推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん

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悪魔の絆編

第二十四話 復活の拳闘②

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 建物の中は薄暗く、今まで明るい外にいた俺からすれば目が慣れておらず真っ暗な状態だ。

「嫌ぁっ!」
「っ!?レズリィ!」

 暗闇の中でレズリィの短い悲鳴が聞こえ、只事ではないと感じ進もうした直後…

「動クナ。」

 奴の一言が鮮明に聞こえすぐに足を止めた。だんだんと目が慣れてきたのか、ぼんやりと目の前の情景が目に写った。
 ゴブリンロードはレズリィの胴体を腕で絞めながら掴み上げており、体格差も相まって彼女の体は奴の膝上まで持ち上がっていた。
 彼女の腕は後ろに拘束されており、足にはきつく縄で縛られている。あれでは自力で脱出など不可能だ。

「くっ、クロムさん…。」
「グヒヒヒ、オマエハコイツヲ助ケニ来タノダロウ?殺サレタクナカッタラ剣ヲ捨テテ我ニ跪ケ。」
「王様ごっこは後にしろよ、俺との戦いをほったらかして女に抱きつくとか呆れた奴だな。」

 俺がそう煽りの言葉を口にした直後、床面に鮮血が飛び散った。奴の尖った爪がレズリィの左頬を切り裂いたのだ。

「ああっ!!」
「っ!てめぇ…!女の顔を傷つけやがったな!」
「次ハ首ダ、オマエガ我ノ言ウコトヲ聞カナイ限リコノ女ヲ切リツケテイク。早クシロ、我ヲ待タセル気カ?」

 ゴブリンロードは彼女の血がついた指を舐めて不気味な笑みを浮かべた。
 レズリィも目尻に涙を浮かべ荒い息をたてている、奴に躊躇いがない以上下手な行為をすればレズリィに危険が及ぶだろう。

「ぐっ…くっゥゥ…!」

 俺は唇を噛み締め悔しさを滲ませながら剣を後ろに投げ捨て、片膝を床につけた。

「グヒャヒャヒャ!ソレガ王ニ対スル礼儀カ?頭ヲ床ニ擦リツケ平伏セヨ!」
「っ……。」
「クロムさん…わっ、私のせいで…。」
「オマエノ救世主ハ躾モサレテナイ馬鹿者ノヨウダナ、我ガ自ラソノ体ニ叩キ込ンデヤル!」

 ゴブリンロードは俺がいる場所まで近づくと、足を俺の頭上まで上げた。

「駄目っ!やめてください!」
「グヒャヒャ!跪クトハコウヤルノダ!」

 ゴブリンロードは高笑いをあげ勢いよく足を下ろす。それは殺意がこもった人間の頭を潰せる力であり、レズリィの静止も叶わずその剛力が俺の頭に触れた。
 ピタッ…
 だがその力で俺の頭を潰す事はなく頭に触れた瞬間止まった。
 ゴブリンロードは怪しく見た、足元で俺が意味深に片手を横に伸ばしている姿を。

「オマエ…何ヲシテイル?」
「スゥー…今だやれ!」
「何ッ!?」

 ゴブリンロードは突如大声で合図を送った俺の姿を見て周りを警戒し始めた。

「ふっ…バーカ!」

 クロムはこの時を待っていた、ゴブリンロードが自身の間合いに入ってくる瞬間を、俺から視線を外す瞬間を、俺が剣しか能がない奴だと判断した瞬間を。
 俺はすかさず奴の体に触れて零距離で火炎魔法を放った、だが手を伸ばした先にあったのは足を上げた事でその姿が露わになった男のアレだった。

 グギャァァァァァァァァァァ!
 ボンッという音と共に火球がゴブリンロードのアレに直撃し、耳をつんざくような苦痛の叫びをあげた。そしてあまりの激痛に掴んでいたレズリィの体を離し、悶えるように膝をつき体を丸めた。

「クロムさん今何を…?」
「うわぁぁぁ!ゴブリンのチ⚪︎コ触っちまったぁぁぁ!」
「ぅ…!?とっ、とりあえずここから早く逃げましょう!拘束を早く!」

 俺は手を自分のズボンに拭うように擦り付けながら不快感を露わにした。それを見たレズリィは一瞬眉をひそめたが、脱出する時間が刻一刻と無くなっているのを察しクロムを急かせた。

