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復活の厄災編
第四十七話 魔紅石①
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誰の記憶だろうか…まるで湧き出る小さな気泡が集まり大きく形成していく。
屋敷の手伝い人や衛兵達と過ごした日々を…自分の国を作り上げようと奮闘した日々を…
だがそんなありふれた日々を紅く染めるように、あってはならないものに侵食されていく。
ーー誰だ…何だ…ここに映るものは…
遡ること十年前…
暗い底、日の光が届かない地下世界。硬い土壌と岩に覆われた広い空間に大勢の人間達が動いている。
カンカンと岩を砕き、穴を掘り進め、土壌の中に眠るお宝を探し当てるかのように皆は目的のために協力し合っている様子が伺える。
「ひぃ…疲れた。」
一人の作業者が手に持っているツルハシを地面に突き刺し、休みがてら膝を折って座り込んだ。
それを隣で見ていた大柄の男が根太い声で、休んでいる作業者に注意をした。
「なに休んでんだ、働かねぇと金貰えねぇぞ。」
「働けっていうけど…重労働すぎるだろこれ。」
作業者の目の前には自分が土壌を掘って出来た窪みがあった。半日ほどそこで作業していたが、窪みと言うべき程しか作業が進んでいないことに対し文句を垂れ流した。
「今時岩を掘るのに人力とか聞いたことねぇぞ。もういっそのこと魔法使いを呼んで爆破魔法で壊した方が楽じゃないか?」
「馬鹿っ!お前それ、女王の息がかかってる奴に聞かれるんじゃないぞ!即刻クビにされちまうだろ。」
「わかってらぁ、こん中にある大事な石までも砕いちゃうから手作業なんだろ?俺が言ってるのは、こんな長く土堀りばかりしていたらやる気は次第に失せるって言いたいだけだ。」
作業者はため息混じりにゆっくりと体を起こし、地面に突き刺したツルハシを手に持った。
「さっさと出てこいよ!紅い石!」
その意気込みをツルハシに乗せながら、窪みに向かって振り下ろした。
このガツガツと作業者達が土を掘る劣悪な光景とは打って変わって、地上では緑豊かな土地に陽の光が温かく照らす平和な光景が広がっていた。
見渡す野原、少し先には森林が点在する。周りには町や村もなく、ただそこに自然の風景とは異質な赤レンガで建てられた屋敷だけがあった。
西洋風な造りをしたその屋敷はまるで城を体現しているような大きな建物であり、その周りには舗装された綺麗な大広場が広がっていた。
その豪勢な屋敷がある場所に、二つの馬車が向かってやってきた。
「お嬢様がお帰りになられたぞ!」
屋敷の門に立つ衛兵が大きく声を上げると、屋敷の中から何人もの衛兵が外に出て、道沿いに向かって礼をした。それと同時に一台の馬車が館の前で止まり、中から一人の女性と男性が出てきた。
「お帰りなさいませ!」
「「お帰りなさいませ、シトリーお嬢様。」」
一人の衛兵が声をあげた後、続いて衛兵達が合わせて挨拶を行った。
衛兵達から挨拶を受け、真っ直ぐ館に向かうお嬢様と呼ばれるその女性は、足先まで伸びる赤いコートを肩にかけ、白を基調とした服とハーフスカートにはコートの背面に描かれてある家系の紋様がオシャレに描かれてる。
少し青みかかる紫色のショートヘアは膨らんだ形をしていて、雪のように白い肌色と合わせるとその存在感に目を奪われ惹かれるほどだ。
シトリー・クリフレッド、彼女こそこの赤い館の主であり、ここ一帯の土地を納める領主であった。
「お前達、異国から来たお客人だ。もてなす準備をしろ!」
シトリーの側に立つ荒々しい黒髪の男性はそう告げると、衛兵達は持っている槍を上へ掲げて、アーチを作るように対面する衛兵に向かって斜めに傾けた。
シトリーの側近である男性は黒の軍服を着こなして執事のように振る舞っているが、顔や頭髪から見て荒くれ者のような存在感を出している。まさに豚に真珠のような姿だ。
だがその立場は衛兵達に指示を出し、領主であるシトリーの従者として仕事をこなす第二のリーダー的存在である。
ヒズミ、性の名前は不明であり、ここにいる者達は彼をその名で呼んでいる。
「すごい歓迎の仕方ね、これが私のような異国の民に対するおもてなしかしら。」
シトリーとヒズミが馬車から降りた後に続いてもう一台の馬車が到着した。異国風の衣装を纏った男性二名が片手持ちのケースを持って馬車から降り、その後に彼ら二人とはまた違うオーラを出した一人の女性が降りてきた。
