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その46
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マリエッタやイザベル達とのお茶会に参加した当日。
オリヴィアは王宮の薔薇園をエフラムと眺め歩いてから、実家のフローゼス邸へと送り届けられた。屋敷に帰宅すると、強制的に生やされた背中の天使の羽と、頭の輪っかを外してもらうため、これらを出現させた張本人へと訴えかけにいった。それはそれは迅速に。
しかしおやつを爆食いした後だったようで、腹が満たされた張本人はサロンのフカフカクッションの上で昼寝の真っ最中であった。気持ちよさそうに眠るフェリクスの膨らんだお腹を、必死の形相をしたオリヴィアがいくら強めに揺さぶって呼びかけようとも、起きる気配はなかった。起こすのは一旦諦めるに至った。
羽はなんとか自力で消せたものの、やはり頭の輪っかの消し方が分からず、しばらくはそのまま過ごす事に。結局フェリクスが目を覚ましたのは夕方。丁度晩餐の用意が整う時間に差し掛かると、彼は目を覚ましてようやく頭の輪を消してくれたのだった。
そしてオリヴィアの父、フローゼス侯爵はお茶会での出来事を知るや否や「やはり叩ききる!」とヨシュアへ強い怒りを出さずにはいられなかった。
ちなみに謹慎中の時より、フローゼス侯爵からヨシュアに向けて、剣術の稽古の要請が出続けているが、彼は逃げ回り続けている。
◇ ◇ ◇
「どうしてあの馬鹿王子の謹慎が解けている挙句、オリヴィアお嬢様に接触までしてこれるのですか!?やはり陛下はご自身の愚息可愛さに、全てを許すおつもりなのですねっ」
自分の代わりに怒りを露わにしてくれるローズを宥めながら、オリヴィアは未だ複雑な思いを抱えていた。
オリヴィアが湖の館へ帰還するとすぐにサロンでは、護衛騎士達を含めた話し合いが行われ、現在に至る。
事前にクリストファーから、町でヨシュアとアイリーンの二名と出くわしたと報告を受けており、同時に警戒するようにとも言われていた。だが、ヨシュアは夜会への出入りが禁止されている。本来なら顔を合わせる事など、あるはずはなかった。
それがわざわざ夜会の次の日、女性のみ参加を許された、招待すらされていないお茶会へ現れて、接触をはかってくるとは──。
そもそも婚約破棄を申し出たのはヨシュアの方である。彼の要望通り婚約破棄が認められ、謹慎も解かれて自由の身となった今、オリヴィアに一体何の用があるというのだろうか。
「わざとオリヴィアお嬢様に接触しにきて、嫌味を言いに来たとしか思えません!」
怒りに声をあげるローズの傍ら、グレンも手を顎に当てて思案する。
「……結局、ヨシュア殿下は何がしたかったのだろうな?」
「普通は、破棄された側が逆恨みして嫌がらせしてくる、とかならまだ分かるけどね」
言ってすぐに「もちろんオリヴィア様がそのような事をするなんて、微塵もない思ってませんからね!」とミシェルは慌てて言い添えた。
「それが、アイリーン様の今後を見据えて、お二人でお茶会の見学にいらしたようなのです。たまたま今回のお茶会に私がいただけで……」
「そんなの、単なる言い訳かもしれないじゃないですかっ。それに未だにあの平民の女を『聖女』だと呼んでいたそうですし!」
未だアイリーンを聖女であると信じて疑わないヨシュア。ローズの訴えを聞いたヨシュアの元護衛騎士である面々は、皆頭を抱え始める。
項垂れる彼らを見るに、きっと今までヨシュアの尻拭いなどで、散々苦労してきた様子が伺えた。
「でも、アイリーン様は王子妃になる可能性があるから、今の内にお茶会の雰囲気を見せて差し上げようという気持ちは私も理解出来るわ」
「オリヴィアお嬢様……」
決してヨシュアとアイリーンの事を悪く言わないオリヴィアに、一同は何も言えない。
グレンより無言の合図を受け取った、女騎士ルイザは立ち上がり、空気を変えるように明るい声を発する。
「では、話し合いは終わりです。オリヴィア様、お疲れの所申し訳ありませんでした。寝室までお送り致します」
これ以上嫌な記憶を掘り起こされたくないだろうと、オリヴィアを含めた話し合いは今回限りだと、護衛騎士達は予め決めていた。
