16 / 60
その16
しおりを挟む
騎士達はカルロスに驚いてしまったが、普段屈強な騎士や兵士など見慣れている。
近衛騎士にだって筋肉ダルマくらい普通にいるのだ。
だがその筋肉を覆うのは、騎士服や頑丈な鎧であり、ピンクのフリフリ姿などは当たり前だが見た事はなかった。カルロスがもしいつもの格好をしてこの場に現れていたら、ここまで驚かなかった事だろう。
「カルロス、皆さんこのプレートのデコレーションをとても褒めて下さいます。この可愛らしさはカルロスの心が現れているようですって」
オリヴィアはクリストファーの言葉をそのままカルロスに伝えた。
「え、照れますねぇっ!皆さん王宮のスイーツやらは夜会などで食べ慣れてますでしょうにっ」
「いえいえ、予々フローゼス家のパティシエの腕はとてもレベルが高く、見た目も味も王宮に引けを取らないと思っていました。
昨日晩餐の後に出して頂いたケーキの上に、薔薇のように飾られた桃のコンポートも大変美しく、見た目も味も絶品でした。」
紳士的な女騎士ルイザの言葉を聞いてカルロスは、顔をパァッと破顔させた。
「ありがとうございますっ。いつも侯爵家の方々にもよくして頂き、騎士様方もとても感じのいい方ばかりで、大変嬉しく思います!」
言いながら、カルロスはポケットから薄ピンクの可愛らしいポケットチーフを取り出し、額の汗を拭った。それを目にしたローズは衝撃を受けた。
(か、可愛い…!ポケットチーフまで可愛い!?ピンクのフリフリエプロンの件は、お嬢様何つー事してくれんのっ!て思っていたけど、カルロス自身も元々可愛い物好きって事!?)
エプロンの件はオリヴィアに仕方なく付き合って上げてる可能性もある、と思っていたがそうでもなかった。
「カルロスが褒められると私も嬉しいわっ」
オリヴィアが満面の笑みでカルロスを見ると、カルロスはハニカミながらその場の全員向かって言った。
「ちなみに今回のプレートのテーマは、『陽気に誘われて、クマちゃん春のお茶会中』です」
(お、乙女だ!!)
(乙女!!)
(乙女だわ!)
(可愛い……!!)
カルロス自身が描いたデコレーションへ、付けたタイトルに、グレン、クリストファー、ローズ、ミシェルはそれぞれ衝撃を受けたが、声には出さなかった。
「で、ではお嬢様。ふわふわの方もいつでも焼いて頂いて結構ですので」
カルロスは照れたまま、何度も頭をペコペコと下げてティールームを後にした。
そんな人の良さそうなカルロスに、「何だか可愛く見えてきた。」と思う者もいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
健康的な騎士達はパンケーキを早々にペロリと平らげ、既にパンケーキが乗っていたお皿は下げられ今はお茶を楽しんでいる。
「皆さま、今から先程とは違ったパンケーキを焼こうと思うのですが、二枚目を食べれたりしますか?」
もう一種類焼く予定があったので、先程のパンケーキは敢えて小さめに作っていた。
「頂いてもよろしいですか?」
「私もっ」
「僕も」
全員が二枚目を食してくれるのだと言う。
「では、早速焼きに行って……」
オリヴィアが立ち上がった瞬間、ティールームのドアが叩かれた。
「お嬢様、お客様がいらっしゃいました」
「まぁ、どなたかしら?」
オリヴィアが首を傾げながら考えると、扉から現れたのは金髪に碧眼の王子。第二王子エフラムだった。
突然の第二王子の登場に、今までお茶を飲んでいた騎士の面々が急いでティーカップを置いて立ち上がった。
「で、殿下!?」
「オリヴィア、会いに来てしまった」
「暇なんですか?」
ローズはすかさず言った。
護衛騎士の面々は肝が冷えた。
「報告で、護衛騎士達がオリヴィアの手作りのお菓子を食べていると聞いて、羨ましくていても立ってもいられず…!」
「暇なんですね?」
「ろ、ローズ殿っ!」
ローズはいつもはっきりと物を言うが、流石に王子であるエフラムにそのような物言いはまずいだろうと、グレンは止めに入った。
「いや、大丈夫ですグレン兄様。ローズに罵られる事に至っては僕が許しています。存分に罵ってくれて構わない」
エフラムは従兄弟であるグレンを兄と呼ぶ。
そして『ローズに罵られても構わない、存分に罵っても構わない』というエフラムの言葉を聞いてルイザは言った。
「なんと、殿下にそのようなご趣味がっ!」
「馬鹿野郎っ」
どうやらルイザは、エフラムが女性に罵られたい願望を持っているのだと勘違いしたらしい。
グレンはルイザの事を本気で馬鹿だと思った。
近衛騎士にだって筋肉ダルマくらい普通にいるのだ。
だがその筋肉を覆うのは、騎士服や頑丈な鎧であり、ピンクのフリフリ姿などは当たり前だが見た事はなかった。カルロスがもしいつもの格好をしてこの場に現れていたら、ここまで驚かなかった事だろう。
「カルロス、皆さんこのプレートのデコレーションをとても褒めて下さいます。この可愛らしさはカルロスの心が現れているようですって」
オリヴィアはクリストファーの言葉をそのままカルロスに伝えた。
「え、照れますねぇっ!皆さん王宮のスイーツやらは夜会などで食べ慣れてますでしょうにっ」
「いえいえ、予々フローゼス家のパティシエの腕はとてもレベルが高く、見た目も味も王宮に引けを取らないと思っていました。
昨日晩餐の後に出して頂いたケーキの上に、薔薇のように飾られた桃のコンポートも大変美しく、見た目も味も絶品でした。」
紳士的な女騎士ルイザの言葉を聞いてカルロスは、顔をパァッと破顔させた。
「ありがとうございますっ。いつも侯爵家の方々にもよくして頂き、騎士様方もとても感じのいい方ばかりで、大変嬉しく思います!」
言いながら、カルロスはポケットから薄ピンクの可愛らしいポケットチーフを取り出し、額の汗を拭った。それを目にしたローズは衝撃を受けた。
(か、可愛い…!ポケットチーフまで可愛い!?ピンクのフリフリエプロンの件は、お嬢様何つー事してくれんのっ!て思っていたけど、カルロス自身も元々可愛い物好きって事!?)