長い白髪に褐色の肌、その青い瞳はサファイアのような輝きを見せている美しき女性。外だというのに肌露出の多いベリーダンサーの衣装を着飾っており、外見からしてここらの国にいるような人物ではないことは確かだ。
足をその場に降り立つと、異国のお客人と称された彼女に壮観な眺めが広がる。緑豊かな地に一邸の大きな屋敷、まるで自分がこの館の当主になったかのような気分になる。
「豪勢な屋敷以外何もない場所だからね。遠い所からわざわざ来てくれたのだから受け取ってほしい、これが私達なりの誠意というものよ。」
シトリーは槍のアーチの前に立ち、両手を広げてお客人を迎え入れた。
「ようこそクリフレッドの領地へ、歓迎しようユスティナ・リーシュ女王。」
ーー屋敷内・会議室
ユスティナと呼ばれたお客人と護衛の二人は、屋敷内にある会議室に案内させられた。
そこにはテーブルと両脇に二つのソファ、薪入れの暖炉といった落ち着きのある内装が配置されていた。
会議室といった対談専用の部屋が配備されていることに驚きだが、もっと驚いたのは、
「ずいぶんと屋敷に人がいるのね。メイドに衛兵、まるで一国を担う王様と相手しているようだわ。」
この会議室に来るまでに出会った人の数だ。屋敷の家事をするメイド達に警備や戦闘の訓練をする鎧を着た衛兵達、城の規模には負けまないくらいの密度があった。
だがシトリーはこの状態でもやや不満足な表情をしていた。
「まだまだよ、どんなに敷地を豪勢に取り繕っても未だ手付かずのまま。この屋敷も恥ずかしながらまだ未完成、国の王様と呼ばれるには発展が全然足りない。」
シトリーは部屋の窓に立ち、外を眺めた。ひらけた大地、佇む森、国と呼ぶには少しもの寂しい風景が広がっていた。
「それでも…私はこの屋敷から始める、労働者の家を作り、仕事場を作り、道を大きくする。そうやって規模を大きくさせて地図上に私が作り上げた国の名前を刻む。」
「それは…なんとも壮大な計画ね。国を一から作り上げるなんて相当な覚悟と苦難が待ち受けるものよ。怖くなったかしら?」
ユスティナはそう想像した仮説を発すると、シトリーはそれを喜んで受け入れた。
「さすがリーシュ家の次期領主様、砂漠の国・サフラを統治した経験は説得力が違う。ぜひこれからのためにお話しを聞かせてほしいものね。」
シトリーはユスティナという人物像について詳しい内容を頭の中に入れていた。
ユスティナ王女、砂漠の国・サフラを統治しているリーシュ家領主の娘である。かつて…たった一つのオアシスを求めて争いを起こした砂漠の民を一つにまとめ上げ、国を設立するために尽力した輝かしい歴史を持っている。
「ふーん…見た感じ私から言えることは一つかしら。」
今の代にまでその栄光が語り継がれているため、ユスティナには家系として国の政策に賛同するため色々な知識を教え込まれていると聞く。
実際経験者でも無さそうな雰囲気を醸し出していたが、ユスティナは短く考えた後に淡々と語りだした。
「人を集めて国を発展させようとするのはいいことだけど、発展途上な国ほど人集めはかなり難しいものなのよ。役に立つか立たないかを省いて、人を助け舟のように集めようとすればいずれ限界が来る、一隻の舟に乗れるは限られた者だけと切り捨てる覚悟を持たないといけないからね。」
ユスティナがここに訪れたのはついさっきのことであり、何も知らない状態での訪問にも関わらず、屋敷を少し歩いて中働きしている者を観察しただけでその答えにたどり着いた。わかっていないければ普通その答えにたどり着かない。
「まぁ…つまりは優先順位を間違えるなということよ、屋敷を守ろうとする戦力よりも建築技術に長けた技術力を身につけた方がいいかもね。」
その答え通り屋敷には、発展に必要な技師があまりいない。状況を先延ばしにしていることでもあるが、的確な指摘に対しシトリーの表情が少し曇る。
「あら、私としたことがこれから頑張ろうとする相手に向かって自分の主張を押しつけてしまったわ。これは失礼。」
「いや…逆に礼を言いたい、国を立てたとされる者からアドバイスを聞ける機会などないから。」
ユスティナの話を聞き入れながらお互いに対面し合うようにソファに座り込んだ。
