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壊されたひととき
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「へー。こんな人気のないところで、こそこそ食べてるのか。かわいそうに」
皮肉たっぷりなエドガー様の声がやけに響いて耳の中に響いて聞こえます。
こそこそしているわけでは決してありません。ディアナといつもとは違うところで食べるのもいいわよねって話し合った末にこの場所を選んだのです。
明日もここで食べたいって思っていましたのに。
「婚約破棄された令嬢だもの。どこにも身の置きどころがなくて、こんなところで寂しく食べていたのね。かわいそうに。でも、一人ではなくて良かったわね。優しいお友達に感謝しなくっちゃね」
リリア様がさらに追い打ちをかけます。
私、お二人の気に障るようなことをしたのでしょうか?
「どこにいても目立たないから、ここでちょうどいいのかもな。地味で陰気な侯爵令嬢とは婚約破棄してよかったよ。両親もリリアとの結婚をすぐに認めてくれたし、ややこしい契約なんてなんもなかったし。それだけ、リリアのことを一目で気に入ってくれたんだろうな」
よほど嬉しかったのでしょうか。
金色の髪をかきあげながら、エドガー様の口から自慢げにつらつらと言葉が飛び出してきます。婚約が調ったのなら喜ばしいことです。
「おめでとうございます」
私は笑顔を作りお祝いの言葉を述べました。
「あら、祝福してくれるの? 侯爵夫人になり損ねちゃったのに? 心無い言葉なんて言わなくていいのよ。くやしいって、正直に言ってもあたし怒らないわよ。なんてたって未来の侯爵夫人ですもの」
ニヤニヤと勝ち誇ったように嗤っているリリア様。
私は侯爵夫人になりたかったわけではありません。もちろん、結婚したならば侯爵夫人としての義務も果たすつもりでしたけど。
「こいつに、侯爵夫人という大役が務まるはずないだろ。勉強ばっかりして部屋に閉じこもっているガリ勉女が社交なんかできるもんか」
「それもそうね。だからエドガーの両親も見切りをつけてあたしを選んだのよ。残念だったわね、フローラさん」
次々と二人から浴びせられる侮蔑の言葉に体が震えてきました。二人の顔が怖くてまともに見れません。
視界が霞んで気を失いかけた時、私の手に温かいぬくもりを感じました。不思議に思って見てみると、ディアナが私の手をぎゅっと握ってくれていました。おかげで正気を取り戻し徐々に心が落ち着いてきました。
「いい加減にしたらどうかしら? 一人の令嬢を寄ってたかっていじめるなんて。紳士淑女のふるまいではないわ」
ディアナがきっぱりと言ってくれました。
「なによ。伯爵令嬢風情が、次期侯爵と侯爵夫人にたてつくなんて」
リリア様は黙るどころか、さらに攻撃してきました。今度はディアナを睨みつけています。
「伯爵令嬢風情ねえ。このことはしっかり覚えておくわ。それと未来だとか、次期だとか言ってますけど、今のあなた達の立場は、ただの侯爵令息と男爵令嬢であって何の権限も力もないのよ。そこは間違えないようにね」
「なによ。だったらあんただって一緒じゃない。あたしたちに偉そうに説教する権利もないわよ。エドガー、もう行きましょ。こんなのに拘ってたら時間の無駄よ。さっ、早く行きましょ」
リリア様がエドガー様の腕をひっぱります。
「そうだな。侯爵夫人にしてやれなくて悪かったな。フローラ」
口の端を吊り上げて捨て台詞のような言葉を吐きながら二人は去っていきました。
「ディアナ、ごめんなさい」
二人の姿が見えなくなってから彼女に謝りました。
いつもそうです。エドガー様にはいつも一方的に怒鳴られたり罵詈雑言を言われても、言い返すことができません。頭の中が真っ白になって言葉が思い浮かばないのです。
ディアナのように毅然とした態度で立ち向かえたらいいのに。
弱虫な私だから、エドガー様に嫌われたのかしら。
「フローラったら、謝らないの。それにしても、調子に乗ってぺらぺらと悪口を言ってたわね。悪意を並べ立てて人を堕とすなんて、よっぽど性根が腐っているのね。わたしのことも馬鹿にしてたしね。伯爵令嬢風情って、耳を疑ったわ。わたしのことを知らない人がいるなんて、そう思わない? フローラ」
私はこくこくと頷きました。さっきとは違う震えが全身を襲います。
ディアナ、怖いです。
瞳がメラメラと燃えています。背後に真っ黒な炎が立ちのぼっているように見えるのは、もしかしたら、錯覚ではないのかもしれません。
皮肉たっぷりなエドガー様の声がやけに響いて耳の中に響いて聞こえます。
こそこそしているわけでは決してありません。ディアナといつもとは違うところで食べるのもいいわよねって話し合った末にこの場所を選んだのです。
明日もここで食べたいって思っていましたのに。
「婚約破棄された令嬢だもの。どこにも身の置きどころがなくて、こんなところで寂しく食べていたのね。かわいそうに。でも、一人ではなくて良かったわね。優しいお友達に感謝しなくっちゃね」
リリア様がさらに追い打ちをかけます。
私、お二人の気に障るようなことをしたのでしょうか?
