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第一章
02 私にだけ見えている?
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「なっ、血だと!?」
驚いたロバートは、ディアナを心配するどころか「どうして、言わなかったんだ! そんなに私に恥をかかせたいのか!」と怒鳴ってきた。
(……さすがに、もう無理だわ)
これまでは両親のために、この婚約をなんとか継続させようと様々なことを我慢してきた。できる限りの努力はしたと思っている。しかし、そんなディアナでも、ロバートの今の態度を受け入れることはできない。
(こんな人と一緒になるための我慢や努力なんて、もうしたくない)
ロバートから視線をそらしたディアナは、自分を抱きとめてくれている仮面の青年ライオネルと目が合った。
「俺があなたを、このまま医務室へ運んでも問題ないか?」
その声は淡々としているのに、どこか温かい。小さく頷いたディアナに向かって、ロバートが叫んだ。
「ディアナ! これ以上、迷惑をかけるな! こっちに来い!」
捕らえようと伸びてきたロバートの腕が恐ろしくて、ディアナの口から「ひっ」と小さな悲鳴が漏れる。
倒れるほど痛む頭では逃げることができず、気がつけばライオネルの胸板にすがりつくような姿勢になっていた。
ディアナに触れようとしたロバートの腕を、ライオネルが素早く叩き落とす。パンッと乾いた音が響いた。
「彼女は頭から血を流しているんだ。乱暴に扱おうとするな」
ライオネルの迫力に押されたのか、ロバートは「うっ」と呻きながら後退った。
ディアナの耳元で、ライオネルの声が聞こえる。
「少しの間、我慢してくれ」
ふわっとディアナの体が浮いたかと思うと、ライオネルに横抱きに抱きかかえられていた。
淑女たるもの、家族や婚約者ではない男性に抱きかかえられるなんて、あってはならない。しかし、ディアナは、もう一瞬たりともロバートの側にいたくなかった。
(どんなウワサをたてられてもいいわ。ロバート様に婚約破棄されたっていい)
ライオネルの腕の中で、ディアナは痛みに耐えるためにそっと目を閉じた。会場の喧騒が遠くなり、ロバートの声が小さくなっていくにつれて、ディアナの心は落ち着いていく。
(殿下と呼ばれる仮面をつけた男性……)
ディアナは『残虐王子』という不名誉な呼び名をつけられた、この国の第二王子に思い当たった。
(たしか第二王子殿下は、自ら好んで戦場に赴いて王都に帰ってこないのよね?)
残虐王子が通ったあとは、血の海ができるらしい。
(顔に大きな傷があって、仮面をつけているというウワサも聞いたことがあるけど、これまで王都にいらっしゃらなかったから、真相は分からなかったのよね)
そんな第二王子が敵兵を倒しまくった結果、長く続いた隣国との戦争を終わらせることができたと聞いている。
残虐王子と罵られていた彼は、今となっては祖国を勝利に導いた英雄だ。
ディアナは、ゆっくりと目を開けた。まだ少しだけ目がチカチカしているが、先ほどよりはマシになっている。
「もしかして、あなた様が、第二王子のライオネル殿下ですか?」
「そうだ。もう黙っておけ。傷にさわる」
ぶっきらぼうな言葉と共に、ライオネルから淡く光る白い玉が飛び出した。手のひらサイズのその光の玉は、ライオネルの周りをフワフワと漂っている。
「あの、殿下? こ、これは?」
ディアナが淡い光を指さすと、ライオネルに「これ、とは?」と聞き返されてしまった。
「これです。ここに飛んでいる、光の玉」
仮面の奥に見える瞳が、わずかに見開かれた。
「……その頭の傷は、強く打ってできたものか?」
「え? あ、はい」
「打ちどころが悪かったようだな。そこには何もない」
この淡い光は、ライオネルには見えていないらしい。
ライオネルの足取りは、どんどん早くなっていく。
王宮の医務室に着いたとたん、ライオネルは医師に「令嬢が負傷した。頭に出血があり、打ちどころが悪かったようで幻覚が見えている」と説明する。
(幻覚……。いわれてみれば、頭を打ったときからずっと目がチカチカしているし、おかしな光の玉が今も見えているわ)
医師の指示でライオネルは、ディアナをそっとベッドに下ろした。痛みに耐えながら、ディアナは「これだけは伝えなければ」となんとか口を開く。
「ここまで運んでくださり、ありがとうございます。殿下のお手を煩わせてしまい、大変申し訳ありません」
「謝る必要はない」
「でも……」
ライオネルに「静かに」と囁かれて、ディアナは黙り込んだ。
医師が「失礼」と言いながら、ディアナの髪をそっとかき分ける。
「だいぶ腫れていますね。頭皮が少しだけ切れて出血しています。何があったのですか?」
不思議そうな医師に、ディアナは「バルコニーの柵で頭を打ってしまい……。まさか血が出ているなんて……」と答えた。
「とにかく、手当てをしましょう」
医師の治療を受けている間も、ライオネルの周りを光の玉がフワフワと飛んでいる。
医師は傷口に薬を塗ると、布を当てて慣れた手つきで包帯を巻いてくれた。
「治療は終わりましたよ。痛み止めを処方しておきますね。幻覚症状があるとのことですが、どういうものですか?」
「視界がチカチカして、光の玉がフワフワと飛んでいます」
医師は「うむ」とうなずくと「ひとまず、様子を見ましょう」と言いながらライオネルを見た。
「殿下。ご令嬢は頭を強く打っているので、これ以上動かさないほうがいいでしょう。このまま、ここに宿泊していただきたいのですが?」
医師の予想外の提案に、ディアナは焦る。
「いえ、私は家に帰り……」
「分かった。俺のほうで手配しておく」
ディアナの言葉をさえぎり、ライオネルが医師に返事をしてしまう。
「でもっ」
「でも、じゃない」
ライオネルの指が、ディアナのおでこに突きつけられた。
「ケガ人は大人しくしろ」
威圧的に告げられた言葉と共に、なぜかディアナは温かい風を感じた。ライオネルの周りでフワフワと飛んでいた光の玉がゆらめいたかと思うと、白い羽を持つ美しい蝶へと変わっていく。
「……で、殿下……」
「なんだ?」
「光の玉が、蝶になりました……」
ライオネルと医師は、顔を見合わせている。医師が「本当に打ち所が悪かったようですね」とつぶやくと、ライオネルは静かにうなずいた。
(私には、こんなにはっきりと見えているのに……)
ディアナが光の玉を見つめていると、蝶から声が聞こえてきた。
――心配だ。
「心配?」
ディアナが聞こえた言葉を繰り返すと、ライオネルが自身の口を手で押さえた。そして、ディアナの視線から逃げるように顔を背ける。
「頭から血を流していたら、誰でも心配するぞ」
「えっ、殿下は私を心配してくださっていたのですか?」
「当たり前だ」
婚約者であるロバートは、心配するどころか『迷惑をかけるな!』とディアナを怒鳴りつけた。それなのに、初対面のライオネルはディアナを医務室に運んでくれただけではなく、心配までしてくれている。
(だから淡々とした口調なのに、ライオネル殿下のお言葉は冷たく感じなかったのね)
気がつけば、ディアナは口元に笑みを浮かべていた。
「ライオネル殿下は、お優しいのですね」
なぜか天井から、ピンク色の花びらが数枚ヒラヒラと、ディアナの頭上に降ってきている。
(これも幻覚なのかしら?)
