侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう

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 コンコンとノックがした音で目が覚めた。

「マリーでございます、失礼致します。セドリック様朝でございますよ、起きてくださいませ。」

 僕付きのメイドのマリーが起こしに来てくれたみたいだ。だけど返事をする気にはなれない。

「セドリック様起きてくださいませ。」
「………。」

 2度目の声がけも無視すると少し強引に布団を剥がされてしまった。

「うわぁっ」

「さぁさ、早く準備されませんと御学院に遅刻されますよ?」

「ひどい!!僕には失恋を悲しむ時間もないの!?」

「そうではございませんが、悲しんでいても今日はやってきますからね。さぁお顔を洗ってしまいましょう。」

「んー、はぁい。」

 そう、僕は昨日失恋したのだ。昨日はだいぶ泣いたから目の周りが蜂に刺されたくらい腫れているんだろうな、これ隠せるだろうか?

 僕が思いを寄せていた相手はこの国の第二王子リヴァン・フォン・クロウエル様である。プラチナブロンドで少しクセのある御髪を真ん中で分けられていて澄んだ緑色の瞳の美しい方だ。

 そして僕はグランツ侯爵家嫡男セドリック・グランツだ。父は宰相を務めていて、そのおかげか僕は幼少期から殿下の婚約者候補に名が挙げられていた。

 だが昨日偶然聞いてしまったし見てしまった。殿下が側近のアルベルト様に婚約者が決まった事を報告しているところを、放課後に僕ではない婚約者候補を王族専用の談話室に呼び出しているところを。僕の長年の想いは見事に散ったのだ。

「こんな顔で学院になんて行けないよ。」

 それに、勝手だけど殿下と顔を合わせづらいし。

「あら、多少御目が腫れていたところでセドリック様の可愛さは霞みませんわ。」

 マリーは僕のどこを見て可愛いと言っているのやら。どこにでもいる小麦色の髪にくすんであまり光の入らないタレた青い瞳、おまけにそばかす付き。どうして殿下の婚約者候補に最後まで残れていたのか不思議なくらいの見た目だ。

「はぁ行くしかないかぁ。そうだマリー今日の朝食はなぁに?」

「本日はセドリック様の好きな桃がメニューにございましたよ。」

「やったぁちょっと頑張れそう。」

 ふにゃっと笑ってみせ自分で元気を出してみる。元々期待はしてなかったんだ切り替えて生きていくしかないか。殿下の婚約者候補だったんだ箔がついているし貰い手は少なからずいるだろう。





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