面と向き合うと、ユスティナは落ち着いた様子でこちらを伺っており、後ろには無言のまま二人の男性が無愛想な目でこちらをみている。今までもお客人との会談でこのようなことは何度も見てきたはずだが、今回ばかりは少し違う。
(ユスティナ女王…体つきからして30代といったところ。サフラを治めるリーシュ家にも魔法や戦闘技術を身につけてる者もいると聞くが…)
人より感知能力が高いシトリーはユスティナ達から妙な威圧感が出ているのを肌で感じた、それはまるで怖い試験官達から面接を受けるような圧迫感があるように見えた。
(この人達…かなりの実力を持っているようね。気に入らなかったら力づくでわからせるって伝えているようだわ。)
とんでもない相手が来たと緊張感を出しつつ、シトリーはユスティナに今回の会談について述べ始めた。
「では、世間話しはこれくらいにしましょうか…。」
ふと、二人の間に立って見守るヒズミにシトリーは片目を二回閉じる合図を出した。彼はその意図を察し短く頷くと、「失礼。」と一言発し会議室を後にした。
会議室にお客人達を一人で相手にする状況になったシトリーは話を進める。
「ユスティナ女王、改めて私の領地に赴いたその理由を聞かせてもらえるかしら?」
「ふふっ、私のようなお客人が有名人たるあなたに会いにくる理由なんて一つしかないでしょう?」
ユスティナの表情が先ほどより笑みが広がる、まるでわくわくしているような感情で話出した。
「あなた達が管理している《魔紅石》という特殊な魔石についてよ。」
魔石…魔物が生きるために必要な核であり、武器や工具の基本的な材料の他、電気や熱などの動力を補うための必要なエネルギー源として利用されている。
よってこの世界の住人は害する魔物を討伐し、そこから手に入れた魔石の力で生活をしている。
だがそう簡単に手に入れることはできない。魔物に相対する危険性も含まれているが、魔物の特性上、力尽きると自身の心臓部である魔石は塵となって消えてしまう。
絶命する前に魔石をくり抜く特殊な討伐方法を使うと魔石が塵とならずに手に入れることができるが、実際それができる冒険者は10人に3人といったかなり難しい技術である。
その入手難易度から、国との貿易で魔石は最も高値で取引されている。ところがそんな情勢に亀裂を入れるように期待の新星が世界中にとある情報を流した。
ーー普通の魔石よりずっと長持ちする魔石を発見した。と
屋敷の手伝い人や衛兵達と過ごした日々を…自分の国を作り上げようと奮闘した日々を…
だがそんなありふれた日々を紅く染めるように、あってはならないものに侵食されていく。
ーー誰だ…何だ…ここに映るものは…
遡ること十年前…
暗い底、日の光が届かない地下世界。硬い土壌と岩に覆われた広い空間に大勢の人間達が動いている。
カンカンと岩を砕き、穴を掘り進め、土壌の中に眠るお宝を探し当てるかのように皆は目的のために協力し合っている様子が伺える。
「ひぃ…疲れた。」
一人の作業者が手に持っているツルハシを地面に突き刺し、休みがてら膝を折って座り込んだ。
それを隣で見ていた大柄の男が根太い声で、休んでいる作業者に注意をした。
「なに休んでんだ、働かねぇと金貰えねぇぞ。」
「働けっていうけど…重労働すぎるだろこれ。」
作業者の目の前には自分が土壌を掘って出来た窪みがあった。半日ほどそこで作業していたが、窪みと言うべき程しか作業が進んでいないことに対し文句を垂れ流した。
「今時岩を掘るのに人力とか聞いたことねぇぞ。もういっそのこと魔法使いを呼んで爆破魔法で壊した方が楽じゃないか?」
「馬鹿っ!お前それ、女王の息がかかってる奴に聞かれるんじゃないぞ!即刻クビにされちまうだろ。」
「わかってらぁ、こん中にある大事な石までも砕いちゃうから手作業なんだろ?俺が言ってるのは、こんな長く土堀りばかりしていたらやる気は次第に失せるって言いたいだけだ。」
作業者はため息混じりにゆっくりと体を起こし、地面に突き刺したツルハシを手に持った。
「さっさと出てこいよ!紅い石!」
その意気込みをツルハシに乗せながら、窪みに向かって振り下ろした。
このガツガツと作業者達が土を掘る劣悪な光景とは打って変わって、地上では緑豊かな土地に陽の光が温かく照らす平和な光景が広がっていた。
見渡す野原、少し先には森林が点在する。周りには町や村もなく、ただそこに自然の風景とは異質な赤レンガで建てられた屋敷だけがあった。
