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第1-2章 後宮下女→徳妃付侍女(新版)
「無性に凧を上げたくなったんですか」
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「タコをあげようよ」
「はい?」
「だから、タコをあげようよ」
ある晴れた日のこと。午前中の仕事を終えて休憩中だったわたしは暁明様からいきなりそんなことを言われた。空模様に負けないぐらいの笑顔を見せてくださった彼の発言を理解するのに少しばかり時間を要した。
「ああ、凧ですか」
「晴れてるし風もあるし、やろうよ」
「どうしてまた凧を? 唐突ですね」
「いや、急にやりたくなったから」
暁明様の思い付きはいつもの事ながら、その日の提案は少しばかり難題だった。
断るのは簡単だったものの暁明様の期待に応えたいとの気持ちが生じたのもまた事実。妥協案としてわたしは条件を付けることにした。
「じゃあ許可を貰ってきてください」
「え? 許可? 凧をあげるのに?」
「はい。えっと、後宮の責任者ってどなたでしたっけ? 徳妃様? 貴妃様?」
「母上達で問題無いと思うけれど、どうして?」
「理由は許可を貰えたら説明しますので」
「分かった。じゃあ話してみるよ」
暁明様が駆けていったのを見届けてからわたしは廊下の縁に座って昼食を取る。
普通に食卓に座ってもいいのだけれど、わたしは昼は軽く済ませたい方なのよ。そして残った昼休憩時間を昼寝に費やすのだー。
と思っていたら想定よりも早く暁明様が戻ってきた。
「いいってさ。さ、じゃあやろうよ」
「え? 本当に許可貰えたんですか? わたしはてっきり駄目って言われるかと」
「そう言えば母上は面白そうだって言ってたし、貴妃も浮かない顔をしてたっけ。どうしてだろ?」
「準備しながら説明しますか。で、あげる凧の準備は?」
「はい。これでどうかな?」
暁明様が後ろから取り出したのは彼の肩幅程度の大きさの凧だった。やや小ぶりでお子様向けだと評価していい。
わたしからしたら折角あげるのにかなり物足りなく感じてしまうのだけれど、まあ今回は彼が満足すればいいでしょう。
「これぐらいならわたしはいらないんじゃないですか?」
「一人でやってもつまんないじゃん。誰かと一緒の方が楽しいよ」
「確かに。否定出来ませんね」
暁明様と一緒にやって来たのは後宮でもやや開けた広場。普段はここで妃同士の交流だったり舞踊の練習だったりがされる。
そんな中で凧をあげようとするわたし達は完全に異彩を放っていた。
糸をほどいた暁明様は元気いっぱいに走り始める。上手く風に乗った凧は上空へと舞い上がった。一発で成功、見事なものだ。
宙を舞う凧に暁明様は顔を輝かせた。その場に居た女官達や妃方からも感嘆の声や拍手があがった。
「お上手ですね。何度かやられたんですか?」
「まあね。ところでさっき凧をあげるために許可がいるって言ってたけれど、どうして?」
「ああ、それは……」
「そこの貴女、一体何をしているんですの?」
説明しようと口を開いた時だった。突然低くも大きな声が響き渡る。
その場の全てを制するのではないかという威厳ある言葉を発した主の方を振り向くと、数名の侍女を従えた気品ある妃がこちらを睨みつけていた。
彼女の登場によって周りの女官や妃方は慌てて頭を垂れた。下女に過ぎないわたしもまた彼女へとかしずく。
何もしないのは暁明様ただお一人。それが彼女の立場を如実に表していた。
正一品の妃、淑妃様。
まさか彼女に見つかってしまうとは……。
「二度は言いませんわよ。答えなさい」
「はい。紅玉宮殿下のご要望を叶えるために凧をあげていました」
「凧あげは後宮では御法度ですけれど分かったうえでの所業だと?」
「主の要望を叶えるのがわたしの務めだと心得ていますので」
淑妃様は明らかにわたしを責めていた。凧をあげている暁明様を余所に、だ。
つまりは本来徳妃様付きのわたしが彼の思い付きを諫めるべきだろうと咎めているのだ。ご尤もなので弁解の余地は無い。
「ちょっと待ってくれないかな淑妃」
そこに割り込んできたのは当事者の暁明様。まるで罪人のような立場に立たされたわたしを守るように前に出た。
何故かあげていた凧は降ろさないままでわたしに手渡ししてくる。
「これはこれは紅玉宮殿下。ご機嫌麗しゅう。して、何かご意見が?」
「正確には凧あげは許可を貰ったうえでみんなの目に入る場所でやれば問題無かった筈だよ。その条件は満たしているけれど?」
……ちょっと待った。さっき暁明様は何も知らない感じでしたよね?
