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結 その①
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「パトリシア……今後私達はどうなるんだ……?」
「……」
「国外追放と言われたが、どの国に連れて行かれるんだ? 野蛮な国は嫌だし雪国も寒そうだな……」
「……」
「いくら金をもらえるんだ? まさかこの身一つで放り出されるんじゃあないよな?」
「……」
「身分剥奪と言われたが私の血筋は否定しようがない。そこをどう活用して取り入るべきか……」
「……」
王太子殿下と男爵令嬢は狭い馬車に押し込められ、月が輝く夜の世界を移動しています。殿下は相当不安なのか次々と悩みを口にします。男爵令嬢が一切答えなくても次の悩みに移るのですから、単に和らげたいだけでしょう。
対する男爵令嬢は健気だった学園での彼女とも、先程国王陛下の御前に晒した『ヒロイン』とやらの彼女とも違い、何も表情を浮かべていません。ただ夜の景色を眺めているだけでした。
「これはきっと神が私達へ課した試練なんだろう。なに、愛に障害はつきものだ。パトリシア、二人して乗り越えていこう」
王太子殿下は男爵令嬢の方へと手を伸ばしましたが、彼女の手を掴むことはありませんでした。なんと男爵令嬢が手を動かして殿下を避けたのです。拒絶とも取れる反応に殿下は困惑しました。
「ヘンリー様。そのことで一つ申し上げたいことがあります」
「な、なんだ? そんな急に改まって」
「まず前提から明かしますが、エリザベス様はなんと『転生者』なんですって」
「……何だって?」
あまりに突拍子もなかったためか、王太子殿下は混乱するばかりでした。ですが男爵令嬢はそんなことはお構いなしに独白を続けます。
「エリザベス様が『転生者』として目覚めたのはヘンリー様と婚約する前。生死をさまようほどの高熱がきっかけだったそうですが、そこであの方は当時慕っていた王弟殿下に告白したそうです。自分は『悪役令嬢』なんだ、と」
「この国の今の時代は『乙女ゲーム』の舞台なんですって。いずれ現れる『ヒロイン』が王太子殿下方素敵な『攻略対象者』に見初められて、最終的に『悪役令嬢』は『ヒロイン』にいじめでは済まされない多大な罪を犯しかけて断罪されます。突然破滅の運命が待ち受けていると知った彼女の不安はどれほどだったでしょうか?」
「王弟殿下は密かに愛するエリザベス様を救うため、公爵閣下の協力を得ながら下準備をしていきました。まず断罪の要因となった『悪役令嬢』の傲慢さを矯正し、周りのご令嬢方と友好関係を築かせました。エリザベス様が『悪役令嬢』のような真似をなさるはずがない、と思わせるためのようですね」
「と、同時にエリザベス様が最も恐れていた『ヒロイン』の登場を阻止するため、前もって消えてもらうことにしたんですって。そう、『乙女ゲーム』の『ヒロイン』に至る筈だった、本物のパトリシアさんにご退場願ったわけです」
そこまで男爵令嬢が語った時、突然馬車が急停止しました。何事だ、と王太子殿下が外へ視線を移すと、街道の端にもう一台馬車が止まっていました。ただ目の前に別の馬車が停車しても何ら行動を起こす気配がありません。
すると、男爵令嬢は扉を開いて下車したではありませんか。王太子殿下が男爵令嬢の後を追おうとしましたが、乗ってきた馬車の御者が剣を喉元に突き付けて阻みます。殿下は何が何だか分からないといったご様子でした。
「そして『物語』を円滑に進めるため、王弟殿下は我々に代役の派遣を依頼したのです。こうしてわたしがパトリシア、つまり『ヒロイン』になってエリザベス様や王太子殿下の御前に現れたわけですよ」
男爵令嬢……いえ、もう仕事は終わりましたのでその役は用済みですね。改めまして、わたしは元王太子殿下にはにかみました。殿下は町娘がするような屈託のない笑顔がお好きでしたから、こんな風にしたことはありませんでしたね。
「つまり、ヘンリー様は犠牲になったんですよ。エリザベス様の救済のために、ね」
「騙していたのか……? パトリシアは、私を騙していたのか!?」
「ですからわたしはパトリシアでは……いえ、ちょっと待ってください。そう言えば組織では番号しか与えられていませんでしたね。うん、でしたらこれからはパトリシアって名乗っちゃいましょう。ヘンリー様、その名前はありがたく頂戴します」
「そんな事を言ってるんじゃない! 私達は真実の愛で結ばれただろう……!」
「楽しかったですよぉヘンリー様との恋愛ごっこ」
何の感慨も湧かない、とまでは申しません。わたしだって血の通った人間ですもの。ヘンリー様を愛したのは本当ですし結ばれた時はとても嬉しかったです。この時が一生続けば、とまで願ったほどに心奪われましたとも。
ですが断罪劇を決行するとなれば話は別。そこまで至ってしまえばもはや『ヒロイン』か『悪役令嬢』のどちらかが負ける以外の道が残されていません。でしたらわたしは与えられた任務を全うするまでです。
