1 / 1
夢のヒモ生活
しおりを挟む
それはとある高校の教室でのこと……
「おい夕希聞いたか? 隣のクラスの|相川(あいかわ)が|一之瀬(いちのせ)と付き合ってるって話」
「マジで?」
休み時間。
クラスの中では特に親しい|山川(やまかわ)|怜(りょう)がもたらした情報に、|紫野(しの)|夕希 (ゆうき)は思いっきり食いついた。
「マジマジ。さっきこの目で見てきたが、あれはリア充のそれだった……βの俺にはあんまり関係ないけどムカつくぜ」
「リア充爆ぜろ」と悪態をつく怜に対し、夕希は同意した。
「それな……つうか相川本当羨ましいわ」
怜と夕希が口にしている相川と一之瀬はそれぞれΩとαだ。
「夕希はヒモ目指してるもんな」
夕希は以前からΩが羨ましいと言っていた。
というのも優秀なαと結ばれれば将来安泰はまず間違いないし、ヒモになって養ってもらうというのも割りと夢物語ではなかったからだ。
「でもなあ……俺βなんだよなあ……」
そういう夕希のルックスは一般的に言われるΩの身体的な特徴に当てはまっていた。
男にしては華奢で、中性的なルックス……。
「お前。見た目はΩっぽいけどな」
「ほんとΩって言ったら騙せねえかなあ……」
「いけるんじゃね? しかもお前身体弱いだろ? それをΩのヒートって言ってさあ」
夕希はよく体調を崩す。
中学時代はよくそのことをクラスメイトに指摘され、Ωじゃないかと怪しまれていた。
だが「マジで? じゃあ俺αのヒモになれるじゃん!」というような発言ばかりしていたせいで、最近では全くΩと見られなくなっていた。
「でもなあ? 結局バレるよな? しかも相手がαだからマジで怖ええ……」
相手は希少で優秀なαだ。
嘘がバレたら何をされるか分かったものではない……というのはもはや被害妄想と言えるかもしれないが、少なくとも騙されて怒らない人間はいないだろう。
「夕希は本当チキンだよな」
「仕方ねえだろ? αってなんか怖いし?」
怜は夕希の言葉に首を傾げた。
「そうか? あいつら有能で、無駄に美形多い傾向がある気がするからムカつくけど、優しいつーか……イケメンな雰囲気?」
「雰囲気までイケメンとかムカつくけどな」とやはり怜は悪態をついた。
「いやいや? 逆にキレたら怖そうじゃん?」
「確かにそうかもな……つかお前はそこんとこ詳しいもんな」
怜はそう言って笑った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
放課後のこと。
夕希は親友と帰路を歩いていた。
夕希の隣を歩いている|大崎(おおさき)|啓斗(ひろと)は夕希にとっては親友であり、幼なじみであり……そしてもっとも身近なαであった。
啓斗は日本人という割りに顔の彫りが深い。
というのも啓斗の祖父がイギリス人らしくその影響らしい。
よくイギリス人の男性を捕まえたものだと思うかもしれないが、なんのことはない。
啓斗の祖父がαで、祖母がΩだった。
だから結ばれた……というのは味気ないものだが、二人の性別の影響が大きかったことは事実だ。
ちなみに日本に住んでいるのは、祖母の意向が関係している。
夕希と啓斗の家は近く、昔からよく遊んでいた。
当然、家がすぐそこであるため、帰り道も同じだ。
「相川と一之瀬ってヒロのクラスだよな?」
そのことは聞くまでもなく知っていたが、夕希は話題を振る関係であえてそう切り出した。
それはそれとして夕希は啓斗のことをヒロと呼んでいた。
それに|倣(なら)ってか、啓斗も夕希をユウと呼んでいる。
「あー……付き合ってるっていう話か」
「そそ」
しかし啓斗は興味が無さそうであった。
夕希もそんな啓斗の様子に気づいていた。
「ヒロは興味ないの?」
「ん? 逆に興味あるのか? ……ってまあ? ユウはヒモ希望だもんな?」
夕希はともかくとして、啓斗は二人の関係についてどうでもよさそうだ。
「まあな? でもヒロの場合同じクラスだろ? しかもお前も一之瀬と同じαだし……」
「同じαとしてなんかあるだろ?」と夕希は啓斗に尋ねた。
「んー……ねえな」
しかしはっきりと否定された。
「一之瀬と俺は同じαつっても、別にそんな親しくねえし? まあおめでとさんってとこだな」
「そうなのか?」
啓斗の言葉に夕希は首を傾げた。
以前啓斗が一之瀬と話しているのを見たことがあるが、夕希から見てそれなりに親しそうに見えていた。
「ま、そうだな。つーか? ユウは一之瀬狙ってたのか?」
啓斗はそう言って目を細めた。
その責めるような目に夕希は一瞬たじろいでしまう。
「……いや? ……それにヒモになりたいつっても、あくまで願望だしな……」
「……ふーん?」
夕希はなぜ啓斗がそこまで疑いの目を向けてくるのか分からなかった。
正直なところ夕希は時々啓斗を怖いと感じることがある。
昔からの付き合い故に、夕希は啓斗のことを理解しているつもりだ。
だが十歳の頃に受けた性別検査以降、やはり啓斗がαだからなのか何を考えているかよく分からないことがあった。
だからこそなんとも言い難い怖さがあった。
「ま、どうでもいいや……」
啓斗はそう言って視線を前方に戻した。
啓斗の視線が逸れたことで夕希はホッと胸を撫で下ろした。
「そんなことより今日も家来るだろ?」
明日は休日。
夕希はよく啓斗の家に遊びにいく。
次の日が休日だと泊まることもざらだった。
今では夕希の私物が啓斗の部屋に普通に置かれているし、泊まりを想定して夕希の着替えまで存在する。
「……おう」
その後、家が近くなると夕希は啓斗と一旦別れ、荷物を置いて準備をしてから啓斗の家へと向かった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
啓斗の両親はいつも帰りが遅い。
だからいつも夕希は啓斗と二人きり。
夕飯はいつも夕希が作る。
冷蔵庫の食材も使っていいと許可されている……もっともその辺りは今更と言えるレベルだ。
今、2人はゲームをしていた。
「あ、死んだ……」
すると夕希の操作していたキャラクターの体力が尽きた。
「あーあ……」
夕希は寝転んで枕代わりに両腕を組んだ。
啓斗はゲームを中断し、そんな夕希に目を向けた。
「なに? ユウはこのゲーム飽きたの?」
「いやいやこのゲーム三日前に発売したばっかだろ?」
啓斗の物言いに夕希は苦笑した。
流石に三日前に買ったゲームを飽きたとは思わない。
もっともそれがその程度のものであったならば仕方がない……だがそれなら初めから買わなければいいだけのことだ。
「一旦休憩するか」
そう言って啓斗はテレビの電源を落とした。
「なあユウ?」
啓斗も夕希のすぐ隣に寝転んだ。
そんな啓斗に夕希は視線を向けた。
「なに?」
「お前……なんでヒモになりたいの?」
なぜヒモになりたいのか……?
そんなことを聞かれても困るというものだ。
なにせ夕希にとっては半ば冗談に過ぎないし、そもヒモになりたい理由など、楽な生活を送りたいという程度のものに他ならないのだから……。
「そりゃαと結婚すれば将来安泰だろ? 自分は働かずに養ってもらうとか最高じゃん?」
夕希の言ってることは駄目な人間のそれだ。
「そうかそうか……ところで、今お前の目の前にαがいるんだがどうだ?」
「どうだって……」
このヒモ云々からの流れはいつものことであった。
しかし毎度毎度振られているため、最近では夕希も面倒に感じていた。
「そりゃαって点はいいけど、お前の場合おばさんが凄え怒るだろうからなあ……」
夕希はいつもとは打って変わり、比較的真面目に返した。
ちなみにいつもなら「マジで?」と食いついている。
夕希の言うおばさんとは啓斗の母親のことだ。
啓斗の母親としてはやはりなるべく優秀で、子供を産めるΩや女性を息子の相手に望んでいる。
子供を産めないβなど、例えどれだけ親しくとも抵抗があるであろう……。
「母さんが怒んなきゃいいわけ?」
幼なじみ故に、啓斗が少しムッとした口調になったことに夕希は気づいた。
「そうだな……」
とはいえ夕希には、イマイチ啓斗の怒りのツボが分からなかった。
故にとりあえずという気持ちでそう答えてしまった……。
「じゃあ……」
啓斗は起き上がり夕希の方に近づいた。
そして……
「俺と付き合えよ」
覆い被さるような形で夕希の上に乗っかった。
「「……」」
二人の間に沈黙が流れた。
少しして先に沈黙を破ったのは夕希だ。
「……マジで?」
夕希としては、啓斗が冗談でそう言ってるのだと信じたかった。
けれども雰囲気やその真剣そうな眼差しはそうではないと語っていた。
「マジだ」
「……」
夕希の頭はフリーズした……だがその啓斗の行動への答えは案外すぐに思い浮かんだ。
「ははっ……ヒロ。お前演技力凄えな? 一瞬ほんとに騙されたわ」
夕希が導きだした答えはつまりそれだ。
啓斗の演技力が凄いという解答……。
「お前俳優目指せるn「演技じゃねえけど?」
しかし夕希に被せるように、あるいはきっぱりと裁ち切るように啓斗は否定した。
「ユウ。お前が好きだ」
「……」
そしてまた沈黙が訪れた……。
「いや? お前さあ? いいかげんにしろよな? 今日エイプリルフールじゃねえぞ……?」
夕希は強気に言ってみたものの、実際は身体が僅かに震えていた。
その震えは当然啓斗にも伝わった。
「知ってる」
啓斗はただそう告げた。
「いやだからおm、ん!」
夕希の言葉の途中で啓斗はそれを遮った。
それも物理的に。
夕希の口を自分の唇で塞ぐという方法で。
「これで分かっただろ? 俺は本気だ」
啓斗は本気だ……射ぬくような目が暗に逃がさないと告げていた。
それを見た夕希は『きっと飢えた獣が獲物を前にしたらこんな鋭い目つきになるのだろうな』という考えが一瞬ぼんやりと過った……。
「……いや!? 俺βなんだけど!?」
しかしぼんやりと思考が緩んだのは一瞬の事。
夕希はすぐに冷静さを取り戻した。
自分はあくまでβ……だからαとは付き合えない。
故に"β"という言葉は夕希にとって、自分を守るための重要なキーワードだった。
「βとかどうでもいい。俺はユウが好きなんだよ」
しかし啓斗はそれをあっさりと破った。
「お、お前本気で言ってるのか!?」
最後の砦を崩され、夕希はいよいよ自分の身が本格的に危ういことを悟った。
「だから言ってんだろ? 俺は本気だ」
「うわっ! おいやめろよヒロ!」
啓斗は偶然落ちていた……というかその辺に適当に捨て置いていたネクタイを手に取ると、夕希の腕を縛り、近くにあったベッドのパイプ部分に括り付けた。
夕希も抵抗するが相手がαであることと、夕希自身が華奢な体つきであることが災いし、力負けしてしまった。
啓斗は夕希を縛り上げると、夕希の着ていたTシャツを|捲(まく)り上げた。
「んっ……おい!」
啓斗は夕希の露出した2つの突起の片方に唇を這わせた。
そして優しく甘噛みした。
「ひっ……」
「ユウ……肌白くて綺麗だな……」
啓斗は夕希の胴体の上から下にかけて、指先でつーっとなぞった。
「ほんとΩみたいだよな」
うっとりとした表情で啓斗は夕希の肉体を眺めている。
そんな啓斗を夕希は睨んだ。
「ま、Ωの身体なんてまともに見たことねえけどな」
「俺はβだって言ってんだろ!」
「ああ、だから知ってるって言ってる」
しかし啓斗にとって夕希がβかΩかなどどうでもよかった。
啓斗は夕希のズボンに手をかけた。
夕希は「やめろ! 俺はβだ!」と叫んで抵抗した。
しかし結局は抵抗虚しく下げられてしまった。
「なんだ。嫌がる割りに勃ってんじゃん」
夕希のそれはまだ完全ではないものの、立ち上がりつつあった。
少なくとも下着の上から分かる程度には。
「ち、ちがっ!」
「違う? じゃあしっかり見て確認しないとな?」
「や、やめろ!」
夕希にとってこれは本当の本当に最後の砦に他ならない。
それを奪われたら本当に終わる……その確信が夕希にはあった。
夕希の必死の抵抗に、流石の啓斗も手こずった。
夕希は何度か啓斗を蹴りつけた。
それは啓斗にとっても痛い攻撃だった。
啓斗は夕希の両足をなんとか押さえ付け、一気に下着を剥ぎ取った。
「はあはあ……やっぱ勃ってんじゃん」
「っ……」
啓斗に自分の陰部を見られたことで、一気に夕希の顔が紅潮した。
「顔真っ赤だぞ?」
「う、うるさい!!」
ニヤニヤしながら「かわいいなあ~おい?」と呟く啓斗を夕希は思いっきり睨み付けた。
「んじゃ、そろそろヤるか」
そう言うと啓斗は夕希から一旦離れ、ごそごそと何かを探し始めた。
その間も夕希は自身の腕を縛っているものを、本気で引っ張り続けた。
しかしネクタイは緩むことも、千切れることもなかった。
そんな無駄に丈夫なネクタイを忌々しく感じていると、啓斗が何かを手に戻ってきた。
「ん! 冷たっ……なにすんだよ!」
啓斗はいつかこの日が訪れた時のためにと、購入していたローションを夕希の胸や腹にかけた。
「なにって? そりゃナニするつもりだけど?」
「冗談だろ……」
そう口にしつつも夕希は全く笑えなかった。
「いんや?」
「っん! だからやめろっtんあ……」
半ば勃ちあがりつつあったそれに直接かけられ、その冷たさに夕希は思わず喘いでしまった。
一方、啓斗は夕希のその反応を楽しむように、わざと途切れ途切れにかけていた。
啓斗は夕希の反応を楽しむと持っていたローションを置き、夕希のモノを掴んだ。
そしてそれを勢いよく上下させると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が鳴った。