西洋風な造りをしたその屋敷はまるで城を体現しているような大きな建物であり、その周りには舗装された綺麗な大広場が広がっていた。
その豪勢な屋敷がある場所に、二つの馬車が向かってやってきた。
「お嬢様がお帰りになられたぞ!」
屋敷の門に立つ衛兵が大きく声を上げると、屋敷の中から何人もの衛兵が外に出て、道沿いに向かって礼をした。それと同時に一台の馬車が館の前で止まり、中から一人の女性と男性が出てきた。
「お帰りなさいませ!」
「「お帰りなさいませ、シトリーお嬢様。」」
一人の衛兵が声をあげた後、続いて衛兵達が合わせて挨拶を行った。
衛兵達から挨拶を受け、真っ直ぐ館に向かうお嬢様と呼ばれるその女性は、足先まで伸びる赤いコートを肩にかけ、白を基調とした服とハーフスカートにはコートの背面に描かれてある家系の紋様がオシャレに描かれてる。
少し青みかかる紫色のショートヘアは膨らんだ形をしていて、雪のように白い肌色と合わせるとその存在感に目を奪われ惹かれるほどだ。
シトリー・クリフレッド、彼女こそこの赤い館の主であり、ここ一帯の土地を納める領主であった。
「お前達、異国から来たお客人だ。もてなす準備をしろ!」
シトリーの側に立つ荒々しい黒髪の男性はそう告げると、衛兵達は持っている槍を上へ掲げて、アーチを作るように対面する衛兵に向かって斜めに傾けた。
シトリーの側近である男性は黒の軍服を着こなして執事のように振る舞っているが、顔や頭髪から見て荒くれ者のような存在感を出している。まさに豚に真珠のような姿だ。
だがその立場は衛兵達に指示を出し、領主であるシトリーの従者として仕事をこなす第二のリーダー的存在である。
ヒズミ、性の名前は不明であり、ここにいる者達は彼をその名で呼んでいる。
「すごい歓迎の仕方ね、これが私のような異国の民に対するおもてなしかしら。」
シトリーとヒズミが馬車から降りた後に続いてもう一台の馬車が到着した。異国風の衣装を纏った男性二名が片手持ちのケースを持って馬車から降り、その後に彼ら二人とはまた違うオーラを出した一人の女性が降りてきた。
長い白髪に褐色の肌、その青い瞳はサファイアのような輝きを見せている美しき女性。外だというのに肌露出の多いベリーダンサーの衣装を着飾っており、外見からしてここらの国にいるような人物ではないことは確かだ。
足をその場に降り立つと、異国のお客人と称された彼女に壮観な眺めが広がる。緑豊かな地に一邸の大きな屋敷、まるで自分がこの館の当主になったかのような気分になる。
「豪勢な屋敷以外何もない場所だからね。遠い所からわざわざ来てくれたのだから受け取ってほしい、これが私達なりの誠意というものよ。」
シトリーは槍のアーチの前に立ち、両手を広げてお客人を迎え入れた。
「ようこそクリフレッドの領地へ、歓迎しようユスティナ・リーシュ女王。」
ーー屋敷内・会議室
ユスティナと呼ばれたお客人と護衛の二人は、屋敷内にある会議室に案内させられた。
そこにはテーブルと両脇に二つのソファ、薪入れの暖炉といった落ち着きのある内装が配置されていた。
会議室といった対談専用の部屋が配備されていることに驚きだが、もっと驚いたのは、
「ずいぶんと屋敷に人がいるのね。メイドに衛兵、まるで一国を担う王様と相手しているようだわ。」
この会議室に来るまでに出会った人の数だ。屋敷の家事をするメイド達に警備や戦闘の訓練をする鎧を着た衛兵達、城の規模には負けまないくらいの密度があった。
だがシトリーはこの状態でもやや不満足な表情をしていた。
「まだまだよ、どんなに敷地を豪勢に取り繕っても未だ手付かずのまま。この屋敷も恥ずかしながらまだ未完成、国の王様と呼ばれるには発展が全然足りない。」
シトリーは部屋の窓に立ち、外を眺めた。ひらけた大地、佇む森、国と呼ぶには少しもの寂しい風景が広がっていた。
「それでも…私はこの屋敷から始める、労働者の家を作り、仕事場を作り、道を大きくする。そうやって規模を大きくさせて地図上に私が作り上げた国の名前を刻む。」
「それは…なんとも壮大な計画ね。国を一から作り上げるなんて相当な覚悟と苦難が待ち受けるものよ。怖くなったかしら?」
ユスティナはそう想像した仮説を発すると、シトリーはそれを喜んで受け入れた。
「さすがリーシュ家の次期領主様、砂漠の国・サフラを統治した経験は説得力が違う。ぜひこれからのためにお話しを聞かせてほしいものね。」