「……」
「国外追放と言われたが、どの国に連れて行かれるんだ? 野蛮な国は嫌だし雪国も寒そうだな……」
「……」
「いくら金をもらえるんだ? まさかこの身一つで放り出されるんじゃあないよな?」
「……」
「身分剥奪と言われたが私の血筋は否定しようがない。そこをどう活用して取り入るべきか……」
「……」
王太子殿下と男爵令嬢は狭い馬車に押し込められ、月が輝く夜の世界を移動しています。殿下は相当不安なのか次々と悩みを口にします。男爵令嬢が一切答えなくても次の悩みに移るのですから、単に和らげたいだけでしょう。
対する男爵令嬢は健気だった学園での彼女とも、先程国王陛下の御前に晒した『ヒロイン』とやらの彼女とも違い、何も表情を浮かべていません。ただ夜の景色を眺めているだけでした。
「これはきっと神が私達へ課した試練なんだろう。なに、愛に障害はつきものだ。パトリシア、二人して乗り越えていこう」
王太子殿下は男爵令嬢の方へと手を伸ばしましたが、彼女の手を掴むことはありませんでした。なんと男爵令嬢が手を動かして殿下を避けたのです。拒絶とも取れる反応に殿下は困惑しました。
「ヘンリー様。そのことで一つ申し上げたいことがあります」
「な、なんだ? そんな急に改まって」
「まず前提から明かしますが、エリザベス様はなんと『転生者』なんですって」
「……何だって?」
あまりに突拍子もなかったためか、王太子殿下は混乱するばかりでした。ですが男爵令嬢はそんなことはお構いなしに独白を続けます。
「エリザベス様が『転生者』として目覚めたのはヘンリー様と婚約する前。生死をさまようほどの高熱がきっかけだったそうですが、そこであの方は当時慕っていた王弟殿下に告白したそうです。自分は『悪役令嬢』なんだ、と」
「この国の今の時代は『乙女ゲーム』の舞台なんですって。いずれ現れる『ヒロイン』が王太子殿下方素敵な『攻略対象者』に見初められて、最終的に『悪役令嬢』は『ヒロイン』にいじめでは済まされない多大な罪を犯しかけて断罪されます。突然破滅の運命が待ち受けていると知った彼女の不安はどれほどだったでしょうか?」
「王弟殿下は密かに愛するエリザベス様を救うため、公爵閣下の協力を得ながら下準備をしていきました。まず断罪の要因となった『悪役令嬢』の傲慢さを矯正し、周りのご令嬢方と友好関係を築かせました。エリザベス様が『悪役令嬢』のような真似をなさるはずがない、と思わせるためのようですね」
「と、同時にエリザベス様が最も恐れていた『ヒロイン』の登場を阻止するため、前もって消えてもらうことにしたんですって。そう、『乙女ゲーム』の『ヒロイン』に至る筈だった、本物のパトリシアさんにご退場願ったわけです」
そこまで男爵令嬢が語った時、突然馬車が急停止しました。何事だ、と王太子殿下が外へ視線を移すと、街道の端にもう一台馬車が止まっていました。ただ目の前に別の馬車が停車しても何ら行動を起こす気配がありません。
すると、男爵令嬢は扉を開いて下車したではありませんか。王太子殿下が男爵令嬢の後を追おうとしましたが、乗ってきた馬車の御者が剣を喉元に突き付けて阻みます。殿下は何が何だか分からないといったご様子でした。
「そして『物語』を円滑に進めるため、王弟殿下は我々に代役の派遣を依頼したのです。こうしてわたしがパトリシア、つまり『ヒロイン』になってエリザベス様や王太子殿下の御前に現れたわけですよ」
男爵令嬢……いえ、もう仕事は終わりましたのでその役は用済みですね。改めまして、わたしは元王太子殿下にはにかみました。殿下は町娘がするような屈託のない笑顔がお好きでしたから、こんな風にしたことはありませんでしたね。
「つまり、ヘンリー様は犠牲になったんですよ。エリザベス様の救済のために、ね」
「騙していたのか……? パトリシアは、私を騙していたのか!?」
「ですからわたしはパトリシアでは……いえ、ちょっと待ってください。そう言えば組織では番号しか与えられていませんでしたね。うん、でしたらこれからはパトリシアって名乗っちゃいましょう。ヘンリー様、その名前はありがたく頂戴します」
「そんな事を言ってるんじゃない! 私達は真実の愛で結ばれただろう……!」
「楽しかったですよぉヘンリー様との恋愛ごっこ」
何の感慨も湧かない、とまでは申しません。わたしだって血の通った人間ですもの。ヘンリー様を愛したのは本当ですし結ばれた時はとても嬉しかったです。この時が一生続けば、とまで願ったほどに心奪われましたとも。
ですが断罪劇を決行するとなれば話は別。そこまで至ってしまえばもはや『ヒロイン』か『悪役令嬢』のどちらかが負ける以外の道が残されていません。でしたらわたしは与えられた任務を全うするまでです。
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