「っ……ん……」
夕希は自分の口を閉ざすことで精一杯であった。
もし今口を開いてしまえば、抗議の声ではなく|蕩(とろ)けた自分の声を聞くことになる。
そんな屈辱には耐えられなかった。
「さてと……」
啓斗はチャックを下ろし、そこから自身のモノを外気に|晒(さら)して|寛(くつろ)げた。
そのまま夕希に近づいて、それを夕希のモノに密着させた。
密着したからこそだが、啓斗のそれは夕希のそれよりも大きくて熱くて…………だからこそ夕希の恐怖心を一層煽った。
「ん……本当に冷てえ……」
啓斗もローションを自身のそれにかけた。
「っ……」
啓斗は重ねたそれらを上下させた。
夕希は必死に口を閉ざしていた。
「……なあユウ?」
すると啓斗は夕希に語りかける。
もちろん夕希がそれに返事をしていられるほどの余裕はない。
「お前ヒモになりたいんだよな? なら俺を選べよ。一之瀬じゃなく、他のαでもなくさ? 今は無理でも、将来は養ってやれる。お前に楽させてやれる。だからさ? 俺のものになれよ」
啓斗の告白。
それを聞いた夕希の表情は複雑そうに歪んだ。
「あーあ……なに? んなに声だしたくねえの?」
すると啓斗は扱いていた手を速めた。
「んっ……」
先程よりも強い刺激に、夕希は耐えるのがやっとであった。
「なんでそんな頑ななんだよ。ヒモになりたいんだろ? なあ? 喘ぎついでに言えって。"いいよ"ってさあ」
啓斗の語りかけに夕希はそれでも答えようとはしなかった。
「…………」
啓斗は黙って待っていた。
そして夕希は耐えていた。
しかしいずれも限界が来るまでの話だ。
「っ……」
「……いいぜユウ。一緒にイコうぜ?」
その啓斗の言葉のすぐ後に二人は果てた。
「はあはあ…………な!? 止めろ!」
果てた後少しして、夕希は自身の後ろの孔に違和感を覚えた。
「止めねえよ」
啓斗は夕希の窪みに軽く触れた後、容赦なく指を突き入れた。
「っ!? んん!!」
自身の中で蠢く啓斗の指に気持ち悪さを感じる一方で……気持ち良くも感じていた。
「入れるぞ?」
少しして解し終えたとばかりに、啓斗は自身のモノを夕希の窪みに押し付けた。
そして夕希が抵抗しようと口を開く前に、一気に中に入れ込んだ。
その勢いのまま、啓斗は腰を打ち付けるように突き動かし始めた。
「んあ、ん……ヒロ、ヒロ!」
止めろという代わりに夕希は啓斗の名前を呼んだ。
しかしそれはもはや啓斗を煽っているようなもので逆効果でしかなかった。
啓斗は動きを徐々に激しくしていく……それに呼応するように夕希の喘ぎと呼び声のペースも早くなる。
「はあはあ……ユウ。出す。出すぞ」
「ヒロ! だm……ん、あ」
二人はほぼ同時に果てた。
啓斗は夕希の中からゆっくりと自身のモノを引き抜いた。
広げられた夕希の窪みから啓斗の吐き出した白濁が流れ出る……息を整えようと必死な夕希の体を同じく呼吸の荒い啓斗がうつ伏せに返し、そして……
「いっ!! お前! なんてことを…………」
啓斗は夕希のうなじに噛みついた。
αがΩに自分のものだという印を付けるそれのように。
自分の番だと、自分のものだと主張するかのように。
はっきりと噛み後を付けたのだ。
「う……あ……」
夕希の既に滲んでいた瞳からついに涙がこぼれ落ちた。
実際啓斗に噛みつかれて痛かったことも事実。
そして啓斗が夕希を自分のものにしたかったと……自分を犯したという証拠を残したという事実がなによりも悲しかったのだ。
「お前はβだろ? 印を付けたって番にはなれない。でも……」
啓斗は泣いて横たわる夕希の体を後ろから抱き起こした。
そして抱き締める腕に力を込めた。
「ユウ。ずっと好きだった……」
啓斗の気持ちは昔から変わらずに決まっていた。
いや、実際のところ本当に自覚したのは、性別検査の時からほんの少し前くらいのことであった。
当時の啓斗はなんとなく自分がαで、夕希がΩになると思っていた。
それは直感に近いものと、自分の願望からくる夢物語とが混ざりあったようなものであった。
実際夕希がΩ云々はともかくとしても、自分がαになりうる自信はあった。
啓斗の祖父はαで、父親もαであった。
祖母はΩだが、母親はαであるため血統的にはαの血が濃い。
そして家族からは啓斗の成長の様子から、よくαになりそうだということは言われていた。
だからこそ自信があったし、性別検査でαだと判明した時も予定調和のような反応を周囲からされた記憶があった。
しかし夕希から告げられた結果によって、啓斗の予定は狂ってしまった。
夕希はβ……そう啓斗に告げてきた。
それで啓斗は少し悩んだものの…………昔からの思い故に、夕希のことを諦めることができなかった。
しかしそう思う一方で、夕希との関係が崩れることを恐れていた。
夕希はβ。
性別検査以降、Ωのような生活を望んでいたなどと冗談めかしていても、本心はきっとそうではないだろうなと思っていた。
だから夕希に合わせて冗談の範囲でしか自分の思いを伝えることができなかった。
けれどもそれはいつまでも続けていられるわけがない。
いつか夕希は女性の思い人を見つけて結ばれるかもしれない……だがその相手がもし女ではなく、男なら……? それもαの男性であったなら……? もし、夕希の冗談が冗談ではなかったら……? あまりにも都合が良すぎることは、もう決して幼くない啓斗にもいいかげん分かっていた。
けれども最近の夕希はヒモやα関連の話題の際、時々憧れるような憂慮するような表情(かお)を見せていた。
そして一之瀬と相川……あの2人の関係について尋ねてきた夕希の表情のそれにはいつもの冗談めかした……それに加えて、どことなく羨むようなそれがやはり混ざっていた。
啓斗にはそれが許せなかった。
夕希はただ本当に"番"という特別な関係を羨ましく思っていただけ…………そう理解していても怒りを抑えられなかった。
どうしても本心を伝えたくなった。
嫉妬しているだけ。それは分かっている。
我が儘でしかない。それも分かっている。
夕希なら許してくれる。夕希なら分かってくれる……。
「ごめんな……」
自分のしたことは最低なことだと分かっていた。
啓斗のしたことは実際、犯罪と言っていいだろう。
それでも夕希は許してくれる。
そこは確信している。
だからこそより後ろめたく、最低過ぎた。
「夕希はヒモでいい。俺がなんとかするからさ。だから…………」
そこで啓斗の言葉は途切れ、沈黙が訪れた。
次に言葉を発したのは、啓斗……ではなく夕希の方であった。
「……俺も好き」
「え?」
短く、小さな声で夕希はそう言った。
一方、啓斗はそんな夕希の言葉に一瞬、自分が聞き間違えたのではと自分の耳を疑ってしまった。
それでもはっきりと聞こえていた。
「そ…………そう、か…………はは……」
啓斗は鼓動の高鳴りが抑えられなかった。
いまいち感覚的に現実味がない。
きっと興奮やらなんやらで脳がやられたのだろうと感じつつも、どうしようもない嬉しさを感じていた。
とはいえ夕希はまだ泣いていた。
「じゃあ今日から俺たち恋人ってことで……」
恥ずかしい言葉も脳味噌がハイになっているため、あっさり言うことができた。
しかし……
「嫌だ」
「え…………? なんで?」
夕希から拒絶された。
そこで舞い上がっていた気持ちが一気に落ちて冷静になった。
「む、無理矢理やったのは悪かった。でも一応痛くないように気を付けたんだぜ? 痛かったかもだけどさ…………」
強姦ぎりぎりの行為がいけなかったのだろうなと釈明する啓斗に夕希は首を振った。
「あー……噛んだやつの方か? 結構強く噛んだしな。血出てるし…………」
啓斗はひとまず夕希の腕を縛っていたネクタイをほどくと、自分達の出した白濁の始末や服装を急いで直し、夕希のうなじから流れる血を塞ぐことで止めた。
「とりあえずこれで」
しかし夕希はまだ泣いていた。
「もう大丈夫だって?」
夕希は首を振った。
「悪かったよ。痛かったんだよな」
啓斗は夕希の涙を拭う。
「違う……」
「違うって何が……?」
しかし夕希はそうではないと否定する。
いかに昔から付き合いがあり、優秀なαである啓斗であっても、今の夕希の考えだけは全く分からなかった。
「俺…………本当は俺…………」
夕希のその言葉に啓斗の思考は真っ白になった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
啓斗が夕希を犯したのが数時間前のこと。既に夜も更けていた。
「「…………」」
二人は今、互いに黙って向き合っている…………。
数時間前、啓斗は夕希から告げられた真実に、大慌てで夕希を病院に連れていった。
医者が複雑な表情で処置したことは、今でも覚えている。
病院の帰りに、夕希の家に二人は寄った。
そして啓斗は夕希の両親に謝罪。
夕希の両親もやや複雑そうではあったが、夕希がいいならと許してくれた。
しかしその後連絡した啓斗の母親の方は大激怒…………もちろん夕希にではなく啓斗にだ。
啓斗は電話口で怒られた後に、また改めて家族会議に参加することを強いられた。
当然、拒否権はない。
そうしてようやく啓斗の部屋に戻って今の状況に至る。
「ごめん……」
啓斗は謝ることしかできなかった。
「…………俺も悪かった」
夕希はここにきて初めて啓斗に謝罪した。
「いや、ユウは悪くないだろ? いくらお前が本当に"Ω"だったって知らなかったとはいえ悪いのは俺だ」
夕希が隠していた真実。
それは夕希が本当にΩであったということ。
「…………」
夕希は今まで家族以外の人間に対してβであると偽ってきた。
それは啓斗も含めてのことだ。
Ωであるということは、基本的に隠していた方が良いというのが世の中の認識ではあった。
だが夕希はそんな社会的な理由だけで、今まで隠してきていたわけではなかった。
夕希は啓斗との親友関係を壊したくなかった。
性別検査の際に自分がΩであるということが判明し、啓斗との関係に影響がでるという考えが過った。
もっとも判明直後は啓斗の結果を知らなかったため、啓斗がαであると決まっていたわけではなかったが、夕希も啓斗はαであろうと思っていた。
αとΩの関係は特別だ。
運命の番とまではいかなくともである。
きっと自分がΩだと明かしたら、啓斗の自分への態度が変わるかもしれない…………それが夕希には怖かった。
当時の夕希にとって、啓斗に隠し通したい理由はそれであった。
だが時が経つにつれ、そこにもう一つ理由が加わることになる。
夕希をΩだと知らなかった啓斗はともかく、夕希は啓斗をαだと知っていた。
だからこそΩとして身近にいるαを意識しないわけがなかった。
実際、夕希が啓斗を恋愛対象として見るようになるのは無理のないことであった。
けれどもαだからとかΩだからという理由で、夕希は啓斗と付き合いたくはなかった。
なによりΩであることを秘密にしていながら、そういった目で見ていることが後ろめたかった。
だから夕希は啓斗に好意を抱きつつも、それが成就することを願ってはいなかったのである。
「俺、お前とは付き合えない」
「なんで? 俺のこと好きなんだろ?」
しかし啓斗にはそんな夕希の気持ちが分かるわけがない。
今までどんな気持ちでヒモになりたいという冗談を冗談のままにしてきたことか…………夕希はうまく結ばれた相川や一之瀬が羨ましかった。
それでも啓斗とは…………そう思うと悩ましく、では啓斗以外にいい相手が見つかるのだろうかと言われるとやはり悩ましく…………そもそもそのような相手となる候補がいるいないに関わらず、夕希には啓斗以外の相手など考えられなかった。
「でも無理だから…………」
残念ながらΩであることを明かしてしまった今でさえ、付き合えない理由までは言えそうになかった。
「…………俺が無理矢理やったから? それともお前と番になったから?」
付き合えない。
そう拒絶しても番になったという事実は変わらない。
意図せずとはいえ、啓斗は夕希に番の印を刻んだのだから。
「違う……」
「だよな。さっきもそう言ってたし…………じゃあなんで付き合えないの? それって教えられない理由?」
言葉の上ではともかく、啓斗の態度は逃がさないと告げていた。
そんな啓斗の態度に改めてαなのだと夕希は思い知らせられた。
実際、夕希はα特有の威圧感に詰められていた。
「………………………………」
「……言えないならいいよ。でもユウ。ユウはもう俺のものだから。ユウが認めなくても、これからは絶対に付き合ってもらうから」
啓斗は決してあきらめないだろうことは分かっていた。
夕希はどうすべきか迷いに迷った。
その末に……
「俺αが好き……なんだと思う」
夕希は決心した。
理解してもらえるかどうかは別として、今のままでは進まないと確信があったから。
「うん」
「ヒロも好き。でもそれはヒロがαだからで…………αじゃなかったらきっと…………」
震える声でゆっくりと話す夕希。
「…………それってなんか問題あるの?」
「あるだろ」
啓斗は性別を問わず夕希が好きだといった。
一方で、夕希はあくまでもαである啓斗のことが好きなのだと考えていた。
「俺αだぜ? βでもΩでもなく。正真正銘のα。逆に聞くけど、俺がβとかΩだったとして夕希が絶対に好きになってくれないって根拠があるか?」
「それは…………」
それはあまりにも不毛な問いかけであった。
だからこそそこで夕希はようやく気づく。
結局、自分はαである啓斗が好きで、それは啓斗が好きだということに他ならないのだと……
「おい夕希聞いたか? 隣のクラスの|相川(あいかわ)が|一之瀬(いちのせ)と付き合ってるって話」
「マジで?」
休み時間。
クラスの中では特に親しい|山川(やまかわ)|怜(りょう)がもたらした情報に、|紫野(しの)|夕希 (ゆうき)は思いっきり食いついた。
「マジマジ。さっきこの目で見てきたが、あれはリア充のそれだった……βの俺にはあんまり関係ないけどムカつくぜ」
「リア充爆ぜろ」と悪態をつく怜に対し、夕希は同意した。
「それな……つうか相川本当羨ましいわ」
怜と夕希が口にしている相川と一之瀬はそれぞれΩとαだ。
「夕希はヒモ目指してるもんな」
夕希は以前からΩが羨ましいと言っていた。
というのも優秀なαと結ばれれば将来安泰はまず間違いないし、ヒモになって養ってもらうというのも割りと夢物語ではなかったからだ。
「でもなあ……俺βなんだよなあ……」
そういう夕希のルックスは一般的に言われるΩの身体的な特徴に当てはまっていた。
男にしては華奢で、中性的なルックス……。
「お前。見た目はΩっぽいけどな」
「ほんとΩって言ったら騙せねえかなあ……」
「いけるんじゃね? しかもお前身体弱いだろ? それをΩのヒートって言ってさあ」
夕希はよく体調を崩す。
中学時代はよくそのことをクラスメイトに指摘され、Ωじゃないかと怪しまれていた。
だが「マジで? じゃあ俺αのヒモになれるじゃん!」というような発言ばかりしていたせいで、最近では全くΩと見られなくなっていた。
「でもなあ? 結局バレるよな? しかも相手がαだからマジで怖ええ……」
相手は希少で優秀なαだ。
嘘がバレたら何をされるか分かったものではない……というのはもはや被害妄想と言えるかもしれないが、少なくとも騙されて怒らない人間はいないだろう。
「夕希は本当チキンだよな」
「仕方ねえだろ? αってなんか怖いし?」
怜は夕希の言葉に首を傾げた。
「そうか? あいつら有能で、無駄に美形多い傾向がある気がするからムカつくけど、優しいつーか……イケメンな雰囲気?」
「雰囲気までイケメンとかムカつくけどな」とやはり怜は悪態をついた。
「いやいや? 逆にキレたら怖そうじゃん?」
「確かにそうかもな……つかお前はそこんとこ詳しいもんな」
怜はそう言って笑った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
放課後のこと。
夕希は親友と帰路を歩いていた。
夕希の隣を歩いている|大崎(おおさき)|啓斗(ひろと)は夕希にとっては親友であり、幼なじみであり……そしてもっとも身近なαであった。
啓斗は日本人という割りに顔の彫りが深い。
というのも啓斗の祖父がイギリス人らしくその影響らしい。
よくイギリス人の男性を捕まえたものだと思うかもしれないが、なんのことはない。
啓斗の祖父がαで、祖母がΩだった。
だから結ばれた……というのは味気ないものだが、二人の性別の影響が大きかったことは事実だ。
ちなみに日本に住んでいるのは、祖母の意向が関係している。
夕希と啓斗の家は近く、昔からよく遊んでいた。
当然、家がすぐそこであるため、帰り道も同じだ。
「相川と一之瀬ってヒロのクラスだよな?」
そのことは聞くまでもなく知っていたが、夕希は話題を振る関係であえてそう切り出した。
それはそれとして夕希は啓斗のことをヒロと呼んでいた。
それに|倣(なら)ってか、啓斗も夕希をユウと呼んでいる。
「あー……付き合ってるっていう話か」
「そそ」
しかし啓斗は興味が無さそうであった。
夕希もそんな啓斗の様子に気づいていた。
「ヒロは興味ないの?」
「ん? 逆に興味あるのか? ……ってまあ? ユウはヒモ希望だもんな?」
夕希はともかくとして、啓斗は二人の関係についてどうでもよさそうだ。
「まあな? でもヒロの場合同じクラスだろ? しかもお前も一之瀬と同じαだし……」
「同じαとしてなんかあるだろ?」と夕希は啓斗に尋ねた。
「んー……ねえな」
しかしはっきりと否定された。
「一之瀬と俺は同じαつっても、別にそんな親しくねえし? まあおめでとさんってとこだな」
「そうなのか?」
啓斗の言葉に夕希は首を傾げた。
以前啓斗が一之瀬と話しているのを見たことがあるが、夕希から見てそれなりに親しそうに見えていた。
「ま、そうだな。つーか? ユウは一之瀬狙ってたのか?」
啓斗はそう言って目を細めた。
その責めるような目に夕希は一瞬たじろいでしまう。
「……いや? ……それにヒモになりたいつっても、あくまで願望だしな……」
「……ふーん?」
夕希はなぜ啓斗がそこまで疑いの目を向けてくるのか分からなかった。
正直なところ夕希は時々啓斗を怖いと感じることがある。
昔からの付き合い故に、夕希は啓斗のことを理解しているつもりだ。
だが十歳の頃に受けた性別検査以降、やはり啓斗がαだからなのか何を考えているかよく分からないことがあった。
だからこそなんとも言い難い怖さがあった。
「ま、どうでもいいや……」
啓斗はそう言って視線を前方に戻した。
啓斗の視線が逸れたことで夕希はホッと胸を撫で下ろした。
「そんなことより今日も家来るだろ?」
明日は休日。
夕希はよく啓斗の家に遊びにいく。
次の日が休日だと泊まることもざらだった。
今では夕希の私物が啓斗の部屋に普通に置かれているし、泊まりを想定して夕希の着替えまで存在する。
「……おう」
その後、家が近くなると夕希は啓斗と一旦別れ、荷物を置いて準備をしてから啓斗の家へと向かった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
啓斗の両親はいつも帰りが遅い。
だからいつも夕希は啓斗と二人きり。
夕飯はいつも夕希が作る。
冷蔵庫の食材も使っていいと許可されている……もっともその辺りは今更と言えるレベルだ。
今、2人はゲームをしていた。
「あ、死んだ……」
すると夕希の操作していたキャラクターの体力が尽きた。
「あーあ……」
夕希は寝転んで枕代わりに両腕を組んだ。
啓斗はゲームを中断し、そんな夕希に目を向けた。
「なに? ユウはこのゲーム飽きたの?」
「いやいやこのゲーム三日前に発売したばっかだろ?」
啓斗の物言いに夕希は苦笑した。
流石に三日前に買ったゲームを飽きたとは思わない。
もっともそれがその程度のものであったならば仕方がない……だがそれなら初めから買わなければいいだけのことだ。
「一旦休憩するか」
そう言って啓斗はテレビの電源を落とした。
「なあユウ?」
啓斗も夕希のすぐ隣に寝転んだ。
そんな啓斗に夕希は視線を向けた。
「なに?」
「お前……なんでヒモになりたいの?」
なぜヒモになりたいのか……?
そんなことを聞かれても困るというものだ。
なにせ夕希にとっては半ば冗談に過ぎないし、そもヒモになりたい理由など、楽な生活を送りたいという程度のものに他ならないのだから……。
「そりゃαと結婚すれば将来安泰だろ? 自分は働かずに養ってもらうとか最高じゃん?」
夕希の言ってることは駄目な人間のそれだ。
「そうかそうか……ところで、今お前の目の前にαがいるんだがどうだ?」
「どうだって……」
このヒモ云々からの流れはいつものことであった。
しかし毎度毎度振られているため、最近では夕希も面倒に感じていた。
「そりゃαって点はいいけど、お前の場合おばさんが凄え怒るだろうからなあ……」
夕希はいつもとは打って変わり、比較的真面目に返した。
ちなみにいつもなら「マジで?」と食いついている。
夕希の言うおばさんとは啓斗の母親のことだ。
啓斗の母親としてはやはりなるべく優秀で、子供を産めるΩや女性を息子の相手に望んでいる。
子供を産めないβなど、例えどれだけ親しくとも抵抗があるであろう……。
「母さんが怒んなきゃいいわけ?」
幼なじみ故に、啓斗が少しムッとした口調になったことに夕希は気づいた。
「そうだな……」
とはいえ夕希には、イマイチ啓斗の怒りのツボが分からなかった。
故にとりあえずという気持ちでそう答えてしまった……。
「じゃあ……」
啓斗は起き上がり夕希の方に近づいた。
そして……
「俺と付き合えよ」
覆い被さるような形で夕希の上に乗っかった。
「「……」」
二人の間に沈黙が流れた。
少しして先に沈黙を破ったのは夕希だ。
「……マジで?」
夕希としては、啓斗が冗談でそう言ってるのだと信じたかった。
けれども雰囲気やその真剣そうな眼差しはそうではないと語っていた。
「マジだ」
「……」
夕希の頭はフリーズした……だがその啓斗の行動への答えは案外すぐに思い浮かんだ。
「ははっ……ヒロ。お前演技力凄えな? 一瞬ほんとに騙されたわ」
夕希が導きだした答えはつまりそれだ。
啓斗の演技力が凄いという解答……。
「お前俳優目指せるn「演技じゃねえけど?」
しかし夕希に被せるように、あるいはきっぱりと裁ち切るように啓斗は否定した。
「ユウ。お前が好きだ」
「……」
そしてまた沈黙が訪れた……。
「いや? お前さあ? いいかげんにしろよな? 今日エイプリルフールじゃねえぞ……?」
夕希は強気に言ってみたものの、実際は身体が僅かに震えていた。
その震えは当然啓斗にも伝わった。
「知ってる」
啓斗はただそう告げた。
「いやだからおm、ん!」
夕希の言葉の途中で啓斗はそれを遮った。
それも物理的に。
夕希の口を自分の唇で塞ぐという方法で。
「これで分かっただろ? 俺は本気だ」
啓斗は本気だ……射ぬくような目が暗に逃がさないと告げていた。
それを見た夕希は『きっと飢えた獣が獲物を前にしたらこんな鋭い目つきになるのだろうな』という考えが一瞬ぼんやりと過った……。
「……いや!? 俺βなんだけど!?」
しかしぼんやりと思考が緩んだのは一瞬の事。
夕希はすぐに冷静さを取り戻した。
自分はあくまでβ……だからαとは付き合えない。
故に"β"という言葉は夕希にとって、自分を守るための重要なキーワードだった。
「βとかどうでもいい。俺はユウが好きなんだよ」
しかし啓斗はそれをあっさりと破った。
「お、お前本気で言ってるのか!?」
最後の砦を崩され、夕希はいよいよ自分の身が本格的に危ういことを悟った。
「だから言ってんだろ? 俺は本気だ」
「うわっ! おいやめろよヒロ!」
啓斗は偶然落ちていた……というかその辺に適当に捨て置いていたネクタイを手に取ると、夕希の腕を縛り、近くにあったベッドのパイプ部分に括り付けた。
夕希も抵抗するが相手がαであることと、夕希自身が華奢な体つきであることが災いし、力負けしてしまった。
啓斗は夕希を縛り上げると、夕希の着ていたTシャツを|捲(まく)り上げた。
「んっ……おい!」
啓斗は夕希の露出した2つの突起の片方に唇を這わせた。
そして優しく甘噛みした。
「ひっ……」
「ユウ……肌白くて綺麗だな……」
啓斗は夕希の胴体の上から下にかけて、指先でつーっとなぞった。
「ほんとΩみたいだよな」
うっとりとした表情で啓斗は夕希の肉体を眺めている。
そんな啓斗を夕希は睨んだ。
「ま、Ωの身体なんてまともに見たことねえけどな」
「俺はβだって言ってんだろ!」
「ああ、だから知ってるって言ってる」
しかし啓斗にとって夕希がβかΩかなどどうでもよかった。
啓斗は夕希のズボンに手をかけた。
夕希は「やめろ! 俺はβだ!」と叫んで抵抗した。
しかし結局は抵抗虚しく下げられてしまった。
「なんだ。嫌がる割りに勃ってんじゃん」
夕希のそれはまだ完全ではないものの、立ち上がりつつあった。
少なくとも下着の上から分かる程度には。
「ち、ちがっ!」
「違う? じゃあしっかり見て確認しないとな?」
「や、やめろ!」
夕希にとってこれは本当の本当に最後の砦に他ならない。
それを奪われたら本当に終わる……その確信が夕希にはあった。
夕希の必死の抵抗に、流石の啓斗も手こずった。
夕希は何度か啓斗を蹴りつけた。
それは啓斗にとっても痛い攻撃だった。
啓斗は夕希の両足をなんとか押さえ付け、一気に下着を剥ぎ取った。
「はあはあ……やっぱ勃ってんじゃん」
「っ……」
啓斗に自分の陰部を見られたことで、一気に夕希の顔が紅潮した。
「顔真っ赤だぞ?」
「う、うるさい!!」
ニヤニヤしながら「かわいいなあ~おい?」と呟く啓斗を夕希は思いっきり睨み付けた。
「んじゃ、そろそろヤるか」
そう言うと啓斗は夕希から一旦離れ、ごそごそと何かを探し始めた。
その間も夕希は自身の腕を縛っているものを、本気で引っ張り続けた。
しかしネクタイは緩むことも、千切れることもなかった。
そんな無駄に丈夫なネクタイを忌々しく感じていると、啓斗が何かを手に戻ってきた。
「ん! 冷たっ……なにすんだよ!」
啓斗はいつかこの日が訪れた時のためにと、購入していたローションを夕希の胸や腹にかけた。
「なにって? そりゃナニするつもりだけど?」
「冗談だろ……」
そう口にしつつも夕希は全く笑えなかった。
「いんや?」
「っん! だからやめろっtんあ……」
半ば勃ちあがりつつあったそれに直接かけられ、その冷たさに夕希は思わず喘いでしまった。
一方、啓斗は夕希のその反応を楽しむように、わざと途切れ途切れにかけていた。
啓斗は夕希の反応を楽しむと持っていたローションを置き、夕希のモノを掴んだ。
そしてそれを勢いよく上下させると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が鳴った。
「っ……ん……」
夕希は自分の口を閉ざすことで精一杯であった。
もし今口を開いてしまえば、抗議の声ではなく|蕩(とろ)けた自分の声を聞くことになる。
そんな屈辱には耐えられなかった。
「さてと……」
啓斗はチャックを下ろし、そこから自身のモノを外気に|晒(さら)して|寛(くつろ)げた。
そのまま夕希に近づいて、それを夕希のモノに密着させた。
密着したからこそだが、啓斗のそれは夕希のそれよりも大きくて熱くて…………だからこそ夕希の恐怖心を一層煽った。
「ん……本当に冷てえ……」
啓斗もローションを自身のそれにかけた。
「っ……」
啓斗は重ねたそれらを上下させた。
夕希は必死に口を閉ざしていた。
「……なあユウ?」
すると啓斗は夕希に語りかける。
もちろん夕希がそれに返事をしていられるほどの余裕はない。
「お前ヒモになりたいんだよな? なら俺を選べよ。一之瀬じゃなく、他のαでもなくさ? 今は無理でも、将来は養ってやれる。お前に楽させてやれる。だからさ? 俺のものになれよ」
啓斗の告白。
それを聞いた夕希の表情は複雑そうに歪んだ。
「あーあ……なに? んなに声だしたくねえの?」
すると啓斗は扱いていた手を速めた。
「んっ……」
先程よりも強い刺激に、夕希は耐えるのがやっとであった。
「なんでそんな頑ななんだよ。ヒモになりたいんだろ? なあ? 喘ぎついでに言えって。"いいよ"ってさあ」
啓斗の語りかけに夕希はそれでも答えようとはしなかった。
「…………」
啓斗は黙って待っていた。
そして夕希は耐えていた。
しかしいずれも限界が来るまでの話だ。
「っ……」
「……いいぜユウ。一緒にイコうぜ?」
その啓斗の言葉のすぐ後に二人は果てた。
「はあはあ…………な!? 止めろ!」
果てた後少しして、夕希は自身の後ろの孔に違和感を覚えた。
「止めねえよ」
啓斗は夕希の窪みに軽く触れた後、容赦なく指を突き入れた。
「っ!? んん!!」
自身の中で蠢く啓斗の指に気持ち悪さを感じる一方で……気持ち良くも感じていた。
「入れるぞ?」
少しして解し終えたとばかりに、啓斗は自身のモノを夕希の窪みに押し付けた。
そして夕希が抵抗しようと口を開く前に、一気に中に入れ込んだ。
その勢いのまま、啓斗は腰を打ち付けるように突き動かし始めた。
「んあ、ん……ヒロ、ヒロ!」
止めろという代わりに夕希は啓斗の名前を呼んだ。
しかしそれはもはや啓斗を煽っているようなもので逆効果でしかなかった。
啓斗は動きを徐々に激しくしていく……それに呼応するように夕希の喘ぎと呼び声のペースも早くなる。
「はあはあ……ユウ。出す。出すぞ」
「ヒロ! だm……ん、あ」
二人はほぼ同時に果てた。
啓斗は夕希の中からゆっくりと自身のモノを引き抜いた。
広げられた夕希の窪みから啓斗の吐き出した白濁が流れ出る……息を整えようと必死な夕希の体を同じく呼吸の荒い啓斗がうつ伏せに返し、そして……
「いっ!! お前! なんてことを…………」
啓斗は夕希のうなじに噛みついた。
αがΩに自分のものだという印を付けるそれのように。
自分の番だと、自分のものだと主張するかのように。
はっきりと噛み後を付けたのだ。
「う……あ……」
夕希の既に滲んでいた瞳からついに涙がこぼれ落ちた。
実際啓斗に噛みつかれて痛かったことも事実。
そして啓斗が夕希を自分のものにしたかったと……自分を犯したという証拠を残したという事実がなによりも悲しかったのだ。
「お前はβだろ? 印を付けたって番にはなれない。でも……」
啓斗は泣いて横たわる夕希の体を後ろから抱き起こした。
そして抱き締める腕に力を込めた。
「ユウ。ずっと好きだった……」
啓斗の気持ちは昔から変わらずに決まっていた。
いや、実際のところ本当に自覚したのは、性別検査の時からほんの少し前くらいのことであった。
当時の啓斗はなんとなく自分がαで、夕希がΩになると思っていた。
それは直感に近いものと、自分の願望からくる夢物語とが混ざりあったようなものであった。
実際夕希がΩ云々はともかくとしても、自分がαになりうる自信はあった。
啓斗の祖父はαで、父親もαであった。
祖母はΩだが、母親はαであるため血統的にはαの血が濃い。
そして家族からは啓斗の成長の様子から、よくαになりそうだということは言われていた。
だからこそ自信があったし、性別検査でαだと判明した時も予定調和のような反応を周囲からされた記憶があった。
しかし夕希から告げられた結果によって、啓斗の予定は狂ってしまった。
夕希はβ……そう啓斗に告げてきた。
それで啓斗は少し悩んだものの…………昔からの思い故に、夕希のことを諦めることができなかった。
しかしそう思う一方で、夕希との関係が崩れることを恐れていた。
夕希はβ。
性別検査以降、Ωのような生活を望んでいたなどと冗談めかしていても、本心はきっとそうではないだろうなと思っていた。
だから夕希に合わせて冗談の範囲でしか自分の思いを伝えることができなかった。
けれどもそれはいつまでも続けていられるわけがない。
いつか夕希は女性の思い人を見つけて結ばれるかもしれない……だがその相手がもし女ではなく、男なら……? それもαの男性であったなら……? もし、夕希の冗談が冗談ではなかったら……? あまりにも都合が良すぎることは、もう決して幼くない啓斗にもいいかげん分かっていた。
けれども最近の夕希はヒモやα関連の話題の際、時々憧れるような憂慮するような表情(かお)を見せていた。
そして一之瀬と相川……あの2人の関係について尋ねてきた夕希の表情のそれにはいつもの冗談めかした……それに加えて、どことなく羨むようなそれがやはり混ざっていた。
啓斗にはそれが許せなかった。
夕希はただ本当に"番"という特別な関係を羨ましく思っていただけ…………そう理解していても怒りを抑えられなかった。
どうしても本心を伝えたくなった。
嫉妬しているだけ。それは分かっている。
我が儘でしかない。それも分かっている。
夕希なら許してくれる。夕希なら分かってくれる……。
「ごめんな……」
自分のしたことは最低なことだと分かっていた。
啓斗のしたことは実際、犯罪と言っていいだろう。
それでも夕希は許してくれる。
そこは確信している。
だからこそより後ろめたく、最低過ぎた。
「夕希はヒモでいい。俺がなんとかするからさ。だから…………」
そこで啓斗の言葉は途切れ、沈黙が訪れた。
次に言葉を発したのは、啓斗……ではなく夕希の方であった。
「……俺も好き」
「え?」
短く、小さな声で夕希はそう言った。
一方、啓斗はそんな夕希の言葉に一瞬、自分が聞き間違えたのではと自分の耳を疑ってしまった。
それでもはっきりと聞こえていた。
「そ…………そう、か…………はは……」
啓斗は鼓動の高鳴りが抑えられなかった。
いまいち感覚的に現実味がない。
きっと興奮やらなんやらで脳がやられたのだろうと感じつつも、どうしようもない嬉しさを感じていた。
とはいえ夕希はまだ泣いていた。
「じゃあ今日から俺たち恋人ってことで……」
恥ずかしい言葉も脳味噌がハイになっているため、あっさり言うことができた。
しかし……
「嫌だ」
「え…………? なんで?」
夕希から拒絶された。
そこで舞い上がっていた気持ちが一気に落ちて冷静になった。
「む、無理矢理やったのは悪かった。でも一応痛くないように気を付けたんだぜ? 痛かったかもだけどさ…………」
強姦ぎりぎりの行為がいけなかったのだろうなと釈明する啓斗に夕希は首を振った。
「あー……噛んだやつの方か? 結構強く噛んだしな。血出てるし…………」
啓斗はひとまず夕希の腕を縛っていたネクタイをほどくと、自分達の出した白濁の始末や服装を急いで直し、夕希のうなじから流れる血を塞ぐことで止めた。
「とりあえずこれで」
しかし夕希はまだ泣いていた。
「もう大丈夫だって?」
夕希は首を振った。
「悪かったよ。痛かったんだよな」
啓斗は夕希の涙を拭う。
「違う……」
「違うって何が……?」
しかし夕希はそうではないと否定する。
いかに昔から付き合いがあり、優秀なαである啓斗であっても、今の夕希の考えだけは全く分からなかった。
「俺…………本当は俺…………」
夕希のその言葉に啓斗の思考は真っ白になった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
啓斗が夕希を犯したのが数時間前のこと。既に夜も更けていた。
「「…………」」
二人は今、互いに黙って向き合っている…………。
数時間前、啓斗は夕希から告げられた真実に、大慌てで夕希を病院に連れていった。
医者が複雑な表情で処置したことは、今でも覚えている。
病院の帰りに、夕希の家に二人は寄った。
そして啓斗は夕希の両親に謝罪。
夕希の両親もやや複雑そうではあったが、夕希がいいならと許してくれた。
しかしその後連絡した啓斗の母親の方は大激怒…………もちろん夕希にではなく啓斗にだ。
啓斗は電話口で怒られた後に、また改めて家族会議に参加することを強いられた。
当然、拒否権はない。
そうしてようやく啓斗の部屋に戻って今の状況に至る。
「ごめん……」
啓斗は謝ることしかできなかった。
「…………俺も悪かった」
夕希はここにきて初めて啓斗に謝罪した。
「いや、ユウは悪くないだろ? いくらお前が本当に"Ω"だったって知らなかったとはいえ悪いのは俺だ」
夕希が隠していた真実。
それは夕希が本当にΩであったということ。
「…………」
夕希は今まで家族以外の人間に対してβであると偽ってきた。
それは啓斗も含めてのことだ。
Ωであるということは、基本的に隠していた方が良いというのが世の中の認識ではあった。
だが夕希はそんな社会的な理由だけで、今まで隠してきていたわけではなかった。
夕希は啓斗との親友関係を壊したくなかった。
性別検査の際に自分がΩであるということが判明し、啓斗との関係に影響がでるという考えが過った。
もっとも判明直後は啓斗の結果を知らなかったため、啓斗がαであると決まっていたわけではなかったが、夕希も啓斗はαであろうと思っていた。
αとΩの関係は特別だ。
運命の番とまではいかなくともである。
きっと自分がΩだと明かしたら、啓斗の自分への態度が変わるかもしれない…………それが夕希には怖かった。
当時の夕希にとって、啓斗に隠し通したい理由はそれであった。
だが時が経つにつれ、そこにもう一つ理由が加わることになる。
夕希をΩだと知らなかった啓斗はともかく、夕希は啓斗をαだと知っていた。
だからこそΩとして身近にいるαを意識しないわけがなかった。
実際、夕希が啓斗を恋愛対象として見るようになるのは無理のないことであった。
けれどもαだからとかΩだからという理由で、夕希は啓斗と付き合いたくはなかった。
なによりΩであることを秘密にしていながら、そういった目で見ていることが後ろめたかった。
だから夕希は啓斗に好意を抱きつつも、それが成就することを願ってはいなかったのである。
「俺、お前とは付き合えない」
「なんで? 俺のこと好きなんだろ?」
しかし啓斗にはそんな夕希の気持ちが分かるわけがない。
今までどんな気持ちでヒモになりたいという冗談を冗談のままにしてきたことか…………夕希はうまく結ばれた相川や一之瀬が羨ましかった。
それでも啓斗とは…………そう思うと悩ましく、では啓斗以外にいい相手が見つかるのだろうかと言われるとやはり悩ましく…………そもそもそのような相手となる候補がいるいないに関わらず、夕希には啓斗以外の相手など考えられなかった。
「でも無理だから…………」
残念ながらΩであることを明かしてしまった今でさえ、付き合えない理由までは言えそうになかった。
「…………俺が無理矢理やったから? それともお前と番になったから?」
付き合えない。
そう拒絶しても番になったという事実は変わらない。
意図せずとはいえ、啓斗は夕希に番の印を刻んだのだから。
「違う……」
「だよな。さっきもそう言ってたし…………じゃあなんで付き合えないの? それって教えられない理由?」
言葉の上ではともかく、啓斗の態度は逃がさないと告げていた。
そんな啓斗の態度に改めてαなのだと夕希は思い知らせられた。
実際、夕希はα特有の威圧感に詰められていた。
「………………………………」
「……言えないならいいよ。でもユウ。ユウはもう俺のものだから。ユウが認めなくても、これからは絶対に付き合ってもらうから」
啓斗は決してあきらめないだろうことは分かっていた。
夕希はどうすべきか迷いに迷った。
その末に……
「俺αが好き……なんだと思う」
夕希は決心した。
理解してもらえるかどうかは別として、今のままでは進まないと確信があったから。
「うん」
「ヒロも好き。でもそれはヒロがαだからで…………αじゃなかったらきっと…………」
震える声でゆっくりと話す夕希。
「…………それってなんか問題あるの?」
「あるだろ」
啓斗は性別を問わず夕希が好きだといった。
一方で、夕希はあくまでもαである啓斗のことが好きなのだと考えていた。
「俺αだぜ? βでもΩでもなく。正真正銘のα。逆に聞くけど、俺がβとかΩだったとして夕希が絶対に好きになってくれないって根拠があるか?」
「それは…………」
それはあまりにも不毛な問いかけであった。
だからこそそこで夕希はようやく気づく。
結局、自分はαである啓斗が好きで、それは啓斗が好きだということに他ならないのだと……
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる