推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん

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別離編

第五十八話 変革①

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 ーーグラン帝国城 邪帝の間・扉前

 大勢の悪魔族が巣くう巨大な城、グラン帝国城。そんな彼らが住処のように扱う城の中で、絶対に踏み入れたくないエリアが存在する。
 その最も代表的な例が、魔王が在位する邪帝の間である。誰もが魔王の覇気に怖気づいてここには近寄らないというのが理由なのだが…

「ーーー♪」

 幹部の一人であるベアル、彼女はそんな恐怖を感じることなく鼻歌混じりに誰かを待ってるようにその場に立っていた。
 他の場所に行けば賑やかな仲間の声が聞こえるのだが、ここはまったく音もなく、気配も感じない、よほどここがヤバい所なのだと実感できる。そんな緊張感が漂うその空間にベアルの鼻歌ともう一つ、この空間に入ってくる何者かの足音が響く。
 ベアルはその足音がする方向に視線を向き、顔馴染みの人物だと分かると手を挙げて挨拶を交わした。

「おっ、ベリスじゃん。とうとうあなたまで呼ばれちゃったんだね。」

 やって来たのは幹部のベリス、赤色の長いストレートヘアと、全身を黒を基調とした騎士風の戦闘服、それらの容姿はベアルとよく似ている。だが違うのは何を提示してもまったく興味を感じないその冷たい表情筋だろう。
 そんな嫌味たらしく笑みを浮かべて呼びかけるベアルに対し、無表情でベリスは淡々と答える。

「私はお前達のように失態で呼ばれるようなヘマはしない。」
「言うねぇ~さすが幹部最強の格は威厳が違うわ。」

 ベアルはベリスのもとに駆け寄り、上目遣いでそれも憎らしい笑みを浮かべて強請る。

「ねえ、一回負けてくれない?あなたの悔しがる顔が見てみたいなぁ。」

 先ほどからのこちらを馬鹿にしてくるような態度で接するベアル。いつ拳が飛んできてもおかしくない状況だが、その煽りすらもベリスは無視し、ベアルの横を通り過ぎて言う。

「だったら私より強い奴を連れて来い、お前のお得意の誘い方でな。」
「嫌よ、ベリスと対等な奴なんかを連れてきたら私の立場無くなっちゃうじゃん。私、けっこう気に入っているんだよねぇ、ヘラ様の右腕っていう肩書き。」

 私はヘラグランデの右腕的存在であると悪ふざけに主張する、最強の幹部という肩書きをベリスから取り上げるような言い方をすれば何か反応があるのかベアルは期待したが…

「痛いぞ、そういう勝手な妄想。」

 こちらに振り向きもせず、邪帝の間に通じる扉の前で待機するベリス。その背中からは、無駄話してないでさっさと来い、と言われているような威圧感があった。

「はぁ…スカした相手とじゃ話が盛り上がらないわ。」

 ちょっかいをかけても鉄仮面のように表情を顔に出さないベリスのリアクションにシラけるベアル。
 諦めついた彼女はベリスの隣に立つと、閉ざされた扉が自動で開き出し、二人の前に広い空間が広がる。
 二人はその空間に足を踏み入れ、目の前に居座る我が主を前にして、挨拶を交わす。

「ヘラ様…」
「来たよ、ヘラさ…」

 ……ズクっ……

(っ……!)

 この時、いつもの軽い気持ちでヘラに挨拶をしようとしたベアルは瞬時に言葉を切った。
 目の前には頬杖をつき、脚を組んで座る我らの王、ヘラグランデがいる。だがその姿はかなり異様で彼女と目を合わせた瞬間、心臓を貫かれるような錯覚を覚えるほどの殺気を浴びせられた。
 その目は半眼でこちらを睨みつけ、薄暗い空間のせいかその冷たい表情に影を落とし、より恐怖心を掻き立てる。

(まずいな……)
(あー…これやばいかも…)