エプロンの件はオリヴィアに仕方なく付き合って上げてる可能性もある、と思っていたがそうでもなかった。
「カルロスが褒められると私も嬉しいわっ」
オリヴィアが満面の笑みでカルロスを見ると、カルロスはハニカミながらその場の全員向かって言った。
「ちなみに今回のプレートのテーマは、『陽気に誘われて、クマちゃん春のお茶会中』です」
(お、乙女だ!!)
(乙女!!)
(乙女だわ!)
(可愛い……!!)
カルロス自身が描いたデコレーションへ、付けたタイトルに、グレン、クリストファー、ローズ、ミシェルはそれぞれ衝撃を受けたが、声には出さなかった。
「で、ではお嬢様。ふわふわの方もいつでも焼いて頂いて結構ですので」
カルロスは照れたまま、何度も頭をペコペコと下げてティールームを後にした。
そんな人の良さそうなカルロスに、「何だか可愛く見えてきた。」と思う者もいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
健康的な騎士達はパンケーキを早々にペロリと平らげ、既にパンケーキが乗っていたお皿は下げられ今はお茶を楽しんでいる。
「皆さま、今から先程とは違ったパンケーキを焼こうと思うのですが、二枚目を食べれたりしますか?」
もう一種類焼く予定があったので、先程のパンケーキは敢えて小さめに作っていた。
「頂いてもよろしいですか?」
「私もっ」
「僕も」
全員が二枚目を食してくれるのだと言う。
「では、早速焼きに行って……」
オリヴィアが立ち上がった瞬間、ティールームのドアが叩かれた。
「お嬢様、お客様がいらっしゃいました」
「まぁ、どなたかしら?」
オリヴィアが首を傾げながら考えると、扉から現れたのは金髪に碧眼の王子。第二王子エフラムだった。
突然の第二王子の登場に、今までお茶を飲んでいた騎士の面々が急いでティーカップを置いて立ち上がった。
「で、殿下!?」
「オリヴィア、会いに来てしまった」
「暇なんですか?」
ローズはすかさず言った。
護衛騎士の面々は肝が冷えた。
「報告で、護衛騎士達がオリヴィアの手作りのお菓子を食べていると聞いて、羨ましくていても立ってもいられず…!」
「暇なんですね?」
「ろ、ローズ殿っ!」
ローズはいつもはっきりと物を言うが、流石に王子であるエフラムにそのような物言いはまずいだろうと、グレンは止めに入った。
「いや、大丈夫ですグレン兄様。ローズに罵られる事に至っては僕が許しています。存分に罵ってくれて構わない」
エフラムは従兄弟であるグレンを兄と呼ぶ。
そして『ローズに罵られても構わない、存分に罵っても構わない』というエフラムの言葉を聞いてルイザは言った。
「なんと、殿下にそのようなご趣味がっ!」
「馬鹿野郎っ」
どうやらルイザは、エフラムが女性に罵られたい願望を持っているのだと勘違いしたらしい。
グレンはルイザの事を本気で馬鹿だと思った。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
「僕より強い奴は気に入らない」と殿下に言われて力を抑えていたら婚約破棄されました。そろそろ本気出してもよろしいですよね?
今川幸乃
恋愛
ライツ王国の聖女イレーネは「もっといい聖女を見つけた」と言われ、王太子のボルグに聖女を解任されて婚約も破棄されてしまう。
しかしイレーネの力が弱かったのは依然王子が「僕より強い奴は気に入らない」と言ったせいで力を抑えていたせいであった。
その後賊に襲われたイレーネは辺境伯の嫡子オーウェンに助けられ、辺境伯の館に迎えられて伯爵一族並みの厚遇を受ける。
一方ボルグは当初は新しく迎えた聖女レイシャとしばらくは楽しく過ごすが、イレーネの加護を失った王国には綻びが出始め、隣国オーランド帝国の影が忍び寄るのであった。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛作品集
にがりの少なかった豆腐
恋愛
こちらは過去に投稿し、完結している作品をまとめたものになります
章毎に一作品となります
これから投稿される『恋愛』カテゴリの作品は投稿完結後一定時間経過後、この短編集へ移動することになります
※こちらの作品へ移動する際、多少の修正を行うことがあります。
※タグに関してはおよそすべての作品に該当するものを選択しています。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる