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私は貴方と出会えて本当に良かった
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書かれた告白によれば、ドロテアが授かった奇跡は続開だったそうだ。
何でもラースローの奴が粛清とかしまくったせいで皇位を継げる正統後継者が不在になったらしく、マティルデの死後に我こそはって連中がそこいらで挙兵したらしい。んでその混乱に乗じて隣国が押し寄せてきて、神聖帝国は滅亡しましたとさ。
ドロテアは陥落して燃え落ちる帝都を城から眺め、こんな筈じゃなかった、と絶望したそうな。どこから間違ってしまったのか、と思い返して、あたし達二人に思い至ったらしい。もっと別の選択をしていたら……と思ったら、奇跡が発動したんだとか。
続開はそれまでの時間で得た経験を過去へと飛ばしてやり直させる奇跡。なので肉体や魂が過去に戻るわけじゃないんだそうだ。更に自分はやり直し不可能ときた。ま、飛ばせたところで元いる自分がどうなるわけじゃないんで、破滅は確定してたわけだが。
こっちのドロテアがそんな真実を知ったのは、彼女が奇跡を発動させたのが丁度この頃だったから、だとか。つまり今頃になって彼女はあたしやマティルデと同じように前回を思い出せたらしい。
「結果だけを味わう不安でこっちに来たけれど、あたし達が無事に未来を変えていて安心した、だってよ」
「ご苦労さまです、とのねぎらいと、ありがとう、との感謝を返事にしたためますか」
ドロテア。ありがとよ。そして彼女にそんな奇跡を授けてくれた神様もな。
おかげであたしは上手くやり直せたよ。
これからはそんな奇跡に頼らないようにしなきゃな。
□□□
国王の宣言通り、王太子は成人後に国王となった。
と同時にイストバーンも王子じゃなくなって公爵に臣籍降下した。
国王は処刑された王妃を終生弔い続ける、と宣言して完全に隠居。王宮を去った。
その背中は君主だったとは思えないほど小さく寂しいものだった。
新国王ヤーノシュは就任に合わせて婚約者だったバルバラと婚姻、挙式を上げた。
国を挙げて盛大に祝われて、大勢の民が新たな国王夫妻を祝福した。
近隣諸国からも多くの来賓が訪れ、イストバーンとあたしも協力して応対した。
んで、それに隠れるようにあたしとイストバーンも披露宴を執り行った。
大聖堂で愛を誓ったしもういいんじゃね、と面倒くさがったあたしの意見は即刻却下されて、身内や親しい人を呼んでささやかに開かれた。その分花嫁衣装には金かけたんで無駄に豪華になっちまったがな。
将来を神にと相手に誓い合って口づけを交わした時も幸せを実感したんだが、みんなから祝われてわたしは改めて幸せに包まれている、って涙したわな。自分でもこんなに泣くなんて思いもしなかったよ。
「ところでギゼラ」
「なんでしょうかイストバーン?」
「あの乱暴な口調、いつまで続けるんだ?」
「お望みとあらばもうしませんが」
ここ最近はイストバーンの妻に相応しく慎ましく気品あるよう振る舞ってきた。乱暴で捻くれてたのは子供時代の反抗心が前世への反感と合わさって続いたようなものだ。何もかも解決した以上、いい加減卒業すべきでしょう、と思って気をつけてる。
「いや。続けたいなら続けていいぞ。ただし、俺とか気心知れた相手だけにな」
「いいんですか? みっともない、と思われても仕方がない無礼さですが」
「そういう破天荒な中に魅力が詰まったギゼラだからこそ俺は好きになったんだぞ」
「っ……。そう言うの、卑怯だよ……」
だけどイストバーンが気に入っちまったみたいだから、もうちょっとだけ続けるか。
なあに、いずれあたしが生む子供に伝染しないように気をつけりゃいいさ。
万が一バレたらこう言えばいいさ。「運命に打ち勝つ反抗期の名残だ」ってな。
そっからも色々あったんだがあえて語るまでもねえわな。他の人と似たようなもんだろうし。奇跡に溺れて馬鹿を見て、奇跡で大切な人を救って、奇跡でやり直せた。それだけ教訓として後世に伝わりゃ充分だろ。
だから、こうやって締めくくっておしまいだ。
こうしてあたしは幸せな家庭を築き、普通の公爵夫人になりましたとさ。
イストバーン。私は貴方と出会えて……良かった。
□□□
これにて終幕です。
お読みいただきありがとうございました。
何でもラースローの奴が粛清とかしまくったせいで皇位を継げる正統後継者が不在になったらしく、マティルデの死後に我こそはって連中がそこいらで挙兵したらしい。んでその混乱に乗じて隣国が押し寄せてきて、神聖帝国は滅亡しましたとさ。
ドロテアは陥落して燃え落ちる帝都を城から眺め、こんな筈じゃなかった、と絶望したそうな。どこから間違ってしまったのか、と思い返して、あたし達二人に思い至ったらしい。もっと別の選択をしていたら……と思ったら、奇跡が発動したんだとか。
続開はそれまでの時間で得た経験を過去へと飛ばしてやり直させる奇跡。なので肉体や魂が過去に戻るわけじゃないんだそうだ。更に自分はやり直し不可能ときた。ま、飛ばせたところで元いる自分がどうなるわけじゃないんで、破滅は確定してたわけだが。
こっちのドロテアがそんな真実を知ったのは、彼女が奇跡を発動させたのが丁度この頃だったから、だとか。つまり今頃になって彼女はあたしやマティルデと同じように前回を思い出せたらしい。
「結果だけを味わう不安でこっちに来たけれど、あたし達が無事に未来を変えていて安心した、だってよ」
「ご苦労さまです、とのねぎらいと、ありがとう、との感謝を返事にしたためますか」
ドロテア。ありがとよ。そして彼女にそんな奇跡を授けてくれた神様もな。
おかげであたしは上手くやり直せたよ。
これからはそんな奇跡に頼らないようにしなきゃな。
□□□
国王の宣言通り、王太子は成人後に国王となった。
と同時にイストバーンも王子じゃなくなって公爵に臣籍降下した。
国王は処刑された王妃を終生弔い続ける、と宣言して完全に隠居。王宮を去った。
その背中は君主だったとは思えないほど小さく寂しいものだった。
新国王ヤーノシュは就任に合わせて婚約者だったバルバラと婚姻、挙式を上げた。
国を挙げて盛大に祝われて、大勢の民が新たな国王夫妻を祝福した。
近隣諸国からも多くの来賓が訪れ、イストバーンとあたしも協力して応対した。
んで、それに隠れるようにあたしとイストバーンも披露宴を執り行った。
大聖堂で愛を誓ったしもういいんじゃね、と面倒くさがったあたしの意見は即刻却下されて、身内や親しい人を呼んでささやかに開かれた。その分花嫁衣装には金かけたんで無駄に豪華になっちまったがな。
将来を神にと相手に誓い合って口づけを交わした時も幸せを実感したんだが、みんなから祝われてわたしは改めて幸せに包まれている、って涙したわな。自分でもこんなに泣くなんて思いもしなかったよ。
「ところでギゼラ」
「なんでしょうかイストバーン?」
「あの乱暴な口調、いつまで続けるんだ?」
「お望みとあらばもうしませんが」
ここ最近はイストバーンの妻に相応しく慎ましく気品あるよう振る舞ってきた。乱暴で捻くれてたのは子供時代の反抗心が前世への反感と合わさって続いたようなものだ。何もかも解決した以上、いい加減卒業すべきでしょう、と思って気をつけてる。
「いや。続けたいなら続けていいぞ。ただし、俺とか気心知れた相手だけにな」
「いいんですか? みっともない、と思われても仕方がない無礼さですが」
「そういう破天荒な中に魅力が詰まったギゼラだからこそ俺は好きになったんだぞ」
「っ……。そう言うの、卑怯だよ……」
だけどイストバーンが気に入っちまったみたいだから、もうちょっとだけ続けるか。
なあに、いずれあたしが生む子供に伝染しないように気をつけりゃいいさ。
万が一バレたらこう言えばいいさ。「運命に打ち勝つ反抗期の名残だ」ってな。
そっからも色々あったんだがあえて語るまでもねえわな。他の人と似たようなもんだろうし。奇跡に溺れて馬鹿を見て、奇跡で大切な人を救って、奇跡でやり直せた。それだけ教訓として後世に伝わりゃ充分だろ。
だから、こうやって締めくくっておしまいだ。
こうしてあたしは幸せな家庭を築き、普通の公爵夫人になりましたとさ。
イストバーン。私は貴方と出会えて……良かった。
□□□
これにて終幕です。
お読みいただきありがとうございました。
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