もしかしてわたしを試したんですか? だとしたらなんて意地悪な。何も知らないまま責められて狼狽えるわたしを笑うつもりだったので?
「わたくしは許可を出した覚えがありませんわ」
「貴妃に頂いてきたから問題無い、と思うけれど?」
「……っ。あのお方も物好きなことで」
ちなみに凧あげの許可は正一品の妃のうち二名の許可が必要らしい。これは正一品の妃四名が後宮を責任者、と位置付けられているからだそうだ。
なお、皇后と皇太后は別格で、後宮の責任者たる正一品の妃達を管理する更に上の役割を担っているんだとか。
で、暁明様から事情を説明された淑妃様はよほど癪に障ったのか、苦々しく吐き捨てた。
自分の思い通りにいかず不機嫌な彼女はそのまま足早に立ち去る……と思いきや、逆に侍女に椅子を用意させてその場に留まったじゃあないか。
「あの、淑妃様?」
「何? 文句がおあり? わたくしがどこで何をしようが勝手でしょう」
「確かに」
この場で文句が言えるのは皇子である暁明様だけ。その彼も特に何も言うことが無いようで、わたしが上空に飛ばしっぱなしの凧を受け取ってまた宙に泳がし始めた。淑妃様がいようが特に気にした様子はなかった。
他の頭を垂れっぱなしだった方々も淑妃様が楽にしろと促したのでそそくさとその場を去っていく。さすがにこの場に留まって自分の活動を再開しようとする豪胆な者はいなかったらしい。
「で、さっきの話の続きだけれど、どうして?」
「えっと、どうして、とは?」
「許可が必要だとは知ってても理由は知らないんだ。もしかして凧が屋根に当たって修理するのが大変だから?」
「あー、成程」
決まりだから守らなきゃ駄目、というのは思考の停止に他ならない、とわたしは考えている。何事も起因が存在していて、当時の事情を反映して制度は組まれるのだから。そして現在と合わなかったら決まりの方を柔軟に変えていけばいい。
そういった意味で暁明様の疑問は実にわたし好みだった。
「それもあるんでしょうが、凧が兵器だからですね」
「……兵器?」
「そうですよ。帝都で遊び道具として扱われるのは今が太平の世だからでしょうね」
少し強い風が吹いた。凧が流されそうだったのでわたしはすかさず糸を持って凧を手繰り寄せる。幸いにも屋根には落下せずに済み、宙に浮いたままで手元に戻すことに成功した。
少しずつ糸を離して近距離で飛ばし続ける。
「見て分かる通り凧って上空高く舞い上がりますよね。遠くにいる人にも見えるってことは、合図に使えますよね」
「それって、狼煙と同じ感じに使うってこと?」
「後宮で制限されているのは簡単に外との連絡を取られないためでしょう。多分わたしなんかが許可下さいってお伺い立てても馬鹿かと一蹴されるだけです」
「言われてみれば確かに……。遊ぶことしか思い浮かばなかったよ」
同じ理由で宮殿周囲での凧あげは固く禁じられている筈だ。凧あげをするためにわざわざ帝都の外壁から離れた草原または荒野に出向く人もいる、と噂で聞いた。
それだけ凧あげが楽しいって証なんだけれど、悪用しやすいとも解釈出来る。