 あれほどの憤怒、多少の怪我は覚悟しておくべきかと、この先の自分の状況を悟るベリス。
 すごくブチ切れてる…これは下手なことしたら首が吹き飛びそうと、楽観的だが今の状況を把握するベアル。
 幹部の二人はこの異様な緊張感を肌で感じ、そう察した。
 そして…重たい空気を裂くようにヘラが口を開く。

「ここ数日…幹部の失態が目立っているようだが…一体どうなっている?」

 コツコツと指で玉座の手掛けを軽く叩き、不満を呈するように静かな怒りをその声で表す。

「ルーナ城の魔導兵器の強奪、厄災魔獣の復活、幹部とその部下を連れておいてこんな簡単な仕事もこなせないのか、今の帝国は。」

 事実、この数日の間で幹部を含めた任務の失態が相次いでいる。セーレとその部隊による魔導兵器の強奪の失敗、そしてさっき話から察するにおそらくシトリーの方でも同じく失敗したと考えられる。
 幹部とは皆から自身の実力を認められた存在、戦況を変える切り札、期待などを背負っている者を言う。
 そんな彼らが負け続けているとなれば、周りから幹部などその程度の力量だと思われていることだろう。
 当然そうなれば幹部の中で最も位のある私達二人が呼ばれる。危惧しているのだ、自分達は皆の期待に応えられる幹部に相応しいか。
 誰にも負けることのない実力を持っているのか、自身の目で確認するために。

「あの~ヘラ様?もしかして私達が呼び出されたのって、部下達の教育不足を叱るためですか~?」

 笑みを浮かべてそう簡単に口にできるベアルに、ベリスは内心脱帽する。緊張感がないどころか肝が据わりすぎてる、ヘラヘラ笑ってはいるが、その心はどんな恐怖も感じない鋼のようだ。
 ヘラの言葉を重く受け止めないその姿勢に当然、ヘラは言葉を返す。

「お前達が部下達を教育した事があったか?部下を異形に作り変えるような事を教育とは言わない。」
「もう許されたと思ったのに、またその話~?」

 やれやれといった形で首を横に振るベアル、彼女の扱いに慣れた模様でその話のくだりを無視し、ヘラが話を切り出す。

「私は…結果さえ持ってきてくれれば何も言わない。仲間内で対立しようが、仲間を異形に作り変えようが、最後に結果を残せれば充分働いたと褒めてやる。」

 ヘラは座っている玉座から立ち上がり、二人に近づきながら話続ける。

「たとえ敗北したとしても、誰にやられたか、その時の戦況を報告してやれば私が計画を練り直してやる。だというのに、お前達が持ってくるのが死亡報告ばかりだ。血の気が多い奴なのか、はたまたまだ挽回できると思い込んでいるのか、幹部もそうだがそういう自己中心的な奴が組織を壊してる。そう思うだろう?」
「そうですね♪」

 しれっと流れるままに答えるベアル。そして…

(いやいや、モブポジションのアイツらにそれは無理な話でしょ…失敗=死、みたいな威圧出してる時点で怖くて報告なんて…)

 部下達が感じているであろうその内面を考えながら、心の中で先ほどの話に言いがかりをつける。
 すると目の前で、黒紫色の閃光がよぎった。
 何かと思ったその時には、ヘラの左手に握られた大鎌がピタリとベアルの顎下に触れていた。
 いつ大鎌を出したのかわからないほどに、鎌の軌道がまったく見えなかった。まるでこちらの心を読んでいるかのように睨み、口を開く。

「そして何より…裏切りというのは最も人を不快にさせる。それも、自分が特別に信頼している者がそれを起こせば不快の絶頂に達する。」

 私に向かって言ってるみたいだが、当然ヘラ様を裏切るようなことはしてない。(部下を異形に作り変え記憶はあるけど…)
 ひきつった笑いとともに、私は両手を軽く上げて降参のポーズを取った。