今後の護衛範囲の方針のために必要な情報は確認出来たので、この後は彼らのみで話し合いが重ねられる予定である。
オリヴィアは王宮の薔薇園をエフラムと眺め歩いてから、実家のフローゼス邸へと送り届けられた。屋敷に帰宅すると、強制的に生やされた背中の天使の羽と、頭の輪っかを外してもらうため、これらを出現させた張本人へと訴えかけにいった。それはそれは迅速に。
しかしおやつを爆食いした後だったようで、腹が満たされた張本人はサロンのフカフカクッションの上で昼寝の真っ最中であった。気持ちよさそうに眠るフェリクスの膨らんだお腹を、必死の形相をしたオリヴィアがいくら強めに揺さぶって呼びかけようとも、起きる気配はなかった。起こすのは一旦諦めるに至った。
羽はなんとか自力で消せたものの、やはり頭の輪っかの消し方が分からず、しばらくはそのまま過ごす事に。結局フェリクスが目を覚ましたのは夕方。丁度晩餐の用意が整う時間に差し掛かると、彼は目を覚ましてようやく頭の輪を消してくれたのだった。
そしてオリヴィアの父、フローゼス侯爵はお茶会での出来事を知るや否や「やはり叩ききる!」とヨシュアへ強い怒りを出さずにはいられなかった。
ちなみに謹慎中の時より、フローゼス侯爵からヨシュアに向けて、剣術の稽古の要請が出続けているが、彼は逃げ回り続けている。
◇ ◇ ◇
「どうしてあの馬鹿王子の謹慎が解けている挙句、オリヴィアお嬢様に接触までしてこれるのですか!?やはり陛下はご自身の愚息可愛さに、全てを許すおつもりなのですねっ」
自分の代わりに怒りを露わにしてくれるローズを宥めながら、オリヴィアは未だ複雑な思いを抱えていた。
オリヴィアが湖の館へ帰還するとすぐにサロンでは、護衛騎士達を含めた話し合いが行われ、現在に至る。
事前にクリストファーから、町でヨシュアとアイリーンの二名と出くわしたと報告を受けており、同時に警戒するようにとも言われていた。だが、ヨシュアは夜会への出入りが禁止されている。本来なら顔を合わせる事など、あるはずはなかった。
それがわざわざ夜会の次の日、女性のみ参加を許された、招待すらされていないお茶会へ現れて、接触をはかってくるとは──。
そもそも婚約破棄を申し出たのはヨシュアの方である。彼の要望通り婚約破棄が認められ、謹慎も解かれて自由の身となった今、オリヴィアに一体何の用があるというのだろうか。
「わざとオリヴィアお嬢様に接触しにきて、嫌味を言いに来たとしか思えません!」
怒りに声をあげるローズの傍ら、グレンも手を顎に当てて思案する。
「……結局、ヨシュア殿下は何がしたかったのだろうな?」
「普通は、破棄された側が逆恨みして嫌がらせしてくる、とかならまだ分かるけどね」
言ってすぐに「もちろんオリヴィア様がそのような事をするなんて、微塵もない思ってませんからね!」とミシェルは慌てて言い添えた。
「それが、アイリーン様の今後を見据えて、お二人でお茶会の見学にいらしたようなのです。たまたま今回のお茶会に私がいただけで……」
「そんなの、単なる言い訳かもしれないじゃないですかっ。それに未だにあの平民の女を『聖女』だと呼んでいたそうですし!」
未だアイリーンを聖女であると信じて疑わないヨシュア。ローズの訴えを聞いたヨシュアの元護衛騎士である面々は、皆頭を抱え始める。
項垂れる彼らを見るに、きっと今までヨシュアの尻拭いなどで、散々苦労してきた様子が伺えた。
「でも、アイリーン様は王子妃になる可能性があるから、今の内にお茶会の雰囲気を見せて差し上げようという気持ちは私も理解出来るわ」
「オリヴィアお嬢様……」
決してヨシュアとアイリーンの事を悪く言わないオリヴィアに、一同は何も言えない。
グレンより無言の合図を受け取った、女騎士ルイザは立ち上がり、空気を変えるように明るい声を発する。
「では、話し合いは終わりです。オリヴィア様、お疲れの所申し訳ありませんでした。寝室までお送り致します」
これ以上嫌な記憶を掘り起こされたくないだろうと、オリヴィアを含めた話し合いは今回限りだと、護衛騎士達は予め決めていた。
今後の護衛範囲の方針のために必要な情報は確認出来たので、この後は彼らのみで話し合いが重ねられる予定である。
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