花びらも、ライオネルには見えていないようだ。ふいに、仮面の下の瞳と目が合う。
「ありがとうございます。殿下」
先ほど飲んだ痛み止めのせいか、ディアナは急な眠気に襲われた。
「殿下……申し訳ありません。少し眠ります……」
ディアナにだけ見える花びらが散らばるベッドで、深い眠りへと落ちていった。
驚いたロバートは、ディアナを心配するどころか「どうして、言わなかったんだ! そんなに私に恥をかかせたいのか!」と怒鳴ってきた。
(……さすがに、もう無理だわ)
これまでは両親のために、この婚約をなんとか継続させようと様々なことを我慢してきた。できる限りの努力はしたと思っている。しかし、そんなディアナでも、ロバートの今の態度を受け入れることはできない。
(こんな人と一緒になるための我慢や努力なんて、もうしたくない)
ロバートから視線をそらしたディアナは、自分を抱きとめてくれている仮面の青年ライオネルと目が合った。
「俺があなたを、このまま医務室へ運んでも問題ないか?」
その声は淡々としているのに、どこか温かい。小さく頷いたディアナに向かって、ロバートが叫んだ。
「ディアナ! これ以上、迷惑をかけるな! こっちに来い!」
捕らえようと伸びてきたロバートの腕が恐ろしくて、ディアナの口から「ひっ」と小さな悲鳴が漏れる。
倒れるほど痛む頭では逃げることができず、気がつけばライオネルの胸板にすがりつくような姿勢になっていた。
ディアナに触れようとしたロバートの腕を、ライオネルが素早く叩き落とす。パンッと乾いた音が響いた。
「彼女は頭から血を流しているんだ。乱暴に扱おうとするな」
ライオネルの迫力に押されたのか、ロバートは「うっ」と呻きながら後退った。
ディアナの耳元で、ライオネルの声が聞こえる。
「少しの間、我慢してくれ」
ふわっとディアナの体が浮いたかと思うと、ライオネルに横抱きに抱きかかえられていた。
淑女たるもの、家族や婚約者ではない男性に抱きかかえられるなんて、あってはならない。しかし、ディアナは、もう一瞬たりともロバートの側にいたくなかった。
(どんなウワサをたてられてもいいわ。ロバート様に婚約破棄されたっていい)
ライオネルの腕の中で、ディアナは痛みに耐えるためにそっと目を閉じた。会場の喧騒が遠くなり、ロバートの声が小さくなっていくにつれて、ディアナの心は落ち着いていく。
(殿下と呼ばれる仮面をつけた男性……)
ディアナは『残虐王子』という不名誉な呼び名をつけられた、この国の第二王子に思い当たった。
(たしか第二王子殿下は、自ら好んで戦場に赴いて王都に帰ってこないのよね?)
残虐王子が通ったあとは、血の海ができるらしい。
(顔に大きな傷があって、仮面をつけているというウワサも聞いたことがあるけど、これまで王都にいらっしゃらなかったから、真相は分からなかったのよね)
そんな第二王子が敵兵を倒しまくった結果、長く続いた隣国との戦争を終わらせることができたと聞いている。
残虐王子と罵られていた彼は、今となっては祖国を勝利に導いた英雄だ。
ディアナは、ゆっくりと目を開けた。まだ少しだけ目がチカチカしているが、先ほどよりはマシになっている。
「もしかして、あなた様が、第二王子のライオネル殿下ですか?」
「そうだ。もう黙っておけ。傷にさわる」
ぶっきらぼうな言葉と共に、ライオネルから淡く光る白い玉が飛び出した。手のひらサイズのその光の玉は、ライオネルの周りをフワフワと漂っている。
「あの、殿下? こ、これは?」
ディアナが淡い光を指さすと、ライオネルに「これ、とは?」と聞き返されてしまった。
「これです。ここに飛んでいる、光の玉」
仮面の奥に見える瞳が、わずかに見開かれた。
「……その頭の傷は、強く打ってできたものか?」
「え? あ、はい」
「打ちどころが悪かったようだな。そこには何もない」