「どこにいても目立たないから、ここでちょうどいいのかもな。地味で陰気な侯爵令嬢とは婚約破棄してよかったよ。両親もリリアとの結婚をすぐに認めてくれたし、ややこしい契約なんてなんもなかったし。それだけ、リリアのことを一目で気に入ってくれたんだろうな」
よほど嬉しかったのでしょうか。
金色の髪をかきあげながら、エドガー様の口から自慢げにつらつらと言葉が飛び出してきます。婚約が調ったのなら喜ばしいことです。
「おめでとうございます」
私は笑顔を作りお祝いの言葉を述べました。
「あら、祝福してくれるの? 侯爵夫人になり損ねちゃったのに? 心無い言葉なんて言わなくていいのよ。くやしいって、正直に言ってもあたし怒らないわよ。なんてたって未来の侯爵夫人ですもの」
ニヤニヤと勝ち誇ったように嗤っているリリア様。
私は侯爵夫人になりたかったわけではありません。もちろん、結婚したならば侯爵夫人としての義務も果たすつもりでしたけど。
「こいつに、侯爵夫人という大役が務まるはずないだろ。勉強ばっかりして部屋に閉じこもっているガリ勉女が社交なんかできるもんか」
「それもそうね。だからエドガーの両親も見切りをつけてあたしを選んだのよ。残念だったわね、フローラさん」
次々と二人から浴びせられる侮蔑の言葉に体が震えてきました。二人の顔が怖くてまともに見れません。
視界が霞んで気を失いかけた時、私の手に温かいぬくもりを感じました。不思議に思って見てみると、ディアナが私の手をぎゅっと握ってくれていました。おかげで正気を取り戻し徐々に心が落ち着いてきました。
「いい加減にしたらどうかしら? 一人の令嬢を寄ってたかっていじめるなんて。紳士淑女のふるまいではないわ」
ディアナがきっぱりと言ってくれました。
「なによ。伯爵令嬢風情が、次期侯爵と侯爵夫人にたてつくなんて」
リリア様は黙るどころか、さらに攻撃してきました。今度はディアナを睨みつけています。
「伯爵令嬢風情ねえ。このことはしっかり覚えておくわ。それと未来だとか、次期だとか言ってますけど、今のあなた達の立場は、ただの侯爵令息と男爵令嬢であって何の権限も力もないのよ。そこは間違えないようにね」
「なによ。だったらあんただって一緒じゃない。あたしたちに偉そうに説教する権利もないわよ。エドガー、もう行きましょ。こんなのに拘ってたら時間の無駄よ。さっ、早く行きましょ」
リリア様がエドガー様の腕をひっぱります。
「そうだな。侯爵夫人にしてやれなくて悪かったな。フローラ」
口の端を吊り上げて捨て台詞のような言葉を吐きながら二人は去っていきました。
「ディアナ、ごめんなさい」
二人の姿が見えなくなってから彼女に謝りました。
いつもそうです。エドガー様にはいつも一方的に怒鳴られたり罵詈雑言を言われても、言い返すことができません。頭の中が真っ白になって言葉が思い浮かばないのです。
ディアナのように毅然とした態度で立ち向かえたらいいのに。
弱虫な私だから、エドガー様に嫌われたのかしら。
「フローラったら、謝らないの。それにしても、調子に乗ってぺらぺらと悪口を言ってたわね。悪意を並べ立てて人を堕とすなんて、よっぽど性根が腐っているのね。わたしのことも馬鹿にしてたしね。伯爵令嬢風情って、耳を疑ったわ。わたしのことを知らない人がいるなんて、そう思わない? フローラ」
私はこくこくと頷きました。さっきとは違う震えが全身を襲います。
ディアナ、怖いです。
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