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本編
作戦決行
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クルステア公爵家の令嬢が屋敷からいなくなった当日、それは当主不在の時だった。
ティアリーゼは変装して侍女を装い、買い出しの仕事のフリをして屋敷から出た。
本日仕事休みのリタと途中で合流し、町に向かうと、既に二人の協力者がティアリーゼを待っていた。
二人とはクルステア家の使用人である、赤髪の兄妹。名を兄の方をマシュー、そして妹がターニャという。
兄妹の家系を遡れば何代も前から、クルステア家に仕えている家柄である。
兄のマシューはティアリーゼの一つ年上で十七歳、そして妹ターニャは一つ年下の十五歳。
二人の母親は幼少の頃に、父は数年前に他界している。家族はお互いしかおらず、兄妹は今の公爵家を随分と前から見限っていたらしい。
彼らはティアリーゼの母、前公爵夫人のスウェナに可愛がられていた。そんな兄妹はミランダの横暴な態度や、ティアリーゼへの仕打ちに日々対し憤りを感じていた。
「お嬢様のいない公爵家に未練はない」とはっきりと口にした彼らは、ティアリーゼの大切な幼馴染でもある。
そして元々ティアリーゼのミルディン行きを知った時から、同行を希望していた。
しっかり者のマシューがいる上、決してティアリーゼを裏切る心配はないと断言できる二人だ。リタから見てこれ以上ない人選といえた。
予め手配していた、旅行用の長距離馬車へと向かう。持ってきた荷物に含まれている宝飾品を売れば、途中で何かあったとしても十分に足りる。
別れの時が近づき、感極まったリタがティアリーゼの手を握りしめた。
「わたくしも、お嬢様とご一緒したいのですが……何とか父を説得出来る手立てがあれば……」
「それは駄目よ、気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとう」
公爵家で働く者には貴族も含まれており、子爵家の令嬢であるリタもその一人だ。
元々王太子妃になる予定だったティアリーゼの侍女として、公爵家で働き始めた経緯がある。子爵としては、ゆくゆくはリタを王太子妃付きの侍女にしたいと考えていたのだろう。
そんな子爵が、王都から離れた辺境の地に行くことを許すとは思えない。
抱擁をし、リタとの挨拶を済ますとティアリーゼは四頭立ての馬車へと乗り込んだ。
ティアリーゼがミルディンへと出立するのは、予定では二ヶ月程先のことだった。
(これで公爵家の人達と顔を合わせることも、別れの挨拶もしなくて済むのね。
良かった。わたしにはこれ以上、公爵家での思い出は必要ないもの)
それにしても随分と強行な手段に出てしまったと、ティアリーゼは微苦笑する。誰の目から見ても、国や実家に反抗しているようにしか見えないだろう。
なりふり構わない行動は、このまま平民として生きることを望んでいるかのようだった。
まるで賭け事のようだ。自分が何処に辿り着くのか、人生で初めての賭け。
◇
ティアリーゼが王都から旅立って数日後、屋敷へと帰宅したクルステア公爵に、顔色を悪くした家令が告げる。
「大変です、旦那様!何日も前からティアリーゼお嬢様が屋敷の敷地どこにも見当たらず、お部屋にこのような置き手紙が……!」
ティアリーゼは変装して侍女を装い、買い出しの仕事のフリをして屋敷から出た。
本日仕事休みのリタと途中で合流し、町に向かうと、既に二人の協力者がティアリーゼを待っていた。
二人とはクルステア家の使用人である、赤髪の兄妹。名を兄の方をマシュー、そして妹がターニャという。
兄妹の家系を遡れば何代も前から、クルステア家に仕えている家柄である。
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そして元々ティアリーゼのミルディン行きを知った時から、同行を希望していた。
しっかり者のマシューがいる上、決してティアリーゼを裏切る心配はないと断言できる二人だ。リタから見てこれ以上ない人選といえた。
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別れの時が近づき、感極まったリタがティアリーゼの手を握りしめた。
「わたくしも、お嬢様とご一緒したいのですが……何とか父を説得出来る手立てがあれば……」
「それは駄目よ、気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとう」
公爵家で働く者には貴族も含まれており、子爵家の令嬢であるリタもその一人だ。
元々王太子妃になる予定だったティアリーゼの侍女として、公爵家で働き始めた経緯がある。子爵としては、ゆくゆくはリタを王太子妃付きの侍女にしたいと考えていたのだろう。
そんな子爵が、王都から離れた辺境の地に行くことを許すとは思えない。
抱擁をし、リタとの挨拶を済ますとティアリーゼは四頭立ての馬車へと乗り込んだ。
ティアリーゼがミルディンへと出立するのは、予定では二ヶ月程先のことだった。
(これで公爵家の人達と顔を合わせることも、別れの挨拶もしなくて済むのね。
良かった。わたしにはこれ以上、公爵家での思い出は必要ないもの)
それにしても随分と強行な手段に出てしまったと、ティアリーゼは微苦笑する。誰の目から見ても、国や実家に反抗しているようにしか見えないだろう。
なりふり構わない行動は、このまま平民として生きることを望んでいるかのようだった。
まるで賭け事のようだ。自分が何処に辿り着くのか、人生で初めての賭け。
◇
ティアリーゼが王都から旅立って数日後、屋敷へと帰宅したクルステア公爵に、顔色を悪くした家令が告げる。
「大変です、旦那様!何日も前からティアリーゼお嬢様が屋敷の敷地どこにも見当たらず、お部屋にこのような置き手紙が……!」
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