この淡い光は、ライオネルには見えていないらしい。
ライオネルの足取りは、どんどん早くなっていく。
王宮の医務室に着いたとたん、ライオネルは医師に「令嬢が負傷した。頭に出血があり、打ちどころが悪かったようで幻覚が見えている」と説明する。
(幻覚……。いわれてみれば、頭を打ったときからずっと目がチカチカしているし、おかしな光の玉が今も見えているわ)
医師の指示でライオネルは、ディアナをそっとベッドに下ろした。痛みに耐えながら、ディアナは「これだけは伝えなければ」となんとか口を開く。
「ここまで運んでくださり、ありがとうございます。殿下のお手を煩わせてしまい、大変申し訳ありません」
「謝る必要はない」
「でも……」
ライオネルに「静かに」と囁かれて、ディアナは黙り込んだ。
医師が「失礼」と言いながら、ディアナの髪をそっとかき分ける。
「だいぶ腫れていますね。頭皮が少しだけ切れて出血しています。何があったのですか?」
不思議そうな医師に、ディアナは「バルコニーの柵で頭を打ってしまい……。まさか血が出ているなんて……」と答えた。
「とにかく、手当てをしましょう」
医師の治療を受けている間も、ライオネルの周りを光の玉がフワフワと飛んでいる。
医師は傷口に薬を塗ると、布を当てて慣れた手つきで包帯を巻いてくれた。
「治療は終わりましたよ。痛み止めを処方しておきますね。幻覚症状があるとのことですが、どういうものですか?」
「視界がチカチカして、光の玉がフワフワと飛んでいます」
医師は「うむ」とうなずくと「ひとまず、様子を見ましょう」と言いながらライオネルを見た。
「殿下。ご令嬢は頭を強く打っているので、これ以上動かさないほうがいいでしょう。このまま、ここに宿泊していただきたいのですが?」
医師の予想外の提案に、ディアナは焦る。
「いえ、私は家に帰り……」
「分かった。俺のほうで手配しておく」
ディアナの言葉をさえぎり、ライオネルが医師に返事をしてしまう。
「でもっ」
「でも、じゃない」
ライオネルの指が、ディアナのおでこに突きつけられた。
「ケガ人は大人しくしろ」
威圧的に告げられた言葉と共に、なぜかディアナは温かい風を感じた。ライオネルの周りでフワフワと飛んでいた光の玉がゆらめいたかと思うと、白い羽を持つ美しい蝶へと変わっていく。
「……で、殿下……」
「なんだ?」
「光の玉が、蝶になりました……」
ライオネルと医師は、顔を見合わせている。医師が「本当に打ち所が悪かったようですね」とつぶやくと、ライオネルは静かにうなずいた。
(私には、こんなにはっきりと見えているのに……)
ディアナが光の玉を見つめていると、蝶から声が聞こえてきた。
――心配だ。
「心配?」
ディアナが聞こえた言葉を繰り返すと、ライオネルが自身の口を手で押さえた。そして、ディアナの視線から逃げるように顔を背ける。
「頭から血を流していたら、誰でも心配するぞ」
「えっ、殿下は私を心配してくださっていたのですか?」
「当たり前だ」
婚約者であるロバートは、心配するどころか『迷惑をかけるな!』とディアナを怒鳴りつけた。それなのに、初対面のライオネルはディアナを医務室に運んでくれただけではなく、心配までしてくれている。
(だから淡々とした口調なのに、ライオネル殿下のお言葉は冷たく感じなかったのね)
気がつけば、ディアナは口元に笑みを浮かべていた。
「ライオネル殿下は、お優しいのですね」
なぜか天井から、ピンク色の花びらが数枚ヒラヒラと、ディアナの頭上に降ってきている。
(これも幻覚なのかしら?)
花びらも、ライオネルには見えていないようだ。ふいに、仮面の下の瞳と目が合う。
「ありがとうございます。殿下」
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