「えっ…?私?何のことかな…ヘラ様のために粉骨砕身頑張ってるよ…!」
「……。」

 少し沈黙の間があったが、ヘラは不満気な表情を変えなかったものの鎌を下げて二人に背を向く。そして、静かに一言発する。

「シトリーが裏切った。」
「…っ!」
「私と主従の契約を結んでおきながら、それを否定した。勇者を倒す使命よりも、奴の従者を助けることを選んだそうだ。」

 ヘラが怒りを表すその理由を告げると、少なからず二人は驚きを見せた。
 嘘をつくなら話はわかる、だが裏切るというのら話は別だ。奴隷は主との繋がりを断つことはできない、主の命令で自害しろと念じれば奴隷は抵抗虚しく自ら命を絶つ。生殺与奪の権利を主が握っている以上、裏切り行為に何のメリットもない。

 自分の主に明確な敵意を見せる、そうでもしないかぎりそんな馬鹿なことはしない。だからこそ幹部の二人は驚いた、そしてシトリーがそれを行うであろうきっかけを思い浮かべ、呆れたように顔が変わる。

「シトリー…やはり彼女はこうなる運命か。」
「あーあ…あの子が消えちゃったか~。まぁ、人間らしい一面があったし、いつかやるんじゃないかって思ってだけどね。」

 シトリーの裏切りをヘラが認知している、それは彼女に死亡宣告を告げているのと同じ。ベリスとベアルはそれを知ってか、シトリーの死を悼むことはなかった。
 裏切った者に受ける当然の報い、共に戦ってきた者だろうと敵側に落ちれば敵なのだ。
 その二人の反応を見て、ヘラは確信し、呟く。

「やはり悪魔は…狂人に限る。」

 力を求めるため自ら悪魔となったシトリーには、同族の恩恵として自分の魔力と、新たな居場所を与えてやった。
 期待していたのだ、私に歯向かうその勇気と、幹部に近いそのポテンシャルを備えている。その力を磨いていけばいずれ帝国の戦力となる、あの時の私はそう考えていた。
 だが誤算だった…生前の彼女は仲間思いが強く、正義感に溢れているという印象があった。まさかそれが悪魔に成り代わってもその精神を忘れていなかったとは。
 人間が持つ心とは、時に己の感情に躊躇いや迷いが生む足枷となる。仲間と群れ合い、優先順位を感情で切り替えるのは、ぬるい戦場しか経験していない雑魚が考えることだ。
 悪魔にそのような考えはいらない。奪い、搾取し、己の強さを求めることに快楽を覚える存在でいなくてはならないのだから。

 そう…捨てなければならない、馴れ合い、仲間意識などのぬるい考え方を。

「前置きが長すぎた、本題に入ろう。お前達二人を呼んだのは、私が立案した新しい方針を遵守してもらうためだ。」

 この瞬間、帝国が大きく変わり始めることをベリスは予感した。ヘラの下で働くその間、方針が変わることなど初めて聞く。これは大きな革命が起きると思ってもいい。
 だがその逆、新しい方針を伝えるためなら部下達全員の耳に入れた方がいいのではないかという疑問が出てくる。ベリスはヘラにその方針について尋ねた。

「新しい方針…一体その内容とは?」
「ベリス、お前は各国から有力な戦力達を捕まえてくるんだ。可能なら生け捕り、ダメなら半殺しでも構わない。」

 問いかけに応じず、ヘラはベリスに指示を与える。そしてその隣のベアルに顔を向けて、彼女にも指示を与えた。

「ベアル、これまでのお前の行いをすべて不問に付してやる。」
「えっ!いいんですか!ヤッタ~!」
「そのかわり、お前のそのイカれた脳みそを使って能力者の力を奪い取る魔法を作れ。好きだろう、相手が嫌がるものを作るのは。」

 その問いに平然と、そして快楽を感じているような高揚した笑みを浮かべてベアルは答える。

「好きです、相手の嫌がるものを作るの。」

 畳みかける指示の連続、方針の内容を言われずとも二人に課せられた任務をまとめると、ベリスは察した。

「ヘラ様、もしかしてこれは…」
「私が悪かった。結果だけを見据えたせいで、部下達は強くなろうとせず威張る者が増え、私のやり方に不満を持って裏切る者まで現れた。すべて…お前達の心の弱さを見抜けなかった私の責任だ。」

 部下達の慢心に責任を感じ謝罪を述べるヘラ、だがその表情は決して部下達に頭を下げるような誠実さなどカケラもない。
 失望、苛立ち、見込み違い、失態に失態を重ねた自分の部下達をもう一度信頼してみようという気も起こらない。
 故に、彼女は弱者になんの興味も湧かない、救いの手も伸ばさない。強者こそ、結果こそ、彼女が今求めるものなのだ。

「お前達は、強い力に溺れていなければ不満なのだろう?なら奪い…そして我が物にすればいい。教育なんかよりもそっちの方が手っ取り早く強くでき、そして自分に自信がつく。」

 他種族のスキルを見れば、特筆した力もない凡庸な才である部下達がどれほど無能なのか一目でわかる。
 部下達を信じない…それは凡庸な才に留まっている者達を切り捨て、特筆した《個の力》に目覚めた者を磨いていく。
 ヘラの方針、それは――《新たな幹部の参入》である。

「他種族の能力を私達が吸収し、戦力を拡大させる…。ヘラ様は、あんな部下達にもまだチャンスを下さるということですか?」

 ベリスの問いに、ヘラは首を横に振る。

「チャンス?違うな、自分の才能に溺れて現状に満足してる奴など眼中にもない。シトリーとその部下達、何百という駒を失ったんだ。その巨大な穴を埋めるためには今一度再確認しなければならない。」

 言葉を切り、明確な殺意とそれを孕んだ苛立ちを含んだ表情に変わる。

「才能か、ゴミか、今ここにある戦力がどれだけ使えるものなのか。その判断は私自ら行う、お前達二人は指示された任務を全うしろ。」

 その殺意を混ぜ込んだ台詞は…帝国の要とも言われる幹部の二人であろうと例外ではない、見苦しい結果を見せてしまえば、下位層の悪魔と同じ扱いを強いられると思え。と伝えられているようでもあった。
 それゆえの幹部という地位、当然だが戦況を変える力を持った者が簡単にやられていいはずがないのだ。 
 その真意を改めて理解した二人は、ヘラの指示を受けて、了解の返事をした。

「話は終わりだ、仕事に戻れ。」

 ヘラに向かって二人は軽く礼をした後、邪帝の間を出ようとした。すると背後からヘラが呼びかける。

「それとベリス…」
「はい」
「ついでに勇者を殺してこい、奴が勢いづく前に芽は摘んでおかないとな。」
「わかりました。」

 幹部二人をも葬った勇者を倒せという指示を顔色一つ変えずにベリスは承諾する。
 やれと指示されたらやるのみ、どんな指示でもそういう精神でベリスは受ける。なぜなら彼女にとって、指示されたことをやるだけの簡単な仕事に過ぎないからだ。

 ◆◆◆

 邪帝の間を出て、薄暗い城の廊下を歩くベリスとベアルの二人。
 ヘラのオーラが部屋から離れていくごとに薄くなり、主の耳に入らないところまで歩いたことを知ると、ベアルが口を開く。

「はぁ…それにしても新しい方針ねぇ…これは下級レベルの部下達が泣き喚きそうだわ。」

 ヘラの指示になんの反論も漏らさなかったベアルが、部下達の安否を心配するように意見を言う。

「同情するよ、魔王の前で自分の力を証明するなんて。多分認められなければ…」
「それがどうした…」

 ベアルの話を制してベリスが疑問を述べる。

「そいつが除外されたら哀しいのか?それとも実験体が確保できなくなるからか?」

 仲間の安否など今までベアルは考えたことなかっただろう。彼女の性格や言動からでは予想もできない今の台詞に、ベリスは怪しさと疑いを含んだ目で睨む。

「あーー…実験体が確保できなくなるのは嫌かな。シトリーの部下を異形にしたあたりから、みんな私に協力的じゃなくなってるし。」
「自業自得だ。」
「それに、才能に溢れた奴らが残った組織なんて、まとめるのに苦労するのよね。自分の強さで物言うエゴイストな奴に自分の言うことを聞いてくれると思う?」

 言葉を切り、ベアルはかすかに俯くと軽いため息混じりに表情を切り替える。
 常に何を考えているのか予想もつかないような楽観的な微笑を浮かべ、誰に向けても友達感覚で悪態をつくの悪魔。そのベアルが初めて、明確な嫌悪感と苛立ちに覆われる。

「生意気な態度、自分は賢いと主張、自分の思い通りに動かない奴らにイライラ、私はそれが嫌なだけ。だったら幹部という立場を利用して下位にいる部下達をこき使った方が気が楽だわ。」

 そういうと次はあなたが答える番と言わんばかりに、軽い態度でベリスに指を差す。

「それで、そういうベリスは?…って、部下とあまり接点もない孤独な絶対強者様には理解できないかもね。」
「……。」

 変わらずベリスは、彼女から発せられる余計な一言について考えることなく、彼女が聞きたいことを独自に解釈して答える。

「私から見れば除外される程度の力量しかないゴミは、いてもいなくても変わらない。関わるだけ無駄な労力だ。」
「ひっど…それでもみんなのお手本となる幹部の鏡なのかしら?」

 部下達のお手本?鏡?知らぬうちに築き上げられていたその周りからの信頼というものに、ベリスは不快に顔をしかめる。

「私はヘラ様の方針に賛成だ。仲間意識、協調、それで下位層の育成が図れるというならヘラ様は何も言わなかった。だが結果、そういうやり方を貫いたシトリーの軍は壊滅した。何百と使えないゴミで戦わせるより、もう一人か二人、幹部並みの実力者がいれば状況は変わっていただろう。」

 別に部下達が嫌いだからとか、そういう気持ちを抱いているわけではない。ただヘラの話を聞いて自身が感じていた違和感が確信へと変わったことに、やはりかといった気持ちになる。

「事実、任務の成果をあげてるのは私達幹部がほとんどだ。それ以上の成果を求めるのなら、できる部下達をさらにできるようにしたらいい。それに気づいたからヘラ様は実行に移した。」

 下位の部下達は大勢の同胞に囲まれて実感していないことだろう、自分の弱さを、どれほど幹部のすねをかじりついていたのかを。
 ここらがいい機会だろう、勇者一行が軌道に乗り始めた、世界が私達を討伐しようと動き始める。早すぎず、遅すぎず、帝国が変わるための猶予期間、新体制を作るには丁度いい。

 戯れは終わりだ…ここからは弱肉強食の世界だ。

「部下達のお手本?憧れ?目的?あいつらがどういう気持ちで私を思ってくれるのか知らないが、自分が強いという気でいるようでは、私の心には響かない。」

 その台詞にベアルは僅かに憤りを覚え、殺意を滲ませてベリスを睨む。

「へぇ…じゃあ私に冷たいのも、私が弱いからって言いたいのかしら?」

 ベリスはおそらく帝国が新体制になろうと、部下達を見る目は変わらないことだろう。自分より弱い奴から何も得るものも無ければ、むしろいてもいなくても変わらないからだ。
 だから気に入らない、自分は一番特別な奴なんだと、自分以外を気にする事のない態度が。
 だがそれと同時に…

「証明したいのならいつでも挑戦を受けよう。だが、まだお前を殺すわけにはいかない、今の帝国にはお前の狂った脳みそが必要なんだ。私はお前の力を買っている。」

 そう平然と言える最強幹部の威厳さというものだろうか、何事にも冷静に判断して物言うそれは、強烈な意思力が噴き上げて反論すらできない。悔しいが…

「それはそれは…栄誉賜り、光栄に存ずるよ。」

 ベアルは憎らしく韻を踏みながら紳士的な言葉を吐いて、笑顔で優雅に礼をした。
 ベリスは物珍しそうに彼女を眺めた後、なにも告げることなくその場を後にした。

 ああ…ほんとに気に入らない…余裕スカした態度で実力を気に入られても嬉しくも何ともない。

 ベリスが去っていく足音が聞こえなくなったところで彼女は腰を上げる。先ほどの笑顔はどこにいったのか、嫌悪感丸出しで低く呟く。

「スカしたベリス…スカリスめ。」


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