「それと、凧に尖った刃物や劇薬を積んでわざと落下させたらどうなりますか? 建物だけならまだしも人に危害を与えかねませんよね」
「確かに兵器って言われても納得出来ちゃうね」
「下女として後宮に入り込み、凶器となる凧をあげて、上空から標的を攻撃。後宮の妃方のみならず、皇帝陛下すら危険を及ぼしかねません」
「そんなわけが……いや、確かにものすごく高く凧をあげたら可能なのかも」
分かってもらえて幸いだ。
正一品の妃二名の許可とはそんな凶行に走る者ではないとの証を立てるため。皆の目に入る場所で行うのは監視のため。
まあ、暁明様みたいな物好きでもない限りそこまでして凧あげしたいだなんて思わないでしょうけれど。
「分かったら凧をあげるのはこれっきりにしましょう」
「分かった。次は周りに何もない川辺でもっと大きいのをあげようよ」
「そう返されると本当に分かっているのかいないのか判断に迷うのですが」
風が収まってきたので暁明様はまた凧の高度を上げた。凧は見事に空を踊る。
わたしはふと気になったので淑妃様の方へ顔を動かさずに視線を映した。何故か彼女は凧や暁明様ではなくわたしを注視していた。
怒りと侮蔑に彩られていた先程とは打って変わって何故か真面目な顔をしていた。
「貴女、雪慧と言いましたわね」
「え? はい」
「その語り様、まるで実戦で活用されていたのを見たと言わんばかりですわね」
「ええ、そうですね」
隠す必要は無いので素直に答える。
淑妃様は考え込み、しばらくするとこちらに笑みをこぼした。
「興味深いですわ。実に、ね」
結局凧あげは昼休みの終了をもって止めになった。
わたしのどこが淑妃様の琴線に触れたかは定かでないものの、この日を境に彼女との関係は縮まったと言い切っていいでしょう。
「はい?」
「だから、タコをあげようよ」
ある晴れた日のこと。午前中の仕事を終えて休憩中だったわたしは暁明様からいきなりそんなことを言われた。空模様に負けないぐらいの笑顔を見せてくださった彼の発言を理解するのに少しばかり時間を要した。
「ああ、凧ですか」
「晴れてるし風もあるし、やろうよ」
「どうしてまた凧を? 唐突ですね」
「いや、急にやりたくなったから」
暁明様の思い付きはいつもの事ながら、その日の提案は少しばかり難題だった。
断るのは簡単だったものの暁明様の期待に応えたいとの気持ちが生じたのもまた事実。妥協案としてわたしは条件を付けることにした。
「じゃあ許可を貰ってきてください」
「え? 許可? 凧をあげるのに?」
「はい。えっと、後宮の責任者ってどなたでしたっけ? 徳妃様? 貴妃様?」
「母上達で問題無いと思うけれど、どうして?」
「理由は許可を貰えたら説明しますので」
「分かった。じゃあ話してみるよ」
暁明様が駆けていったのを見届けてからわたしは廊下の縁に座って昼食を取る。
普通に食卓に座ってもいいのだけれど、わたしは昼は軽く済ませたい方なのよ。そして残った昼休憩時間を昼寝に費やすのだー。
と思っていたら想定よりも早く暁明様が戻ってきた。
「いいってさ。さ、じゃあやろうよ」
「え? 本当に許可貰えたんですか? わたしはてっきり駄目って言われるかと」
「そう言えば母上は面白そうだって言ってたし、貴妃も浮かない顔をしてたっけ。どうしてだろ?」
「準備しながら説明しますか。で、あげる凧の準備は?」
「はい。これでどうかな?」
暁明様が後ろから取り出したのは彼の肩幅程度の大きさの凧だった。やや小ぶりでお子様向けだと評価していい。
わたしからしたら折角あげるのにかなり物足りなく感じてしまうのだけれど、まあ今回は彼が満足すればいいでしょう。
「これぐらいならわたしはいらないんじゃないですか?」
「一人でやってもつまんないじゃん。誰かと一緒の方が楽しいよ」
「確かに。否定出来ませんね」
暁明様と一緒にやって来たのは後宮でもやや開けた広場。普段はここで妃同士の交流だったり舞踊の練習だったりがされる。
そんな中で凧をあげようとするわたし達は完全に異彩を放っていた。
糸をほどいた暁明様は元気いっぱいに走り始める。上手く風に乗った凧は上空へと舞い上がった。一発で成功、見事なものだ。
宙を舞う凧に暁明様は顔を輝かせた。その場に居た女官達や妃方からも感嘆の声や拍手があがった。
「お上手ですね。何度かやられたんですか?」
「まあね。ところでさっき凧をあげるために許可がいるって言ってたけれど、どうして?」
「ああ、それは……」
「そこの貴女、一体何をしているんですの?」
説明しようと口を開いた時だった。突然低くも大きな声が響き渡る。
その場の全てを制するのではないかという威厳ある言葉を発した主の方を振り向くと、数名の侍女を従えた気品ある妃がこちらを睨みつけていた。
彼女の登場によって周りの女官や妃方は慌てて頭を垂れた。下女に過ぎないわたしもまた彼女へとかしずく。
何もしないのは暁明様ただお一人。それが彼女の立場を如実に表していた。
正一品の妃、淑妃様。
まさか彼女に見つかってしまうとは……。
「二度は言いませんわよ。答えなさい」
「はい。紅玉宮殿下のご要望を叶えるために凧をあげていました」
「凧あげは後宮では御法度ですけれど分かったうえでの所業だと?」
「主の要望を叶えるのがわたしの務めだと心得ていますので」
淑妃様は明らかにわたしを責めていた。凧をあげている暁明様を余所に、だ。
つまりは本来徳妃様付きのわたしが彼の思い付きを諫めるべきだろうと咎めているのだ。ご尤もなので弁解の余地は無い。
「ちょっと待ってくれないかな淑妃」
そこに割り込んできたのは当事者の暁明様。まるで罪人のような立場に立たされたわたしを守るように前に出た。
何故かあげていた凧は降ろさないままでわたしに手渡ししてくる。
「これはこれは紅玉宮殿下。ご機嫌麗しゅう。して、何かご意見が?」
「正確には凧あげは許可を貰ったうえでみんなの目に入る場所でやれば問題無かった筈だよ。その条件は満たしているけれど?」
……ちょっと待った。さっき暁明様は何も知らない感じでしたよね?
もしかしてわたしを試したんですか? だとしたらなんて意地悪な。何も知らないまま責められて狼狽えるわたしを笑うつもりだったので?
