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第二部
ディアナside②
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「リリアさんは平民育ちだから、彼らが幼少期から育てたわけではないし、兄夫婦が亡くなって引き取ったのでしょう? 年齢的にも分別のつく年頃ですもの。世間的には彼女の行動は褒められたものではないけれど、だからと言って、彼らに責任を押しつけようとは思わないわ。謝罪も誠意のあるものだったし、何も言うことはないわ」
シャロン様は心底満足しているよう。
「念願が叶ってよかったですわ」
「そうね」
わたしたちは顔を見合わせて笑い合った。
婚約解消が成立した後、胸がすく思いでシャロン様とお祝いをしたけれど、またここで祝杯を上げたい気分だわ。
「せっかくの縁ですものね。チェント男爵家とは、これからもよいお付き合いができればと思っているのよ。それよりもテンネル家には、それ相応の報いをとは思っているけれど。フローラを大事にするどころか、虚仮にするような扱い。そちらの方が許せない。腹が立つわ」
シャロン様はそのことを思い出したのか、怒りで拳を握りしめている。
そうよねぇ。あれは本当に酷かったわ。わたしだって、怒りで報告書を握りつぶしてしまったもの。ぐしゃぐしゃになった報告書は使い物にならず、また新しく作ってもらう羽目になったもの。そのくらい、酷かった。
あの時のことを思い出して、沸々と湧いてくる感情を落ち着けるために、わたしは紅茶を口にした。オレンジを取り出してナイフで切って食べる。酸味が程よく緩和されて甘みが加わり美味しい。
胃の中に食べ物がおさまるとだいぶ落ち着いてきたわ。
それにしてもこのフルーツティー。これは女性に受けるのではないかしら。
紅茶を堪能しつつ今後の展開にも頭を巡らせる。
テンネル家のことは色々と考えてはいるけれど。
ともかく、シャロン様たちが気に入って、これからチェント家と懇意にしていくとなると、テンネル家とチェント家が婚約関係にあったとしても、何か変化があるかもしれないわね。楽しみだわ。
それにしても、度胸があるわ。
普通は婚約破棄させた元凶の家がその相手に商談なんて持ち込まないでしょうに。シャロン様たちが最初から好意的だったからこそ、成立したことよね。じゃなきゃ、速攻つぶされているわ。
「そう、そう。スイーツとカフェの宣伝も兼ねてパーティーを開こうと思っているの。それで、招待状を送ろうと思っているのよ。ディアナちゃんも招待するから、ぜひ来てちょうだいね」
平常心を取り戻したシャロン様がにこやかに話しかける。
「それはもちろん。喜んで参加させていただきますわ」
思いつきで始まったというお店も現実になったようでよかったわ。
フローラの開発した商品も売り出されるということだから、今回の件は長期的に見ても、テンネル家はかなりの損失になるのではないかしらね。
シャロン様が紅茶を注ぎ足してくれた。
白い湯気が立ち上るカップを眺めてわたしは一人笑みを深めた。
二人で紅茶を頂きながら和やかな雰囲気を取り戻した頃。
「奥様、お嬢様がお帰りになられました」
人払いされた部屋にノックの後に入ってきたのは、執事のバート。
「フローラが帰ってきたの?」
もうそんな時間?
シャロン様の声に合わせるようにわたしは窓に目を向けた。
外は明るいわよね。青空が見えるわ。
レイニーと夕食を取って帰ってくると聞いていたのに。あのレイニーがこんなに早くフローラを開放するとも思えないのだけど……
想定外の出来事に、わたしたちはお互いに顔を見合わせた。
シャロン様は心底満足しているよう。
「念願が叶ってよかったですわ」
「そうね」
わたしたちは顔を見合わせて笑い合った。
婚約解消が成立した後、胸がすく思いでシャロン様とお祝いをしたけれど、またここで祝杯を上げたい気分だわ。
「せっかくの縁ですものね。チェント男爵家とは、これからもよいお付き合いができればと思っているのよ。それよりもテンネル家には、それ相応の報いをとは思っているけれど。フローラを大事にするどころか、虚仮にするような扱い。そちらの方が許せない。腹が立つわ」
シャロン様はそのことを思い出したのか、怒りで拳を握りしめている。
そうよねぇ。あれは本当に酷かったわ。わたしだって、怒りで報告書を握りつぶしてしまったもの。ぐしゃぐしゃになった報告書は使い物にならず、また新しく作ってもらう羽目になったもの。そのくらい、酷かった。
あの時のことを思い出して、沸々と湧いてくる感情を落ち着けるために、わたしは紅茶を口にした。オレンジを取り出してナイフで切って食べる。酸味が程よく緩和されて甘みが加わり美味しい。
胃の中に食べ物がおさまるとだいぶ落ち着いてきたわ。
それにしてもこのフルーツティー。これは女性に受けるのではないかしら。
紅茶を堪能しつつ今後の展開にも頭を巡らせる。
テンネル家のことは色々と考えてはいるけれど。
ともかく、シャロン様たちが気に入って、これからチェント家と懇意にしていくとなると、テンネル家とチェント家が婚約関係にあったとしても、何か変化があるかもしれないわね。楽しみだわ。
それにしても、度胸があるわ。
普通は婚約破棄させた元凶の家がその相手に商談なんて持ち込まないでしょうに。シャロン様たちが最初から好意的だったからこそ、成立したことよね。じゃなきゃ、速攻つぶされているわ。
「そう、そう。スイーツとカフェの宣伝も兼ねてパーティーを開こうと思っているの。それで、招待状を送ろうと思っているのよ。ディアナちゃんも招待するから、ぜひ来てちょうだいね」
平常心を取り戻したシャロン様がにこやかに話しかける。
「それはもちろん。喜んで参加させていただきますわ」
思いつきで始まったというお店も現実になったようでよかったわ。
フローラの開発した商品も売り出されるということだから、今回の件は長期的に見ても、テンネル家はかなりの損失になるのではないかしらね。
シャロン様が紅茶を注ぎ足してくれた。
白い湯気が立ち上るカップを眺めてわたしは一人笑みを深めた。
二人で紅茶を頂きながら和やかな雰囲気を取り戻した頃。
「奥様、お嬢様がお帰りになられました」
人払いされた部屋にノックの後に入ってきたのは、執事のバート。
「フローラが帰ってきたの?」
もうそんな時間?
シャロン様の声に合わせるようにわたしは窓に目を向けた。
外は明るいわよね。青空が見えるわ。
レイニーと夕食を取って帰ってくると聞いていたのに。あのレイニーがこんなに早くフローラを開放するとも思えないのだけど……
想定外の出来事に、わたしたちはお互いに顔を見合わせた。
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