 ザシュ!ザンッ!
 レズリィの手首と足首に縛りつけられている縄を剣で切り離し、彼女の肩を持ちながら外へと脱出した。

「目的は果たした、すぐにここから…っ!?」

 建物の外を出た瞬間、後方からこちらに走ってくる音が聞こえ、レズリィを押し出した。

「あぐっ!!」

 押し出した際に伸ばした右腕が、中から現れた大きな影によって切られ鮮血が飛び散った。
 切られた腕には三本の爪痕が残っており、いずれも肉が抉れていた。

「野郎…痛えじゃねぇか!」

 ゴブリンロードは大剣が刺さっている方向に走り向かい剣を抜いた。その振り向きざまから見た奴の顔は、血管が浮き出て興奮…いや、激昂している姿だった。

「貴様ァァ…!貴様ァァ…!!」
 グォォォォォォ!
 ゴブリンロードは咆哮をあげ、剣を地面に引きずらせながらこちらに向かって来た。
 俺はすかさず前に走って奴の胴体に入り込もうとした、大剣の重さでは振りかぶる攻撃に隙ができる、そこを狙って負傷していない左腕で突技《バーストクラッシュ》を喰らわそうとした。

 ガシャン!
「なっ…!こいつ!」

 俺は目を疑った、攻撃に使う大剣をゴブリンは捨て両手を広げ突進してきた。
 最悪だ…距離は3メートル程、もう俺は突技の体勢に入っている。人間は急には止まれない、その言葉の意味を身をもって体言した。

「怯ませるしかねぇ!バーストクラッシュ!うぉぉぉぉぉ!」

 ドガァァ!
 奴の手が俺に触れる先に俺の剣が奴の胴体を突いた、だが二歩ほど退がっただけで奴と俺の距離が変わる訳でもなく、俺は剣を持っている腕を掴まれた。

「がぁぁぁぁ!!」

 掴まれた瞬間腕からメキメキと軋む音が鳴った、万力ような力で腕を押さえられ骨がイカれたようだ。

「くそっ、よりにもよって剣を持ってるこっちかよ!魔法もあの時の不意打ちが最後の一発だったからもう撃てねえ…!」

 咄嗟に剣を負傷している腕に持ち替えようとしたが、奴の空いている手が俺の右腕を掴んだ。両腕を封じられてしまった俺は、ただゴブリンロードを睨みつけることしかできなかった。

 グルルァァァァ…
 ゴブリンロード唸り声をあげながら口元を大きく開き少し体を引いた。

「お前まさか…!?」

 俺は嫌な予感を察知し、両足を滑らせ仰向けに倒れた。それと同時に俺が立っていた場所で奴が勢いよく顔を近づき虚空に噛み付いた。あと一秒遅ければ頭をかじられていただろう。

 グォォォォ!グルァァァァ!
 倒れた俺を組み伏せ再び俺の頭をかじろうとした、俺は咄嗟に足を使って奴の首を受け止めこれ以上近づけさせないよう踏ん張った。

「はっ!キレすぎて言葉どころか理性も失ったみたいだな!?食うことと奪うことしか脳のない野蛮人がよお!」
「殺ス…!殺ス…!!」
「つーかくっせえんだよ!汚ねえ口を近づけんじゃねぇ!」

 どんなに強く罵倒しようが奴の力は俺より勝っているのは事実、足の堪えが効かなくなり徐々にその肉を抉る凶器の口が迫ってくる。

「ぐっ…くそぉぉっ!」
「クロムさん!どうしよう…私の力じゃあのゴブリンを引き剥がせない。誰か…誰かいないの?」

 レズリィは辺りを必死に見渡しながら助けを呼ぼうとした、だが辺りは炎に包まれており仲間がここに来れる状況ではなかった。

 ーー助けて!

 それでもレズリィは叫んだ、誰かが来てくれることを願い見渡すことしか出来なかった、自分の力ではどうすることもできない無力感を押し殺しただひたすら助けを求めた。

 ーー助けて!誰か!

 クロムはもう首だけでは堪えが効かないと感じ、ゴブリンの両肩を両足で押し始めた。それでも徐々にゴブリンの口がクロムの体に近づいてくる、もう目と鼻の先だ。

「助けてください!クロムさんが死んじゃう!」

 ドガガァァァァ!
 レズリィの叫びが響き、黒煙と炎の向こうから何かが崩落する音が響いた。
 レズリィは膝をつき叫ぶことに力を使ったのか、顔を下げていたからわからなかった。
 黒煙と炎をかき分け、こちらに向かってくる存在を…。
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