの肩にちょんちょんと指で叩いて呼びかける様子を見せる。
首にかけていた腕が緩み、何事かとレズリィがセーレに顔を向けた瞬間、俺の頭を乗せていた手がするりと顔に滑りこみガッと鷲掴んだ。
して…一気に力を入れて俺とレズリィとの距離を突き放した。
「ぐべっ!」
俺の顔面を鷲掴みにしたまま枕の上に叩きつけると、血走った目でこちらを睨みつけ狂乱するように吠え出した。
「だけどその不安な気持ちを慰める時に便乗してレズリィ様を抱くんじゃないわよ!見ててイライラすんのよ!お前がその汚い手でレズリィ様の体を触り続けているのが!」
「おまっ!ぐるじぃ…!手ェどげろ…!」
「ああどけますよ!お前を傷つけたらレズリィ様に嫌われちゃいますからね!ちゃんと痛めつけないようこれくらいで許してやるわよ!レズリィ様に感謝するのね、この変態勇者!」
「グソッ!なんで俺に対してェぞうなんだよォ!!」
呆然とする一同をよそに、子供も嫉妬心から生まれたような喧嘩をし続ける二人。
そして、呆れて見るのに疲れた様子でいるアマツがレズリィに問いかける。
「あんた…悪事は引き起こさないって約束、普通に破られているけど。」
「すみませんアマツさん…いつもの事なのでノーカウントでお願いします…。」
自分の首が飛ぶという恐れよりも、いつものことだとその喧嘩の光景をアマツに説明する方に恥ずかしさを感じたレズリィだった。
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