シトリーはユスティナという人物像について詳しい内容を頭の中に入れていた。
ユスティナ王女、砂漠の国・サフラを統治しているリーシュ家領主の娘である。かつて…たった一つのオアシスを求めて争いを起こした砂漠の民を一つにまとめ上げ、国を設立するために尽力した輝かしい歴史を持っている。
「ふーん…見た感じ私から言えることは一つかしら。」
今の代にまでその栄光が語り継がれているため、ユスティナには家系として国の政策に賛同するため色々な知識を教え込まれていると聞く。
実際経験者でも無さそうな雰囲気を醸し出していたが、ユスティナは短く考えた後に淡々と語りだした。
「人を集めて国を発展させようとするのはいいことだけど、発展途上な国ほど人集めはかなり難しいものなのよ。役に立つか立たないかを省いて、人を助け舟のように集めようとすればいずれ限界が来る、一隻の舟に乗れるは限られた者だけと切り捨てる覚悟を持たないといけないからね。」
ユスティナがここに訪れたのはついさっきのことであり、何も知らない状態での訪問にも関わらず、屋敷を少し歩いて中働きしている者を観察しただけでその答えにたどり着いた。わかっていないければ普通その答えにたどり着かない。
「まぁ…つまりは優先順位を間違えるなということよ、屋敷を守ろうとする戦力よりも建築技術に長けた技術力を身につけた方がいいかもね。」
その答え通り屋敷には、発展に必要な技師があまりいない。状況を先延ばしにしていることでもあるが、的確な指摘に対しシトリーの表情が少し曇る。
「あら、私としたことがこれから頑張ろうとする相手に向かって自分の主張を押しつけてしまったわ。これは失礼。」
「いや…逆に礼を言いたい、国を立てたとされる者からアドバイスを聞ける機会などないから。」
ユスティナの話を聞き入れながらお互いに対面し合うようにソファに座り込んだ。
面と向き合うと、ユスティナは落ち着いた様子でこちらを伺っており、後ろには無言のまま二人の男性が無愛想な目でこちらをみている。今までもお客人との会談でこのようなことは何度も見てきたはずだが、今回ばかりは少し違う。
(ユスティナ女王…体つきからして30代といったところ。サフラを治めるリーシュ家にも魔法や戦闘技術を身につけてる者もいると聞くが…)
人より感知能力が高いシトリーはユスティナ達から妙な威圧感が出ているのを肌で感じた、それはまるで怖い試験官達から面接を受けるような圧迫感があるように見えた。
(この人達…かなりの実力を持っているようね。気に入らなかったら力づくでわからせるって伝えているようだわ。)
とんでもない相手が来たと緊張感を出しつつ、シトリーはユスティナに今回の会談について述べ始めた。
「では、世間話しはこれくらいにしましょうか…。」
ふと、二人の間に立って見守るヒズミにシトリーは片目を二回閉じる合図を出した。彼はその意図を察し短く頷くと、「失礼。」と一言発し会議室を後にした。
会議室にお客人達を一人で相手にする状況になったシトリーは話を進める。
「ユスティナ女王、改めて私の領地に赴いたその理由を聞かせてもらえるかしら?」
「ふふっ、私のようなお客人が有名人たるあなたに会いにくる理由なんて一つしかないでしょう?」
ユスティナの表情が先ほどより笑みが広がる、まるでわくわくしているような感情で話出した。
「あなた達が管理している《魔紅石》という特殊な魔石についてよ。」
魔石…魔物が生きるために必要な核であり、武器や工具の基本的な材料の他、電気や熱などの動力を補うための必要なエネルギー源として利用されている。
よってこの世界の住人は害する魔物を討伐し、そこから手に入れた魔石の力で生活をしている。
だがそう簡単に手に入れることはできない。魔物に相対する危険性も含まれているが、魔物の特性上、力尽きると自身の心臓部である魔石は塵となって消えてしまう。
絶命する前に魔石をくり抜く特殊な討伐方法を使うと魔石が塵とならずに手に入れることができるが、実際それができる冒険者は10人に3人といったかなり難しい技術である。
その入手難易度から、国との貿易で魔石は最も高値で取引されている。ところがそんな情勢に亀裂を入れるように期待の新星が世界中にとある情報を流した。
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