「わたくしは許可を出した覚えがありませんわ」
「貴妃に頂いてきたから問題無い、と思うけれど?」
「……っ。あのお方も物好きなことで」
ちなみに凧あげの許可は正一品の妃のうち二名の許可が必要らしい。これは正一品の妃四名が後宮を責任者、と位置付けられているからだそうだ。
なお、皇后と皇太后は別格で、後宮の責任者たる正一品の妃達を管理する更に上の役割を担っているんだとか。
で、暁明様から事情を説明された淑妃様はよほど癪に障ったのか、苦々しく吐き捨てた。
自分の思い通りにいかず不機嫌な彼女はそのまま足早に立ち去る……と思いきや、逆に侍女に椅子を用意させてその場に留まったじゃあないか。
「あの、淑妃様?」
「何? 文句がおあり? わたくしがどこで何をしようが勝手でしょう」
「確かに」
この場で文句が言えるのは皇子である暁明様だけ。その彼も特に何も言うことが無いようで、わたしが上空に飛ばしっぱなしの凧を受け取ってまた宙に泳がし始めた。淑妃様がいようが特に気にした様子はなかった。
他の頭を垂れっぱなしだった方々も淑妃様が楽にしろと促したのでそそくさとその場を去っていく。さすがにこの場に留まって自分の活動を再開しようとする豪胆な者はいなかったらしい。
「で、さっきの話の続きだけれど、どうして?」
「えっと、どうして、とは?」
「許可が必要だとは知ってても理由は知らないんだ。もしかして凧が屋根に当たって修理するのが大変だから?」
「あー、成程」
決まりだから守らなきゃ駄目、というのは思考の停止に他ならない、とわたしは考えている。何事も起因が存在していて、当時の事情を反映して制度は組まれるのだから。そして現在と合わなかったら決まりの方を柔軟に変えていけばいい。
そういった意味で暁明様の疑問は実にわたし好みだった。
「それもあるんでしょうが、凧が兵器だからですね」
「……兵器?」
「そうですよ。帝都で遊び道具として扱われるのは今が太平の世だからでしょうね」
少し強い風が吹いた。凧が流されそうだったのでわたしはすかさず糸を持って凧を手繰り寄せる。幸いにも屋根には落下せずに済み、宙に浮いたままで手元に戻すことに成功した。
少しずつ糸を離して近距離で飛ばし続ける。
「見て分かる通り凧って上空高く舞い上がりますよね。遠くにいる人にも見えるってことは、合図に使えますよね」
「それって、狼煙と同じ感じに使うってこと?」
「後宮で制限されているのは簡単に外との連絡を取られないためでしょう。多分わたしなんかが許可下さいってお伺い立てても馬鹿かと一蹴されるだけです」
「言われてみれば確かに……。遊ぶことしか思い浮かばなかったよ」
同じ理由で宮殿周囲での凧あげは固く禁じられている筈だ。凧あげをするためにわざわざ帝都の外壁から離れた草原または荒野に出向く人もいる、と噂で聞いた。
それだけ凧あげが楽しいって証なんだけれど、悪用しやすいとも解釈出来る。
「それと、凧に尖った刃物や劇薬を積んでわざと落下させたらどうなりますか? 建物だけならまだしも人に危害を与えかねませんよね」
「確かに兵器って言われても納得出来ちゃうね」
「下女として後宮に入り込み、凶器となる凧をあげて、上空から標的を攻撃。後宮の妃方のみならず、皇帝陛下すら危険を及ぼしかねません」
「そんなわけが……いや、確かにものすごく高く凧をあげたら可能なのかも」
分かってもらえて幸いだ。
正一品の妃二名の許可とはそんな凶行に走る者ではないとの証を立てるため。皆の目に入る場所で行うのは監視のため。
まあ、暁明様みたいな物好きでもない限りそこまでして凧あげしたいだなんて思わないでしょうけれど。
「分かったら凧をあげるのはこれっきりにしましょう」
「分かった。次は周りに何もない川辺でもっと大きいのをあげようよ」
「そう返されると本当に分かっているのかいないのか判断に迷うのですが」
風が収まってきたので暁明様はまた凧の高度を上げた。凧は見事に空を踊る。
わたしはふと気になったので淑妃様の方へ顔を動かさずに視線を映した。何故か彼女は凧や暁明様ではなくわたしを注視していた。
怒りと侮蔑に彩られていた先程とは打って変わって何故か真面目な顔をしていた。
「貴女、雪慧と言いましたわね」
「え? はい」
「その語り様、まるで実戦で活用されていたのを見たと言わんばかりですわね」
「ええ、そうですね」
隠す必要は無いので素直に答える。
淑妃様は考え込み、しばらくするとこちらに笑みをこぼした。
「興味深いですわ。実に、ね」
結局凧あげは昼休みの終了をもって止めになった。
わたしのどこが淑妃様の琴線に触れたかは定かでないものの、この日を境に彼女との関係は縮まったと言い切っていいでしょう。
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